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新病院のイメージ

「エキキタ」で全国トップレベルの医療が受けられる!?魅力がスゴい新病院の話

ひろしまを学ぶ |

今、広島県の医療が大きく変わろうとしています。広島県は、全ての県民が、質の高い医療・介護サービスを受け、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができる、そんな未来の実現を目指しています。今回は、その拠点となる、2030年度に新しく建設される新病院についてご紹介します。

JR広島駅の北口に新病院ができるって知ってる?

2030年度、JR広島駅北口の東区二葉の里に、地下1階、地上16階建ての新しい病院が建設される予定です。広島県内の医療をリードしていくために、県立広島病院・JR広島病院・中電病院・広島がん高精度放射線治療センター (HIPRAC) の4つの医療機関が一体となり、病床数は1,000床、そして診療科数は41科、最新の医療設備も導入されます。

また、JR広島駅の北口は、県全体からのアクセスもよく、加えて、南海トラフ地震のような巨大地震が発生したときに津波浸水のおそれのない場所ということから、新病院の建設場所に選ばれました。

どうしてこの病院が必要なの?知事に聞いてみました!!

湯崎英彦知事

すごい病院ってことはわかったけれど、広島県内有数の病院を統合してまで、この病院が必要なの…?と思われた方。新しい病院ができることで、期待できる効果・メリット3点について、ズバリ湯﨑知事に聞いてみました。

医療の課題

1. 全国トップレベルの医療が受けられる

高度な医療を提供している病院の多くは、関東や関西の大都市圏に集中しています。今回、そうした大都市圏の病院に肩を並べる全国トップレベルの医療を全ての県民に提供し続ける病院をつくろうと、計画しています。

新病院では、医療資源 (医療スタッフ・高額医療機器・医療施設) の集約、さまざまな症例の集積により、広島県全域を対象に質の高い医療を提供します。

例えば、中国地方初のER併設の小児救命救急センターが、24時間365日小児救急患者に対応するほか、ひきこもりや虐待、発達障害など、こどものこころの問題に対応する児童・思春期病床を整備し、いわゆる「こども病院」として、こどものからだとこころの健康を守るため、小児のあらゆる疾患に対応します。

また、今後、高齢者が増えていくと、救急患者も増えることが予想されます。医師や医療設備が分散していると、個々の医療機関では、人手不足になりやすく、救急患者を受け入れることが難しくなります。新病院では、マンパワーや設備を集約し、特に夜間・休日の救急医療体制をバックアップ「断らない救急」を実践します。

2. 医療人材不足が解消できる

新病院は、広島県内で働いてもらう医療従事者を確保することにもつながります。若手医師の数は、全国では増加していますが、県内では減少傾向にあります。その理由としては、若手医師や研修医が勤務先の病院を選ぶ際の決め手として、「多くの症例が経験できる」ことや「指導体制が充実している」ことを重視し、そういった経験を数多く積める、主に首都圏の病院に集中している状況が続いています。

広島県内にこうした「多くの症例が経験でき、指導体制が充実している」魅力的な環境を整えることで、若手医師を中心に医師を確保します。

3. 地域間の医師の偏りを解消できる

医療機関へのアクセスが不便な地域が少なくありません。この医師不足の地域を救うために、先ほど申し上げたとおり、新病院では「多くの症例が経験でき、指導体制が充実している」魅力的な環境を整え、若手医師を中心に医師を確保します。

また、大学と連携して医師のキャリアアップ支援やワークライフバランスにも配慮した医師循環の仕組みをつくって、県内の医師不足の課題にも対応します。

もっと深堀りして聞いてみたい!医師って本当に集まるの?

なるほど!新病院ができることによる、私たち広島県民への効果やメリットが分かりました! だけど、本当に新病院をつくったら医師を含めた医療従事者の皆さんは集まってくれるのでしょうか?? そうした疑問を解決するために、今回は医師で元広島大学の学長である、広島県の浅原 利正 参与と、広島県健康福祉局の北原 加奈子 局長に、医師ならではの視点を交えながら、新病院について聞いてみました!

浅原参与にお尋ねします。新病院ができることで、中山間地域の医療はどのように確保されるのか、もう少し詳しくお伺いしても良いでしょうか。

浅原参与
浅原 利正 参与

これまでも、広島大学の医局が中心となり、ふるさと枠 (※) や自治医科大学 (※) 出身医師の方々も含めて広島県の地域医療体制を担ってきましたが今後も引き続きその体制は維持していかなければなりません。

ただ、現状として先ほど知事の話にもあったように、広島県内では若手医師が減少傾向にあり、全体としての医師数が増えないと地域医療に関心のある若手医師の確保も難しくなってきます。

そこで、新病院に多くの症例を経験できる魅力的な環境を整備し、広島県内で働く医療職の数が増えていく過程において、地域医療に関心のある医療者を確保・育成することで、「地域間の医師偏在の解消」につながると考えています。

新病院で研修する医師の方々は、高度医療に強い関心を持つ方がほとんどかもしれません。ただ、そういう医師の方々にも広島大学病院、そして地域の医療機関と連携することで、新病院で高度医療を学びながら、地域医療の魅力に触れることができるような研修プログラムを整備していきたいと考えています。

当初は新病院に高度医療を学びにきた医師の方々が、例えばご自身のキャリアを考え直すときに、地域の医療を守っていくという選択肢を選べるような、そういう環境を整備していきたいと考えています。

※ふるさと枠
将来広島県の医療を担う人材を広島県と広島大学が連携して育てていくことを目的とした広島大学医学部医学科推薦入学制度のこと。ふるさと枠入学者全員に対して、広島県が修学に必要な資金 (奨学金) を6年間貸与している。
※自治医科大学
へき地等の医師が不足している地域の住民の医療を確保するとともに、住民の健康の増進、福祉の充実を目指す医師の養成を目的として、全国の都道府県が共同して昭和47 (1972) 年に設立した医科大学。自治医科大学卒業生は、卒業後直ちに出身都道府県に戻り、在学中に自治医科大学修学資金の貸与を受けた期間の2分の3に相当する期間 (一般的には9年間) 、知事の指示に基づいて、出身都道府県内の病院、診療所や保健所等に勤務することとなる。なお、知事の指示に基づく9年間の勤務期間のうち、原則として4~5年間はへき地等に勤務することになっている。

次に北原局長は、若手医師はどのような環境を医療機関に求めていると感じておられますか?

北原局長
北原 加奈子 局長

若手医師の多くは、自身が成長できる環境を望んでいるのではないでしょうか。医師として成長すれば、患者さんへ貢献できることが増えていきますし、意欲のある仲間同士が集まることは、お互いを高め合うことにもつながります。

そうした環境作りには、充実した指導体制が不可欠です。業務に必要な知識が学べて、困ったことがあればすぐに相談出来る体制があることはもちろん、希望等に応じて他の医療機関でも研修・指導を受けられる体制があれば、各医療機関の強みを知り、視野を一層広げることもできると思います。

また、初期臨床研修の時期になれば、その後の専門領域についてじっくり考えている方だけでなく、専門医等の資格取得を目指すようになる方もいると思います。どちらの場合でも、幅広く臨床経験が積める環境は、魅力的と言えるでしょう。

さらに、ワークライフバランスを確保し、一人一人が描くライフプランを実現できることも重要です。心と体を充電する時間を確保することは、結果的に個々の能力を最大限に発揮しながら働くことに繋がります。新病院では、これらの環境をしっかりと整えて皆さんをお迎えしたいと思います。

住み慣れた地域で安心して暮らし続けるために

広島県では、全ての県民が、質の高い医療・介護サービスを受け、住み慣れた地域で安心して暮らし続けることができる。そんな未来の実現を目指して、広島県では今、「高度医療・人材育成拠点」づくりに取り組んでいます。

県民の皆様に信頼される基幹病院を開設して、全国トップレベルの高水準かつ安全な医療を提供するとともに、医療に携わる人材を育成します。また、県立広島病院の跡地については、地域にお住まいの方、有識者の方のご意見 (地域懇話会) や住民アンケートの結果を踏まえ、「安心な暮らし」「活気あふれるまちづくり」の2つの方向性を定めました。

この2つの方向性を基に、県立広島病院の周辺にお住まいの地域の方が、今後も安心して暮らし続けることができるよう、地域の医療機関との連携や、高齢者などのアクセスを考慮したうえで、必要な「医療」「介護」「福祉」サービスを受けることができる体制を整え、多様な世代がいきいきと暮らし続けることができるよう、「賑わい」「健康づくり」「子育て」などの整備を具体的に検討していきたいと考えています。

浅原利正参与 湯崎英彦知事 北原加奈子局長