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広島市 中工場

アカデミー賞受賞!「ドライブ・マイ・カー」広島のロケ地めぐり

ひろしまで暮らす |

瀬戸内の海を背景に、広島が舞台となっている今年注目の映画「ドライブ・マイ・カー」。第74回カンヌ国際映画祭 (2021年) で日本映画としては史上初となる脚本賞ほか、全4冠を受賞。第94回アカデミー賞 (2022年) では作品賞、監督賞、脚色賞、国際長編映画賞の4部門にノミネートされ、広島の美しい風景が折々に登場する映画ということで、3月28日の発表をドキドキしながら待っていた方も多かったのではないでしょうか。そして、見事、国際長編映画賞受賞!おめでとうございます!「映画のあのシーンはどこだったのか?」気になりますよね。

ひろしまラボ研究員が、映画に登場した広島のロケ地をご紹介したいと思います。

「ドライブ・マイ・カー」とはどんな映画なの?

映画「ドライブ・マイ・カー」ポスター

原作は、村上春樹の短編小説!

村上春樹さんの短編小説「女のいない男たち」に収録されている「ドライブ・マイ・カー」が原作になっています。400字詰め原稿用紙80枚程のストーリーですが、映画化に際して「ドライブ・マイ・カー」を主軸にしながら、同短編小説集に収録されている2つのエピソードも投影されています。さらに、「ワーニャ伯父さん」、「ゴドーを待ちながら」という時代を超えて愛されてきた戯曲の演劇要素と、広島の歴史的文脈が立体的に重なる2時間59分の見応えある物語です。

あらすじ

主人公は、舞台俳優・演出家の家福 (かふく)。愛する妻が秘密を残したまま突然この世からいなくなってしまい喪失感に苛まれていたなか、演劇祭に演出家として招待され、開催地の広島へ向かう。そこで、ある過去をもつ寡黙な専属ドライバーの渡利と出会う。彼女が運転する愛車での時間をとおして、妻の残した秘密とそれまで目を背けていたことに、ゆっくりと向き合っていく。

キャスト

西島 秀俊 家福 悠介

三浦 透子 渡利 みさき

岡田 将生 高槻 耕史

霧島 れいか 家福 音

濱口 竜介 監督・脚本

なぜ、広島がロケ地に選ばれたの?

復興した広島のイメージ

濱口竜介監督が原作に惚れ込み、ご自身が映画化を熱望されて脚本まで手掛けられたそうです。村上さんの短編3作品と戯曲2作品が映画の中で調和していく世界に、観客はどんどん引き込まれていくのですが、その舞台に広島を選ばれた理由として、「妻を亡くした主人公が再生していく」という映画のコンセプトと「原爆という傷から復興した広島」という物語がぴったりだったとのこと。作品を通して、平和への願いが届くといいなと思います。

映画に登場する広島市のロケ地と平和の軸線

原爆死没者慰霊碑(広島平和都市記念碑)

「原爆という傷から復興した広島」を象徴する場面に、主人公の家福がドライバーの渡利と一緒に広島市環境局中工場を訪れえるシーンがあります。ガラス張りの空間とともに渡利のセリフが記憶に残っている方も多いと思いますが、復興した広島の都市計画にとって重要になっているのが「軸線」です。平和大通りと直行する線が平和記念公園へのゲートとなる資料館をくぐり、慰霊碑を抜けて原爆ドームへと真っすぐに延びるという計画になっています。

広島国際会議場 (広島市中区)

家福が演出を手掛ける広島国際演劇祭の会場として登場。地下駐車場へ向かう円形のアプローチが印象的に映し出されています。広島平和記念公園敷地内にある国際会議場は、建築家の丹下健三が1955年に設計した広島市公会堂を、1989年に建て替えた建物です。公共建築百選にも選出され (その他、広島県の建物は平和記念資料館と県庁舎が選出)、無機質でモダンな様式が登場人物の心情とのコントラストを生み出していました。

広島市環境局中工場 (広島市中区)

ドライバーの渡利が、家福にお気に入りの場所として案内する実在の清掃工場。平和記念公園前から南へ延長した軸線の先に、この敷地が広がっています。建物の2階に設けられたエコリアム (Ecology + Atrium = Ecorium) では、焼却設備の見学もできます。設計者の谷口吉生は、平和記念公園からつづく軸線を妨げないようにと吹き抜けのある通路を設けたとのこと。中工場が登場するシーンは印象的でしたね。

映画に登場した広島県内のロケ地

広島市内の他にも、映画を彩る場面に広島所縁の場所が登場します。かつて、日本の大動脈を担っていた瀬戸内海が持つ歴史、その中心として広島が担っていた役割や文化を感じることができる地域の風景が、名脇役ならぬ名背景として作品に溶け込んでいました。

御手洗町並み保存地区 (呉市豊町)

御手洗町並み保存地区

家福が広島滞在の拠点として登場する大崎下島の港町。17世紀の中頃に形成されて以来、江戸時代を経て昭和初期に至るまで、瀬戸内海交通の中継港として栄えていた地域です。大波止、石橋、高燈籠、石垣護岸、雁木等など、港町の生活上必要な土木的建造物が当時のまま現存され、1994年には重要伝統的建造物群保存地区として指定されています。

海田大橋

「広島ベイブリッジ」として親しまれている国内でも最大級の長さを誇る大橋。夜景遺産認定地にも指定されています。日没後のライトアップでは、美しい曲線が幻想的に浮かび上がり、写真スポットとしても人気です。また、海田大橋と広島高速道路を結ぶ仁保ジャンクションは、海の上に立地しているという珍しい構造です。高速道路のジャンクションマニアにはたまらない線形美を見ることができますよ。

広島高速道路公社でも詳しく紹介されています。

詳しくはこちら!

東広島芸術文化ホールくらら (東広島市西条栄町)

芸術文化鑑賞、芸術文化創造活動、生涯学習を楽しめる施設として2016年に開館。映画では、家福が演出する舞台の公演会場として登場します。

広島を舞台とした映画やドラマなどのロケーションを応援する広島フィルム・コミッション により、ドライブ・マイ・カーのロケ地をめぐるデジタルロケ地マップが作成されています。映画のシーンを思い出しながら、ぜひドライブを楽しんでみてはいかがでしょうか。広島の魅力を再発見できるかもしれませんよ。