父さんの話をきいているうちに、僕は、父さんの働いている所をどうしても見たくなった。母さんに道を教えてもらった。父さんの働いているガソリンスタンドは、大通りにある。車の出入りがとても多い。父さんは、車の給油、洗車、ブレーキの点検、安全誘導、スタッフへの指示など、大きな声でテキパキと仕事をしている。お客さんに文句を言われてもいやな顔ひとつしていない。手袋もせず、ほとんど素手だ。(そうなんだ、父さんの手は、油が染み込んでいて、がさがさしていて・・触られると、チクチクする父さんの『あの手』は仕事の手なんだ。父さんも母さんも家族のために一生懸命働いている手なんだ。僕がいけなかったんだ。この手は悪いことをするためにあるんじゃあない。僕の心が弱かったんだ。父さん、母さん、ごめんよ、本当にごめんよ。)僕は心の中で何度も何度もあやまった。