徹底解剖!ひろしまラボ ロゴ
文字サイズ 拡大 標準
COと書かれたブロックをつまむ

二酸化炭素が資源に変わる!?カーボンリサイクル技術続々!

ひろしまを学ぶひろしま自慢 |

日本は、2020年10月に「2050年カーボンニュートラル」を目指すことを宣言しました。

カーボンニュートラルとは、「CO2等の温室効果ガスの排出量と吸収量の均衡を保つこと」。

人間の生産活動などによって排出されるCO2等の温室効果ガスと、森林などによって吸収される量および、技術によって除去できる量の合計の差し引きをゼロにする考え方です。

その中でも、排出されるCO2を“資源”と捉え、素材や燃料などに再利用することで、大気中へのCO2排出を抑える、「カーボンリサイクル」が注目されています。

カーボンニュートラル社会実現に向けて、CO2をリサイクル!

カーボンリサイクルのコンセプト

出典:『CO2削減の夢の技術!進む「カーボンリサイクル」の開発・実装』 (資源エネルギー庁)

温室効果ガスによってもたらされる気候変動の影響が深刻化する中、いかにその排出量をコントロールし、環境負荷を抑えていくかが、重要な課題となっています。

カーボンニュートラルを実現するには、効率よくエネルギーを利用したり、植林をはじめとした森林管理を行うなど、様々なやり方があります。

広島県では、2050年までにカーボンリサイクルを本県産業の柱の一つとして育成するべく、産学官連携や研究活動の集積に向けた取り組みを、令和3年度から進めています。

その一つとして補助金制度を設け、それを活用した、研究者や企業の取り組みの成果が続々と報告されています。「こんなところにCO2が使えるなんて!」と驚くかもしれません。

早速どんなところに活用されているかご紹介します!

このおしゃれなベンチに秘密が・・・!

ひろしまゲートパークのベンチ

まずはこちらのベンチ。「ひろしまゲートパーク」の大屋根ひろばにある、このコンクリートベンチに、カーボンリサイクル技術が活用されています。

このコンクリート、実は、主に2つの材料をリサイクルして作られている、環境にやさしい製品なんです!

1つ目は、製鉄の課程で生じる産業副産物である高炉スラグ。通常のコンクリートでは、原料のセメントを製造するときにCO2がたくさん排出されてしまいますが、その代わりに高炉スラグを使用することで、排出量を減らすことができます。

2つ目は、紙の製造に由来する炭酸カルシウム。紙の原料である樹木が吸収・固定したCO2の一部をカルシウムと反応させ、「炭酸カルシウム (CaCO3) 」を生成しCO2を資源化しています。コンクリートに混ぜることで、CO2を長期間「固定」し、大気中に放出されないようにしています。

コンクリートベンチ

この製造方法により、製造時のCO2排出量を低減しつつ、1立方メートルあたり17~103kgのCO2を原料として内部に閉じ込めてしまうコンクリートの開発に成功!

設置されたコンクリートベンチ48基で約1tのCO2を固定、これは約113 本分の杉が1年間に吸収する量に相当するそうです。また、強度も通常のコンクリートに負けず劣らずで安心!

何気なく腰掛けたベンチが、実はCO2をたくさん利用して作られていたなんて、驚きですよね!

CO2を削減して、金を回収!?

金のきらめき

温泉に棲む小さな藻の一種、「ガルディエリア」をご存じですか?

ただの苔のようですが、実は面白い特徴を持っています。なんと、CO2濃度が極端に高い場所でも生きることができるんです!

この性質に注目し、技術開発を行った結果、大気と比べ200倍のCO2が含まれるボイラー排ガスを直接送り込んだ、ガルディエリアの光合成培養を、高効率で行うことを可能にしました。この技術を使えば、工場から毎日排出されるCO2の量を減らすことができます。

そして、実はこのガルディエリアは、金やパラジウム、プラチナといった有価金属を吸着する性質も持っている優れ者!

ガルディエリアを貴金属吸着材として利用することで、将来的にはCO2の削減だけではなく、工場排水中のレアメタルの回収や水質改善も同時に行うことを目指しているんだとか。

スイスの下水処理場64箇所では、約3億4000万円相当の金や銀が含有されていたという話もあり、実現すればまさに一石二鳥の技術だけに、期待が高まりますね!

イチゴの収穫量が増やせる!?

収穫時期の赤いイチゴ

イチゴの生育にも、CO2が大事!甘くて大きなイチゴをたくさん作るには、しっかり光合成をして成長させる必要があります。

大気中のCO2を分離濃縮する技術を活用し、イチゴを大気の2倍程度のCO2濃度の環境下におくことで、生育を促進して収穫量の向上を図る実験を進めています。こうすることで、収穫量が1.3~1.4倍になる効果が期待できるとのこと。

また、イチゴは本来は春が旬ですが、クリスマスにもケーキの上に乗ったイチゴをたくさん見かけますよね。冬季に収穫するために、現在は化石燃料を燃やしてビニールハウス内を加温し、結果としてCO2を多く発生させてしまっています。

しかし、この技術が確立すれば、イチゴの生産と供給におけるCO2総排出量を低減させ、環境にやさしい栽培を目指すことができるんです!

イチゴといえば、日本で最も人気のあるフルーツの一つで、各地で広く栽培されています。この技術が広がれば、環境にも配慮しながら、イチゴをたくさん食べられる未来が来るかもしれませんね!

さらなるカーボンリサイクル技術の活用へ

実験中の手元

いかがでしたでしょうか。これ全部、広島県内で研究開発を進めている技術です。

温暖化の原因になるCO2が、新たに資源として生まれ変わり、生活に欠かせない資材や、金属も回収可能な排ガスを利用した藻類の培養や、イチゴの収穫量増加に役立てられてどんどん消費されれば、カーボンニュートラル実現に大きく近づくはずです。

今後も広島県で研究開発される技術に目が離せませんね!

風車の画像

カーボンニュートラル実現のカギ!カーボンリサイクルが注目されるワケ

世界中で取り組まれている地球温暖化対策。温室効果ガス削減のためGX(グリーントランスフォーメーション)等の取組が始まって...

関連記事