教職員と選挙運動について
公務員は,政治活動について一定の制約を受けており,とりわけ,教員については,より厳しく政治的中立の保持が求められています。
教職員の選挙運動については,次に挙げる2つの特別の制限がなされています。
1 「教育の政治的中立の確保」の要請に基づく制限
教育基本法第14条第2項では,「法律に定める学校は,特定の政党を支持し,又はこれに反対するための政治教育その他政治的活動をしてはならない。」としています。
つまり,学校教育においては,政治的中立性を確保するために,児童生徒に対し,政治的に一方的に偏した教育を行ってはならないことを明文化しており,また,選挙運動についても,同様の制限があります。
2 「公務員の政治的中立の確保」の要請に基づく制限
全体の奉仕者たる公務員は,特定の政党や候補者のために選挙運動を行い,行政の継続性や,安定性を失し,公正であるべき行政の信頼を確保できないことがないよう制限があります。
地方公務員の政治的行為の制限については,地公法第36条の規定がありますが,公立学校教員については,教育を通じて国民全体に奉仕するというその職務と責任の特殊性(教特法§1)に基づき,その政治的行為の制限は,当分の間,国立学校の教育公務員の例によることとされており(教特法§18),国公法第102条及び人事院規則14-7で規定する政治的行為が禁止されています。
つまり,公立学校の教育公務員について制限されている政治的行為は,他の公務員の政治的行為とは異なり,また,制限の地域は勤務地域だけでなく全国に及ぶものです。
なお,これらは公務員としての身分に基づく制限であるため,勤務時間内外を問わず禁じられるとともに,年次有給休暇や休職中(組合専従を含む),育児休業等,実際職務に従事していない者であってもなんら異なる扱いを受けるものではないのです。
具体的には,たとえば,職員室においての特定政党の機関誌配布,特定候補者のポスター掲示またはビラ配布等があります。
一方,公職選挙法については,公正な選挙の確保を目的として,公務員の立候補制限,公務員の地位利用による選挙運動の禁止(公職選挙法第136条の2),教育者の地位利用による選挙運動の禁止(同法第137条)等の規定があります。
なお,公立学校教職員に禁止されている選挙運動等に関する行為の具体例としては,次のようなものがあります。
【参考】
平成11年2月23日文教地第57号文部省教育助成局長通知抜粋
公立学校教職員に禁止されている選挙運動等に関する行為の具体例
行為の例 |
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1 候補者の推薦等 (1)特定の候補者の当選を図るため,PTA等の会合の席でその候補者の推薦を決定させること。 2 投票の依頼または勧誘 (1)PTA等の会合の席上で特定の候補者へ投票するよう依頼すること。 3 署名運動 (1)特定の政党や候補者の名を挙げて,賛成または反対の署名運動をすること。 4 デモ行進 (1)特定の政党又は候補者などを支持しまたは反対するためのデモ行進のような示威運動を企て,指導し,又は援助すること。 5 新聞,雑誌,ビラ等 特定の政党や候補者などを支持し又は反対するために書かれた新聞,雑誌,ビラ等に関して,次のような行為をすること。 6 広告,ポスタ-,あいさつ状等 (1)選挙用ポスタ-をはってまわること。 7 演説等 (1)選挙運動のための個人演説会又は街頭で演説すること。 8 資金カンパ 特定の政党,候補者などを支持し若しくは反対するために資金カンパを求め,又はそのような資金カンパの計画立案に参与し,又はその資金を援助すること。 9 その他 (1)選挙運動のために放送設備(例えば校内放送設備)を使用すること。 |
作成日:平成12年8月18日