
名勝、縮景園トイレ新装。設計者はなんと学生!
ひろしま自慢 |
2020年に築庭400年を迎えた縮景園。市街地の一角に佇む回遊式庭園として多くの方に親しまれています。その縮景園のトイレが新装されたのをご存知ですか?設計を手掛けたのは、なんと学生さん。「ひろしま建築学生チャレンジコンペ」の優秀作品が実空間として誕生しました。どんなテーマで?デザインは?どうやって実現したの?気になる“トイレ”を大公開いたします。
ただのトイレではない。国の名勝、縮景園のトイレである。

「ひろしま建築学生チャレンジコンペ」は、全国の建築学生を対象に魅力ある建築物の創造に向けた人材育成の一環として行う広島県主催の公共建築物設計コンペです。7回目を迎えた今回の対象建築物は国の名勝、縮景園の事務所棟東トイレ。既存トイレを「なるほど、ここも縮景園だ」と感じてもらえるように改築することがテーマでした。
応募作品63案の中から最優秀作品に選ばれたのがこちらです。
最優秀作品|木陰葺の東屋 (京都工芸繊維大学大学院)

日本人の陰影に対する感性をコンセプトにした作品は、この4つをキーワードに提案されています。
- 縮景園の豊かな陰影
- 木陰を眺める東屋としてのトイレ
- 人々のふるまいを包む大屋根
- 自然環境がもてなす現代の東屋
表と裏の使い分けや屋根に映る木陰の演出という「提案力」と、動画を制作して最終審査に挑むという「プレゼンテーション力」が評価されて最優秀賞に選ばれています。なるほど、よく考えられていますね。
検討を重ねた本気のチーム

このチャレンジコンペの最大の特徴はアイデア提案に留まらず、実現できる点です。最優秀作品は専門家の指導の下、実施設計から工事監修、竣工まで行うためにアイデア提案を本気のチームが模型やサンプルで検討を重ね、予算と実現性を考慮しながら具現化されていきました。
いざ、完成でござる。

切妻屋根が印象的なトイレが完成。屋根を支える構造体にトイレを配置することによって、来園者と職員の導線を分けるというプランニングになっています。

屋根の上部は光を通す素材になっていますので、開放感のある空間が誕生しました。

中から屋根を見上げると木々の影が落ち、なんとも幻想的。

光と風が通りぬける室内空間は自然を感じることができ、「なるほど、ここも縮景園」でした。

光に浮かぶ夜のトイレも魅力です。縮景園では、春の夜桜ライトアップや秋のもみじまつりなど夜の庭園を楽しめるイベントが定期的に開催されていますので、夜の縮景園もぜひお楽しみください。
広島には地に埋まっている力がある。
今回、審査員を務めてくださったのは、手塚貴晴さんと由比さん。OECD (経済協力開発機構) とUNESCOにより世界で最も優れた学校に選ばれた「ふじようちえん」「キョロロ」をはじめ、子供のための空間設計を多く手がけられています。建築観点から教育への思いも深いお二人からチャレンジコンペを終えた学生への総評が届きました。
“広島はすごいところです。日本は何か所かだけ建築家をたくさん生んでいるところがあって、この近辺だと広島は圧倒的に強いんです。広島には地に埋まっている力があると思います。残念ながら最優秀は京都に持っていかれてしまったけれど、こういうことが起きるのはすごいこと。広島で学んでいる学生たちは、素晴らしい場所にいることをもう一度思い出してもらって、次のコンペにまた応募してもらいたいと思います。みなさん、いい建築家になってください。”
魅力ある建築物が県内に持続的に創造されていく環境づくりに向け、クリエイティブな人材の育成に取り組む広島県から、チャレンジコンペを通して未来の建築家が生まれることに期待したいです。