広島市環境局中工場/Hiroshima City Naka Incinerration Plant
臨海部に建つ斬新なデザインの
アート感覚で楽しめる清掃工場
優れた社会資本を整備するため、広島市が進めている“ひろしま2045:平和と創造のまち”の事業の一環として建設された施設。前方に瀬戸内海を臨み、後方には市街地が広がる都市の玄関口である、中区吉島地区の埋め立て場所に新設された清掃工場。「水の都ひろしま」構想の主旨に沿って、環境を守り、つくり、伝えていく新しいアイディアとして、市民に親しまれる豊かな自然と水辺のコミュニティ空間を提供しています。
外観は、清掃工場が都市に必要な施設であることを対外的にアピールするために、建物全体を金属で覆い工場らしさを強調。設計は、「ニューヨーク近代美術館(MoMA)拡張計画」も手掛けた、モダニズム建築の谷口吉生。都市景観との関係を重視することを意識し、敷地の延長線となる北には平和記念公園、その向こうには文明の象徴たる市街地、南は海という大自然を遠望できるその中間に位置することから、通りから海へ吹き抜ける空間を敷地内に作ることをイメージしたといいます。
工場内部、見学可能な2階のガラス通路「エコリアム」は、まるでSF映画に出てくる宇宙基地のような雰囲気。ここでは、広島市のごみ行政についてのさまざまな情報を提供すると同時に、ガラス越しに実際に稼働しているごみの処理施設も見ることができます。新型の焼却設備は有害物質や臭いを出すこともなく、ゴミ処理につきまとうネガティブなイメージを払拭。エコリアムの洗練された空間デザインで焼却設備類を美術品のように美しく見せ、さらにごみ処理場の見学ルートをアートに昇華させるなど各地で美術館などを多く手掛ける設計者らしいアプローチともいえます。エコリアム周りには、あえて樹木を植えてクリーンなイメージを出すと同時に、無機質な工場内部に新鮮さを出しているのも特徴。外部には芝生広場を整備するなど、自然とのふれあいを大切にし、豊かな心も創造し、心地よい場所にもなるように作られています。
設計者/谷口建築設計研究所(谷口 吉生)
階数/地上7階、地下1階
敷地面積/約50,200平米
建築面積/約13,900平米
延床面積/約45,500平米
構造/鉄骨・鉄筋コンクリート造
鉄骨造、鉄筋コンクリート造
煙突/外筒鉄筋コンクリート造
内筒鋼板製、高さ59m
用途/清掃工場
住所/広島市中区吉島1-5-1
問合せ先/082-249-8517
交通アクセス/JR広島駅から広島バス 吉島営業所行「南吉島」バス停から徒歩5分
公開情報/見学可(エコリアム:9:00~16:30。工場内部:要予約)
撮影/OK
着工/1999年5月
竣工/2004年2月