このページの本文へ
ページの先頭です。

プロジェクトインタビュー(ひろしまさとやま未来博2017開催事業)

印刷用ページを表示する掲載日2017年3月10日

ひろしまさとやま未来博2017

広島県では,中山間地域の地域づくりの原動力となる主体の行動を促すため,「ひろしま さとやま未来博2017」を開催します。

今回,このプロジェクトに携わっている地域政策局中山間地域振興課の2名に話を聞きました。

「ひろしまさとやま未来博2017」について

 

―「ひろしまさとやま未来博2017」の取組を教えてください。

三島主幹と河内主事三島:平成29年3月から11月までの間,広島県の中山間地域を中心に行われる地域づくりの取組に,誰もが一緒に参加できる博覧会として開催します。期間中,実行委員会が行う「シンボルプロジェクト」,地域の人々が主体となっていろいろな地域づくりに取り組む「ココロザシ応援プロジェクト」,各市町が行ういろいろなイベント,さらに,民間企業もそれに合わせてイベントを企画していて,これら全部併せて,「ひろしまさとやま未来博2017」として実施します。

 

―「シンボルプロジェクト」ではどのような取組を行いますか?

三島:「シンボルプロジェクト」の一番の目玉が,「廃校リノベーション」という取組です。少子化の影響で,全国の学校がどんどん廃校になっています。これを地域の困りごとにしておくのではなく,新たな使い方を何か提案できないかということで,県内の小学校と保育園をリノベーションします。地域の人々と一緒に新しい使い方を一つ一つ築いていく,というのがこの廃校リノベーションになるんですね。

 

―色々ある地域の困りごとの中でも,学校にスポットを当てたのはなぜでしょうか?

三島:学校は,多くの人々がそこに通い,卒業してきた歴史ある存在で,特別な愛着や思いがある施設ですよね。例えば,普通の古民家だと,住んでいた人には愛着あっても,そのほかの人にとっては,建物そのものに対する愛着というのは少なくなると思います。地域づくりという視点で見ると,地域の人々の,地域のために何かしたいという思いや心を,いかに発揮できるようにするかということがポイントになってきます。この観点から,学校は人々の気持ちが集いやすい施設であり,地域の方々に与える効果も大きいと考えて,スポットを当てています。学校は,大きな施設ですので,リノベーションするのもなかなか大変ですが,目玉としてやるには最適だと思います。
 中山間地域というと,商店街がシャッター通りになったとか,いろんな施設が無くなっていくとか,暗い話題をよく聞きますよね。ですが,見方,考え方,使い方によっては,そればかりではないんです。地域の人々が,特別な愛着を持っている象徴的な施設が,新しい使い方としてよみがえる中で,地域の人々に,もう一度自分たちの地域を見詰め直していただき,また,自分たちの地域がもっと良くなれるんじゃないか,幸せになれるんじゃないかと思っていただけるような取組にしたいと思います。

―「廃校リノベーション」に賛同していただける方は,どのように参画できるのでしょうか?

三島:昨年,「廃校リノベーション」の対象施設を決めてから,地域の人々,県内の大学生,外部の方も集まって,施設の活用方法についての「ワークショップ」を重ねてきていますので,そこで思いを反映させることもできます。今後,施設の改修が始まる際には,業者に丸投げではなく,地域の人々に関わっていただき,施設の改修後は,地域の人々を中心に,施設をどのように活用するのか考えていただきます。
 その中でも,一番大事なのは施設を改修した後の活用です。未来博の期間中だけ整備してそれで終わりではなく,せっかくよみがえったものはずっと使っていただく。その中心はやっぱり地域の人々ということになります。まさに地域の人々が主役ですよね。

河内:「廃校リノベーション」では,その資金の一部を「クラウドファンディング」という手法で集めています。この手法を使った一番の狙いは,中山間地域に対する一つの新しい関わり方になってほしいということです。中山間地域への関わり方は人それぞれ濃淡があります。「ココロザシ応援プロジェクト」に応募される方は,地域の魅力や課題に気づいて,主体的にコトを起こす実践者です。一方で,何かやりたいけど,何からやっていいのかわからない方もいますし,やりたいという気持ちはあるけど物理的に難しい,例えば今東京にいるのでできないという方もいると思うんですね。そういった方にとって,今回の「クラウドファンディング」は,中山間地域を応援したいという気持ちを形にできる一つの手段だと思っています。

三島:「クラウドファンディング」は,最近事例が増えてきていますが,自治体がふるさと納税とセットで行うというのはなかなか例のないことだと思います。また,お金を出したということで,「未来博」「廃校リノベーション」が他人事ではなくなりますし,元々そういう気持ちが無くても,それがきっかけになって中山間地域に興味を持ってくれるのもいいなと思います。

―「シンボルプロジェクト」には他にどのようなものがありますか?

三島:中山間地域の魅力の味わい方はいろいろありますが,一般的なのは,車で目的地まで行くという形だと思います。しかし,誰もが実体験でお分かりだと思いますが,家の近所であっても,車ではなく,自転車だったり,歩いてみたりすると,普段見えないものがいろいろ見えてくるんですよね。中山間地域の魅力の中には,車のスピードではない,自転車であったり,歩きであったり,そういうところから見えてくるものもたくさんあります。ぜひ,中山間地域の魅力を新しい味わい方で体験してほしいということで「さとやまソーシャルライド」という取組を行います。

広島県ではこれまで,しまなみ海道でサイクリングの振興などに取り組んできましたが,そういった取組を中山間地域,山側にも是非拡げていきたいと思っていますし,「自転車で楽しむなら広島県」というのも今後PRしていきたいと考えています。現在では,どちらかというと行政が中心となって,いろいろな所でルートの開発をしていますが,本当であれば,実際走る人々の中から「このルートいいよ」とか,「ルートの途中にあったあのおばちゃんの店いいよ」という,本当の生の情報が出てきて,自転車で走る人がさらに増えていくのがいいですね。「さとやまソーシャルライド」はそのきっかけにもなるのかなと思います。現在でも,自転車で走っている人結構いますよ。道の駅で聞いてみたら,「えっ,こんな所まで自転車で来るの!?」という人まで。

―では,「ココロザシ応援プロジェクト」はどのようなものでしょうか?

三島:「ココロザシ応援プロジェクト」は,まさしく地域の人々の「地域のためにこんなことをやりたい!」という思いを後押しするため実施しています。当初の目標では,取組が130件くらいまでいけばいいな,というところでスタートしましたが,全4回の公募期間中3回目までで200件,一回目だけで130件ぐらい応募していただきました。
 自分たちの住んでいるところを何とかしたい,楽しみながら地域のことに関わりたい,地域づくりを行っていきたいという強い思いをお持ちの人が,こんなにたくさんいらっしゃるのだと感じています。

「ひろしまさとやま未来博2017」は少子化・過疎化が進み,縮小していく社会をどのように活性化していくのか,という点で今後の日本のモデルになる取組だと思っています。そういう意味で,見本になるべき人たちがたくさんいた。まだまだ広島県ってやれるね,と感じています。

―河内さんは安芸太田町での地域おこし協力隊の経験があるそうですが,その経験はどのように生かされていますか?河内主事

河内:「県庁って現場から遠いよ」というのは以前から聞いていて,実際にそのように思うこともあります。「この仕事が誰のためになるのか」なんて悩むことも,誰もが通る道だと思います。でも,そんな時に,地域おこし協力隊の経験が生きてくるなと感じています。中山間地域に暮らしている方々の思いとか,表情とか,息遣いまで想像できると言ったら言い過ぎかもしれませんが,そこまで想いを馳せられるようになれたというのが,地域おこし協力隊として3年間活動してきた結果だと思いますし,お世話になった方々に恩返しをするという意味でも,今の仕事はすごくやりがいを感じています。

県の役割

 

―このプロジェクトで,県と市町の役割はどう違うのですか?

三島主幹

三島:地域づくりに取り組む視点が異なると思います。市町の人々は「隣よりはうちの市を,町をより良くしよう」という考え方です。その思いがすごく大事で,そのような市町が競い合って,相乗効果で全体が良くなるということもあります。一方で,県職員は,全体を見渡すコーディネーターとして,広島県全体が県外の方にどのように受けとめられるかとか,取組の成果が県内各地にどれくらい広く及んでいくのか,そして,その結果,それぞれの地域にどのような現象と効果として表れて,地域がどう変わっていくのかというように,市町を越えた視点で考えていく必要があります。

「ココロザシ応援プロジェクト」の県の役割で言えば,例えば,○○町のAさんと△△町のBさんという同じような取り組みをしている人がいるとして,「Aさん,Bさん,あなたたちとても似てる取組をやっていますよ。ちょっと話してみませんか?」と結び付けていくようなことをしています。プロジェクトに参加しませんかというPRをする一方で,このように全体を見渡すコーディネーターとしての役割が非常に大事だと思っています。一人だったら挫折するところも,仲間が増えるとどんどんモチベーションも上がって,みんなで頑張っていこう,続けていこうという力になってきますよね。
 また,首都圏への情報発信をするときに,市町単位でやるには限界があります。首都圏の人を呼び込む取組は,県の情報発信力があってこそできることもありますので,県が市町と一緒に情報発信しています。

 私は,安芸太田町に派遣されて地域づくりの企画をやっていたことがあるのですが,そこで地域の皆さんと一緒に汗と泥にまみれて活動するのもとても楽しいものでした。ただ,実はこの最前線の活動がしっかりしていないと,県がいかにコーディネートしましょう,と言っても上手くいかないんです。地域の個々の取組が基本中の基本です。
 だからこそ,地域振興では,現場を知りつつ,全体を見渡せる人材が大事だなと考えています。気を付けないといけないことは,地域の人々からすれば,県ってやっぱり遠いということです。地域に行くと「わざわざ県庁から来てくださった,よく来てくれたね」という風に声をかけられます。市町の職員とは明らかに違う言い方なんですね。そこで「来てやったぜ」と思うようなことではいけないのは当然ですが,地域の人には,どうしてもそういう見方をされるので,我々は謙虚に地域に入っていかないといけません。

―三島さんは安芸太田町で地域づくりの企画をされていたという事ですが,どんなことをしていたのですか?

三島:地域おこし協力隊の第一期を採用するための試験をしたり,森林セラピーの宣伝ポスターを作ったり,ガイドを募集したり,自分がガイドになってみたり,とにかくいろんなことをやりました。

河内:実は,僕が安芸太田町へ行こうと思ったのは,三島さんが手掛けた取組を知ったことがきっかけなんです。当時,三島さんのことはまだ存じ上げなかったですが,思いの詰まった取組が結局人を呼ぶ,輪が広がっていくんだなと思います。

 

仕事の難しさ・楽しさ

 

―仕事の中で難しいなと感じること,逆に楽しいことはありますか?

三島主幹と河内主事

河内:地域の人々と向き合う仕事なので,仕事とプライベートの境界が曖昧になってきます。休みの日でもいろんな相談を受けますし,常にそれに応える用意をしておく必要があります。ただ,仕事を進めるのにあたって,地域の人々の顔が浮かんでくる方が,絶対に良い仕事ができると思います。そういう意味では,休みの日にはどんどんいろんな人に会いに行くべきだと思います。

三島:地域振興の仕事は,目に見えるものではなくて,人の気持ちとか心を相手に仕事をすることだと思っています。だから,本当に千差万別で,これっていう型にはまっているものがないんです。職員の立場で,こうした方が良いと考えることが,地域の人々にとって良いとは限らないこともたくさんあります。本当はこっちが正しいのかもしれないけれど,地域にとっては違うのかもしれないというところを,謙虚に見ていかないといけない。押しつけであってはいけない。地域の人々が何を思っているのか,どういうことをしたいのか。逆にどういうことをすれば地域の人々が動き出すのか,所々によって違うところが難しいですね。

逆に,地域の人々に合うことを一つ一つ丁寧にやっていくところが楽しさでもあります。でも,そのためには,河内さんも言うように,いろいろな人に会わないといけないし,自分で一生懸命勉強しないといけないし,いろんな事例もたくさん知らないといけない。とにかく,自分の引き出しを多くしていくことを常にやっていかないと,地域に出るとすぐ見透かされてしまいます。「こいつ何もわかってない奴だな」と。実際に地域に行って話していると,地域の方の反応ですぐわかりますよ。こちらの話に対して「わかったわかった。お疲れ様」という反応なのか,「いやーさっきの話はいいね!」という反応なのかすぐ分かります。それが面白いところでもあり,気が抜けないところでもあります。

私も地域へ行くと知り合いだらけですよ。地域のイベントとか市内であるイベントでも,知り合いがたくさんいる。自然とそうなってくるんです。

 ―職場の雰囲気やチームワークはいかがですか?

河内:私は本来,さとやま未来博を担当しているグループとは別のグループに所属しています。でも,県民の方から見たら同じ中山間地域振興課の課員ですし,もっと言えば同じ県職員です。このプロジェクトを成功させるためにも,職員一丸となって仕事をしています。

三島:職員はみんな,地域の人たちのために何かお役に立てないかという思いを持っています。お酒を飲みに行くとそんな話で盛り上がります。

 

今後の展開

―今回の「ひろしまさとやま未来博2017」の取組が,今後どういう展開につながってほしいと考えていますか?

三島主幹と河内主事

河内:私は,特に若い人こそ積極的に中山間地域に関わってほしいなと思っています。中山間地域は人口減少や少子高齢化といった課題にいち早く直面していて,まさに日本全体の将来の姿だと言えます。若い人には,そこでいろんな経験をしてほしいです。地域の魅力を高める,地域の課題を解決するといった経験が,自分たちが例えば50歳,60歳になったときの日本をより良くする処方箋になるのかもしれないと思っています。

三島:一昔前の地域振興と言うと,たくさんのお金をかけて道路を良くし,空港・港を作り,大きなホールを作れば地域が活性化するはずだ,と国全体が動いてきました。もちろん最低限のインフラは必要です。しかし,全国を見渡した時に,地域振興に成功した,元気になったといえるところはやはり,地域のために動く人たちがいるところです。中山間地域振興条例や計画でも「人」に注目して動き出しています。

 地域の人々と一緒にいろいろなことに取り組んできた経験から言うと,地域の人々と仲間となって,いろいろな活動を一緒にすることはとても楽しいし,この楽しさを多くの人に知ってもらいたい。そこで,本当にいいなと思えば続けてもらえればよいし,合わないなと思ったらやめてもらってもいい。とにかく,その楽しさをまずは未来博をきっかけに知ってもらいたい。本当に人生変わります。「人生を変えたいなら中山間地域へ行こう!」と人に薦めたいくらいです。

おすすめコンテンツ

みなさんの声を聞かせてください

満足度 この記事の内容に満足はできましたか? 
容易度 この記事は容易に見つけられましたか?