「ひろしま『ひと・夢』未来塾」のプロフェッショナルコースの第5回講座を開催しました。
・「『心に残る島 おぢか』 DMOが地域を変える!」 講師 高砂樹史氏(株式会社小値賀観光まちづくり公社 代表取締役)
DMOとは:観光地のマーケティング,プロモーションやブランディングをはじめ,安全・品質・資源管理など,観光地の総合的なマネジメントを行う組織のこと。
高砂氏は,10年間の「わらび座」での劇団生活を経て,自給生活を目指し,平成17年に小値賀島へ移住されました。移住後,小値賀島で取り組まれている民泊や古民家を再生させた宿泊施設を活用した着地型観光等について,説明していただきました。
小値賀島の位置
小値賀島は,長崎県佐世保港から海上を西に約60km,佐世保からフェリーでおよそ3時間,福岡からのフェリーではおよそ5時間の船旅で到着する,人口2,600人ほどの小さな島です。
島での生活を送る中で,進学等で島を離れた子供たちが,実は島に戻ってきたいと思っていることを知った高砂氏は,子供たちが戻って来れるよう,島に雇用を生み出す方策を考えました。九州本土からも長時間の移動を必要とするこの島で,“たくさんの人を呼ぶ”ような観光事業に取り組んでも成果を上げるのは困難です。そこで逆転の発想をして,不便な場所だからこそ残されているもの,わざわざこの島に来ないと体験できないことに着目することにしました。
長崎県での民泊の規制緩和を契機として,平成18年3月から小値賀島の7軒の家で民泊に取り組み始めました。漁師や農家等の一般家庭に宿泊し,魚を釣ってさばいたり,郷土料理づくりを手伝ったりして島の暮らしを体験します。島外の人との交流は島民にとっても楽しみとなり,“島ぐるみのおもてなし”が定着していきました。
また,古民家を再生した宿泊施設の整備にも取り組まれました。最近は,一人旅の需要が増えていることを踏まえ,古民家に宿泊しながら,地域の食や島民との豊かな交流などを楽しむことができる,上質な旅行プランを生み出されています。
古民家:一会庵
高砂氏は,全国で行われてきた「観光地づくり」は地域特性を活かさず,他地域の成功事例をまねたものが多く,無個性なものになりがちであると指摘されています。小値賀島での取組は,地域で受け継がれてきた「小値賀ならでは」の価値を大切にされています。
東京から島を訪ねてきた人が小値賀島を褒めてくれることで,島民は自分たちの暮らしぶりや価値観が他地域の人にも受け入れられるものであるということに気付き,より一層地域に誇りを持つようになったそうです。
高砂氏の講義は地域づくり活動を考え,実践していく中で非常に重要なコンセプトが詰まっており,塾生たちは熱心に聞き入っていました。
今回は,高砂氏にも参加していただき,グループワークに取り組みました。講義内容を踏まえ,地域の魅力の活かし方や地域住民との関わり方などについて,高砂氏からアドバイスをいただきました。
塾生が集まってワークに取り組むのは今回が最後だったので,プランがほぼ形作られたグループもありましたが,まだ,調査や検討すべきことが多いグループもあり,プラン発表会に向けて,それぞれのグループで今後の進め方について打合せを行いました。