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第2回:展示室はなぜ暗い

 みなさんは,博物館や資料館,美術館に行ったときに「部屋の中が暗い」と感じたことはありませんか?どうしてなのかを考えてみましょう。
 展示室の中にあるのはもちろん展示物=資料です。この資料は,歴史的に大切なもので現在の私たちだけでなく,将来の人のためにも残していかなくてはなりません。この世にあるすべてのものは,必ず壊れたり,劣化(=時間がたつにつれてにボロボロになっていくこと)します。資料の劣化をできるだけ少なくするためのひとつの方法として,照明の問題があるのです。よく街角に貼ってあるポスターが色あせているのを見かけます。光による劣化がおきたからです。このように「多くの人に資料を見てもらいたい(=劣化する)」ということと「劣化を防ぐ(=展示をしない)」ということは,正反対のことで大変むずかしい問題です。しかし,博物館は多くの人に資料をみてもらうための施設なので,できるだけ「劣化を最小限に防ぐ」ための方法として照明を暗くしているのです。

文書の展示ケース

紙の資料(古文書・掛け軸・巻子など)
変退色を防ぐことを重視

土器の展示ケース

土器やパネルなど
影響を比較的受けにくいので,見やすさや
色情報の正確な伝達を重視

 博物館では,1.物のみやすさ,2.色情報の正確な伝達,3.資料の変退色の危険を避けることを重視します。それは,資料の性質(何を原料に作られているのか)を考えて,そのバランスを変えます。光による影響は,金属・ガラス・陶磁器は比較的少ないのですが,それ以外は大きいので,変退色を防ぐことを重視します。特に,紙で作られた資料は照度を100ルクス以下に抑えています。
 私たちにとっての文化財は将来の人にとっても文化財であるので,照明の暗さ=文化財を守るためということをわかっていただけたでしょうか。