増える呼吸器の病気 県立広島病院の医療体制
肺がん、肺炎、気管支喘息…。誰でもなりうる呼吸器疾患で、罹患は年々、急速に増えています。重症化するリスクもあり、命に関わることも。
その治療に長年力を注いできたのが、県立広島病院 (広島市南区) 。複数の診療科が連携する「呼吸器センター」を設置し、内科と外科の医師たちが患者さんをサポートしています。基幹病院としての医療体制を紹介します。
目次
呼吸器の疾患とは?
呼吸器の疾患は複雑で、原因や症状、診断・治療方法も多岐にわたります。加齢と喫煙が呼吸器疾患のリスクが高まる大きな要因です。長引く咳や息切れ、胸痛があるなど、さまざまな症状が現れることがあります。
幅広い症例に対応するため、「呼吸器センター」では、内科や外科など診療科の垣根を越えた計16人の医師が在籍。専門看護師や認定薬剤師たちも多く、情報共有しています。投薬や手術など、患者さんに応じた治療法を提示しています。
県立広島病院のココがすごい!
難治性の高い肺がんや間質性肺炎、重症喘息のほか、感染症や軽度の呼吸器疾患などに対応しています。「呼吸器疾患といえば県立広島病院」を掲げる医療体制をご紹介します。
チーム医療 診療科を超えた治療が強み
正確な診断をするには、多角的な視点が必要です。そのため医師、看護師、薬剤師、理学療法士たちがチームを組み、診断から治療、退院後の生活や緩和ケアまでサポートします。定期的にカンファレンスを開き、各専門職の立場から意見交換をし、最善な方法を考えていきます。
さまざまな職種が関わることで、治療に伴う副作用や栄養対策、精神的な支援など、途切れのない医療の実現につなげていきます。医師には直接言いにくい悩みも、看護師や薬剤師が聞き取り、解決につなげていきます。
他臓器の外科や放射線診断科などとも連携し、総合病院の強みを生かしたチーム医療を実践しています。
ゲノム情報に基づいた診療を行う「ゲノム診療科」
県立広島病院には、「ゲノム診療科」があります。ここでは、一人ひとりの体質や病気の特徴に合わせた医療を提供する「ゲノム医療」を推進しています。
当院は、厚生労働省から「がんゲノム医療拠点病院」に指定されており、特に肺がんに対するゲノム医療に力を入れています。
保険適用で受けられる「がん遺伝子パネル検査」では、がん組織から100~300種類の遺伝子を調べ、がんの原因となる遺伝子変異を特定します。その結果に応じて、「分子標的薬」と呼ばれる薬でがん細胞を狙い撃ちする治療を行っています。
多くの病院では、検査結果を外部の拠点病院に送って治療方針を検討しますが、県立広島病院では院内で治療方針を検討するため、治療まで一貫して病院内でできます。
手術支援ロボットで、体への負担が少ない手術を
病院内では手術支援ロボットを導入しています。アームは4本。1本の先端にカメラ、3本に鉗子を取り付けます。先端が多関節のため人間よりも可動域が広く、手ぶれもありません。カメラのズームで、深く狭い所まで見え、より精密に処置できます。医師は、3D映像を見ながら座ってアームを遠隔操作するので、疲労軽減にもつながります。
病院では、平均で約4時間かかる肺の手術を、手術支援ロボットでは約1時間半で完了するため、体への負担が軽減されます。傷口も小さく、出血量や術後の痛みを抑えるので、入院期間や回復期間も短縮できるのもメリットです。
※入院期間や回復期間については、患者さんの状態や手術内容によって異なります。
使命を果たす2人の医師
副院長で呼吸器センター長・石川暢久医師と呼吸器外科主任部長・片山達也医師の2人の医師を紹介します。お二人に患者さんとの向き合い方や病院の強みについて聞きました。
多職種で支えるチーム医療とデータで疾患を見極める
呼吸器センターの強みを教えてください。
ほぼすべての呼吸器疾患に対応しています。オールラウンドプレイヤーとしての守備範囲の広さと、高い専門性も持ち合わせた医師が多くいます。
診療科の垣根を越えた連携体制も大きな強み。呼吸器内科から外科に患者さんを引き継ぎやすく、術後は継続して経過を見守れるなど一つのグループとして機能しています。
診療の際に心掛けていることは。
一人一人の患者さんに合った治療を考えるには「聞く」ことが大切です。患者さんや家族の思いはもちろん、他の医師や看護師たちの意見に謙虚な姿勢で耳を傾けます。さまざまな検査結果から多職種の声をもとに、正確に判断する必要があるからです。
間質性肺炎のような診断が難しい疾患にも豊富な実績を持ちます。がん遺伝子パネル検査の精度に定評があり、他院で治療法がないとされた患者さんにも、新たな治療が見つかるなど実績を持っています。都市圏にも負けないくらい充実した医療を目指しています。
手術の腕磨く努力惜しまない 患者さんに安心を
手術で心掛けていることは。
「うまく、早く」手術を終えること。手術支援ロボットによる手術を積極的に取り入れ、体への負担が少ない精密な手術を目指しています。
長年の経験をもとに、メスを入れても出血が少ない場所を見極めて執刀しています。呼吸器内科や他病院の医師から、指名していただける時はやりがいを感じます。
うまく速くできるように、手術前は何度も頭の中でシミュレーションしています。手術の腕を磨くために、常に学ぶ姿勢を忘れません。他病院の見学や最新の手術動画などで勉強し続けています。
患者さんへの接し方は。
「患者さんが自分の家族だったらどうするか」と考え、一方的に治療方針を伝えるのではなく、患者さんや家族の意見を聞きながら「作戦会議をする」ような姿勢を大切にしています。
患者さんにとって手術はとても怖いことだと思います。その不安を和らげ、リラックスして話を聞いていただけるよう、診察時に笑いを交えるなど、和やかな雰囲気作りも心掛けています。
呼吸器疾患 予防するには?
まずは禁煙です。喫煙は肺がんをはじめ、多くの呼吸器疾患の主な原因の一つです。
また、手消毒やうがいなどの感染症対策も効果的。肺炎や新型コロナウイルスのような感染症は呼吸器に大きな影響を与えるため、日頃からの予防が大切です。
長引く咳や息切れなどの症状があった場合は、早めに医療機関を受診しましょう。肺がんは自覚症状がなく、発見が遅れるケースが多いです。気になる症状がなくても、定期的な健康診断も受けましょう。
基幹病院として地域に寄り添った医療を
県立広島病院は、地域の中核病院としての役割を果たしてきました。2030年度には、県立広島病院とJR広島病院、中電病院、広島がん高精度放射線治療センターが統合し、広島市東区二葉の里地区に新病院が開院する予定。
培ってきた知見を生かし、全国トップレベルの医療を提供することを目指しています。
「エキキタ」で全国トップレベルの医療が受けられる!?魅力がスゴい新病院の話
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