消費者契約法は,平成13年4月に施行された,消費者と事業者が結ぶ契約のルールです。
詳しくは,消費者庁ホームページをご覧ください。
【消費者契約法成立の背景と意義】
〈背景〉
- トラブルの増加(消費者と事業者の力の格差)
国民生活センターや消費生活センターなどに寄せられた販売方法,契約・解約に関する相談件数は,平成11(1999)年度約38万件で平成元年(1989)年度約10万件に比べ大幅に増えましたが,この増加理由としては消費者と事業者との間の契約の締結,取引に関する「情報力,交渉力の格差」が原因と考えられ,トラブルの公正かつ円滑な解決のための早急な方策が求められていました。
- 規制緩和の流れ
一方,日本では規制緩和政策が推し進められ,事前規制から市場参加者が守るべきルールをつくるという事後規制へと変わりつつあり,消費者・事業者双方が自己責任を全うできるための環境整備,公正で自由なシステムづくりが急がれていました。
〈法の意義〉
上記のような問題を解決するため,消費者と事業者との間で結ぶ全ての契約(労働契約を除く。)を対象とした新しい民法ルールとして「消費者契約法」が平成13年4月から施行されました。
この法律は,消費者と事業者間の契約上のトラブルに関して,裁判上の規範として消費者の事後救済の容易化,迅速化に役立つとともに,消費者契約上のトラブルの未然防止効果が期待されます。
【消費者契約法のポイント】
適用対象となる契約
消費者と事業者の契約で,労働契約以外の全ての契約に適用されます。
契約の取消しができます
次に掲げる1から6までの事業者の不適切な行為により,消費者が自由な意思決定が妨げられたこと(誤認又は困惑)によって契約した場合には,誤認したことに気づいたとき又は困惑を脱したときから1年以内かつ契約から5年以内であれば契約を取り消すことができます。
1.不実告知(重要な事項について事実と異なることを告げられた)
〈事例〉
- 「事故歴なし」と説明されたので中古車を購入したところ,実際は事故車であった。
※「重要な事項」とは,商品・役務・権利などの内容・質・用途・効果のほか,「生命,身体,財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために必要と判断される事項」とされています。
2.断定的な判断の提供(将来の不確実なことを断定的に言う)
〈事例〉
- 「絶対に損しない,相場は必ず上がるので1ヶ月後には投資したお金が2倍になる」という営業マンの言葉を信じガソリンの先物取引に投資したところ,相場が暴落し投資額の2倍の損を出した。
3.不利益事実の故意の不告知 (重要な事項について不利益になることを故意に言わない)
〈事例〉
- 南側に高層ビルが建つ予定であることを知っていた業者から「日当りが良く,眺めも最高」と勧められ,そのことを知らずにマンションを買ってしまった。
4.不退去(消費者が退去してほしいと伝えているにも関わらず,事業者が退去しない)
〈事例〉
- 布団の訪問販売業者に,「必要ないので返ってくれ」と言ったのに,5時間も粘られてしかたなく高額な羽毛布団を買ってしまった。
(注)訪問販売で購入した場合,特定商取引法により,法定の契約書面を交付された日から8日以内であれば,クーリング・オフ制度により無条件で契約を解除することができます。
5.退去妨害(消費者が退去すると伝えているにも関わらず,事業者が退去させなかった)
〈事例〉
- エステの無料体験に出かけたところ,終了後に高額なコースを勧められ,「帰りたい」と告げたのに帰してもらえず,結局契約してしまった。
(注)エステの場合,法定の契約書面を交付された日から8日以内であれば,クーリング・オフ制度により無条件で契約を解除することができます。
6.過量契約(契約をする商品やサービスが消費者にとって通常の量・回数を著しく超えると知りながら,契約をさせる)
〈事例〉
- 日常的に着物を着用することがない消費者に対して,事業者がそのことを知りながら,消費者が店舗を訪れた際に勧誘し,着物を何十着も販売した。
契約条項が無効になります
契約の中に,消費者の利益を一方的に害する次のような条項が入っている場合,その条項の全部又は一部が無効となります。
1.事業者の損害賠償の責任を免責したり制限する条項
(1)事業者の過失等により生じた損害の賠償責任を免除する条項
〈事例〉
- 駐車場の舗装工事中の穴にハンドルを取られて車をぶつけたが,駐車場入り口の立て看板に「駐車場内で起こった事故等については,一切責任を負いません」と書いてあり,管理者から「当方に過失はあるが,立て看板にあるように責任は負わない」と言われた。
(2)瑕疵(商品の欠陥)担保責任による事業者の責任の全部を免除する条項
〈事例〉
- ペットショップで買った小犬がよく病気をするので検査してもらったところ,先天的な病気だと言われたが,「ペットの引き渡し後は,一切交換,損害賠償等には応じません」と契約書に書いてあるので責任は負わないと業者に言われた。
2.消費者の解除権を放棄させる条項
〈事例〉
- 「販売した商品については,いかなる理由があっても,ご契約後のキャンセル・返品はできません」とする条項。
3.消費者が支払う損害賠償の額を予定する条項
(1)解約時における事業者の平均的な損害を超える違約金を請求する条項
〈事例〉
- 1年間のフィットネスクラブの会員契約をしたところ,1ヶ月後に転勤になり通えなくなった。解約を申し出たところ,「理由に関わらず,契約残存期間6ヶ月以上の解約の場合は料金の80%のキャンセル料をいただきます」という契約条項があるため,20%しか返金できないと言われた。
(2)支払いが遅れた場合の年利14.6%を超える遅延利息を定める条項(14.6%を超える部分の無効)
〈事例〉
- 新車を購入し1週間後に代金を振込むことになっていたところ,2日後に事故で入院してしまい,代金のことは忘れていた。4ヶ月後に退院したところ,業者から「期日までに代金のお振込みがなかった場合,年30%の割合で計算した延滞利息を加算させていただきます」という条項があるので,代金に延滞利息を合算して請求すると言われた。
4.消費者の利益を一方的に害する条項
信義則に反して消費者の権利を制限し,又は消費者の義務を加重する条項
〈事例〉
- 掃除機の購入時,注文していない健康食品が,商品の掃除機に同封されて自宅に届けられた場合に,「消費者が健康食品を継続購入しない旨の電話をしない限り,健康食品を継続的に購入するとみなす」という条項が含まれていた。
+消費者団体訴訟制度とは・・・
消費者契約法には,消費者団体訴訟制度についても規定されています。これは,消費者全体の利益を守るため,一定の消費者団体(「適格消費者団体」といいます)に,事業者の不当な行為に対して「差止請求」する権利を認めるものです。
広島県の適格消費者団体「消費者ネット広島」のホームページはこちら をご覧ください。
「消費者団体訴訟制度」についてはこちら をご覧ください。
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