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令和4年度 働き方改革先進企業経営者ミーティング 第1回イベントレポート

印刷用ページを表示する掲載日2021年11月26日

タイトル

 「働き方改革先進企業経営者ミーティングHIROSHIMA」(第1回)を令和4年10月25日に開催し、広島県働き方改革実践企業(認定企業)の経営者層29名にご参加いただきました。

開会あいさつ (広島県 湯崎知事によるビデオメッセージ)

 広島県の湯崎知事から、県では「働きやすさ」と「働きがい」の実現を両輪とした県内企業の働き方改革を推進していることや、参加企業に対して『本イベントを通じて企業経営における「働きがい」の重要性を理解いただき、働き方改革の先進企業として先駆的な取組につなげていただきたい』と期待が述べられました。

知事

特別講演 (伊那食品工業株式会社 代表取締役社長 塚越 英弘 氏)

​伊那食品工業株式会社の塚越社長に、広島にお越しいただき、特別講演としてお話しいただきました。

いい会社をつくりましょう ~社員の幸せを追求する経営の実践~

第1回塚越さん

  • 数字を追わない 社員の幸せの追求と自主性を引き出す仕組み

 長野県伊那市に本社をおく伊那食品工業株式会社は、テングサやオゴノリが原料である寒天を中心に、かんてんぱぱ製品や食品素材を手掛ける食品メーカーである。売上高は約200億円、社員数はおよそ600名。増収を続けてきたが、2020年、2021年はコロナ禍の影響を受け減収減益となる。しかし社員全員の給与はそれまで同様、毎年2%以上の昇給を続けている。「社員の給与は経営の目的そのもの」と考え、必ず上げる事を約束している。業績に比例して給与を上げるのではなく、毎年必ず上げるために皆で頑張ろうと考えているからだという。
 同社の経営の目的は「第一に社員が幸福になること」、社是に「いい会社をつくりましょう」を掲げる。同社には売上、利益、予算などの会社としての数値目標はない。塚越氏いわく「利益はウンチ。結果として出るものだから、毎日きちんとウンチ(利益)が出る健康な体(会社)にすることが大事。会社としての目標は数字だけで考えないことにしている。数字は社員の幸せを達成するための手段にすぎない」。
 同社では営業会議、役員会にも数字の資料はなく、会議でも100%使わないという。「数字は結果であり、コンピュータの中にあるので、見ればわかる。会議では、今後の取組の話し合いや情報共有など、人が集まらないとできないことをするべきだ。」会社として各営業所の目標数字を定めないため、営業所ごとに自分たちで決める。岡山営業所では「前年の売上をクリアし、1円でも上げること」を目標として、各自が営業努力をする。営業所の会議では、他の営業所の自社商品の採用事例の共有等に時間を割き、目標数字の話は一切しない。
 同社では社員に目的と手段の方向性だけを伝え、あとは社員が楽しく働くことができるように、社員自らの判断を促す。例えば、掃除をする目的は「掃除は気づき、成長の訓練」と社員には伝えるだけで、ルールも場所も時間も決めず、強制もしないようにする。社員は東京ドーム2個分に相当する3万坪のガーデンをよく見て、自分で掃除の場所、方法を考え、清掃に取り組む。毎朝、掃除を続けていると少しずつ汚れや雑草などの気づきが増える。こうした日々の訓練が、「自分で気づけるようになる」ための成功体験につながるという。
 このように社員が自分たちで考え、自主的に行動するきっかけと場を提供することが重要だ。なぜなら、人に言われたことや人が決めたことはやる気にならないが、自分で決めたことはやるし、やろうとする。アスリートがパフォーマンスを高めるために自分で目標設定するのと同じで、会社が社内の目標設定や進捗確認を行うと社員のパフォーマンスを下げる要因にしかならない。

  • 会社の思いや理念をどのように社員に伝えていくか

 社長の思いや会社の理念が社員に伝わらない理由として、塚越氏は「社員が聞く耳を持てない」ことと「立場の違い」を挙げる。特別講演では、思いや理念を組織に伝えていくための同社の取組が紹介された。
​ まず「聞く耳」を持ってもらうためにやっていることの 1つが、100年カレンダーを配付し、自分の命日を考えさせ、「なぜ、働くのか? 何のために働くのか?」を自問させるというもの。マズローの欲求5段階説によると、生活や家族を養うために働くだけでは一番満足度の低い「生存欲求」しか満たされないのに対し、自分の成長のために働くことができれば、より高い「自己実現欲求」が満たされる。限りのある人生で最も長い割合を占める働く時間を、生存欲求と自己実現欲求、どちらのために働きたいか、社員自身が考えるきっかけを与えている。
  もう1つは「みんなでやる」こと。朝の掃除、ラジオ体操、月例会、社員旅行、『かんてんぱぱ祭』、いずれも同社では社員全員で取り組む。上意下達より「みんなでやる」という横のつながりからの方が思いや理念が伝わりやすいからだ。「みんなでやる」というキーワードは、社員が自主的に考え、行動する習慣づけ、環境づくりになるという。
 そのうえで、組織内の「立場の違い」を超え、思いや理念を伝えるために必要なこととして塚越氏が強調するのが「信頼関係」だ。「いくら正論を言っても社員との信頼関係がなければ、聞き入れられない。社是、社訓に掲げていることを社長や会社自体が本当に行っているか。言っていることとやっていることが同じであるか。うそをつかず本音で接することが社員の尊敬・信頼を得る」と言い切る。同社が社是とする「社員が幸せになる」体制の土台は、こうした考えにより築かれたといえる。

マズロー掃除

 

  • 伊那食品工業が実践する『年輪経営』とは? そのために何が必要か

 社員が恐れるのは会社が潰れること。会社が倒産せず、持続成長するために同社が提唱してきたのが『年輪経営』だ。数字ありきの経営ではなく、末広がりに段々と良くなることを最大の価値とし、今日より明日、何か一つでも良くなるように積み上げていく。方向性はさまざまでも、社員が将来に希望を持ち、楽しく幸せな状態であることを大切にしている。
 社員の幸せを追求する同社には「幸せとは、楽しく仕事できることであり、嫌なことをしないことでもある。楽しく仕事できれば、自ずと良いサービス、良い商品が提供できる」という考えが根底にある。そんな同社にとって「社員は家族」。人事評価の基準が年功序列の横並びであることもその考えの表れだという。
 こうした社員の幸せを追求する組織づくりをするために、塚越氏は、人事評価などのしくみだけでなく、商習慣を含む仕事の常識、やり方、経営の考え方などのマインドの転換を図り、実践してきた。
 最高顧問でカリスマ経営者でもある父親の「後を継ぐ」のではなく、「年輪経営の道をつくる」という考えのもと、少しずつでも着実に良くなるということに重点を置き、自然体でいることを大切にして経営に臨んでいる、と特別講演を締めくくった。

【受講アンケートより】特別講演について気づき・印象に残ったことなど

 

  •  売上や利益目標がないことに最初は驚きました。しかし利益は結果として出るものという言葉に納得しました。目標設定は会社ではなく、個人で設定することが大切であり、それが個人の成長につながるということにとても共感しました。社員との信頼関係がなければ、何を言っても無駄だと気付くことができました。(社会保険労務士法人吉田労務管理センター 副所長 田中友美様)
  •  数値目標を立てない、必ず給与を上げるなどインパクトのある個々の取組はさることながら、それらが、経営理念や年輪経営という会社の方針のもと一貫性を持って行われている点が素晴らしいと感じた。まずは経営の目的やどんな会社にしたいのかということを改めて明確にし、そこから社員の働きがいにつながる個々の施策に落とし込んでいきたいと思う。(鮮コーポレーション株式会社 取締役社長 西田龍一様)
  •  特別顧問の著書を読み、社長の話を直接聞かせていただき、今も変わらず年輪経営を継続されていることを生でお聞かせ頂きまして、感激いたしました。(中国シンワ株式会社 代表取締役 太原真弘様)
  •  企業である以上、数字目標は必須であるという概念が強かった自身の考えを根底からくつがえされる内容でした。信頼関係があるからこそ育てることができ、成長しあえるfamilyとなれるというお言葉がありました。「昔の日本の企業の方法」が今は逆に新しく、日本において、こういう企業が増えるとより強くよい社会となることもできるのでないかと感じた。(ゼネラルスチール株式会社 代表取締役社長 明石依子様)

ミニ講義(株式会社ワーキンエージェント 藤原 輝氏)​

モデレーター

 広島県が考える働き方改革の方向性と働きがいのある会社

 働き方改革コンサルタントであり本イベントのモデレーターである藤原氏から、県の考える働き方改革の方向性等についてお話しいただきました。

  •  働き方改革の施行から3年が経過し、取組のステージは第1ステージの「法令遵守」、第2ステージの「働きやすさ」から第3ステージの「働きがい向上」へと移行。組織に寄りかかる集団から自分らしく働くことができる状態を経て、社員が仕事や職場に対して「おもしろい!」と意欲的・自律的に取り組む状態への飛躍を目指している。

ロールモデル

  •  広島県では「働き方改革」の方向性として、全社員が活躍する組織づくりを目指している。社員の能力の最大化を図ることは、外部環境変化への対応力(レジリエンス)や対応の迅速さ(アジリティー)、多様性の受容と活用(ダイバーシティ&インクルージョン)を生み出し、その結果、企業には持続的な企業成長、そして社員の満足や幸せをもたらす。


ミニ講義
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  •  働きがいを高めるには、ハード(制度づくり)・ソフト(効果的なマネジメント)・ハート(企業文化の醸成)の3つの面へのアプローチが必要。その際、留意すべきなのが、社員の働きがいを高める心理的5要素「仕事に対する誇り」「組織に対する信頼」「組織への貢献」「仕事を通じた成長・自己実現」「働く仲間との連帯感」を意識して働き掛けることである。
  •  人は心を持つ経営資源であり、人的資本への投資が社員の幸せと持続的な企業成長につながることを示す好事例が伊那食品工業の取組と言える。​

グループ意見交換・全体発表・講評​

 特別講演の振り返りと自社の「働きがい」の取組について、グループに分かれて意見交換と発表をしていただきました。

意見交換(1)意見交換(2)

意見交換(3)意見交換(4)

【受講アンケートより】グループ意見交換「テーマ:自社の社員にとっての働きがいとは何か?」について

  •  他の企業様の具体策を知ることができ有意義でした。同じような悩みを、他社様もお持ちなのだと分かり、頑張ろうと思いました。(株式会社フレスタ 取締役 宗兼陽一様)
  •  働きがいは、世代や自分の置かれている状況や立場で、色々な形があると思います。弊社も同じくですが、各社さんで色々と試行錯誤されている中で、しっかりとした答えを出しきれておらず、まだ模索中のような印象が強かった。(株式会社八紘 代表取締役 庄田朋幸様)
  •  給料が良い、時給が高い、休みやすいといった「金銭的報酬」と、認められる、感謝される、美味しいといった「非金銭的報酬」の大きく2つに分かれた。会社、個人ごとに違っていた。アンケートを取っている会社も数社あり、今後参考にしていきたい。(株式会社水みらい広島 理事 坂谷隆太様)
  •  各社の取組や考え方が参考になったと同時に、悩みを共有できたこともよかった。表彰制度や給与明細と一緒に経営者のコメントをつけるといった取組もあったが、無理することなく、社長が楽しみ社員も楽しむといったことが大切なのだと気づかされた。(株式会社広島県リースタオル 代表取締役 田畑裕生様)
  •  事業内容も違う中、社員さんのことを第一に考えている会社ばかりで、良い刺激になりました。(株式会社山豊 代表取締役 山本千曲様)
  •  グループ内の企業の方から積極的な働き方改革への取組についてお聞きすることができました。社内の仲間づくりやコミュニケーションの重要性、自己実現への積極的支援の重要性を感じました。(大津建設株式会社 代表取締役 熊本孝司様)

塚越氏からの講評

 「働きがい」の向上と一口に言っても難しいが、まずは、社員が居心地がよい職場にすることではないだろうか。自分の居場所があり、ちょっとしたことにやりがいを感じられれば、意欲がわく。社員に合わせるというより、社員に寄り添う気持ちで取り組めば、それは社員に伝わり、「安心感」につながる。
 ただ、社員の「働きがい」の向上を目指すことに躍起になって、社長ばかりが苦労しないことも大事。社長自身がつらいと思うことはやめた方がいい。無理をしていると、雰囲気で社員に伝わってしまうからだ。社員も社長も互いに心地よくいられる職場・関係をつくることが働きがいの向上の第一歩ではないだろうか。

塚越さん

【受講アンケートより】​

  •  最後におっしゃった「居心地の良さ」がとても腹落ちしました。働きがいを考えることは大切ですが、千差万別なので悩んでいました。(医療法人社団明和会大野浦病院 会長 久保隆政様)
  •  塚越社長様の、「社員の居心地が良いことがやりがいにつながる」、「社員に会社が寄り添っていることを実感させることが大切」とのご発言には、我が意を得たりとの感あり。深く同意するものである。(テンパール工業株式会社 取締役社長 伊藤豪朗様)

 

参加者交流会

 イベントの最後には講師の塚越氏も交えた参加者同士の交流会を行いました。対面での交流が久しぶりという参加者の方も多かったようで、和やかな雰囲気の中、活発な情報交換が行われました。

交流会(1)交流会(2)

交流会(3)交流会(4)

参加企業一覧 (五十音順)

企業ロゴ

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