高度経済成長期に,工場排水や生活排水などにより悪化した瀬戸内海の水質環境は,これまでの規制的な措置により,危機的な状況は脱しました。
また,広島県の藻場や干潟は,沿岸域の環境変化や開発行為等により減少しており,藻場や干潟による水浄化機能の低下が懸念されています。
これまでの取り組みに加え,海域の浄化機能を高める対策が今後必要となってきます。
瀬戸内海の「再生」を目指していくにあたり,化学的指標(COD,窒素,リンなど)に加え,生物学的指標についての検討も始まっています。
このため広島県では,海域環境が生物の出現状況に与える影響を把握するため,環境指標生物(※)に注目したモニタリング調査を実施し,「海のよごれ」を評価・検討します。この調査に当っては,調査に協力していただける方を募集し,住民が主体となったモニタリング調査を実施します。
(※)環境指標生物とは 環境を計る「ものさし」として生物を調べます。ある調査地点で,どのような生き物が生息するか,生息数がどのくらいか,生息場所はどのようなところか,といったことを調査して,その生物の特徴(好む生息条件など)と照らし合わせることにより,環境を知ることができます。例えばカメノテやケガキは,水のきれいな場所を好むことから,海が汚れていないことが判ります。 |
【参考】これまでの取組み
●広島県保健環境センター
・平成 7年度 広島湾岩礁海岸の潮間帯生物調査
海岸生物による海域環境評価法の作成
・平成 8年度-10年度 県内全域の調査(海岸生物による環境評価)
・平成11年度 広島県の海岸生物モニタリング調査報告書
●広島県環境部
・平成11年度-13年度 磯の生物調査要領に基づく取組み
・平成14年度 広島県海岸・干潟生物調査マニュアル発行
・平成14年度-16年度 海洋生物等モニタリング調査(宮島)
・平成17年度 広島県海岸・干潟生物調査マニュアル改訂版発行
・平成18年度 生物調査研修会の開催
潮間帯生物〔カメノテ,イボニシ,ケガキ,ヒジキ,アナアオサなど〕
海浜植物 〔ホソバノハマアカザなど〕
漂着ごみ 〔3系:産業,生活,自然〕
基質 〔3種:砂,礫(れき),岩〕
水質データ(既存データ等を活用)
(1)廿日市市宮島町 大砂利(腰細浦海岸隣り)
(訂正)これまで「腰細浦海岸」として調査をしてきた地点は,正しくは「大砂利海岸」でした。大砂利は,腰細浦の西側に位置する隣同士の海岸です。
(2)江田島市大柿町 釣附海岸
(3)竹原市 賀茂川河口部
これまで実施してきた海岸・干潟生物調査マニュアルにより,「水の汚れ」に関係する環境指標生物が海岸や干潟に生息しているか調べて,環境指標生物の種類ごとに決められた点数を加算して,「きれいな海」であるか判定します。
また,指標生物の分布を面的に把握し,季節変化,年次変化を継続的に調べる「マッピング法(※)」による調査を実施します。
(※)マッピング法とは あらかじめ調査対象生物を設定し,ある程度の人数で面的に調査対象生物をカウントする方法で,ベルトトランセクト法に比べ,広範囲を調査することが可能である。また,あらかじめ調査対象生物を設定するため,専門知識が無くても調査を行うことが可能である。目視調査のため調査場所の環境を破壊することがない。短所として,調査人員が多くなるため,安全管理や体調管理など,調査当日に管理者の気配りが必要である。 |
(参考資料)
「広島県海岸・干潟生物調査マニュアル」
広島県海岸・干潟生物調査マニュアルによる調査,マッピング法による調査を環境保全活動を行う住民団体等に体験してもらい,継続的なモニタリングを実施するための課題を抽出し,地域住民による実行可能なモニタリングシステムを確立し,各地域の海岸において,住民の環境活動の活動メニューとして継続的に調査が行われることを目指しています。
今回の事業は,マッピング法をはじめとした海岸・干潟生物調査に関心のある方をボランティア調査員として募集します。
当面は,これまで活動実績のある「せとうち海援隊」をはじめとした地域の住民を中心に,調査への参加を呼びかけている段階で,現在は公募していませんが,一般の方の参加も大歓迎です。
個人・団体に関係なく,初めての方でも,関心がある方(団体を含む)はご連絡ください。
なお,日程や参加者の数などを調整した結果,参加していただけないことがありますので,あらかじめご了承ください。
【連絡先】
広島県環境県民局環境部環境保全課 環境評価・瀬戸内海グループ
082-513-2925(ダイヤルイン)
【調査スケジュール】(平成19年10月5日更新)
調査地点 | 平成19年度 | 平成20年度 | 平成21年度 |
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大砂利(宮島) | 夏:8月10日(金曜日) 秋:11月10日(土曜日) 冬: |
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釣附海岸(大柿) | 夏:8月1日(水曜日) 秋:10月27日(土曜日) 冬: |
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賀茂川河口(竹原) | 夏:7月31日(火曜日) 秋:10月13日(土曜日) 冬: |
県のホームページを通じて調査結果を公表します。
【参考】今回の調査事業でボランティア調査員に体験して頂く内容
○あらかじめ設定した調査対象生物(環境指標生物)を観察しながら覚えてもらいます。
指標生物以外の生物も紹介します。
(当日の調査では,指標生物の写真をプリントした下敷きを見ながら調査します。)
○マッピング法を体験してもらいます。
・汀線を20m間隔にブロック分け
・調査員が一列に並んで両腕を広げた幅(約2m)を目安に,生息する指標生物ごとの数を前に進みながらカウントする。
・設定された全てのブロックの調査終了後に,各調査員のデータを集計します。
○調査結果の概要報告と意見交換(感想含む)をします。