10月31日(木)に、志々田委員が県立広島特別支援学校を訪問しました。
県立広島特別支援学校は、県内初となる養護学校(特別支援学校の旧称)として、昭和38年に設置されました。設置当初は肢体不自由の児童生徒のみを対象とした学校でしたが、平成28年度に知的障害部門が設定され、広島市のみならず、様々な市町から児童生徒が通学しています。今回は、広島特別支援学校で行われている、「農業」を中心とした取組を視察しました。
まず、大元校長先生から、学校の概要について説明を受けました。広島特別支援学校は、学校の持つ農場、「ひろとくファーム」で育てた野菜を近隣の公民館や、地域の家庭へ訪問販売を行っていますが、この取組は地域の方々や、県内外の学校の協力により成り立っているとのことです。学校だけでは分からないことや、思いつかなかったアイデアを聞く機会が多くあり、「農業」を通じて、様々な人と関われる機会ができたと教えていただきました。
また、「農業」を通じて、広島特別支援学校の生徒が地域を助けることもできました。近隣の小学校では、児童が一生懸命育てたさつまいもがうまく成長せず、楽しみにしていたいも掘り体験を中止せざるを得ない状況になっていました。そこで、「ひろとくファーム」に児童を招待し、生徒が育てたさつまいもを使っていも掘り体験をしてもらうことになりました。小学生はとても嬉しそうにいも掘りを行っていましたが、特別支援学校の生徒が小学生にいも掘りのやり方を熱心に、丁寧に伝えており、児童との交流の一つ一つが生徒にとって学びになっていると教えいていただきました。
校内では、実際に農場での作業の様子を視察することができました。人参や大根、さつまいもなど、季節の野菜が収穫の時期を迎えており、収穫した野菜の選定や、新しい野菜の作付けなど、忙しそうに生徒が動いています。生徒は野菜を収穫する時期を心待ちにしており、小さな苗の時期から一生懸命育てました。生徒自身の手で収穫することにより、自分たちの努力の成果が実感できると教えていただきました。
また、温室にも特別支援学校ならではの工夫があります。この温室は車椅子の生徒も作業がしやすいよう、車椅子の高さに合わせて設計されています。「農業」を中心として、障害の有無に関係なく、すべての人がいきいきと暮らしていくことができる仕組みを目指しているとのことです。
昨年度は、これらの取組が農業を通じて生徒が社会参画などを行う「農福連携」の好事例として、「ノウフク・アワード2023」の準グランプリ(人を耕す部門※)を受賞しました。公立学校がこの賞を受賞するのは史上初の快挙とのことです。
※農福連携を推進する当事者に光が当たる取組のうち、特に優れているもの。
農場作業以外にも、児童生徒の特性に合わせた授業が行われています。知的障害部門の小学部では、児童一人一人のお気に入りの道具を使って、絵合わせなどが行われていました。正しく絵合わせをした際には一緒に喜び、間違えてしまったときにはどこが違ったのかを話し合いながら伝えるなど、一人一人にしっかりと向き合いながら授業を行っていました。
肢体不自由の生徒に対しては、手を動かす練習として、キャラクターにジュースや食べ物などの配膳を行っていました。また、児童が出すインを見逃さず、授業の内容や問題について、児童がどう考えているのかを一つずつ確認しながら授業を進めていました。目線が動いたり、手が少し動いたり、児童のサインは様々ですが、学校生活を一緒に送っていく中で、児童のサインの出し方が分かってくると教えていただきました。
視察後は、学校の取組について、志々田委員から質問がありました。学校で作られた野菜は販売まで児童生徒が行っていますが、その利益がどうなっていくのかを知ることで、児童生徒がこれから社会に参加していく上でとてもいい学習になるのではないか、という意見がありました。
大元校長先生からは、児童生徒がスーパーなどで野菜がどの程度の値段で売られているかを知ることで、自分たちの野菜がどれほどの価値なのかを知ることができる。また、売り上げの計算などを生徒自らが行うことで、自分たちの努力の成果が見える形で現れる。現状の取組ももっとよくしていくことができるかもしれない。と嬉しそうに話していただきました。