このページの本文へ
ページの先頭です。

岩国・大竹道路 環境影響評価準備書に係る知事意見

印刷用ページを表示する掲載日2011年12月1日

 

基本的事項

〇 工事中及び供用後における環境保全対策を的確に履行するとともに,最新の技術・工法等を積極的に採用し,環境の保全に努めること。

〇 環境に係る苦情の申立てがあった場合は,直ちに,その原因を調査し,誠意をもって苦情解決のための必要な措置を講じること。

〇 本案件は,環境影響評価法(平成9年6月13日法律第81号。以下「法」という。)附則第2条の経過措置により,法の環境影響評価準備書に該当することとなったところであるが,今後,環境影響評価書を作成する際には,法第21条の規定が適用されるとともに,建設省令第10号(平成10年6月12日)に基づく道路事業に係る指針が適用されることとなることから,現行の環境影響評価準備書に対し,以下に掲げる事項について記載方法の変更等が必要となるので,十分に留意すること。

・ 新たに環境影響評価を行う場合には,建設省令第10号に基づき適正に行うこと。
・ 調査,予測及び評価の結果は,環境影響評価の項目ごとに取りまとめること。この場合,環境影響評価を行ったにもかかわらず環境影響の内容及び程度が明らかとならなかった項目に係るものを含むこととし,特に評価の手法は,建設省令第10号第11条の規定に基づき選定したうえで,適正に評価を行うこと。
・ 環境の保全のための措置については,当該措置を講ずることとするに至った検討の状況を含めて記載すること。
・ 環境の保全のための措置が将来判明すべき環境の状況に応じて講ずるものである場合には,当該環境の状況の把握のための措置を記載すること。
・ 対象事業に係る環境影響の総合的な評価を記載すること。
・ 環境影響評価の全部又は一部を他の者に委託して行った場合には,その者の氏名及び住所(法人にあってはその名称,代表者の氏名及び主たる事務所の所在地)を記載すること。

個別的事項

1 大気環境 

(1)大気質

 〇 既存の国道2号と岩国大竹道路に挟まれることとなる小方小学校については,国道2号からの寄与に併せて,二酸化窒素,浮遊粒子状物質及び道路交通騒音等の発生により児童に対して呼吸器官等への健康被害,授業阻害,情緒的不安定,集中力の欠如など甚大かつ重大な環境影響が懸念され,環境保全上,看過できないことから,排ガスの吸着処理,化学処理等による処理装置を設置した排ガス処理装置付きシェルター対策を講じること。
 こうした排ガス処理装置付きシェルター対策の検討に当たっては,児童に対する環境の保全を確保する観点から,十分な機能を持った対策を採用する必要があること等を踏まえ,シェルターの長さ及び構造,排ガス処理装置の種類・性能等を含めた複数の排ガス処理装置付きシェルター対策について,それぞれ予測評価を行い,その結果を科学的に比較検討したうえで,児童に対する環境の保全が確保できる万全な対策を採用すること。また,新規又は未検証の排ガス処理装置又はシェルター構造を採用する場合には,予測の不確実性を踏まえ事後調査を行い,その結果を踏まえて,追加的な対策を講じること。
 なお,排ガス処理装置付きシェルター対策の設置工事に当たっては,児童への環境影響を未然に防止する観点から,仮囲い対策,散水対策等の粉じん防止対策を適切に講じるとともに,低騒音型・低振動型重機の採用,稼働台数の平準化,時間帯調整等の騒音・振動対策を適切に講じること。
[大気質,騒音,振動共通]

〇 大竹市小方・御園の市街地(大竹西IC付近) については,周辺に中高層住宅が多数存在し,事業の実施に伴い,既存の広島岩国道路からの寄与と併せて,複合的な二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る環境影響が懸念されることから,更に予測地点を設定し,これらの環境影響を的確に把握したうえで,複数の環境保全措置を比較検討のうえ適切な環境保全措置を講じること。

〇 既存の予測地点においても,大竹市小方地区の予測地点周辺には住居地域が分布しており,また大竹市元町地区の予測地点周辺は環境質に優れた地域であることから,浮遊粒子状物質に係る環境影響が懸念されるため,浮遊粒子状物質に係る環境影響を的確に把握したうえで,複数の環境保全措置を比較検討のうえ適切な環境保全措置を講じること。

〇 本準備書においては,大気汚染の予測は,官民境界地上1.5mで実施しているが,大竹市小方・御園地区には小学校や宅地等が多く存在し,また,元町地区は住居地域が分布する環境質に優れた地域であること等から,新たに予測する必要のある項目も含めて,住宅の分布状況を考慮し,平面分布を予測するとともに,必要に応じて断面分布を予測すること。

〇 予測断面における供用後のNO2濃度は,環境基準との整合が図られてはいるものの,供用に至るまでの期間が長期にわたり,計画交通量や車種構成等予測条件に係る不確実性も存在することから,新たに予測地点を設定するものも含めて,供用後において,関係機関と調整のもと環境保全措置の効果や環境の状況を把握するための事後調査を行い,その結果に基づき,必要に応じ適切な環境保全措置を講じること。

〇 新たに予測を行う浮遊粒子状物質についても,NO2と同様に計画交通量や車種構成等予測条件に係る不確実性や二次生成等に係る不確実性が想定されることから,供用後において関係機関と調整のもと環境保全措置の効果や環境の状況を把握するための事後調査を行い,その結果に基づき,必要に応じ適切な環境保全措置を講じること。

〇 工事の実施に当たっては,周辺住民の生活環境に支障を生じさせないよう,工事内容に応じて,散水,仮囲い及びシート張り等の粉じん飛散防止対策を適切に講じることにより,粉じんの低減に努めること。

〇 工事に使用する工事用車両及び建設機械は,最新の規制年次に適合した車両や排出ガス対策型(黒煙浄化装置付等)を積極的に採用するとともに,周辺住民の生活環境に支障を生じさせないよう,運行ルートの分散化,稼働台数の平準化・時間帯調整等の環境保全措置を適切に講じることにより,工事中の大気環境への負荷の低減に努めること。

〇 工事車両等は,原則として,本線内の工事用道路を利用するとともに,低速走行を遵守すること。なお,一般道路を利用する場合には,住居等に与える影響の少ないルートを選定すること。
[大気質,騒音,振動共通]

(2)騒音

 〇 平成11年4月1日に騒音の環境基準が改正されたことから,改正後の環境基準に対応した予測手法により予測を行うとともに,その結果に基づき,必要に応じて適切な環境保全措置を講じること。

〇 中高層宅地等が多く存在する大竹市小方・御園の市街地(大竹西IC付近)については,事業の実施に伴い,高さ方向の道路交通騒音に係る環境影響が懸念されるため更に予測地点を設定し,これらの環境影響を的確に把握したうえで,複数の環境保全措置を比較検討のうえ適切な環境保全措置を講じること。

〇 本準備書においては,騒音の予測は,民地側最大値地点地上1.2mで実施しているが,大竹市小方地区・御園地区には小学校や宅地等が多く存在し,また,元町地区には住居地域が分布する環境質に優れた地域であること等から,等価騒音レベルによる平面分布を予測するとともに,必要に応じて断面分布を予測すること。

〇 予測断面における供用後の道路交通騒音は,旧環境基準との整合が図られてはいるものの,供用に至るまでの期間が長期にわたり,計画交通量や車種構成等予測条件に係る不確実性が存在することから,新たに予測地点を設定するものも含めて,供用後において,関係機関と調整のもと環境保全措置の効果や環境の状況を把握するための事後調査を行い,その結果に基づき,必要に応じ適切な環境保全措置を講じること。

〇 工事の実施に当たっては,周辺住民の生活環境に支障を生じさせないよう,低騒音型重機の採用,低騒音工法の採用,建設機械の稼働の平準化・時間帯調整等の環境保全措置を適切に講じることにより,工事用車両や建設機械の稼働に伴う騒音の低減に努めること。

〇 橋梁工事の杭打ち等通常の工事に比べて高い騒音レベルを発生させる工事を行う場合には,騒音の少ない工法を選択すること。

〇 高架橋の接続部分から衝撃音の発生が懸念されることから,複数の環境保全措置を比較検討のうえ,適切な環境保全措置を講じること。

(3)振動

〇 工事の実施に当たっては,周辺住民の生活環境に支障を生じさせないよう,低振動型重機の採用,低振動工法の採用,建設機械の稼働の平準化・時間帯調整等の環境保全措置を適切に講じることにより,工事に伴う振動の低減に努めること。

〇 橋梁工事の杭打ち等通常の工事に比べて高い振動レベルを発生させる工事を行う場合には,振動の少ない工法を選択すること。

〇 高架橋の接続部分から振動の発生が懸念されることから,複数の環境保全措置を比較検討のうえ,適切な環境保全措置を講じること。

2 水環境

〇 トンネル掘削工事,高架道路の橋脚工事又は河川の橋梁工事に伴い発生する濁水及びアルカリ排水,工事中の雨水排水により公共用水域への環境影響及び魚類への環境影響が懸念されることから,河川工事等に際しては,仮締め切り,切り回し水路の設置,ケーソン工法等出来る限り水質に与える影響の少ない工法を採用するとともに,沈砂池,中和施設の設置等の適切な環境保全措置を講じること。

〇 薬注工法を採用する場合における土壌環境及び公共用水域への環境影響が懸念されることから,こうした場合には,汚水処理施設の設置等適切な環境保全措置を講じるとともに,必要な監視を行うこと。

〇 トンネル工事等による地中構造物の建設により,地下水脈の遮断や水位低下等の地下水への環境影響や地下水脈の遮断に伴う生態系への環境影響が懸念されるため,工事に際しては,計画路線及びその周辺の詳細なボーリング調査を行ったうえで,地下水に影響を与えない施工方法を採用するとともに,必要に応じて,地下水水位等の監視を行うこと。[水環境,生態系共通]

 供用後の路面清掃,トンネル洗浄及び降雨時の雨水排水により公共用水域等への環境影響が懸念されることから,沈砂池,集水桝の設置等適切な環境保全措置を講じること。

3 土壌環境その他の環境

 (1)日照阻害

〇 大竹市小方地区及び元町地区において,高架道路の設置に伴う日影に係る環境影響が懸念されることから,的確に環境影響を把握したうえで,高架道路の構造調整等の複数の環境保全措置を比較検討し,適切な環境保全措置を講じること。

〇 また,遮音壁の設置に伴い日影に係る環境影響が懸念されることから,的確に環境影響を把握したうえで,遮音壁の構造調整等の複数の環境保全措置を比較検討し,適切な環境保全措置を講じること。

(2)土壌汚染

 〇 計画路線周辺の一部に廃坑となったマンガン鉱山が存在することから,工事に際しては,この部分の詳細な地質調査を行ったうえで,有害物質の存在の有無を確認し,有害物質が確認された場合には,工事の実施により土壌汚染を引き起こさないよう,有害物質の除去施設の設置等適切な対策を講じること。

(3)地形地質

〇 事業の実施に当たっては,地形・地質が生態系保全のための重要な要素であることを踏まえ,地形の改変区域を最小限に止めるとともに,改変部の緑化を積極的に行うなど,計画路線周辺の動植物の生育・生息環境の保全に努めること。[地形・地質,生態系共通]

4 動物・植物・生態系

(1)植物

 〇 事業の実施に当たっては,植物が生態系保全のための重要な要素であることを踏まえ,森林の伐採及び地形の改変区域を最小限に止めるとともに,改変部の緑化を積極的に行うなど,計画路線周辺の植物の生育環境の保全に努めること。なお,改変部の緑化に当たっては,可能な限り,早期から周辺地域の植生に配慮した樹種等を選定して行い,現存植生の保全に努めるとともに,周辺景観との調和を図ること。

〇 貴重植物の選定に際しては,「植物版レッドリスト」(平成9年環境庁)の掲載種を対象として,再度調査を行うとともに,貴重種が確認された場合には,予測評価を行い的確に環境影響を把握したうえで,適切な環境保全対策を講じること。

〇 貴重植物の分布位置を示す図面を添付すること。

〇 工事中において新たに重要種の生育が確認された場合には,当該種の生態を十分に把握したうえで残存緑地化等の保護対策を適切に講じること。
[以上,植物,生態系共通]

〇 河川の橋梁工事に当たっては,濁水対策等水生生物の保護対策を適切に講じること。
[植物,動物,生態系共通]

(2)動物

 〇 事業の実施に当たっては,動物が生態系保全のための重要な要素であることを踏まえ,森林の伐採及び地形の改変区域を最小限に止めるとともに,改変部の緑化を積極的に行うなど,計画路線周辺の動物の生息環境の保全に努めること。
 特に,生息環境が一部損なわれるナナフシ及びナガサキアゲハについては,生息場所の移植対策等適切な保護対策を講じること。

〇 工事中において新たに重要種の生息が確認された場合には,当該種の生態を十分に把握 したうえで,生息環境を保全するため残存緑地化等適切な保護対策を講じること。

〇 メダカ等の水生動物の生息環境を保全するため,河川工事等に際しては,仮締め切り,切り回し水路の設置,ケーソン工法等出来る限り水質に与える影響の少ない工法を採用するとともに,沈砂池,中和施設の設置等の適切な生息環境の保全対策を講じること。

〇 貴重動物の選定に際しては,「両生類・は虫類のレッドリスト」(平成9年環境庁),「ほ乳類のレッドリスト」(平成10年環境庁),「鳥類のレッドリスト」(平成10年環境庁),「汽水・淡水魚類のレッドリスト」(平成11年環境庁)の掲載種を対象として,再度,調査を行うとともに,貴重種が確認された場合には,予測評価を行い的確に環境影響を把握したうえで,適切な環境保全対策を講じること。

〇 貴重動物の分布位置を示す図面を添付すること。
[以上,動物,生態系共通]

5 人と自然との豊かな触れ合い(景観)

〇 良好な都市景観及び後背地の自然景観の保全を図る観点から,周辺の現況景観と調和するよう高架部,トンネル抗口部及び遮音壁等の構造物の形状,色彩等について十分配慮すること。

6 その他

〇 工事に伴い発生する切土及びトンネル掘削ずり等の残土や伐採木等については,事業の実施までに,他事業への有効利用を含めた具体的な処理計画を検討のうえ,適正に処理を行うこと。なお,トンネル掘削ずりについては,周辺の地質等を勘案のうえ,必要に応じて重金属の溶出検査を行うなど残土処理の安全性を確保すること。

〇 沈砂地等水処理施設の稼働により発生する汚泥は,廃棄物処理法に従い適正に処理するとともに,特にベントナイト工法を採用する場合には,ベントナイト汚泥の性状確認を行ったうえ,適正に処理すること。

〇 工事中に新たな文化財を発見した場合は,工事を中断したうえで,関係市町等の文化財担当部局とその取扱いについて協議すること。

おすすめコンテンツ

みなさんの声を聞かせてください

満足度 この記事の内容に満足はできましたか? 
容易度 この記事は容易に見つけられましたか?