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若年層で増えている市販薬のオーバードーズ (OD) とは?

ひろしまを学ぶ |

近年、薬物に関するニュースを耳にすることが増えています。東京・大阪でのいわゆる「大麻グミ」による救急搬送や大学での大麻まん延事件などは記憶に新しいところです。

大麻による検挙者数は年々増加しており、大麻の検挙者全体のうち、約7割は30歳未満。その中でも20歳未満の若者が急増しています。

また、若者の間で増えているのは大麻だけではありません。近年、10代~20代の間で医薬品や市販薬のオーバードーズが急増し、社会問題となっています。

オーバードーズとは?市販薬は安全なのでは?そんな疑問にお答えします。また、あなたやあなたの周りで薬物に関する問題が起こった時に知っておいてほしいことについてもお伝えします。

社会問題化している「オーバードーズ」とは

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医薬品等の決められた用量を守らずに過剰摂取 (過量服薬) することを「オーバードーズ (Overdose : OD) 」といいます。

総務省消防庁及び厚生労働省が行った調査によると、医薬品のオーバードーズが原因と疑われて救急搬送される人は年々増加しています。

年代別でみると20代が一番多く、特に10~20第の若者が年々増加傾向にあります。直近では全体の半数近くになっており、若年層のオーバードーズは深刻な社会問題となっています。

医薬品の過剰摂取が原因と疑われる緊急搬送人員の調査結果
出典:厚生労働省「第11回医薬品の販売制度に関する検討会」を基に作成

1度の使用でも「薬物乱用」!?

薬物乱用と聞くと、麻薬や覚醒剤、大麻などの薬物を想像する人も多いかもしれません。これらは法律によって厳しく取り締まられている違法薬物で、1度の使用でも乱用となります。

一方、法律で承認された医薬品は、取扱いや使用目的、方法に明確なルールが定められています。

医薬品等も、決められた用量を超えて服用することはもちろん、病気や傷の治療といった本来の目的や用法等を守らずに使うと薬物乱用となるのです。

市販薬も危険!?若者のオーバードーズが急増中

薬局

ドラックストア等で買える市販薬は、効き目が弱く、安全性が高い薬だと思われる方も多いかもしれません。しかし、市販薬であっても、オーバードーズなど乱用することで、健康被害が発生するおそれがあることをご存知ですか。

市販薬はOTC医薬品とも呼ばれ、処方箋がなくても自分で選んで買うことができます。風邪薬や咳止め薬など依存性がある成分が含まれる薬については、乱用をさけるため、1度に購入できる数を制限する等の対策がされています。

しかし近年、複数の店舗からの購入や、他人から譲り受けたりすること等により、大量に市販薬を入手してオーバードーズをする若者が増えています。

オーバードーズをすると幻覚や精神の興奮状態によって、不安やストレスから解放してくれると言われています。

このため、学校や職場等の人間関係の悩みや、家庭の悩みを抱えている若者が、手に入りやすい市販薬でオーバードーズをする事例が多くみられます。

ただし、不安やストレスから解放してくれるといった効果は一時的です。効果が切れれば、いけないとわかっているのにオーバードーズを繰り返すことも。

その結果、市販薬に含まれる様々な成分の過摂取によって深刻な中毒症状を引き起こしてしまう可能性もあります。こうした行為は非常に危険です。

特に最近はスマートフォンの普及により、オーバードーズを始めとした薬物に関する情報が簡単に見つけられます。SNS等に投稿されている情報には誤情報や悪意ある誘いも少なくありません。中高生等がSNSを活用している場合は、周りの大人が注意深く見守ることも大切です。

薬物乱用がもたらす影響とは

頭を抱える女性

医薬品は、医師がその人の状態に合わせた適切な量を処方しています。たくさん飲めばよく効く、早く病気が治るというわけではありません。

医師の指示を守らず、自分の判断で勝手に医薬品の量を変えて服用した場合には、思いもよらない副作用が起こったり、病気を悪化させることもあります。

また、乱用を続けると、薬物の効果が薄れて同じ量では効かなくなったり (耐性) 、依存性がある薬物が含まれている場合には、薬物を「やめたくてもやめられない」状態 (依存) になってしまうこともあります。

現実に様々な不都合が生じているにも関わらず、自分ではコントロールできずに薬物を使い続けてしまうという状態を、薬物依存症と言います。

薬物依存症は脳の病気です。運動機能や記憶能力、感情のコントロールなどに様々な障害を引き起こします。脳に与えられたダメージは、残念ながら元の状態には戻らないと考えられています。体中に様々な悪影響が現れ、最悪の場合、死に至る恐れがあります。

薬物依存症になると、薬物を使用することだけが生活の中心となってしまうことも。家庭生活や仕事のことはどうでもよくなり、周囲の人々に計り知れない悪影響をもたらすケースも少なくありません。あなた自身やあなたの大切な人たちを守るためにも、医薬品は、用法・用量をきちんと守って使いましょう。

もしかして薬物乱用?そんなときはどうすれば?

電話する女性

薬物依存症になるのは、特別な人ではなく、意思や性格の問題でもありません。誰にでも依存症になる可能性があります。

「友達に大麻を誘われた。」「家族が薬物を使っているかもしれない。」「薬物のこと、誰に相談したらいいかわからない。」

このようなときは、ひとりで悩まずに、まずは相談することが大切です。周りに信頼できる人がいない場合には、保健所や精神保健福祉センター等の専門家に相談してみませんか。

ご家族の方も、悩みを家族の中だけで抱え込まず、専門家等から第三者の視点でアドバイスを受けたり、同じ悩みをもつ家族会等に参加することで、ご本人の薬物依存症からの回復に役立ちます。

秘密は厳守しますので安心して相談してください。

薬物乱用に関する相談窓口

薬物の問題で困っているご本人やその家族の方からの相談を、保健師などのスタッフが対応します。

心の悩みの相談窓口

若者の薬物乱用のきっかけは、心に抱えた悩みや不安から逃れたいからという理由も多くみられます。学校、家庭、仕事の悩み、悲しいことや辛いことがあったら、ひとりで悩まずに相談してみませんか?

電話もハードルが高い…と思っている方は、LINEでも相談を受け付けています。

悩みは一人で抱え込まず、相談しましょう

若者に増えている市販薬等のオーバードーズ。1人では抱えきれない心の悩みから解放されたい、という理由でオーバードーズをする若者も少なくありません。周りの大人がそれに気づき、寄り添ってあげることは、薬物乱用を防ぐことにもつながります。

残念ながら、依存症になった脳は元の状態には戻らないと考えられています。しかし、相談機関になるべく早く相談し、専門的な治療を受けることで、依存症から回復することは可能です。

医薬品は用法・用量をきちんと守って使うことが第一ですが、もし、あなたやあなたの周りで、薬物に関する疑問や悩みがあるときには、どうか一人で悩まず、ご相談ください。