おだやかな瀬戸内海は豊かな恵みを私たちにもたらしてくれます。
138もの島々が浮かぶ瀬戸内海は、漁業や観光、海運など広島の主要な産業を育ててきました。
同時に、この海は生物の故郷でもあります。複雑な潮の流れと大きな干満差が、クジラから小魚、干潟のカニ類、カイ類など多様な生きものを育んできたのです。
瀬戸内海のカキ筏
広島湾では古くから天然のカキが採れ、縄文人や弥生人の食生活を支えていました。
養殖が始まったのは室町時代の終わり頃と伝えられています。
太田川を通して瀬戸内海に流れ込む中国山地の栄養分が、広島カキを大きく育てます。
竹原市 ハチ干潟
藻場もあり、ハクセンシオマネキ、ナメクジウオなどの絶滅危惧種も確認されています。
広島県の干潟は多くが埋め立てられ、残された自然海岸は以前の1/3程度。
水の浄化機能も果たしている干潟をこれ以上減らしたくないものです。
里海・干潟の生物
スナメリ
瀬戸内海はスナメリの数少ない生息域の一つ。
竹原市高崎町阿波島周辺では、スナメリを目印にする伝統的な漁が行われ、『スナメリクジラ廻游海面』として天然記念物に指定されています。
現在はスナメリが減少し、漁は行われていません。
カブトガニ
約2億年前からほとんど姿が変わっていないため「生きた化石」と呼ばれます。
瀬戸内海の干潟はカブトガニの繁殖場所となっていました。
ミヤジマトンボ
国内では広島県の宮島にのみ生息する絶滅危惧種です。
本種の生息が評価され、生息地を含む宮島の海岸の一部は、2012年7月にラムサール条約登録湿地となりました。
ハクセンシオマネキ
干潟に棲むカニの一種。
オスの片方のハサミは極端に大きく、これが白い扇に見えることからこの名がつけられました。
アマモ帯
海の浅い部分に群生する植物で「藻場」をつくります。
藻場は潮流を和らげ、魚に産卵場所を提供するなど、海と干潟の環境を保全する上で欠かせない存在です。