障害を知り、共に生きる 支え合いの輪広げる「あいサポート」
ひろしまを学ぶ |
障害のある人が困っている場面に出合ったとき、「どうやって声を掛けたらいいのかな」「どう手助けをしたらいいのかな」と思うことはありませんか。
まずは、障害について知ってください。知っているからこそ理解でき、困っていることも分かってきます。それが、「あいサポート運動」の始まりです。
目次
あいサポート運動とは?
あいサポート運動は、障害の特性を理解し、日常生活の中で困っていることがあれば、「ちょっとした手助け」や「配慮」を実践して、誰もが暮らしやすい共生社会をつくろうという取組です。2009年に鳥取県で始まり、現在は中国5県をはじめとしたさまざまな自治体に広がっています。
障害のある人が困っていることや、配慮の方法などを知り、障害のある人が困っているのを見かけたときに、ちょっとした配慮を実践してくださる方を、「あいサポーター」と呼びます。
県が主催する「あいサポート研修」や、企業・学校・地域などの希望に応じて講師を派遣する「出前講座」に参加していただいた人には、2つのハートが重なったデザインの「あいサポートバッジ」をお渡ししています。バッジを身に付けることで、障害のある人が声を掛けやすいと思える環境づくりをしています。
困っている人を見かけたら「何かお手伝いしましょうか?」と声を掛けたり、障害の特性を知り、相手に合わせた配慮をしたり。できることから少しずつ始めることが大切です。
「あいサポート運動」や「あいサポーター」の普及などに積極的に取り組む企業や団体は、「あいサポート運動企業・団体」として認定を受けています。社員向けの研修を行ったり、バリアフリーへの取組を強化したりして、組織ぐるみで応援する輪も広がっています。
わたしたちにもできること
障害は多種多様であり、同じ障害でも症状は人によって違います。外見だけでは分からないこともあるため、周りから理解されずに苦しんでいる人もいます。もし、障害のある人が困っていそうなときは、どんな手助けが必要か、声をかけてたずねましょう。
肢体不自由について
病気や事故によって、手、足、体幹(胴体)などの機能に障害があり、歩行など日常生活が困難になった状態をいいます。
多くの人が、車椅子や歩行器、義手・義足など、自分に合った補助具を使いこなして生活しています。見た目だけでは、障害があると分からない人もいます。
- 困っていること
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- 段差や狭い道、障害物があると移動することが難しくなります。また、高いところや床にあるものがとりにくいこともあります。
- 言葉を発しにくかったり、体が自分の思いとは関係なく動いてしまったり、自分の意思を伝えにくい人もいます。
- 知ってほしいこと
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- 車いすなどを使っている人と話すときには、少しかがんで、目線の高さを合わせましょう。立った姿勢のままだと、車いすの方は見上げなければいけないので、疲れたり、威圧感を感じたりすることがあります。
- 病気や事故で言葉がうまく話せない方もいます。障害があるからといって、子ども扱いせず、年齢相応な対応をすることが大切です。
- スムーズに話すことが難しかったり、顔や手足が自分の思いとは関係なく動いたりしてしまい、自分の意思を伝えにくい方もいます。聞き取りにくい場合は、分かったふりをせず、内容を確認しましょう
聴覚障害について
音や言葉が聞き取りにくい、または全く聞こえない状態です。「手話言語」や「音声・文字」などの言語を使用し、様々なコミュニケーション方法で会話します。
- 困っていること
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- 外見からは分かりにくいため、「無視された」と誤解されることがあります。特に、言葉を覚えた後で聞こえなくなった難聴や中途失聴者の人の場合は話せることが多く、「話せるから聞こえるはず」と誤解されることもあります。
- 音によって周囲の状況を判断することができず、放送や呼び出しに気が付かなかったり、危険な目にあったりすることがあります。
- 知ってほしいこと
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- 手話、筆談、要約筆記、相手の口の動きを読み取る口話などのコミュニケーション方法があります。話をするときは、会話の方法を確認し、その人に合わせたコミュニケーション方法をとりましょう。
- 連絡するときは、メールやFAX、聞こえる人と聞こえない人を電話でつなぐ電話リレーサービスや文字を入力できるスマートフォンアプリなど、視覚を通じた伝達方法を考えましょう。
- バスや電車、お店や公共施設の施設内放送が聞こえず、困ることがあります。音声でのお知らせだけでなく、文字などでも知らせてください。
視覚障害について
視覚障害は、「全く見えない」というイメージが強いかもしれませんが、「見えにくい」という状態の人も多く、症状は多様です。
見えづらい場合の中には、細部がよく分からなかったり、光がまぶしかったり、特定の色が分かりにくいなどの症状があります。白杖 (はくじょう) と呼ばれる杖を使う方や、盲導犬を同伴している人などもいます。
- 困っていること
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- 慣れていない場所では、1人で移動することが困難です。自分の居場所や周りの状況など、説明がないと分からないときがあります。
- 点字ブロックを頼りに歩いているので、物や自転車が置かれていると困ります。知らずにぶつかると、白杖が折れることもあります。
- 知ってほしいこと
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- 耳からの情報や手で触れることで情報を得ています。
- 進行方向に困っているように見えたり、白杖を利用していて困っているように見えたら、声を掛けましょう。突然、体に触れられると驚くので、できるだけ前方から話しかけましょう。
- 「あれ」などの指示語や「赤い看板」などで伝えるのではなく、「30センチ右」「時計で3時の方向」など具体的に説明しましょう。
外見から分かりにくい障害について
上にあげた障害のほかにも、知的障害、発達障害、精神障害、内部障害、難病、高次脳機能障害など、障害の現れ方によっては、見た目だけでは障害があることが分からない場合もあります。
- 知ってほしいこと
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- 障害には、さまざまや特性や困りごとがあり、同じ障害名でも症状や困りごとは人それぞれです。複数の障害を一緒に持っている場合もあります。
- 目が悪い人が眼鏡をかけるように、不自由さを補う道具や援助があれば、活躍できることがたくさんあります。
- 「障害があるから」と決めつけるのではなく、その人を見て接してください。
- 外見からは分からなくても、援助や配慮を必要としている人のためのマークに「ヘルプマーク」があります。ヘルプマークを見かけたら、電車内で席をゆずる、困っているようであれば声をかけるなど、必要なサポートをお願いします。
理解を深める研修 あいサポーターになるには?
あいサポーターは、障害のある方が困っているときなどに、ちょっとした手助けをする意欲のある方であれば、誰でもなることができます。あいサポーターになるためには、研修などに参加します。研修は広島県内で開かれ、あいサポート運動や障害について学べます。
どんな研修?
広島文化学園短期大学 (広島市安佐南区) では、学生向けの研修会を定期的に開いています。
例えば、2026年1月に行われた視覚障害への理解を深めるための講座では、「白い杖SOSシグナルをひろめる会広島」の代表で、あいサポーターでもある森井豊さんたち4人が講師を務めました。事故や病気などで障害になった人が増えている現状や社会全体での理解と協力の必要性を伝えました。
まず、視覚障害者が外出時に困った際に出す「SOSシグナル」について紹介。白杖 (はくじょう)を頭上約50センチに掲げるポーズで、「助けてほしい」という意思表示です。サインに気付いた時は、「お手伝いしましょうか?」と声を掛けてほしいと訴えました。
視覚障害の体験もありました。学生は2人1組となり、アイマスクを交代で着用。おもちゃの食べ物を箸で移動させたり、点字ブロックを置いて、段差や狭い通路を通ったり。白杖を持って真っすぐ歩く体験では、わずか数歩で進行方向がずれてしまい、線路や車道へ進入してしまう危険があることを実感しました。
森井さんは「困っている様子を見かけたら、勇気を持って声をかけてほしい。その一言が大きな助けになります」と締めくくりました。受講者には研修を終えたあいサポーターの証として、あいサポートバッジが渡されました。
認め合い 歩み寄る 森井さんが目指す社会は
日常生活で周囲に知ってほしい「サポートの心得」について、森井豊さんに聞きました。
どのようなことを広めたいですか。
視覚障害者の命を守るため、白い杖を頭上に掲げる「SOSシグナル」を地域の共通認識にしたいです。ほかにも「クロックポジション」。時計の文字盤に見立てて「3時の方向にあります」などと伝えてもらうと分かりやすいです。スムーズに日常動作ができないことがありますが温かく見守っていただけると助かります。
サポートをする上で大切なことは何ですか。
「困っていてもどう助ければいいか分からない」という声をよく聞きます。勇気がいるかもしれませんが「何かお手伝いしましょうか?」と一声掛けてくれたらありがたいです。「完璧なサポートをしなければ」と難しく考えるのではなく、できる範囲で構いません。
以前、広島駅までの道が分からず困っていた時、通りがかりの方が「近くのコンビニまでなら」と案内してくれました。コンビニに着くと、別の方が「ここから私が案内します」と声を掛けてくれたのです。誰かの勇気が次の人へとつながる「優しさのリレー」が、本当に嬉しかったですね。
どんな社会を目指していますか。
障害を知ることは、お互いが楽しく生活するための第一歩です。視覚障害だけでなく、それぞれの特性を知ることで、自然な触れ合いと理解が生まれます。お互いが理解し合い、発信し続けることが、より良い地域社会を作っていけると思っています。
まずは知ることから 助け合いの心を広げよう
誰もが暮らしやすい地域をつくっていくためには、お互いの理解とコミュニケーションが欠かせません。まずは、それぞれの障害の特性や不自由さについて「知る」ことが大切です。そうすれば、どのような手助けが必要なのかが自然に見えてきます。
障害を知ることは、優しさのバトンをつなげること。「あいサポーター」の輪を、みんなで広げていきましょう。
