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広島県立農業技術大学校の学生の皆さん

比婆牛をおいしく育てる秘訣は?広島県立農業技術大学校の学生さんに聞きました!

ひろしまを学ぶひろしま自慢 |

広島県立農業技術大学校では、農業の担い手を育成するために実践的な教育や研修を行っています。広島県のブランド和牛の一つである「比婆牛 (ひばぎゅう) 」の肥育もされており、毎年、優秀な成績を収めているとのことで、学生のみなさんにその秘訣をお伺いしました。

和牛の肥育に携わろうと思ったきっかけ

話し合いをする生徒たち
広島県立農業技術大学校|渡邉飛翔さん・土居美月さん・平田喜幹さん
原田勉実さん・西岡沙菜さん・中部雅斗さん

今回、お話を伺ったのは、農業技術大学校 畜産課程 肉用牛コース1・2年生の皆さんです。まずは、畜産を学ぼうと思ったきっかけについてお尋ねしました。

自然や動物と触れあう中で

中学生の頃に経験した農業体験をきっかけに、都会では味わえない「自然と触れあうことの楽しさを知った」とお話してくださいました。また、神石高原町にある油木高校出身の学生さんや実家が農業を営んでいる学生さんも多く、そういった環境の中で畜産に対する興味が芽生えたそうです。

成長すればするほど、可愛い

中には高校3年生のときに、自分たちで育てた子牛に対して100万円の市場価格がついた経験を持つ学生さんも。その経験から畜産の道へ進むことを決めたそうですが「子牛が生まれたときはもちろんですが、成長するにつれてどんどん可愛くなっていきます!」という言葉には、畜産農家としての素質を感じました。

意見を述べる生徒さん

また、肥育の面白さは「正解がないこと」「愛情をかけた分だけよく育ってくれること」にあると、皆さんが愛情をかけて一生懸命に取り組む日々の様子が伝わってきました。

愛情たっぷり!肥育へのこだわり

牛舎にいる牛

毎日、早朝・朝・昼・夕・夜の5回に分けて牛の体調を見て回っているそうです。そうすると、入学したばかりのころは分からなかった小さな変化も、次第に分かるようになってくるのだとか。心強い!そんな皆さんが普段から行っている肥育のこだわりについて伺いました。

丁寧なブラッシング

とにかく、大事なのがブラッシング。ブラッシングを通してストレスを軽減させることが、肉の美味しさに良い影響を与えることは、枝肉の成績からも実証されています。

コツは、牛が自分では届かない部分 (首や背中など) まで手をかけてあげること。また、名前を呼んで話しかけるなどのコミュニケーションをとることも心掛けているそうです。

ブラッシングされる牛

ストレスフリーな環境で、のびのび育てる

適度な運動のために毎朝1時間程度、敷地内のパドックに牛を放しているそうです。少しでも牛のストレスを減らしてのびのびと育てることを心掛けられています。また、牛舎を清潔に保つための掃除や消毒も定期的に行っているそうです。

牛舎

バランスの良い配合飼料

肥育なので「太らせること」がミッション。ただし、穀物中心の配合飼料を食べさせるだけでは皮下脂肪が増えたり、病気になってしまうため、藁や牧草などの粗飼料と配合飼料のバランスをしっかり考えているそうです。飼料計算を基に先生と相談しながら、成長の段階と当日の体調を考慮して、牛一頭一頭に対応されているとのことでした。

今、チャレンジしていること

意見を述べる生徒達

今年、農業技術大学校から出荷した比婆牛2頭の枝肉は、それぞれA5・A3ランクと優秀な成績を収められています。この結果を踏まえて、今、チャレンジしていることを伺いました。

来年こそ、どちらもA5ランクを獲得!

農業技術大学校では、農大祭の牛肉販売会のために毎年2頭を出荷しています。昨年の出荷牛はどちらもA5ランクだったのですが、今年は1頭がA3ランクだったということで「どこで違いが出てしまったのか」検証の真っ最中。

分析をまとめた表

血統の違いも理由の一つと考えているそうですが、脂肪交雑を示すBMSNo. (サシの入り方) の数値に差があったため、その原因を模索中なのだそうです。「来年は、絶対にどちらもA5ランクを獲得する!」と、意気込みたっぷりでした。

3か月前倒しの出荷をどうカバーできるか

A5ランク獲得を狙っていく上で、ひとつ課題があるそうです。それが、出荷月齢。通常は28か月齢で出荷するところを、来年の農大祭で出荷予定の牛は時期的に「25か月齢」になってしまうため、3か月前倒しに。

意見を述べる男子生徒

肥育で一番大切な「どうやって太らせていくか」の戦略を練っているそうですが、その秘策として「肥育期間の前期と後期で分けている“飼料の切り替えタイミング”を調整する」ことで、3か月分をカバーしたいと考えているそうです。

血中ビタミンA濃度を調整する

適度なサシを入れるため、月に1度、肥育牛の採血を行って「血中のビタミンAの濃度測定」もされているそうです。データの結果を基に、適切なコントロールがされているかを観察しながら、日々の肥育に活かすことにも取り組まれていました。

農業のICT化にチャレンジ!

さらに新しい試みとして、今年度から肥育牛をモニタリングできる「U-motion 」を導入されています。牛の首にタグを付けることで、活動量、採食量、採食時間、発情状態、起立不能などがアプリ上で分かるそうです。すごい!

モニタリングアプリ

「今後の農業を担う学生がIT機器に対して違和感なく接することができ、そして上手く活用できるような教育をめざしていきたい」と、先生からもメッセージをいただきました。

インタビューを終えて

自分の将来をしっかり見据えて、全力で取り組む学生の皆さんの姿勢や言葉がとても印象的でした。そして何より、自分たちが育てている牛の性格をよく理解され、愛情たっぷりなコミュニケーションがあるからこその、実績なんだと思います。

農大祭の様子

11月の農大祭では、出荷した比婆牛を学生さん自ら販売されていました。もしかすると、皆さんの中から未来の比婆牛肥育を担う農家さんが誕生するかもしれないですね。これからのご活躍を応援しています!