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新広島空港周辺景観指定地域における指定地域基本計画

印刷用ページを表示する掲載日2011年12月1日

○新広島空港周辺景観指定地域における指定地域基本計画

平成四年四月一日
告示第四百五十四号

ふるさと広島の景観の保全と創造に関する条例(平成三年広島県条例第四号)第九条第一項の規定により、新広島空港周辺景観指定地域における指定地域基本計画を次のように定める。

新広島空港周辺地域における景観形成に関する基本計画

一 前文

新広島空港周辺地域は、広島県のほぼ中央に位置し、賀茂郡大和町、賀茂郡河内町及び豊田郡本郷町の全域をその地域としており、広島の景観を代表する赤瓦と白壁の民家群をはじめ、竹林寺用倉山県立自然公園を擁し、歴史と文化に彩られ、いわば、広島のふるさととも言える地域である。とりわけ、本地域では、中国・四国地方の拠点的国際空港として、西日本における航空ネットワークの核となるべく、新広島空港の建設が進められている。この新広島空港と県立中央森林公園及びエアポートビレッジは、新広島空港景観計画(平成三年三月庭園空港都市景観検討委員会策定)に沿って整備が進められ、その周辺においても高速交通体系の整備と合わせ、産業、情報、国際交流等の諸機能を持つ施設整備が予定されており、中国・四国地方における本県中枢性の向上に貢献することが期待されている。これらのことから、本地域は、将来、中国・四国地方の空の玄関として多くの人々を迎えることとなると考えられ、今後の地域開発の動向に対応しながら、「開発と保全との調和」を基本として総合的な景観の形成を図ることが重要な地域である。このため、現在の景観を保全し、活用しながら、地域が一体となって、「緑でもてなす景観づくり」を共通理念に、広島の顔としての優れた景観を創造し本県を代表する景観とするため、本地域を景観指定地域として指定するものである。

二 景観形成のための基本的かつ総合的な方針に関する事項

1 新広島空港周辺地域の景観特性と県土における位置付け

新広島空港周辺地域は、中国山地の瀬戸内海側における地形構成の縮図ともいうべき景観を有している。本地域の北側は、標高四百メートル前後の世羅台地南西端に位置し、小起伏の丘陵や盆地からなっている。その南側は、沼田川沿いの顕著な構造線によって切り立った隆起断面の峡谷景観を見せている。また、沼田川南部は、比較的起伏量の大きい山地となっており、南端は、白砂青松と多島美の瀬戸内海に続いている。田園集落及び市街地は、細かい起伏のある地形のうちの低地部や沼田川沿いの段丘、たい積平野に発達している。また、本地域の大半は山林である。中国地方特有のアカマツ林が主体であるが、竹林寺周辺や沼田川沿いの山ろく斜面には、比較的まとまった広葉樹林も分布する。この田園集落景観及び森林景観は、優しい、オアシスのような落ち着いた景観として、特に空からの来訪者に、安らぎと親近感を与える役割を果たす。さらに、本地域は、平成五年に開港が予定されている新広島空港を中心とした地域である。これまでは、広島都市圏と備後都市圏との中間に位置する静かな田園集落地域であり、森林と田園の落ち着いた景観が残されてきた。今後は、新広島空港及び高速交通体系の整備とも相まって、一躍中国・四国地方の空の玄関として位置付けられることとなり、地域の活性化を促しながら、広島の顔にふさわしい総合的で秩序ある景観形成が求められる地域である。

2 景観形成に当たっての基本的方向

本地域は、新広島空港建設に伴い、景観の変容が進みつつある地域であり、今後は、さらにその傾向が顕著になると見込まれる。したがって、景観の保全と創造を通じて良好で快適な環境の確保を図るとともに、「緑でもてなす景観づくり」を共通理念とした地域づくりと連動しながら地域の個性を生かした総合的で秩序ある景観の形成を進めることとし、その基本的方向は、次のとおりとする。

(一) 広島の空の玄関にふさわしい風格ある沿道景観の形成新広島空港及び周辺の沿道景観は、中国・四国地方を訪れる多くの人々の目にふれ、広島の顔の一つとして位置付けられるため、航空路、幹線道路、山頂等の主要な展望地からの眺望に配慮するなど総合的で秩序ある景観形成の誘導により、昧わい深い風格ある景観の形成を図る。

(二) 歴史と自然が息づく沼田川の水辺の景観の形成本地域には、世羅台地等から瀬戸内海に流れる沼田川水系の白竜湖、深山峡、瀑雪滝、女王滝など豊かで潤いのある水辺の景観資源が多い。この景観を保全しつつ、新たに親水空間を創造するなど潤いのある水辺の景観の形成を図る。

(三) 国際交流の場にふさわしい落ち着いた田園集落景観の維持保全本地域は、新広島空港の開港とともに、諸外国から多くの人々が訪れる地域であり、広島への印象を左右する地域でもある。このため、森林と田園集落の静かで落ち着いた景観の維持保全を図るとともに、開発に際しては田園集落景観との調和に配慮する。

3 景観形成の基本方針

新広島空港周辺地域の景観形成の基本方針は、次のとおり地形特性による類型別ゾーン及び重点地区に区分して定めることとする。

(一) 地形特性による類型別の景観形成の基本方針新広島空港周辺地域の地形による景観特性を勘案して別図に示すように地形景観の骨格を規定している五つのゾーンを設定し、次の基本方針に基づいて計画的な景観形成を図るものとする。

 

景観形成の基本方針

一 山頂ゾーン

1 高速道路、国道、主要地方道、新広島空港アクセス道路、鉄道などの主要な幹線から明瞭に認識できる篁山、用倉山、一万山等の尾根及び山頂と古高山、新高山などの印象的な山塊等のゾーンである。
2 古高山、新高山は、地域を代表する印象的な山頂を有するとともに、中世に小早川氏が城を築いていたことで名高い。また、沼田川に沿って連なる切り立った尾根及び山頂は、大規模な自然の造形物である。さらに、篁山などの主要な山頂部から眺望できる水平な尾根の稜〈りよう〉線の連なりは、台地地形の特徴を物語っている。
3 用倉山などの主要な尾根筋における緑を保全し、育成するとともに、尾根及び山頂の連続性を維持するため、地形の改変、構造物の設置及び建築行為をできる限り抑制する。
4 日本ケ峰、一万山などの主要な山頂や良好な眺望が得られる既存の視点場(景観を眺める人の周辺の場所をいう。以下同じ。)の整備を行うとともに、視点場に通じる道路及び散策路の整備を行う。

二 山腹ゾーン

1 主要幹線沿道の背景であるとともに、用倉山、竜王山などの傾斜度の急な山腹斜面を中心とした森林のゾーンである。
2 山腹の緑は、美しい町並みや田園集落の背景として大変重要である。本地域は、全般に平地が狭く、四方を接近した山に囲まれる景観が特徴である。また、中国地方の花崗岩地帯に多く見られるアカマツ林の緑が里山景観を親しみ深いものにしている。
3 本地域の西北部に集中する岩谷山、竜王山などの傾斜度の急な山腹の森林は、景観のみならず災害防止機能の上からも保全する必要がある。やむを得ず地形の改変、構造物の設置及び建築行為をする場合は、特に周辺からの眺望に配慮し、緑の景観を損なわない施設形態や植栽を工夫する。
4 本地域景観の構成上、重要な役割を果たしているアカマツ林は、松枯れ対策等を充実させ、森林の緑を維持保全する。
5 日本ケ峰などの豊かな森林景観を楽しむ道路、散策路の整備を行うとともに、良好な眺望が得られる視点場の整備に努める。
6 竜王山などの山腹ゾーンに点在する集落では、特に斜面になじんだ棚田の景観を保全し、落ち着いた田園集落景観を形成する。

三 台地丘陵地ゾーン

1 大草、入野などの緩やかな起伏が連続した地域を中心とするゾーンである。2 大和町の大部分と河内町入野に広がる細やかな起伏地形は、台地丘陵地の特徴を示す景観である。森林の緑は、国土保全等の公益的機能のみならず、景観の上からも欠くことのできない役割を担っている。また、新広島空港の開港や高速交通体系の整備に伴い、産業、流通等の施設整備が計画されているが、これらの大規模開発は、台地丘陵地に集中することが想定される。3 大規模開発は、できる限り周辺地形になじんだ造成を行う。特に、主要な幹線道路等や集落からの眺望を阻害する大規模な法面〈のりめん〉や擁壁はできる限り避ける。法面〈のりめん〉は、周辺の地形に合った構造及び形態とし、また、在来の植生に合わせた植栽を行って周辺の景観との調和に配慮する。4 細やかな起伏のある地形の中にある田園集落においては、大規模な建築物や工作物の新築、増改築等は、周辺の景観との調和に配慮した位置、構造、形態、意匠、素材及び色彩とする。5 篁山、日本ケ峰などの山頂の視点場や上空からの眺望に配慮し、良好な緑の保全育成に努める。

四 水辺峡谷ゾーン

1 河内町沼田川上流の河川沿いの田園集落、深山峽から沼田川の瀑雪滝下流付近に至る峡谷及び白竜湖を中心とした水辺のゾーンである。
2 沼田川沿いのスケールの大きな景観は、地域を代表する景観である。また、その周辺には椋梨ダムによってつくられた白竜湖や、緑の美しさに彩りを添える深山峡、瀑雪滝及び女王滝といった水辺の景観資源が集中している。また、沼田川のアユ漁は、自然の豊かさを象徴する風物詩である。3 深山峡から瀑雪滝下流の沼田川流域は、両岸に連なる山肌の緑を保全するとともに、水辺の親水空間の整備をはじめとした魅力的な河川環境の整備を行う。4 白竜湖は、貴重な景観資源及び親水空間として積極的に活用し、湖面を望む視点場を整備するとともに、水際線の修景を行う。
5 河内町の沼田川上流部の河川沿いに広がる田園地域は、調和のとれた美しい田園集落景観を保全する。

五 平地ゾーン

1 山間に開けた地形の徳良、和木や沼田川沿いの中河内、船木、本郷等の平地部を中心としたゾーンである。2 JR駅や幹線道路の結節点は、平地部にあり、市街地や商工業集積地がある。同所は、役場庁舎や中心商店街があり、地域の核となっている。さらに、臨空産業拠点として位置付けられ、今後の発展が期待される。また、沼田川下流部の船木地区には、広々とした美しい田園集落景観が見られる。3 中心市街地の景観は、今後の地域発展に対応した調和と潤いのある都市施設整備を行い、統一感のある町並みの形成を誘導する。4 沼田川下流部の田園集落は、その背景となる森林の緑と広がりのある田園及び集落のたたずまいについて保全する。

(二) 重点地区の類型別の景観形成の基本方針景観の形成上、特に必要な箇所を重点地区として三地区設定し、それぞれの重点地区が属する(一)のゾーン別の基本方針に配慮するとともに、次の基本方針に基づいて計画的な景観形成を図るものとする。

重点地区区分 景観形成の基本方針
一 新広島空港地区  
二 沿道地区

1 別図に示す新広島空港アクセス道路、主要な幹線及び結節点の地区である。
(一) 新広島空港アクセス道路 新広島空港に連絡する土地改良法(昭和二十四年法律第百九十五号)、森林法(昭和二十六年法律第二百四十九号)、道路法(昭和二十七年法律第百八十号)及び農用地整備公団法(昭和四十九年法律第四十三号)に基づく道路(新広島空港地区の区域内のものを除く。)
(二) 主要な幹線 JR山陽新幹線、JR山陽本線、山陽自動車道、一般国道(二号及び四三二号)及び主要地方道(久井福富線、吉田大和線、瀬野川福富本郷線、東広島本郷線)
(三) 結節点 JR各駅周辺(入野、河内及び本郷)、山陽自動車道インターチェンジ周辺(河内及び本郷)、新広島空港アクセス道路及び主要な幹線の交差点周辺2 車窓からの沿道景観は、地域の表情や素顔を直接伝えるため、無秩序な広告、看板類のはん濫を防止し、節度ある掲出により落ち着いた地域景観を形成する。また、国道及び主要地方道の交差点、高速道路のインターチェンジ、JR各駅などの交通の結節点周辺は、地域の個性を生かした景観を形成する。3 高速道路、国道、主要地方道、新広島空港アクセス道路及び鉄道などの幹線沿いは、公共サインの適正な設置と統一に努めるとともに、沿道サービス施設の広告、看板類は、建築物と一体感のあるものとする。また、業務施設の建築や道路に面する垣、さく等は、特に景観に配慮し、風格ある景観形成に努める。4 JR駅周辺などの交通の結節点に当たる中心市街地は、それぞれの地域を代表する顔として、新広島空港開港に対応した修景整備を行うとともに、県の臨空産業集積地域にふさわしい市街地整備を行い、ゆとりと活力ある町並みの形成を図る。

三 大規模開発地区(条例第十五条第五号に規定する行為を行う地区)

1 住宅団地、工業団地、スポーツ・レクリエーション施設など、大規模開発が実施され、又は計画されている地区である。2 交通基盤施設の整備に伴い、台地丘陵地ゾーンを中心として集中する住宅団地、工業団地等は、活力ある地域景観の形成を誘導するとともに周辺の景観との調和を図る。3 大規模開発地域内のまとまりのある町並み形成を行うとともに、周辺の景観と調和した造成及び緑の連続性を確保する。特に、大規模な法面〈のりめん〉や擁壁はできる限り避ける。大規模建築物は、周辺の景観と調和した位置、構造、形態、意匠、素材及び色彩とする。
4 航空路、幹線道路、山頂などの主要な展望地からの眺望に配慮し、開発造成地では、敷地の修景及び十分な緑化を行う。

三 景観形成のための基準の策定指針に関する事項新広島空港周辺地域における景観形成のための基準の策定指針については、次のとおりとする。

行為 基準の策定指針
一 大規模建築物等の新築、増築、改築、移転若しくは撤去又は外観の変更 大規模建築物等の新築等は、森林、田園などの豊かな緑に配慮するとともに、自然及び集落の景観との調和並びに航空路、幹線道路、山頂などの主要な展望地からの眺望に配慮した位置、形態、意匠、色彩及び素材とし、敷地の緑化に配慮して行うものとする。
二 屋外における物品の集積又は貯蔵 物品の集積又は貯蔵は、目立たないような位置、形態とするとともに周辺の景観との調和に配慮するものとする。
三 鉱物の掘採又は土石等の採取 鉱物の掘採又は土石等の採取は、航空路、幹線道路、山頂などの主要な展望地からの眺望に配慮するとともに遮へいや修景に努め、行為終了後の地形が周辺の景観と調和するよう配慮するものとする。
四 土地の区画形質の変更 土地の区画形質の変更は、将来にわたる総合的な景観形成計画を策定して行うものとし、原地形をできる限り残すなど、自然地形に沿った造成に努めるとともに区画割りを大きくし修景緑化を行うなど、ゆとりと潤いのある空間の確保が図られるよう配慮するものとする。また、緑の保全と創造を図るものとする。
五 広告物の表示若しくは広告物を掲出する物件の設置又はこれらの外観の変更 広告物の表示等は、航空路、幹線道路、山頂などの主要な展望地からの眺望を考慮し、過度の広告表現による不調和や周辺の景観への著しい違和感が生じないよう配慮するとともに、建築物、工作物及び他の広告物との調和を保つよう努めるものとする。

四 景観形成のための指導等に関する事項新広島空港周辺地域における景観形成のための指導等に関する事項については、次のとおりとする。

(一) 公平性及び客観性に配慮した指導等に努める。当該基本計画及び新広島空港周辺景観指定地域景観形成基準に基づいて指導等を行うことはもとより、景観形成に関する調査研究及び情報の収集に努め、広島県景観審議会等の意見を聞くなど、既往の行為等も含めて公平性、客観性に配慮した指導等に努める。

(二) 県が率先して景観行政を推進することに努める。広島県公共事業等景観形成指針に基づき率先して景観の形成に努めるとともに、景観形成に関する施策を総合的に推進するよう努める。

(三) 本地域内自治体等と連携のとれた指導等に努める。景観形成施策は、地域に密着した地元自治体の主体的取組が望まれるところである。このため、本地域内自治体の景観形成施策への主体的取組を促しながら、当該自治体と緊密な連携を保った指導等に努める。また、本地域の景観形成施策の取組が、周辺自治体に波及するよう努める。

(四) 本地域内住民及び事業者の景観形成に関する主体的な取組の推進に努める。本地域内の自治体と緊密な連携を保ち、まちづくりや地域の活性化と連動しながら、景観形成住民協定の助長、特定事業景観形成協定の促進など景観形成に関する本地域内の住民及び事業者の主体的な取組の推進に努める。

(五) 景観形成に関する積極的な広報に努める。本地域内の自治体と緊密な連携を保ち、地域住民及び事業者に対し、積極的かつ継続的な広報に努める。

別図の地図

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