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松原神楽団 鐘馗

200年の歴史を今に伝える。松原神楽団と「鐘馗」

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今年も「ひろしま神楽定期公演」の時期がやってきました。昨年、はじめて鑑賞して以来その魅力にどっぷりハマってしまった私たちラボ研究員。2022年度の初鑑賞にさっそく行ってきました。

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今回は、定期公演に出演された松原神楽団の団長・斉藤さんにインタビューを行い、神楽への想いをたっぷりと伺いましたので、演目のみどころと合わせてレポートします。

松原神楽団の団長へインタビュー

松原神楽団 (まつばらかぐらだん) は、広島県の北西部、安芸太田町松原地区で明治時代前より永年にわたって神楽の伝統を守っている広島神楽団の一つです。旧舞を中心に地元の奉納神楽をはじめ、イベントなどにも多数出演しながら伝統神楽を継承されています。

神楽団は、僕たちにとってスターでした

松原神楽団 斉藤団長

松原神楽団団長:斉藤直将さん

斉藤さんが神楽をはじめたきっかけは?

私がはじめて神楽を演じたのは、小学校4年生のときです。「こども神楽」というのが地域にありました。私が生まれるもっと前にも一時期やっていたようですが、なくなってしまっていて。その「こども神楽」が、4年生のときに復活したんです。神楽競演大会に特別出演したのですが、当時、全校生徒18人くらいの小さな小学校だったというのもあって、全員総出演。18人といっても舞の役には限りがあるので、通常一人で奏でる手打鉦 (てうちかね) を7~8人でやりましたね。

その後、高校生のときに一度だけ文化祭の助っ人として神楽を演じましたがそれっきりで、社会人になって地元に戻ったときに神楽団からお誘いいただいて入団、今に至っています。

お誘いを受けたときは、どんな気持ちでしたか?

嫌ではなかったですね。子供のころ、先輩たちが秋祭りの奉納で舞っている姿をずっと見ていましたし、子供にとってはスターのような存在でしたので。今はみんなおじいちゃんになっていますが (笑)。いつか自分もスターになりたい!という気持ちはあったかもしれません。

旧舞を自分たちのスタイルで、守り継ぎたい

松原神楽団の歴史はどれくらいありますか?

書物が残っているわけではないので正確なことは分かりませんが、明治以前より200年以上つづいていると言われています。神社の御札をみると「天保」という表記があるので、おそらくそれくらいだろうと。

松原神楽団 斉藤団長

当時は地域外へ出て舞うことはほとんどなく、地域に根付いた文化として少しずつ形が変化しながらも、人から人へ伝承されてきました。今でこそ動画を撮って残すことができるけど、当時は口上です。記した人が間違いを書いていれば、話し手の内容とは違うものが残ることになります。

競演大会に出ると、大学の先生や審査員から「ここの言い回しは違うんじゃないか?」と、ご指摘を受けることもありますが、何が本当に正しいのか、実際のところは分からないんですよね。

みなさんが演目を受け継ぐときに、参考にされるものはありますか?

私が入団したときは、ある程度内容がまとめられた本がありました。内容については色んな先生からのご指摘を受けながらも、修正はせずにそのまま持っています。競演大会に出演するときには「ここだけは直しておこうか」ということもありますが、でもどうしても変えられない部分もあったり。そういうときは点数は下がってしまいますが、それでいいんじゃないかと、私は思います。自分たちのスタイルで旧舞を守り継いでいきたいです。

そのままの形で残らなくても、思い出してくれたら

これから神楽に触れる若い世代にメッセージをお願いします。

後継者が少なくなった今、私たちもいつ神楽団をたたんでしまうか分かりません。今できる取り組みの一つとして、奉納神楽を見にきた子供たちに手作りに手物 (小道具) をプレゼントしています。「松原神楽団からもらったよ!」と、口々に広がって、少しでも多く人の心に残ってくれたらいいなと思います。

松原神楽団 鐘馗

もちろん、「神楽」として伝統が残ることが一番いいのですが、これだけたくさんの神楽団があれば、好みも人それぞれです。子供たちが大人になって、私たち松原神楽団の神楽を見た記憶が少しでも残っていれば、まだあるのかな?ちょっと見に行ってみようかな?と、思い出してくれると思うんです。神楽がそのままの形で残らなくても、そうやって歴史に息づいていくと嬉しいですね。

松原神楽団の十八番「鐘馗」を鑑賞

松原神楽団 鐘馗

広島神楽の旧舞を永年受け継いできた松原神楽団の人気演目「鐘馗 (しょうき)」。その見どころをご紹介していきます。

ひろしま神楽定期公演 メインビジュアル

ひろしま神楽定期公演 ひろしまかぐらていきこうえん

広島神楽の魅力を広島市中心部から多方面へ発信すべく、水曜日の夜に広島県民文化センターで定期公演として開催している神楽公演

「鐘馗」のあらすじ

鐘馗は、中国や日本に伝わる魔除けの神様です。中国唐の時代、終南山のほとりに住んでいた鐘馗という青年が、官吏国家試験に落第して憤死しましたが、死後及第の栄誉を受けます。感激してその霊が朝廷の守護神となり、いつしか疫病祓いの神として祀られるようになりました。

神楽では、鐘馗は素戔嗚尊 (すさのおのみこと) の化身です。民の命を絶やそうと企む異国の疫病の悪鬼が鐘馗大神 (しょうきだいしん) を名乗って現れますが、素戔嗚尊が退治するという物語になっています。素戔嗚尊が左手に持つ丸い輪は、悪病の祓いに用いるアシの輪 (芽の輪)。これで姿なき鬼神をとらえ、戦いの末、右手の剣で征伐します。

「鐘馗」の登場人物

鐘馗に登場するのは、二人。素戔嗚尊と疫病神(えきびょうしん)です。

鐘馗のココが見どころ!

華やかで煌びやかな衣装

松原神楽団 「鐘馗」の素戔嗚尊

神楽のみどころは、何と言っても観客を魅了する豪華な衣装です。神、鬼、それぞれに丁寧な刺繍が施されていますが、その分、重さもずっしり。鐘馗の衣装は特に重く、昔ながらの伝統ある衣装ということでお値段もそれなりに…。この演目は演者が二人しかいないため、みんなの想いもずっしりと乗っかっています。

代々受け継がれてきた面の表情

松原神楽団 「鐘馗」の疫病神

面は昔から受け継いできたものがほとんどです。面士によって色合いが多少変わることもありますが、基本のデザインは代々継承されたものなんですよ。

ゆったりとしたテンポのなかでも迫力のある演技

松原神楽団 「鐘馗」の疫病神

旧舞ということで序盤はゆったりとしたテンポで進んでいきますが、その中にも迫力と力強さのある演技に注目です。

松原神楽団 「鐘馗」のクライマックス

素戔嗚尊と疫病神が戦うシーンでは楽の調子もどんどん上がり、衣装も瞬時に変化しながらクライマックスを迎えます。

伝統ある広島神楽を継承していきましょう

広島県は全国有数の神楽どころです。県内では現在も300近い神楽団が活動しており、各地域での奉納神楽をはじめ、定期公演や共演 (競演) も開催されています。広島が誇る伝統芸能がこれからもつづいていくように、その魅力を一緒に発信しながら継承していきたいですね。