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消費者契約法とは

印刷用ページを表示する掲載日2023年6月1日

消費者契約法とは

 消費者が事業者と契約をするとき、両者の間には持っている情報の質・量や交渉力に格差があることから、消費者の利益を守るため、平成13年4月1日に消費者契約法が施行されました。

 消費者契約法は、消費者契約について、不当な勧誘による契約の取消しと不当な契約条項の無効等を規定しています。

 詳しくは、消費者庁ホームページをご覧ください。

消費者契約法成立の背景と意義

背景

  • トラブルの増加(消費者と事業者の力の格差)
     国民生活センターや消費生活センターなどに寄せられた販売方法、契約・解約に関する相談件数は、平成11(1999)年度約38万件で平成元年(1989)年度約10万件に比べ大幅に増えましたが、この増加理由としては消費者と事業者との間の契約の締結、取引に関する「情報力、交渉力の格差」が原因と考えられ、トラブルの公正かつ円滑な解決のための早急な方策が求められていました。
  • 規制緩和の流れ
     一方、日本では規制緩和政策が推し進められ、事前規制から市場参加者が守るべきルールをつくるという事後規制へと変わりつつあり、消費者・事業者双方が自己責任を全うできるための環境整備、公正で自由なシステムづくりが急がれていました。

法の意義

 上記のような問題を解決するため、消費者と事業者との間で結ぶあらゆる消費者契約を対象とした新しい民事ルールとして「消費者契約法」が施行されました。
 
 この法律は、消費者と事業者間の契約上のトラブルに関して、裁判規範として消費者の事後救済の容易化、迅速化に役立つとともに、消費者契約上のトラブルの未然防止効果が期待されます。

消費者契約法のポイント

適用対象となる契約

 消費者と事業者の契約(=消費者契約)で、労働契約以外のあらゆる契約に適用されます。

契約の取消し

 次に掲げる事業者の不当な行為により、誤認し、又は困惑したことによって契約し、若しくは過量な内容の契約をした場合には、消費者は当該契約を取り消すことができます。

 この取消権は、​​追認をすることができるときから1年間、契約したときから5年間、行使することができます。(「霊感等による知見を用いた告知」の場合の取消権は、それぞれ3年間、10年間、行使することができます。)​


うそを言われた(不実告知​

重要な事項について事実と異なることを告げた。

  • 〈例〉「この機械を付ければ電気代が安くなる」と勧誘し、実際にはそのような効果のない機械を販売した。
  • 〈例〉真実に反して「溝が大きくすり減っていて、このまま走ると危ない、タイヤ交換が必要」と告げ、新しいタイヤを販売した。

 (注)「重要事項」とは、物品、権利、役務などの消費者契約の目的となる質、用途、対価その他の内容・取引条件であって、消費者の当該消費者契約を締結するか否かについての判断に通常影響を及ぼすものとされています。

 また、消費者契約の目的となるものが当該消費者の生命、身体、財産その他の重要な利益についての損害又は危険を回避するために通常必要であると判断される事情についても「重要事項」に該当します。


不利になることを言われなかった(不利益事実の不告知)

 消費者の利益となる旨を告げながら、重要事項について不利益になることを故意に告げなかった。

  • 〈例〉眺望・日照を阻害する隣接マンションの建設計画があることを知りながら、そのことを説明せずに「眺望・日照良好」と説明してマンションを販売した。

(注)「重要事項」については、「不実告知」の場合と同じです。

 不利益となる事実を故意に告げなかった場合だけでなく、重大な過失によって告げなかった場合にも取り消しが認められます。


必ず値上がりすると言われた等(断定的判断の提供)

 将来における変動が不確実な事項について確実であると告げた。

  • 〈例〉将来値上がりすることが確実ではない金融商品を「確実に値上がりする」と説明して販売した。

通常の量を著しく超える物の購入を勧誘された(過量契約)

 消費者にとっての通常の分量を著しく超えることを知りながら、消費者契約の勧誘をした。

  • 〈例〉一人暮らしであまり外出せず、日常的に着物を着用することもない高齢の消費者に対して、事業者がそのことを知りながら、その消費者が店舗を訪れた際に勧誘し、着物を何十着も販売した。

お願いしても帰ってくれない(不退去)

 消費者が退去してほしいと伝えているにも関わらず、事業者が退去しなかった。

  • 〈例〉消費者の自宅等において、消費者が何度も帰ってほしい旨を告げているのに勧誘を続けて販売した。

(注)訪問販売で購入した場合、特定商取引法により、法定の契約書面を交付された日から8日以内であれば、クーリング・オフ制度により無条件で契約を解除することができます。


帰りたいのに帰してくれない(退去妨害)

 消費者が退去すると伝えているにも関わらず、消費者を退去させなかった。

  • 〈例〉エステの無料体験終了後に高額なコースを勧め、消費者が何度も帰りたい旨を告げているのに勧誘を続け、契約させた。

(注)エステの場合、法定の契約書面を交付された日から8日以内であれば、クーリング・オフ制度により無条件で契約を解除することができます。


退去困難な場所へ同行

 勧誘することを告げずに消費者を退去困難な場所へ連れて行き、その場所において勧誘した。​

  • ​〈例〉旅行に行こうと告げて消費者を山奥の別荘に連れて行って商品を販売した。

威迫により相談の連絡を妨害

 消費者が契約を締結するか相談を行うため、電話等によって第三者に連絡したいと言ったが、事業者が威迫する言葉を交えて連絡を妨害して勧誘をした。​

  • ​〈例〉ウォーターサーバーを買うか親と相談したいと消費者が言ったのに、それはダメだと相談を妨害して勧誘した。

就職セミナー商法等(不安をあおる告知)

 社会生活上の経験が乏しいことから、消費者が進学、就職、結婚、生計、容姿・体形などの願望の実現について過大な不安を抱いていることを知りながら、不安をおおり、契約が必要と告げた。

  • 〈例〉就活中の学生の不安を知りつつ、「このままでは一生成功しない、この就職セミナーが必要」と勧誘し、契約させた。

(注)「社会生活上の経験が乏しい」か否かは、消費者の年齢によって定まるものではなく、中高年であっても該当する場合があります。


デート商法等(好意の感情の不当な利用)

 社会生活上の経験が乏しいことから、消費者が勧誘者に好意の感情を抱き、かつ、勧誘者も同様の感情を抱いているものと誤信していることを知りながら、契約しなければ勧誘者との関係が破綻すると告げた。

  • 〈例〉SNSで知り合った女性と何度か連絡をして好きになった。その女性から、もうかる投資システムがあるという話を持ちかけられ、「そのためにはDVDを購入する必要がある」などと勧誘された。躊躇していると、「買ってくれないなら、今までのように関係を続けられない」と言われ、契約してしまった。

高齢者等が不安をあおられた(判断力の低下の不当な利用)

 加齢や心身の故障により判断力が著しく低下していることから、消費者が現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、不安をあおり、契約が必要と告げた。

  • 〈例〉加齢により判断力が低下した消費者に対し、「投資用マンションを買わなければ、定期収入がなく今のような生活を送ることは困難である」と告げて勧誘した。

霊感商法等(霊感等による知見を用いた告知)

 霊感等の特別な能力により、消費者又はその親族の生命、身体、財産等について、そのままでは現在生じ、若しくは将来生じ得る重大な不利益を回避できないと不安をあおり、又は不安を抱いていることに乗じて、契約を締結することが必要不可欠と告げた。

  • 〈例〉「私には霊が見える。あなたには悪霊がついており、そのままでは病状が悪化する。悪霊を祓うには、この真珠を買うことが不可欠である」と告げて勧誘した。

契約前なのに強引に代金を請求される等(契約締結前に債務の内容を実施等)​

  1. 契約締結前に、契約による義務の全部若しくは一部を実施し、又は目的物の現状を変更し、実施前の原状の回復を著しく困難にした。
  2. 契約締結前に、契約締結を目指した事業活動を実施し、これにより生じた損失の補償を請求する旨等を告げたりした。 
  • 〈例1〉貴金属の買取りの際に指輪に付いていた宝石を鑑定のために取り外し、元に戻すことを著しく困難にして勧誘した。
  • 〈例2〉別の町の事業者から、マンション投資の勧誘で会ってほしいと言われ会ったが、「あなたのためにここまで来た、断るなら交通費を支払え」と告げ、勧誘された。

契約の無効

 契約の中に、消費者の利益を一方的に害する次のような条項が入っている場合、その条項の全部又は一部が無効となります。


事業者は責任を負わないとする条項

(1)事業者の損害賠償責任の全部を免除する条項や、事業者の故意又は重過失による場合に損害賠償責任の一部を免除する条項

  • 〈例〉「当社のコンピューターシステム、ソフトウェアの故障、誤作動により生じた損害については、当社は免責されるものとします」とする条項
  • 〈例〉「当スポーツジムは、会員の施設利用に際し生じた損害、盗難等の人的・物的ないかなる事故についても一切責任を負いません」とする条項
  • 〈例〉「当社の損害賠償責任は○○円を限度とします」とする条項

(2)事業者が、責任の有無や限度を自ら決定する条項

  • 〈例〉「当社が過失のあることを認めた場合に限り、当社は損害賠償責任を負うものとします」とする条項

消費者はいかなる理由でもキャンセルできないとする条項

(1)消費者の解除権を放棄させる条項

  • 〈例〉「販売した商品については、いかなる理由があっても、ご契約後のキャンセル・返品はできません」とする条項

(2)事業者が、消費者の解除権の有無を自ら決定する条項

  • 〈例〉「お客様は、当社に過失があると当社が認める場合を除き、注文のキャンセルはできません」とする条項

事業者の免責の範囲が不明確な条項

 賠償請求を困難にする不明確な一部免責条項(軽過失による行為にのみ適用されることを明らかにしていないもの)は無効となります。

  • 〈無効となる例〉 当社は、法律上許される限り、1万円を限度として損害賠償責任を負います。

(注)事業者に故意・重過失がある場合には全額を賠償してもらえるのに、「法律上許される限り」との記載では、そのことがわからず、消費者は賠償を受けられないと誤解してしまいます。よって、軽過失の場合にのみ適用されることが記載していない契約条項は無効となります。

  • 〈有効となる例〉当社は、軽過失の場合には、1万円を限度として損害賠償責任を負います。

成年後見制度を利用すると契約が解除されてしまう条項

 消費者が後見開始等の審判を受けたことのみを理由として、事業者に解除権を付与する条項は無効になります。

  • 〈例〉アパート等の賃貸借契約の条項のうち、「賃借人(消費者)が、後見開始の審判を受けたときは、賃貸人(事業者)は直ちに本契約を解除できる」とする条項

平均的な損害の額を超えるキャンセル料条項

 キャンセル料のうち、契約の解除に伴う平均的な損害額を超える部分や、遅延損害金につき年利14.6パーセントを超える部分についての条項は無効になります。

  • 〈例〉 結婚式場等の契約において「契約後にキャンセルする場合には、以下の金額を解約料として申し受けます。実際に使用される日から1年以上前に場合:契約金額の80パーセント」とする条項
  • 〈例〉「合格者は所定の期限までに手続きを完了しなければ入学資格を失います。いったん納付された学生納付金(入学金及び授業料等)は、いかなる事情があっても返金しません」とする条項
  • 〈例〉「毎月の家賃は、当月 20 日までに支払うものとする。前記期限を過ぎた場合には1か月の料金に対し年30パーセントの遅延損害金を支払うものとする」とする条項(年14.6パーセントを超える部分が無効となります。)

消費者の利益を一方的に害する条項

 任意規定の適用による場合と比べ消費者の権利を制限し、又は義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効になります。

  • 〈例〉売買契約の目的物の種類又は品質が、契約内容に適合していない場合、民法では、買主はそのことを知ったときから1年以内に通知をする必要があるところ、正当な理由がないのに、この期間を不当に短く定める条項

事業者の努力義務

 事業者は消費者に対し、情報提供や説明に努める必要があります。


勧誘時の情報提供等

 事業者は、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければなりません。

  1. 契約条項を定めるに当たって、その解釈について疑義が生じない明確で平易なものにするよう配慮すること。​
  2. 勧誘に際し、契約の目的物の性質に応じ、事業者が知ることのできた個々の消費者の年齢、心身の状態、知識及び経験を総合的に考慮した上で消費者契約の内容について必要な情報を提供すること。

定型約款の表示請求権に関する情報提供

 事業者は、消費者が民法上の定型約款の表示請求権を行使するために必要な情報を提供するよう努めなければならなりません。​


解除権行使に必要な情報提供

 事業者は、消費者から求められたら解除権の行使に必要な情報を提供するよう努めなければなりません。

  • 〈例〉どうすれば解約できるのか教えてほしいとの消費者からの問い合わせに対し、「ウェブサイトのマイページの中のお問い合わせのページに進むと「解約する」という表示がでるので、そこをクリックしてください。」などと説明すること。

解約料の算定根拠の説明

 事業者は、解約料を請求する際に消費者から求められたら、解約料の算定根拠の概要を説明するよう努めなければならない。​

  • 〈例〉挙式10か月前なのに挙式代金の全額をキャンセル料とする場合の算定根拠についての消費者から問い合わせに対し、その概要を説明すること。

適格消費者団体の要請に対応

 事業者は、適格消費者団体から、(1)不当条項と疑われる契約条項の開示、(2)解約料の算定根拠(営業秘密は除く)の説明、(3)差止請求を受けて行った措置の内容の説明を要請されたときは、これに応じるよう努めなければならない。

 

消費者団体訴訟制度とは・・・

 消費者被害は、同じような種類の被害が多数の消費者に生じる特徴があります。こうした消費者被害の未然の防止、拡大の防止のため、消費者契約法には、消費者団体訴訟制度についても規定されています。これは、消費者全体の利益を守るため、一定の消費者団体(「適格消費者団体」といいます)に、事業者の不当な行為に対して「差止請求」する権利を認めるものです。

 広島県の適格消費者団体「消費者ネット広島」のホームページはこちら をご覧ください。

「消費者団体訴訟制度」についてはこちら をご覧ください。

 


「契約の取消し」「契約の解除」「事業者の努力義務」の部分は、消費者庁パンフレット「知っていますか?消費者契約法」(令和5年3月)を参考に作成しました。

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