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平成28年度 第2回教育改革推進懇談会

平成28年度 第2回教育改革推進懇談会の概要 

1 懇談会の趣旨

 教育委員に現場の実情や課題,優れた取組等に関して幅広く把握していただき,教育委員会会議における審議をより活性化させるため,第一線で活躍している有識者との意見交換会を実施する。

2 日時及び場所

 平成28年9月9日(水曜日) 10時00分~11時30分
 教育委員会室

3 出席者

 広島県教育委員会委員 4人,教育長
 有識者 1人

4 テーマ

 今後の幼児教育施策について

5 主な意見の概要

〇 自分一人で生きていくのではないので,他者の気持ちをくみ取れるということが,この社会を生きていく上で一番大切である。他者の気持ちが分かることがイコール,コミュニケーションではなく,幼児期に学んでいかなくてはならないのは,相手の言うことを理解し,自分の気持ちをことばでどうやって表現するのか,ということである。そのときに必要なのが,ことばの力と考える力である。この力は両方,手に手を取って成長していくものである。

〇 就学前に,字の読み書きができないといけない,計算も少しはできないといけない,県や国の名前を覚えないといけない等と考えて,知識としていろいろなものを記憶して,その記憶したものが多いことが良いことだと思っている保護者が多いが,知識とは何のために身に付けるかといえば,使うためである。それを使って問題を解決したりするために,知識は身に付けなければいけないが,ただ記憶した知識は,必要なとき,大事な問題を解決するときにはたして使えるのだろうか。

〇 子供にはことばの意味を,ことばで教えることはできない。基本的なことばの意味を知らない子供に,例えば「うさぎ」の意味を定義することは不可能である。絵なり実物なりを見て,指をさして「うさぎ」と教える。ただ,それだけでは子供は理解できない。「うさぎ」は,もしかしたら耳のことかもしれないし,赤い目のことかもしれないし,ケージに入った動物という意味かもしれない。どこまでが「うさぎ」で,どこからが「うさぎ」ではないのか,「うさぎ」の範囲が分からないと,そのことばは使えない。

〇 色を表すことばは,もっと難しい。赤はリンゴの赤,イチゴの赤と様々なものに使われているが,同じ赤でも,見え方が異なる。しかも,リンゴの赤といったときに,赤だけを見るのではなくて,リンゴそのものを見るので,赤というのはリンゴの形とか匂いとか手触りとかと切り離して赤という概念があり,色の赤だけを教えても赤という概念は分からないし,使えるようにならない。青とか黄色とか他のことばが分かるようになって初めて,赤が分かる。いくつかの基本的な色の名前が対応付かないと,赤を使えるようにはならない。

〇 知識とは,ある一つのことを覚えただけでは使えない。知識の要素は,他の要素との関係性で,いわゆるシステムというものの中でそのことばが指す概念以外に,どういうことばがあって,それがどのように整理されているかということが分からないといけない。色のような単純なものでもそうなので,動詞の概念はもっと抽象的で複雑である。そういう知識とは,システムの中でとらえないといけない。

〇 アメリカでは盛んに経済格差と子供のことば力,その背後にある思考力の影響の調査が行われているが,スタンフォード大学の調査では,2歳の段階で,すでに発達に6か月の遅れが出ているという。2歳の時は語彙は限られているので,子供に知っているもの,例えばキャラクターとか,猫とか単純なものを見せて,「見て」と言ったときの反応の速さとか正確さを指標にしている。どれだけ早く正確にそのものを見られるか,反応できるかということは,言語を学んでいく上でとても大事である。

〇 保護者に対して,子供にどう話しかけたらいいのか,どういった環境を子供に与えればいいのかをトレーニングすることが非常に大事である。ただし,子供への質の高い語りかけというのは,ただ暗記することではない。大事なのは,質の良い十分な語りかけによって,子供が本来持つ発見する力,推論する力を育むこと。そして,子供がことばに興味を持って,ことばを使って遊びたいと思うように導いてあげることが一番大事である。あまりどうやって教えるかを考えずに,とにかく子供と会話を増やすようにすること。そのときの子供の言い間違いは,創造性の表れであることが非常に多いので,「違う」というのではなく,分かってあげて共有してあげて,会話を楽しむ。子供が楽しいと感じる状況をつくることが大切である。

〇 絵本を読むときに,対比をすることによってことばの面白さを子供と一緒に考えられると良い。例えば,「あつい」には暑い夏という使い方があり,「暑い」の反対は「寒い」である。寒い冬などと使うが,「あつい」には熱いお茶もある。熱いお茶の反対は,寒いお茶ではなくて,冷たいお茶である。親と子供が,自然と対比の関係の話ができ,ただ覚えるのではなくて,他の関係することばと意味との関係性を考えることが,とても良い。

〇 自分で工夫して自分で学んだことは,自分で使える知識になる。教え込まれたことは,今までの知識と関連付けられなければ,ただの知識の残骸で終わってしまう。常に自分で学び,自分で工夫し,想像力をはばたかせることが大事だが,それできるようになるのは,遊びである。遊びを通じて,数の理解とか協調性とか,他者の感情も理解する。このときに,能動的で集中して全力で打ち込むことができる社会的な活動環境を,大人が子供に与えてあげることが有効である。

〇 学びの場のデザインが大事である。大人も一緒に楽しく遊んで,遊びを盛り上げてあげる。それから,子供に対してすぐに正解が出ない,オープンエンドの問いを投げかけてあげて,子供が自分で思いつかないことをそっと提案して,下から支えてあげる。子供が自分で階段を上がれるようにしてあげるという役割を,大人がすることが大事である。

〇 仕事でも子育てでも,場数を踏むことは大事だが,ただ場数を踏むのではなく,学び手がどのような意識を持っているか,何を学ぼうとしているのかで,結果が大きく違ってくる。子供にも,そして親にもそのような意識を持ってほしい。

6 資料

 平成28年度第2回教育改革推進懇談会について (PDFファイル)(155KB)

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