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プロジェクトインタビュー(子供の未来応援事業)

印刷用ページを表示する掲載日2019年3月1日

プロジェクトインタビュー

広島県では,成育環境の違いにかかわらず,全ての子供たちが健やかに成長し,夢や希望を育むことができる環境を整備するための取組を行っています。

今回,このプロジェクトに携わる健康福祉局 子供未来戦略担当のお二人に話を聴きました。
 

子供未来戦略担当について

―「子供の未来応援事業」を所管する子供未来戦略担当は,今年度,新たにできた組織なんですよね。子供・子育て施策の総括や子供の貧困対策を担当する組織ということですが,具体的にはどのようなことをされてきたのですか?

辻田:私は,今年度,子供・子育て施策の一つである「朝ごはん推進モデル事業」を主に担当しています。学力に必要な生活習慣を身に付けてもらうため,学校の敷地内で地域のボランティアが主体となって朝食を提供する取組です。

西畑:私は,子供の貧困対策,とりわけ,貧困の世代間連鎖の防止に向けた道筋の検討を担当しています。具体的には,貧困の連鎖を引き起こす様々な要因や経路に関する調査,今後の対策の方向性などの検討や施策体系の整理,新規施策の立案などをしてきました。

―子供未来戦略担当は,どのような体制で業務に取り組まれているのですか?

辻田:担当課長と担当者3名で業務を遂行しています。その担当者のうちの2名が,西畑さんと私です。

―意外と人数が少ないんですね。

辻田:そうですね。基本的には担当者がそれぞれ主となる業務を持っているのですが,他の担当者の業務にも関わりながら,一体的に取組を進めています。
西畑:私も,朝ごはん推進モデル事業の現場に手伝いに行ったりしているんですよ。


―他に何かお二人の間で連携していることはありますか。

担当者二人
辻田:
西畑さんは,昨年の3月まで2年間,みずほ銀行に派遣されていて,企業経営に関する調査や企業とディスカッションをしていたので,そういった観点から,私が企業訪問をする際の資料などについてアドバイスをもらっています。

西畑:辻田さんは,昨年度まで教育委員会に在籍していましたし,その前は文部科学省にも派遣されていました。子供に関する施策を検討する際は,当然教育にも関わってきます。そうしたときには,教育に関する事業や制度について,いろいろと教えてもらっています。

 

これまでの取組について

―ここからは,更に各事業を深掘りさせていただきたいと思います。

まず,今年度から取り組まれている「朝ごはん推進モデル事業」について,詳しく教えてください。この事業は,どのような経緯で始まったのですか?

朝ごはん

辻田:朝食の喫食率と学力には強い相関があり,また朝食を食べないと体温が上がらず,物事に集中できなかったり,イライラしたりすることが分かっています。にもかかわらず,近年の社会情勢の変化や家族形態の多様化などを背景として,子供たちが生まれ育つ環境によって,様々なリスクが顕在化しています。生活習慣の悪化もその一つで,朝食を食べない割合が全国的に年々増加しており,本県の小学6年生が5.0%,中学3年生は6.7%となっています。これには20代,30代の親世代も朝食を食べない割合が高いことも影響していると考えており,この状況を放置しておくと,更に朝食欠食率が増加し続けるのではないかと危惧され,こうした問題に行政が関わっていく必要があるのではないかと考えました。

―そのような課題意識から,まずは何から始めたのですか?

辻田:新たな事業ということで,当然マニュアルなどはありません。事業を一から考え,提供する場所,食材の調達方法,実施主体など,上司や同僚と相談しながら,事業スキームを作っていきました。同時に,他県で朝ごはんを提供している学校があるという情報を新聞記事などで調べ,実際に視察に行き,運営方法や実施に当たっての課題などを聴いてきました。その後,市町への事業説明,協力企業の開拓などを行いました。

―どのような事業スキームを作り上げたのですか?

辻田主査
辻田:学校で朝食を定期的に提供すれば,朝,学校で朝食を食べて,午前中からしっかり勉強し,早く寝て,早く起きるという良い生活リズムになるのではないか。そして,ゆくゆくは朝食を家庭で食べるようになるのではないかという仮説を立て,事業スキームを考えました。
まず,対象は小学生としました。より早い段階で生活リズムの改善を図ることが効果的と考えたためです。
場所については,学校の敷地内としました。これは,子供の通学路の安全面や朝食を食べてから教室に行くまでの時間がないことなどを考慮したものです。
実施主体は,地域住民組織などにボランティアで担ってもらうこととしました。学校敷地内で行う場合,学校とつながりのある地域住民組織などであればスムーズに連携ができると考えました。また地域社会のつながりの希薄化なども指摘されていますから,地域と小学生が交流することで,地域のつながりが増えることも期待されます。
最後に,食材については,食品メーカーなどの企業から無償で提供してもらうこととしました。初めは県が購入することを考えましたが,それでは,モデル事業が終わってしまったら続かないと考えたためです。

―広島県では行動理念等に即した職員の優良な行動事例を毎月表彰する制度がありますが,その食材調達方法の見直しについては,月間ベスト・プラクティスに選ばれていましたね。

辻田:そうですね。平成30年7月の大賞に選んでいただきました。成果にこだわった,県民起点の行動ということで評価してもらえて嬉しかったですね。

 

―食材を企業から無償で提供してもらうのはハードルが高そうですが,どのように協力企業を開拓したのですか?

辻田:包括連携協定を結んでいる企業や,地元企業を訪問し,協力を依頼していきました。難しかったのは,まだ詳細な内容が固まっていない段階で,どれくらいのボリュームが必要なのか,どのくらいの頻度で提供するのかなど,具体的な話があまりできないままでの協力依頼となったことから,企業側の承諾もすんなりとは得られませんでした。

―事業全体を通して一番苦労したのも,この辺りでしょうか。

辻田:そうですね。単に協力を仰ぐというより,やはり朝食にふさわしい食材を選んで,その企業の協力を得るということが難しかったですね。食材は何でも良いわけでなく,衛生面の安全性,栄養面,提供に係る手間,食事の印象,保存スペースなどを考えて選んでいきました。主食がなかなか決まらないのでどうしようかと日々ホームページで食品メーカーのことを調べていたのですが,ある時,あるシリアルメーカーさんのホームページを見ているとCSRに熱心に取り組まれていることを知りました。電話したところ,担当の方が直接会って話を聞いていただけることになったので,本社を訪問して事業内容を説明しました。「協力させてもらいましょう」と言ってもらえた時は嬉しかったですね。その後は,豆乳メーカーやパンメーカーなどにも事業の趣旨に賛同していただき,快く協力いただけることになり,協力企業が徐々に増えていきました。

食材

―企業だけでなく,市町とも連携が必要だと思いますが,どのように調整を進めていったのですか?

辻田:まず,市町の選定については,いくつかの市町と話を進めていたのですが,7月の豪雨災害があり,多くの市町で甚大な被害が発生しました。そんな中,最初にモデル事業を実施した廿日市市は幸い被害も少なく,準備を進めることができました。廿日市市とは福祉部門,地域振興部門,そして教育委員会も交えて調整を進めていきました。初めは,どの地域がよいか,その地域にはどのような団体があるか,学校敷地内で行う場合はどのような課題があるか,教員の負担にならないかなどについて話し合いました。実施地域が決まったら,ボランティアにはどのような業務を行ってもらうのか,どのようなメニューにするのか,どのような備品をそろえる必要があるか,保護者や子供にどのように説明するのか,活用できる補助金はあるかなど,話し合いました。

―そのように企業や市町と連携して進めた中で,この事業における県の役割はどのようなものでしょうか。

辻田:大きな話で言えば,県の役割というのは,特定の市町だけではなく,広島県の全体のバランスを考えながら,各市町が発展するのを支援し,総合的に広島県を発展させることだと考えています。しかし,この事業に関して言えば,県の存在意義は情報と信用の2つだと思います。情報について言うと,朝食欠食率が上昇しているという課題について,全国の事例などを視察することなどにより,朝食を提供するための情報を得て,県内市町と共有できることです。そして,信用について言うと,食品メーカーなどの企業にアプローチした際に,県が持つ課題意識と事業内容について,県という信用があるからこそ話を聞いてもらえると感じました。そして,企業にとって将来的に企業価値を高めると判断されれば協力してもらえるのだと思います。こういった仕事は県職員だからできる仕事なのではないかと感じました。

 

―いろいろな準備をしてこられて,いよいよ朝食を実際に提供する当日は,どうでしたか?

辻田:子供たちがちゃんと時間までに来てくれるのか,食事をスムーズに提供することができるか,用意した食事を喜んで食べてくれるのか,いろいろ不安はありましたが,結果的に大きな問題なく上手く進めることができました。

―ニュースにもなりましたよね。

辻田:そうですね。当日は多くのマスコミに取材に来てもらえたのに加えて,協力企業の方々が視察に来ていただけることになっていたため,広報課とも連携して分刻みの詳細なスケジュールを作成して対応しました。その後,夜の全国ニュースでも取り上げてもらい,注目度の高さを実感しました。

当日の様子

―実際に子供たちに朝ごはんを提供するところまで実現して,どう感じられましたか?

辻田:これまで私は教育委員会での勤務が長く,常に広島県の将来を担う子供たちのために何ができるのか,どうしたら広島で学んで良かったと思ってもらえるかという視点で仕事をしてきました。そういう意味で今回も福祉部門から学校現場に関わることができて,朝ごはんを食べていない子供たちに朝食を提供することにより,楽しそうに友達と朝食を食べている様子や元気に登校していく姿を見ることができて,大変嬉しく感じ,苦労した甲斐があったなと思います。前の職場で担当していた内部管理的な仕事も好きでしたが,直接県民,子供達の役に立っていることが実感できる仕事はやりがいがありますね。

辻田主査

 

今後の取組について

―来年度は,どのようなことをしようと考えられているのですか?

辻田:朝ごはん推進モデル事業については,来年度も継続する予定です。今年度開始した2か所に加えて,実施主体,場所,実施回数などが異なるモデルをさらに8か所程度増やしたいと考えています。また,新たに「フード・マッチング事業」を行う予定です。これは,学校だけでなく,休日の子供食堂や希望する家庭にも食材を提供する仕組みを構築する取組です。目的は朝ごはん推進モデル事業と同じで,全ての子供が朝食を食べられる環境を整備することです。休日や長期休業中も朝食が食べられる場所が地域にあれば,生活習慣がより身につくのではないかと考えています。

西畑:私は,新たに,「子供見守り支援サポート事業」に取り組めないだろうかと考えています。これは,様々なリスク要因を抱える子供たちを多面的・継続的に把握して,見守り支援する仕組みについて,モデル市町と共同で検討・構築を図ろうとするものです。

―今年度の取組も踏まえて,来年度実施していくそういった様々な事業の総称が「子供の未来応援事業」なんですね。

西畑さんの担当される「子供見守り支援サポート事業」は,来年度,新規に取り組む予定の事業ということですが,この事業の目的はなんですか?

西畑:成育環境の違いにかかわらず,全ての子供が健やかに夢を育む社会を目指すに当たって,(1)家庭の環境に起因してリスク要因を抱えている子供を漏れなく把握する,(2)どのような家庭環境にあっても子供に必要な支援が確実に届く,(3)支援の効果を検証することで,より有効な支援が届く,という3点を実現するためです。

―具体的にはどのような取組を考えられているのですか?

西畑主任
西畑:様々なリスク要因を抱える子供たちの情報を把握・共有し,機を逸しない予防と支援を行うことができる仕組みについて,モデル市町となる府中町と共同で,検討・構築を行っていきたいと考えています。
このため,まず,福祉・医療部門や教育部門が連携した情報把握・共有の仕組みが実現可能かどうかなどについて,府中町と県とで共同開催する研究会の中で検討を行いたいと考えています。

―府中町と一緒に取り組むのですね。

西畑:そうですね。住民に身近で,家庭を直接的に支える多様なサービスを持つのが市町の強みですが,研究会で県も一緒に検討しながら,府中町に伴走する形で支援できればと考えています。

―伴走する形というのは,あまり聞きませんね。この事業における県の役割をどのように考えられていますか?

西畑:県は市町と連携を図り,子供と子育て家庭に必要な支援が届くよう,施策を推進していく必要があると思います。そうしなければ,ニーズから乖離してしまいますし,施策を打っても効果が上がらなくなってしまいます。こうしたことを進める一方で,県は,社会情勢や先進的な知見などを踏まえ,広島県全体において求められる取組の方向性を示していくことも役割であろうと思います。

―まさに現場主義が求められるということですね。先進的な知見などはどのように得ていけば良いのでしょうか。

西畑:まずはとにかく勉強ですね。書籍を読んだり,論文をフォローしたりすることはもちろんですが,実際に業務に携わっている方や大学の研究者との意見交換などを通じてまずは知見を得て,徹底的に考えることが必要だと思います。

 

広島県の未来像

―最後に,これらの事業を通し,広島県の未来像をどう描いているのか,お二人にお聞きします。

担当者二人
西畑:子供見守り支援サポート事業は,まずは行政側の仕組みづくりにより,様々な子供・子育て施策の基盤構築を試みようとするものです。
この基盤をベースに,様々な子供・子育て施策が実施されるようになれば,将来的に目指す姿としての「成育環境の違いに関わらず,全ての子供たちが健やかに成長し,夢や希望を育むことができる環境」が実現され,それはひいては,広島に生まれて良かったと心から思ってもらえることにつながるのではないでしょうか。

 

辻田:目指す姿は同じなのですが,朝ごはん推進モデル事業については,まずは朝食を食べていない子供が学校や地域でも食べられる環境を整備することですね。そして,この事業に協力してくれる地域や企業がもっと増えてくれるといいですね。今は家族がそろって朝食を食べるのが当たり前という時代ではなくなっています。親が朝食を作っていても子供が食べないということも多いです。子供が早寝早起きをするという生活リズムが乱れていることも要因の一つです。こうした問題について,朝ごはんを学校で提供することがきっかけとなり,親も子供も生活リズムや朝食の大切さを見直してもらい,子供たちが学校でしっかり勉強することのできる生活習慣が,家庭においても身に付いてもらえると嬉しいですね。

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