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手術の様子

膝の痛み 広がる治療法 県立安芸津病院を紹介

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「膝に痛みがある」「正座ができない」―。その症状、「変形性膝関節症」かもしれません。悪化すれば、歩くことが困難になる一方、治療法も進んでいます。

県立安芸津病院 (東広島市) では、県内でも珍しい「人工関節外来」を設置し、手厚くサポートしています。県内外から患者さんが訪れ、住民にも愛される院長の存在も。病院の強みや、どのような治療があるのか聞いてみました。

変形性膝関節症とは?高齢者の6割以上?

変形性膝関節症の説明をする様子

膝関節の内側と外側にある軟骨が摩耗し、骨同士がこすれたり膝関節が変形したりして痛みが出ます。初期は、立ち上がりや歩き始めに痛みを感じる人が多いです。トイレや入浴、階段の上り下りや正座など日常生活の動作にも支障が出ることがあります。

高齢者の6割以上が罹患していると言われ、今後はさらに増えるといいます。肩、肘、手、背骨、股関節、足関節など全身の関節で発症しますが、膝関節がとくに多いです。 原因は加齢や過度な肥満、筋力の衰え、膝に負荷がかかる重労働のほか、遺伝子の問題など。誰でもなりうる疾患です。

安芸津病院の「人工関節外来」

安芸津病院のナースステーション

治療法や手術の選択肢はどんどん広がっています。県立安芸津病院の「人工関節外来」では、どんなサポートを受けられるのか、ご紹介します。

どのような診療科?

患者さんの足の状態を確認する様子

安芸津病院では、手術を受けた人のフォローアップに特化した「人工関節外来」を設けています。エックス線検査などで、骨の変形の程度や人工関節の緩みなど、多岐にわたるチェックポイントをじっくり確認するためです。不具合があっても、この外来で早期に見つかれば軽い治療で済むこともあります。

退院後は定期的に来院してもらい、リハビリも含めて長期的なケアを継続。手術を担当した医師が診るので、患者さんのささいな変化にも気付きやすいといいます。退院後のサポート体制を整え、紹介状がなくても受診できます。

治療の流れ

治療の流れを説明する様子

病院では、痛みの場所や関節の可動範囲を調べ、エックス線やMRIを用いた画像診断を行います。

症状が軽い場合、痛み止めや湿布のほか、関節内注射 (ヒアルロン酸) をして痛みを抑えます。それでも良くならなければ、最終的には人工関節への置換手術や関節での体重のかかり方を変える「骨切り術」などの手術を検討します。症状や希望に合わせ、医師と相談して治療法を選びましょう。

手術技術や装置の進歩

進歩している手術器具

安芸津病院では、人工関節置換術件数は68件 (令和6年度実績) という実績があります。手術の進歩が目覚ましく、人工関節も優れた材質が登場し、選択肢が広がりました。

以前は、膝の内側と外側の両方の軟骨を人工関節に置き換える「全置換術」が一般的でした。片方が正常な場合も切除していました。

近年では、片側の軟骨のみが損傷している場合に、その部分だけを置き換える「単顆置換術」が行われるようになっています。これにより、悪くない側を温存し、患者さんの体への負担を軽減できるようになりました。

人工関節の耐用年数が伸び、20年以上持つようになりました。これにより、若い世代も手術を受けるケースが増えています。多種多様な人工関節も開発されています。

県外から患者さんも 後藤院長

後藤院長

安芸津病院には、県内外から多くの患者さんに頼られる院長がいます。変形性膝関節症治療を専門とする後藤俊彦院長。ユーモアあふれる人柄が魅力的です。

治療方針を教えてください。

「すべての始まりは外来にある」と考えています。患者さんが言いにくいことを打ち明けに来る場であるからこそ、真摯に向き合う姿勢を徹底しています。

最も大事にしているのは触診です。圧痛の有無、関節の曲がりや可動域が保たれているかなど、患者さん自身から得られる情報を的確に捉えます。その上で、エックス線やMRIの結果を照らし合わせて診断します。

確実な手術・診断をするためには。

手術には、平常心で向かい、必ず振り返りをして改善点はなかったかを考えます。知識のアップデートも欠かせません。学会活動に積極的に参加し、発表の準備に1ヶ月以上かけ、多くの文献を読み込むことで、学びを深めます。他の先生たちの最新の知識を得て、学ぶ姿勢を忘れません。

患者さんとの向き合い方は。

機嫌よく笑顔で接すること。ゆっくりと話し、怖い言い方をしないよう意識しています。模型などを使いながら分かりやすく説明しています。「異変を感じたらすぐに来院して」と呼び掛けています。小さな異常でも早めに発見できれば、早期回復、機能の維持が期待できます。

患者さんとの交流も大切にしています。病院の季節の行事に、私は趣味のギターで演奏会を開きます。親近感を深めてほしくて25年前から続けています。地域のイベントにも参加することで、「病院との距離」を近くし、安心感につながればいいなと思っています。

変形性膝関節症 予防のポイント

関節にかかる負担を減らすため、太らないことが第一です。体重が1キロ増えるだけで、立ち上がる際の膝には体重の6倍もの負荷がかかるといいます。生活習慣を見直すことが大切です。

適度な運動も心掛けましょう。筋力やバランスを取る力を維持するため、適度な運動が大事です。日頃からストレッチや軽い運動を継続すれば、発症や重症化の予防につながります。心肺機能を向上させるためにも、運動は不可欠です。

地域の健康と暮らしを支える

安芸津病院の外観

安芸津病院は、高齢化が進む地域で、「寝たきりゼロ」を掲げています。健康寿命を延ばすため、整形外科の分野はもちろん、訪問医療にも力を入れていきます。

病院の敷居を低くし、「顔の見える関係」を築くため、地域イベントへの積極的な参加のほか、専門医による公開講座を定期的に開催。安芸津病院が発案した「転倒予防体操」を各地で披露するなど、予防医療を推進しています。

2029年には、移転新築を計画。ニーズの高い夜間の救急も、他病院と連携しながら体制を強化していきます。今度も地域に根ざし、住民の健康と暮らしを支えていきます。