春になって水がぬるみ始めると田仕事にとりかかります。春の仕事は,種籾をまき,苗を育てることと,田ごしらえです。
水につけて発芽させた種籾を苗代にまきますが,展示している資料の「種おさえ」は,蒔いた種籾が苗代にきちんとおちつくようにローラー部分で上からおさえるものです。また,苗が育ってくる途中,雑草がはえると「苗代用除草機」でとりのぞきます。この資料は「筋蒔用除草機」ともいい,筋状に間隔をおいて蒔かれた苗代に使います。
水田の荒おこしや代かきは現在のように機械化が進むまでは,人力によるもので,作業の中でも最もきびしいものでした。代表的なものは「鍬」ですが,鍬は使う地域の土質の違いによって,柄と刃先の角度がきまると言われ,一般に硬くて重い土質の場合,角度がにぶく,柔らかく軽い土質の場合には,角度がするどいといいます。色々な呼び方,分け方をしますが,例をあげると次のようになります。
材質 | 木鍬 | |
風呂鍬 | 刃先にのみ鉄を使用 | |
金鍬<大正鍬> | 刃が一枚の鉄板,大正時代に普及 |
使用方法 | 打ち鍬 | 田畑の荒おこし |
引き鍬 | 畦づくりなど土の運搬用 | |
打ち引き鍬 | 粘土質に使用 |
「犂」「馬鍬」は,牛や馬など畜力を使っての耕作道具です。「犂」を使うと土を深くたがやすことができました。「犂」は奈良時代頃には,あったようですが,江戸時代にはあまり普及せず,明治時代になって改良され,使いやすくなり一般にも普及したようです。
「馬鍬」は,田に水を引いた後,土の高低をなくし,土にねばりを出すためのものです。荒かき,中かき,と数回繰り返してかいたようです。