広島県野生生物の種の保護に関する条例
~ともに生きる仲間として,いま私たちにできること~
貴重な野生生物を絶滅から救うことは,県民みんなの未来への責任です。
ツキノワグマ
西中国山地に地域個体群として生息します。県内の生息数は120頭前後と推定され,鳥獣法でも捕獲が禁止されています。近年ブナ林帯を離れ人家周辺に出没する傾向にあります。 |
アビ類 (鳥類) [シロエリオオハム・オオハム・アビ]
瀬戸内海への渡来は主に呉市豊浜町一帯でみられますが,近年減少傾向が著しく,最近の調査では,100羽以内の確認数にとどまっています。11月~4月にかけて冬鳥として渡来しますが,シロエリオオハムが大半です。 |
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スイゲンゼニタナゴ (淡水魚類)
芦田川水系の極めて狭い範囲に生息します。二枚貝が生息し清水が豊富に流れる砂底や砂れき底の緩流域が生息の条件で,河川改修に弱い種です。個体数は極めて少なくなっています。 |
カワシンジュガイ (淡水産貝類)
帝釈峡や北広島町で確認されていますが個体数は少なくなっています。北広島町では保護増殖事業を実施しています。広島県が世界の分布の南限です。 |
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ツルマンリョウ (植物類)
南方系の常緑低木で,一見ジンチョウゲに似ていますが,赤い実をつけます。奈良県,山口県では国の天然記念物に指定されており,近年,広島県でも発見されました。県内では2カ所が知られ,植物地理学上の貴重な存在です。 |
オグラセンノウ (植物類)
湿地に生育する多年生草本で,ナデシコに似たオレンジ色の花をつけます。近畿・中国・九州に極めて稀に生育します。県内では数カ所に知られていますが,いずれも個体数は少なく貴重な種です。 |
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ヤチシャジン (植物類)
湿地に生育する多年生草本。大陸系の植物でキキョウに似た小型の花を数個つけます。愛知県,岐阜県の三河地方と岡山県,広島県の吉備高原に隔離分布します。県内では2地域に知られていますが,個体数は少ない種です。 |
ダルマガエル (両生類)
広島県では三次市吉舎町だけに生息します。吉舎町は本州の生息地の西限に当ります。吉舎町における生息数も年々減少しており,現在,保護活動が進められています。 |
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ヒメシロチョウ (昆虫類)
庄原市高野町に数カ所の生息地がありましたが,多くは開発や草原の荒廃で消滅しました。わずかに残る生息地も環境悪化により年々発生する個体数が減少しています。高野町は本州西南部における唯一の生息地です。 |
ミズニラ (植物類) [シナミズニラを含む]
水中に沈んで生息する水草で,葉は細長く(長さ15~30cm),一見イネ科の植物のように見えます。葉は根元がタマネギのよう膨れ,根元をむくと黒い胞子があります。ため池や湿地にわずかながら生育しています。 |
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ミヤジマトンボ (昆虫類)
宮島の湿地に生息しますが,地下水の減少,大潮時のゴミの流入等により,生息環境は著しく悪化し,成虫の発生数は減少が危ぐされています。国内では宮島だけに生息します。 |
中国地方のほぼ中央部に位置する広島県は,北部に1,000メートル級の山々が連なる中国山地,それに続く内陸の高原,盆地,台地,そして南部の瀬戸内海沿岸地域と島しょ部からなっています。
山や海,川や谷,平野,盆地,島など,日本の地形がすべてそろい,気候も北国のような寒さの厳しい地域から南国のような温暖な地まであり,「日本の縮図」とも呼ばれます。
このような豊かで多彩な自然環境の中で,人々は古くから自然と調和しながら,潤いとやすらぎに満ちた生活を営んできました。
広島県には北方や南方,大陸に由来する種,氷河期の生き証人ともいうべき亜高山性植物,中国山地で固有な種に分化したと考えられる種など,貴重な野生生物が数多く生息,生育しています。
しかし近年,さまざまな人間活動の影響を受け,多くの野生生物の種が絶滅し,または絶滅の恐れが生じています。
そこで広島県では県内の貴重な野生生物の種の保護を図り,絶滅を防止し,保存することにより,これを県民共通の資産として次代に継承するため「広島県野生生物の種の保護に関する条例」を制定し,平成7年1月20日全面施行しました。
この条例により,指定された11種の野生生物種は,その捕獲の禁止や捕獲・採取の届出が義務づけられました。
また今後も指定野生生物の生息,生育地の保全のため保護区や管理地区を指定するなど,野生生物の保護に積極的に取り組んでいきます。
第1条
この条例は,本県に生息し,または生育する野生生物が,我々の生存の基盤である生態系の基本的構成要素の一部であり,また本県の豊かな自然環境を象徴する貴重な存在であることにかんがみ,県,市町,県民等が一体となって,緊急に保護を要する野生生物の種の保護を図り,その絶滅を防止し,又は保存することにより,これを県民共通の資産として次代に継承することを目的とする。
第5条
県民等は,県又は市町が実施する緊急に保護を要する野生生物の種の保護のための施策に協力するよう努めなければならない。
第12条
指定野生生物種で特定野生生物種以外のものの生きている個体の捕獲,採取,殺傷又は損傷(以下「捕獲等」という。)をしようとする者は,あらかじめ,規則で定めるところにより,その内容を知事に届け出なければならない。
5 届出をした者は,届出をした日から起算して30日を経過した後でなければ,届出に係る捕獲等に着手してはならない。ただし,知事が指定野生生物種の保護に支障を及ぼすおそれがないと認めてその者に通知したときは,この限りでない。
第13条 特定野生生物種の生きている個体は,捕獲等をしてはならない。ただし,次に掲げる場合は,この限りではない。
一 学術研究又は繁殖の目的その他規則で定める目的で知事から許可を受け,その許可に係る捕獲等をする場合
二 人の生命又は身体の保護その他の規則で定めるやむを得ない事由がある場合
三 特定野生生物種の保護に支障をおよぼす恐れがない場合として規則で定める場合
第37条
次の号に該当するものは,1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
●第13条の規定に違反した者
(特定野生生物の捕獲等の禁止)
第39条 次の号に該当する者は,30万円以下の罰金に処する。
●第12条の規定に違反した者
(指定野生生物の捕獲等の届出)