知ってた?広島県の研究機関が醸す幻の日本酒の秘密に迫る!
広島県の研究機関で醸されている日本酒「明魂 (めいこん)」
100年近く前から試験醸造酒として本数限定で造られている歴史ある銘柄です。
広島県出身で酒豪としても知られた文豪の井伏鱒二氏が「明魂」に対して『口に含んだときは水のように淡く、飲みくだすときいい匂いと味が伝わって来る。すぐ顔のあたりが温かくなる。芳醇というのはまさにこんな趣のものではないか。』と絶賛したとの逸話もあります。
(出典:自慢は泣くほど旨い酒、昭和27 (1952) 年7月1日読売新聞夕刊)
井伏鱒二も絶賛した明魂。今年は令和4年10月20日 (木) 9時に販売開始します。
目次
全国でも珍しい!清酒の製造販売免許をもつ公的機関
広島県広島市にある県立総合技術研究所食品工業技術センターは、全国でも珍しい日本酒の製造販売免許を持つ公的な試験研究機関です。
大正7年の設立 (当時は広島県工業試験場醸造部) 以来、酵母の開発、酒造りの高度化などの研究を行い、県内の酒造会社を技術的に支援しています。
県内の酒造りをレベルアップ!?食品工業技術センターで行われる試験醸造とは
試験醸造とはその名のとおり、試験研究を目的にお酒をつくることです。「新たに開発した酒米 (酒造り用の米) や酵母が酒造りに適しているか、味はどうか」「その年に収穫された酒米の品質はどうか (毎年の気候条件により米の品質が変わるため) 」などを調べることを目的として醸造が行われ、試験醸造酒をつくる過程で得られた結果は、県内の酒造会社での酒造りに活用されます。
広島県のお酒の品質を向上させ、広島県だけでなく全国全世界の皆さんに美味しい広島の酒を味わってもらうことにつながっています。
一期一会の試験醸造酒「明魂」!
試験醸造酒は一般的に販売されている製品と違い、県内の酒造りに携わる方々のニーズや毎年の研究テーマによって原料米、精米歩合、酵母などが変わる珍しいお酒です。
この試験醸造酒は「明魂」という銘柄で100年近く前から毎年つくられていて、まさに知る人ぞ知る、レアなお酒。ちなみに「明魂」という名前は当時の県職員からの公募で決まったそうです。
研究テーマが変われば、味わいや香りも変わってくるため、その年の明魂はその年にしか巡り合えないという、まさに幻の日本酒です。
毎年10月頃になると、「明魂」は一般向けにも本数限定で販売されます。研究所内で酒造りから瓶詰、ラベル貼りまで行い、販売までしているのは、公的研究機関では全国的にも珍しいことなのです。
2022年販売「明魂」の特徴を主任研究員さんに聞いてみました
今回の明魂は、新しい酒米を使った純米吟醸と酵母を変えた2種類の純米大吟醸という3種類のラインナップです。通常、明魂は前年に醸造され、醸造後に約1年間タンクで品質管理を徹底して保管した後に、瓶詰めされて販売します(いずれも500ml/本、価格や詳しい特徴はホームページ でご確認ください) 。
気になる味わいについては、醸造を担当された山﨑主任研究員さんにコメントをいただきましたので、ご購入の際にはぜひ参考にしてくださいね。
豊かな味わい純米吟醸(黒色ラベル)
- 酵母
- きょうかい酵母®901号
- 原料米
- 広島県産八反錦(精米歩合60%) 、新開発の2種類の酒米が使われています。
- 特徴
- 香りが穏やかでふくらみのある味わい
- 清酒担当者からひとこと
- 3つの中では、最もしっかりした味わいで、清酒らしい香りが強いお酒です。しっかりした味わいが好きな方向けです。酸がしっかりあるので、食中酒として幅広い温度帯で飲まれることを想定しています。
香り華やぐ純米大吟醸(赤色ラベル)
- 酵母
- 広島吟醸酵母13BY
- 原料米
- 広島県産山田錦 (精米歩合35%)
- 特徴
- フルーティーで華やかな香り。
- 清酒担当者からひとこと
- 王道の大吟醸酒の華やかな香りが好きな方向けです。
味わい爽やか純米大吟醸(紫色ラベル)
- 酵母
- 新開発の酵母2種類
- 原料米
- 広島県産山田錦(精米歩合35%)
- 特徴
- ほのかに甘い香りとリンゴ酸によるスッキリした味わい。貯蔵による劣化が生じにくい。
- 清酒担当者からひとこと
- 赤と比較すると酵母の違いがよくわかりますが、香りも味も大きく異なります。冷やしていただくと、白ワインに近い酒質なので、白ワインがお好きな方も楽しめる日本酒です。
黒ラベルの純米吟醸は10年かけて開発した新しい酒米を含む3種類の米から出来た日本酒です。2種類の純米大吟醸は酵母だけを変え、他は同じ条件で造られています。赤ラベルは広島の酒ではよく使われている酵母を使い、紫ラベルは新しく開発した貯蔵したときの劣化臭がしにくい酵母を使って醸された酒です。
今年の明魂は10月20日午前9時から先着順受付にて販売開始。食品工業技術センターのホームページまたはFAX (082-251-6087) で申し込み可能です。
飲み比べたり、好みの1本をじっくり味わったり、思い思いの飲み方でお楽しみください。
【おまけ】食品工業技術センターを見学させていただきました!
令和4年10月5日。食品工業技術センターの本館1階で、皆さん忙しく作業をされていました。その様子をレポートします。
瓶詰作業の様子
清酒自体は昨年の10~12月頃に醸造され、地下で貯蔵・熟成されています。地下から1階にポンプで運ばれてきた明魂を瓶に詰めていき、その後1本1本栓をしていきます。5,000本近くあるので大変な作業です。
瓶詰めされたたくさんの瓶は68~70℃のお湯が入った水槽に浸けられます。これは「火入れ」という作業です。
火入れとは加熱処理のこと。瓶詰め前に火入れをすることで、貯蔵・熟成されて味わいが落ち着いた日本酒が流通・保存される間の品質を維持します。
火入れが終わったら今度はラベルを貼っていきます。今年からデザインを一新!これまでの明魂をお持ちの方はぜひ比べてみてくださいね!
こうして完成した「明魂」。センターの職員やスタッフが1本1本丁寧に造っています。
最後に明魂の醸し人をご紹介
明魂を醸しているのは食品工業技術センターの杜氏になって7年目の平田英二さん。普段は呉市倉橋島にある林酒造で杜氏をされているそうです。
そして、平田杜氏と共に明魂を醸造した食品工業技術センターの職員の皆さんです。
他にも多くの方が関わって明魂は造られています。明魂を飲むことで、広島の酒造りにおける先人たちの努力や最新の酒造技術などに思いをはせるとともに、広島の酒の未来を感じていただければ幸いです。