スペシャルトーク

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SPECIAL TALK(スペシャルトーク)

サミットを、もっと身近に

G7広島サミットについて、皆さんにもっとよく知ってもらうため、専門家2人にG7サミットについてお話いただきました。その内容を3回に分けてご紹介しています。

第1回目は、G7の重要性や広島での開催意義についてのお話です。​

対談写真

左:原 琴乃(はら ことの)外務省G7広島サミット事務局 総括次長/絵本作家

​右:高瀬 淳一(たかせ じゅんいち)名古屋外国語大学・大学院教授/グローバル共生社会研究所長

現代におけるG7の重要性

​​高瀬淳一氏(以下、高瀬):国際社会にとって、G7は非常に重要なメカニズムになっています。元々、主要国の経済政策の調整を担うものとして、1975年にスタートしたものですが、徐々に、政治的な役割を担いはじめ、環境問題をはじめとする国際社会的な問題に対して、幅広く政策を協調する場になっていきました。実行力に欠ける国連に代わり、自由や民主主義という共通の価値観を持ち、国際法の秩序を守ることを約束できる主要国が集まって、パッと決めて、パッと動く。そういうメカニズムが、国連の機能低下の肩代わりをするものとして発展してきたのがG7です。国際会議は数多くありますが、毎回国連事務総長が参加する会議は、国連以外ではG7サミットしかありません。

 

原琴乃氏(以下、原):なぜG7が重要なのかというと、喫緊の課題に率先して対応できるから。ロシアのウクライナ侵略もそうですし、感染症対策もそうですが、その重要性は、今、まさに高まっています。自由や民主主義という基本的な価値観を共有しているG7だからこそ、速やかに意思決定できるという、これは他の機構ではなかなかできないことだと思います。

 

高瀬:また、その他の国際機関の代表や、アフリカ連合(AU)、東南アジア諸国連合(ASEAN)といった国々の代表も来ますので、全体としては、国際社会みんなが集まって行う会議という見方ができます。

それから、3日間のサミット期間中の首脳会合だけがクローズアップされがちですが、G7サミットのメカニズムは年間を通して機能しています。例えば、先日も、北朝鮮のミサイル発射に対するメッセージを出しましたけど、何かあったらすぐに連絡を取り合って、必要ならば速やかに大臣会合なり首脳会合を開いて動ける仕組みになっている。ロシアのウクライナ侵略の際も、侵略に先立って、外相会合でやめるようにメッセージを出した上で、実際に侵略を始めた段階で、すぐに首脳会合を開いて、ロシアに対する経済制裁を決定。こういう速やかな対応ができるメカニズムがG7にはあるんです。

 

高瀬さん

原:サミットにおける議論で重要なこととして、伊勢志摩サミットにシェルパチーム(首脳の合意内容を調整するチーム)の一員として従事した経験から、よく3つ挙げています。それは、取り上げる議題がまず喫緊性と重要性のあるものか、そして、G7として他の会合ではできない付加価値を与えられるか、最後に、その中で議長国として、いかに日本がリーダーシップを発揮できるかということ。今回のサミットにおいても、G7各国をはじめ、色々な招待国、招待国際機関の代表団、彼らに注目する国内外のメディアも数千人規模で広島にやって来ます。G7首脳の議論とともに、広島の魅力を世界に発信する重要な機会にもなるんじゃないでしょうか。

 

高瀬:​サミットの議題は、議長国が決めます。日本が議長国になる1月以降に、日本として議題にしたいことを発信。その後、各国等との意見調整を踏まえて、議題が決定される。そこから、シェルパと呼ばれる人が、本格的に動き出して、準備を行っていきます。「サミット」とは山頂という意味なので、会合の準備を行う人を、「シェルパ」というヒマラヤで道案内や荷物を運んだりする人になぞらえて呼んでいます。

また、大臣会合からの積み上げということも。特に外務大臣会合や財務大臣会合は、頻繁に会合を開いているので、そこで決められたことを、司令塔の役割を担う首脳会合に上げていくという流れ。おそらく春頃には、首脳会合の議題として4つか5つのメインのテーマが決まるでしょう。経済問題はもちろんのこと、環境問題や安全保障、社会問題には必ず触れますね。

 

G7広島サミットの規模感

高瀬:​警備の規模は分からないですが、ものすごいことになるのは間違いないです。これまで日本で行われたサミットを見てきても、各都道府県警から大規模な動員が行われています。加えて何千という数の報道関係者、さらには世界中でさまざまな活動をしている市民団体も発信の機会を求めて集まります。各国代表の随行者はもちろん、大統領専用機やヘリコプター、防弾ガラスの付いた専用車。そういったものの運転手や整備士なども来られるんです。大変な数ですよ。

 

原:​私も伊勢志摩サミットの時に現場にいましたが、日本中の警察であったり消防であったりといった危機管理機関が集まります。本当に国が総力を挙げて、地方自治体の協力を得ながらやっていくという感じです。広島もそういうビッグイベントになると思います。

原さん

 

広島での開催意義

​​高瀬:​開催都市の名前だけで、開催の意義が伝わるサミットというのは、これまでにないです。広島がどんな場所で、何を発信する地域なのかということは、世界中が知っています。そういう場所でサミットが開かれる意義は、ものすごく大きい。

 

原:広島という場所自体が、一つの大きなメッセージを世界に打ち出している、そういう開催地は非常に貴重だと感じます。それから、ロシアによるウクライナ侵略や、厳しさを増す東アジアの安全保障環境などに世界が直面している中で、武力侵略、核兵器による脅かし、そして国際秩序の転覆を断固として拒否するというG7の意思を示すことが重要です。広島は、そのようなG7の意思を示す場所として最もふさわしい場所であり、戦争被爆地から平和のコミットメントについて、メッセージを示していくことが期待されています。

 

高瀬:​それと、今回、アメリカ大統領、フランス大統領、イギリスの首相といった、核保有国のリーダーが来ます。しかも、これまでの状況を考えると、拡大会合に参加するアウトリーチ国として、新興国で核を持っているインドが入ってくる可能性も。これら核保有国が、核兵器廃絶を訴える広島の地に集まるということの意義は非常に大きい。もしこのサミットで、核兵器廃絶に向かう明確な宣言が、「広島」の名前を冠した形で出れば、歴史に残るサミットになると思います。

首脳会議の会場として想定される宇品島(元宇品町)は海に面しているので、広島には素晴らしい海があって、美味しい海産物がありますということが報道されて、もっともっと知られる機会になるのでは。それから、首脳の方々は会期中いろんなものを召し上がられるわけですけども、必ずその食材は地元のものが使われます。例えば首脳が召し上がった料理や食材のメーカーさんに注文が殺到したりすることもある。

 

対談写真2

原:​広島の方たちにとっても、とても意義深いものになるでしょう。広島は美しい山や海に囲まれており、山海珍味が楽しめますし、伝統的な芸能や、文化、工芸品、最先端の環境技術というのもあります。そういったものを、サミットの機会を捉えて効果的に織り交ぜて、広島の魅力、瀬戸内の魅力、ひいては日本の魅力を発信していきたいですね。

 

高瀬:​もちろん、首脳だけでなく、メディアセンターで報道関係者に提供される食事についても、地元の食材を使用したものが多いですし、大勢のマスコミの方が色々な場所やモノを写真に撮ってインスタグラムなどで発信することによって、広島の魅力が世界中に知られていくことも期待されます。宣伝効果は非常に大きいですね。

 

原:メディアセンターでの展示スペースをどう活用していくかということも、関係省庁と知恵を絞りながら考えているところです。環境・エネルギーや保健・医療などの最先端技術といったものから、例えばスポーツや伝統文化のような柔らかいものまで、ワクワクするようなものを展開したいですね。また、報道関係者向けには、シェフによる凝ったお料理から手軽に食べられるソウルフードまで、地元をはじめ日本が誇る美味しいものも提供しながら。このような幅広い魅力が発信されて、結果として、広島への観光客の呼び込みや投資の促進につながっていくことを、私たちも願っています。

市内の観光スポットなども、インスタスポットとして紹介すれば、サミット開催中に広島を訪れた世界中の人たちがそれをバックに写真を撮ってくれるでしょう。これまでのサミット開催時よりSNSが発展していますので、時代に合ったツールを効果的に活用していければと考えています。

 

高瀬:今後のインバウンド(訪日旅行)の需要を考えると、観光客や国際会議誘致に、大きな影響力を持つと思います。

 

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