海洋プラスチック問題とは?身近な取り組みで瀬戸内海の豊かさを守ろう
プラスチックは軽くて丈夫、加工がしやすく安価であることから、世界中でプラスチック製品が生産されています。
あなたの身の回りにも、ペットボトルや使い捨て (ワンウェイ) 容器、レジ袋など、多くのプラスチック製品が見つかるでしょう。
プラスチック製品は私たちの生活を便利にしてくれる一方で、ポイ捨てや大雨等による流出で適正に処理されなかったプラスチックは、海に流れ出ることによって世界中で深刻な環境問題を引き起こしています。
どんな影響があり、解決のために私たちは何ができるでしょうか。
目次
海洋プラスチック問題とは?
海中を漂い、海岸に打ち上げられたり海底に沈んだりするごみ。これらは海洋ごみと呼ばれています。
海洋ごみには金属やガラス、流木なども含まれますが、その大半はプラスチックです。
適切に処理されなかったプラスチックごみが、海洋へ影響を与える問題のことを「海洋プラスチック問題」といいます。
「普段海には行かないので関係ない」と思っている方がいるかもしれませんが、海洋プラスチックごみの7割~8割は街など陸で出たごみだと言われています。
生態系に影響を与えるマイクロプラスチック
実は、海に流れ出たプラスチックごみは景観を損なうだけでなく、環境にも影響を与えます。
紫外線や波によって粉々に砕けたプラスチックの破片のうち、5㎜以下のものは「マイクロプラスチック」と呼ばれています。
マイクロプラスチックは回収がとても難しい上に、自然界ではほとんど分解されません。
微細な破片は魚などの生物の体内に取り込まれやすいため、生態系に及ぼす影響が懸念されています。
さらに、北極や南極でもマイクロプラスチックが観測されたとの報告もあり、地球規模の問題になっているんです。
瀬戸内海と海ごみ対策
全国各地で海洋プラスチック削減のために様々な取組が行われていますが、その中でも、瀬戸内海は海洋プラスチックごみ対策の注目エリアとなっています。
瀬戸内海は海ごみ対策の注目エリア
瀬戸内海は、本州、四国、九州に囲まれており、水の入れ替わりが少ない海域です。
そのため、瀬戸内海の海ごみは、ほとんどが瀬戸内海地域から排出されたものと考えられています。これは、瀬戸内海地域は自らの取り組みによって海洋プラスチック問題が改善する可能性があるということ。
これが「瀬戸内海はごみ対策の注目エリア」と呼ばれている大きな理由のひとつです。
環境省主導の海洋プラスチックごみの削減に向けたキャンペーン「プラスチック・スマート」でも、注目エリアとして瀬戸内13府県の取り組みが取り上げられているんですよ。
瀬戸内海の海洋ごみはどれくらいあるの?
瀬戸内海に流入する海洋ごみは年間4,500トン。その66%にあたる3,000トンが、陸から瀬戸内海に流れ込む海洋ごみです。
残りは、漁具など海域で発生したごみ (27%) や外海から流入したごみ (7%) です。
4,500トンのうち、1,400トンが清掃活動によって回収されていますが、残りは海岸に打ち上げられたり、瀬戸内海の外に流れ出たり、海底に堆積したりしているんです。
広島県の海岸に流れ着いているプラスチックごみはどれくらいあるの?
県内の海岸に打ち上げられている海洋プラスチックは、海域由来と陸域由来の2つに大別されます。
陸域由来のものは、私たちが生活で使っているもの (ペットボトル、洗剤や漂白剤等のプラスチックボトル、食品包装やレジ袋、食品トレイなど) が多くを占めています。
つまり瀬戸内海を汚しているのは、私たちの生活に由来するプラスチックごみなんです。
普段の生活で私たちにできることとは?
海洋プラスチックを含む海洋ごみを減らすためには、海岸等の清掃活動への参加のほか、日々の生活の中で発生するプラスチックごみを減らすことも問題の解決につながります。
日々で発生するプラスチックごみを減らすには、
- 選ぶ…代替素材 (紙・木・海洋生分解性プラスチック等) を使った製品を選ぶ。
- 減らす…マイバック・マイボトルを使う。不要なストローやフォークなどをもらわない。
- きちんと捨てる…ポイ捨てしないで分別する。
ということを意識することが重要です。
もっとごみを減らす!最新技術を使って私たちにできること
近年は、ITを使ったごみを減らす取り組みも注目されています。気軽にできるものから試してみませんか?
捨てずに返す~リユース可能なテイクアウト容器のシェアリングサービス~
プラスチックの使い捨て容器は便利である一方、簡単に捨てられてしまうという面もあります。
この問題を解決するために、中四国地方では初となる容器のシェアリングサービスの実証試験が始まっています。
カフェ等で飲み物をテイクアウトする際、使い捨てプラスチックカップで受け取ることが多いですよね?
使い捨てプラスチックカップを使わず、しかも保温・保冷できるおしゃれなカップで、テイクアウトした飲み物を楽しめる、そんなサービスです。
容器の利用は、飲み物購入時と返却時にスマートフォンで二次元コードを読み込むだけ。返却場所は、実証試験に参加している店舗ならどこでもOK!
これまで東京都内や名古屋市内等でチェーン店を中心に実証が行われていましたが、広島では地域の個人店と連携する新たな試みです。
普段の買い物から変えていく!“使い捨て”から“繰り返し”使うライフスタイルへ
シャンプーや洗剤など、最近は詰め替え用を買う方も多いと思いますが、その容器もプラスチック製であることが多いですよね。
広島県内にあるスーパーチェーンでは、これまで使い捨てされていた日用消耗品や食品などの容器や商品パッケージをステンレスやガラスなど耐久性の高いものに変えることでリユース可能としました。
使用済み容器は返却ボックスで回収して洗浄、製品を詰めて再販することで、循環型ライフスタイルを実現するための仕組みづくりに取り組んでいます。
みんなが協力してプラスチック削減の活動中!
2019年のG20大阪サミットで、日本は2050年までに海洋プラスチックごみによる追加的な汚染をゼロにまで削減することを目指す「大阪ブルー・オーシャン・ビジョン」を提唱し、他国も巻き込んでプラスチックごみの削減に取り組んでいます。
また、広島県では、2050年までに新たに瀬戸内海に流出するプラスチックごみの量をゼロにすることを目指して、企業や団体等と一緒に2021年にGREEN SEA 瀬戸内ひろしま・プラットフォーム (GSHIP) を設立し、プラスチックの使用量削減やプラスチックごみの流出防止等に取り組んでいるところです。
まずは、海岸漂着量の多い主要3品目 (ペットボトル、プラスチックボトル、食品包装・レジ袋) の使用量削減に向けた仕組みを2030年までにつくり、瀬戸内海に流入するプラスチックごみゼロを目指します。
さらに、海で出たごみの多くは都道府県を越えて移動するため、関係自治体で協力して取り組んでいくことも重要です。
県単独の取り組みに加え、瀬戸内4県 (岡山県・広島県・香川県・愛媛県) と日本財団による包括的海洋ごみ対策共同プロジェクト「瀬戸内オーシャンズX」 や、2023年10月末には環境省と関係自治体14府県でつくる「瀬戸内海プラごみ対策ネットワーク」が発足しました。
瀬戸内海の海洋プラスチックごみ問題に2050年までに瀬戸内海に流出するごみゼロに向けて、連携して様々な取り組みを行っていく予定です。
みんなできれいな海を守ろう!
海洋プラスチック問題と聞くと「自分一人の力ではどうにもならない」と思ってしまうかもしれません。
しかし、一人ひとりの行動の積み重ねで、少しずつ海洋プラスチックごみを減らすことができます。
できることから始めて、きれいな海をみんなで一緒に守っていきませんか?