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知事記者会見(核軍縮等に関する「ひろしまレポート2019年版」:平成31年4月4日)

印刷用ページを表示する掲載日2019年4月4日

  記者会見などにおける知事の発表や質疑応答を広報課でとりまとめ,掲載しています。
 なお,〔 〕内は注釈を加えたものです。
 動画はインターネットチャンネルのサイトでご覧になれます。(別ウィンドウで表示されます)

 会見日:平成31年4月4日(木曜日)

発表項目 

〔動画:発表項目1/3〕 〔動画:発表項目2/3〕  〔動画:発表項目3/3〕

  • 核軍縮等に関する「ひろしまレポート2019年版」について

質問項目

〔動画:質問項目〕

  • 核軍縮等に関する「ひろしまレポート2019年版」について

会見録

 (司会)
 定刻となりましたので,ただ今から知事会見を開催いたします。本日の発表項目は,核軍縮等に関する「ひろしまレポート2019年版」についてでございます。なお,本日の会見には,国際平和拠点ひろしま構想推進委員会委員で,一橋大学国際・公共政策大学院長,大学院法学研究科教授の秋山信将様,公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター主任研究員の戸崎洋史様にご同席いただいております。終了時間は14時15分を予定しております。では,これより説明に移らせていただきます。ご質問は,知事,戸崎様,秋山様の説明終了後に,まとめてお願いいたします。それでは,説明の方よろしくお願いいたします。

 核軍縮等に関する「ひろしまレポート2019年版」について

 (知事)
 それでは,「ひろしまレポート2019年版」を発表いたします。本日は,今,ご紹介がありましたとおり,国際平和拠点ひろしま構想推進委員会委員を務めていただいております,一橋大学国際・公共政策大学院長,大学院法学研究科教授の秋山信将先生,また「ひろしまレポート」の作成を受託いただいております日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター主任研究員の戸崎洋史様にご同席いただいておりますので,ご紹介を申し上げます。それでは,ご説明をいたします。今回の2019年版で7回目となります「ひろしまレポート」は,「国際平和拠点ひろしま構想」を具体化する取組の一つとして,各国の核軍縮に向けた取組状況を,国内外に発信することで,国際社会における核兵器廃絶のプロセスを着実に進めるための機運醸成を図ることを目指しておりまして,取りまとめは,日本国際問題研究所に委託して行っております。評価対象国は36か国,評価項目は65項目で,これはいずれも昨年と同様でございます。次に2018年の分野ごとの主な動向についてご説明を申し上げます。まず,核軍縮分野についてですけれども,核兵器禁止条約,TPNWへの署名・批准が進んだ国では評点率が上がったものの,アメリカの中距離核戦力全廃条約,いわゆるINF〔全廃〕条約ですけれども,INF〔全廃〕条約からの脱退宣言など,軍縮に逆行する動きが見られたことや,核保有国において核兵器の近代化・強化を図る動きが見られたため,全体としては停滞傾向にあると言えると考えております。また,朝鮮半島における南北首脳会談や初の米朝首脳会談が開催されたことや核実験の中止宣言などによりまして,北朝鮮の評点率が上がっております。核不拡散分野については,核兵器国が民生用分離プルトニウムの量の報告書をIAEA〔国際原子力機関〕に提出しなかったということがございまして,点を落としておりますけれども,分野としては顕著な動きが見えないところであります。核セキュリティ分野については,高濃縮ウランや民生用プルトニウムなど,兵器利用可能な核分裂性物質の保有量を削減したことによりまして点数を上げた国,また核セキュリティレベルの維持・向上に取り組んだ国が点数を上げる結果となりました。続いて,発信力向上のための取組といたしまして,まず,国連の中満泉軍縮担当上級代表から,2020年NPT運用検討会議の重要性に言及し,会議の成功と核兵器廃絶に向けた共通の道筋を見出すことに向けた力強い決意を示した特別寄稿を頂きまして掲載しております。また,専門家の意見を踏まえまして,冊子サイズをA4版からB5版に変更しております。これはB5版が外交青書や他の研究図書でも多く採用されているというところから,こういう形にしております。併せまして,今年は元米国の上院議員で核脅威イニシアティブ,これはNGOですが,この共同代表であるサム・ナン氏,在ウィーン国際機関代表部アルゼンチン大使〔であり〕2020年NPT運用検討会議の議長候補でもありますラファエル・マリアーノ・グロッシ氏,元英国国防大臣そして先ほども〔言及が〕ございましたNTI〔核脅威イニシアティブ〕副代表でありますデスモンド・ヘンリー・ブラウン氏から推薦文を頂きまして,裏表紙に掲載しております。今後,各国の軍縮担当者や軍縮・安全保障の専門家等に活用いただけるよう,広く発信して参りたいと考えております。それでは,2018年の核軍縮・核不拡散・核セキュリティを巡る動向につきまして,まず戸崎研究員,続いて秋山教授にご説明を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

 (戸崎研究員)
 ご紹介いただきました日本国際問題研究所の戸崎と申します。まず,この「ひろしまレポート」の作成事業につきまして,7回目ということでございますけれども,引き続き,ご担当させていただけましたということにつきまして,湯崎知事,それから平和推進プロジェクト・チームの皆さまに,深くお礼申し上げたいと思います。ありがとうございます。湯崎知事からもお話がございましたけれども,私の方からは核軍縮,不拡散,核セキュリティを巡る昨年の動向につきまして,まずは概観ということでお話しさせていただきたいと思います。知事も先ほど申し上げられましたけれども,まず核軍縮につきましては,やはり停滞,逆行というところがあるのだろうと思います。これは昨年,特徴的に顕在化したというわけでは必ずしもないかもしれませんけれども,その中でも新しい動きがあったということで,いくつかご紹介したいと思いますけれども,核兵器の数については,これはSIPRI〔ストックホルム国際平和〕研究所,スウェーデンの研究所ですけれども,そちらの推計では少しずつは下がってきていると,削減されてきているということが見積もられておりますけれども,他方で核戦力の近代化,質的な状況というところでは,引き続き続いているというところであります。核兵器を保有している国は,9か国,今あると言われていますけれども,そのいずれもが核戦力の近代化であったり,強化であったりということを進めてきておると。〔それ〕で,昨年まではロシア,中国,インド,パキスタン,これに北朝鮮が,より積極的と言いますか,活発な近代化の活動を進めていたわけでございますけれども,皆さまご存じのとおり,昨年,アメリカがNuclear Posture Review,核態勢見直しを発表いたしまして,その中でアメリカが,それまで言っていた,今持っている核戦力を新しくしていくというところ,1対1の近代化というところをこれまで言ってきたわけですけれども,それに加えまして低威力の核弾頭を潜水艦発射の弾道ミサイルに搭載すると〔いうことがありました〕。それから,核のSLCM〔潜水艦発射巡航ミサイル〕,かつてアメリカは持っていましたけれども,2013年に退役したというものがございますけれども,新たにこれを再び持つということ,開発していくということを打ち出したというところで,これまでと,そのアメリカの態度が違ってきているというところが一つあろうかと思いますし,安全保障環境が非常に厳しくなっていく,そのアメリカの核態勢見直しの中で,大国間競争であったりあるいは地政学的競争と呼ばれるような,安全保障環境の厳しさというところがあるわけですけれども,その中で,その核兵器の役割が再認識されている。これは,より明確に何か言葉として発せられたというよりは,より全体的な雰囲気,あるいは各国の政策担当者などの発言などをより拾っていくと,というところになるのだろうと思いますけれども,そうした核兵器の核抑止〔力〕であったり,核兵器の役割の再認識というものが進んでいるようにも思われます。それから昨年大きな出来事といたしましては,米露間のINF〔全廃〕条約,これは1987年に合意されまして,両国の地上配備の中距離のミサイルを全廃するという条約でございましたけれども,ここ数年,ロシアのこの条約への違反と,違反して,そうした中距離のミサイルを保有してるのではないかという疑惑が言われてきておりました。この疑惑は,まだ晴れていないわけでございますけれども,これへの対抗措置という形で,アメリカが昨年,条約からの脱退を宣言いたしました。2017〔正しくは2019〕年2月に実際に脱退を通告するということになるわけですけれども,2018年の段階では脱退の宣言ということで実際にはまだ脱退していないので,こちらの「ひろしまレポート」の評点の方には必ずしも反映されているわけではないのですけれども,こうした大きな出来事があったということ,それから,米露間ではもう一つ,新START条約〔新戦略兵器削減条約〕,こちらは戦略核の削減を定めた条約でございましたけれども,2021年に失効すると,〔それ〕で,失効してしまいますと,戦略核を制限する条約はなくなるということで,この延長問題というものが,どうするのかということ,延長するのか,新しい条約を作るのか,いろいろオプションはあるかと思いますけれども,そうした議論が必要だというような,例えば専門家であったり,提案・提言等あるわけでございますけれども,これに関する議論,交渉というものは両国間では中々進んでいないという状況でございます。それからCTBT〔包括的核実験禁止条約〕,FMCT〔兵器用核分裂性物質生産禁止条約〕です。これも長年のことということになってしまいますけれども,昨年も,必ずしも状況に大きな変化はなかったと,残念な結果であったということが言えようかと思います。〔それ〕で2017年に策定されました核兵器禁止条約でございますけれども,こちらの方は署名国,それから批准国をおそらく推進派の国々が想定していたよりは〔署名が〕進んでいないのかもしれませんけれども,それでも,その数は増えてきておるということで,署名国については,これは2018年末の段階ですけれども,56〔か国〕から69か国,それから批准国については3〔か国〕から19〔か国〕ということで着実に増えてきています。他方,核保有国それから日本を含めた同盟国です。こういった国々は条約には署名していませんし,署名するつもりはないということを発言しておると,とりわけ5〔ある〕核兵器国は,共同で会議を開催する時などは,やはり,この条約には入らないということ,反対するということを明確に発言しているということでございますし,賛成国,それから反対国の間の,この〔核兵器禁止〕条約もそうですし,核軍縮へのアプローチと,この亀裂は,この条約成立前からあったわけでございますけれども,より拡大してきているのかなと思います。続きまして核不拡散の問題でございますけれども,昨年,皆さまご承知のとおり,北朝鮮が非常に積極的な外交攻勢を展開していく中で,3回の南北首脳会談,それから初の米朝首脳会談が開催されたということは,非常に大きなニュースになったかと思います。その中で北朝鮮が,核,あるいはミサイル実験の中止を行う,それから核実験場については,坑道,実験場の入口のところを爆破するということを行いましたけれども,実際にその実験場が,不可逆的な廃棄と我々申し上げておりますけれども,〔核実験場が〕使えなくなったかというところはわからないというところ,これは2019年の動向でございますので,2018年のところに必ずしも反映されているわけではございませんけれども,そうしたようなことを行ったと〔いうことです〕。それから,北朝鮮は非核化ということをあらためてコミットしたわけでございますけれども,実際に核兵器を放棄するという戦略的な決定を行っているのかというところについては,まだクエスチョンマークが残ると〔いうところです〕。彼らは「朝鮮半島の非核化」と〔主張していまして〕,特に日本,アメリカなどは「北朝鮮の非核化」と言うわけですけれども,彼らは「朝鮮半島の非核化」ということを言っていて,そこには,例えば米韓同盟をどうするかであったり,それからグアムに展開されているアメリカの戦略爆撃機であったり,そうしたところを視野にいれた発言と言われておりますし,これは2018年ではありませんけれども,それ以前には,北朝鮮も核兵器を廃棄するのだと,ただし,それは「核兵器がない世界に至れば」ということを発言したりしているということで,実際に北朝鮮が核を放棄する決意を持ったのかどうかというところは,まだわからない。しかも安保理決議への違反というものを北朝鮮は繰り返していて,違法調達,不法取引,それから昨年,より大きなニュースになったのが「瀬取り」でありますけれども,船を二つつけて石油などをやりとりするといったようなことが行われていたというところであります。それから,もうの一つ重要な核問題としてイランの核問題があるわけですけれども,イランは引き続きJCPOA〔包括的共同作業計画〕の履行を継続していると〔いうことでございます〕。それから,その下で追加議定書,これにはまだ,批准はしていませんけれども,暫定的な適用を行っているということで,補完的なアクセス〔も実施され〕,これは非常に,短期間の通告でIAEAが見たいと言うところに査察を行うというものでございますけれども,非常に厳しい査察でありますけれども,それも行っているというところでありますが,他方,2018年には懸念されていたとおり,アメリカが,このJCPOAから脱退すると。それからイランに対する制裁というものを再開するということで,イランもこれに対してJCPOAから抜けるのではないかというような懸念も持たれていますけれども,今のところは,引き続き遵守をイランの方は続けているという状況であります。〔それ〕で,輸出管理については,途上国を中心に一層の強化の必要性があるということ,それから昨年,もう一つ挙げさせていただくとすれば,サウジアラビアの原子力協力〔協定交渉〕の問題で,サウジアラビア自身は原子力の開発で,〔発電用〕原子炉を作っていくという計画を持っているわけでありますけれども,「平和利用として行うんだ」ということを繰り返し言いますけれども,他方で,サウジアラビアの皇太子が「いや,イランが核兵器を持てば,自分たちも間違いなく持つのだ」と言ってみたりしており,その原子力開発が核兵器開発に繋がるのではないかというような懸念も持たれているというところであります。最後に核セキュリティにつきましては,昨年,核セキュリティ関連の大きなイベントがなかったということもありまして,中々新たな,例えばコミットメントであったりというところが見えてこないという,少々調査する側にとっては難しい状況でございました。もう一つ,核セキュリティというのは非常に,テロ対策というものもありまして,表に中々出ないところもある。それから細かな具体的な措置が講じられているというところもありまして,中々そこがオープンにならないというのはございますけれども,原子力活動を行っている責任のある国々は,こうした核セキュリティの活動について,引き続き,適切なと言いますか,着実な取組というものを行っているのではないかというのが私どもの調査の結果,〔調査の〕の結論でございます。とりわけ,そのさまざまな条約がございますけれども,そこに入る国々というものも増えておりますし,リスクのある核物質,例えばプルトニウムであったり,高濃縮ウランであったりというものの量が削減している〔し〕,そもそも,それが存在しない国・地域というものも少しずつ増えてきておりますし,昨年,日本〔で〕ということであれば,プルトニウムの保有量を削減するという新たな方針も打ち出したというところでございます。ということで,核不拡散・核セキュリティにつきましては,昨年度と同じようなと言いますか,いくつか,北朝鮮の動向というようなものもございますけれども,より大きく見れば,悪くなったということでは必ずしも無かったのだろうと思いますけれども,核軍縮については,引き続き,厳しい状況が続いておるというところであろうかと思います。私の方からは以上でございます。

 (秋山教授)
 それでは,引き続きまして秋山の方からこのレポートについて,それから核軍縮の状況全般についてと,このレポートの意義についてお話させていただければと思います。私自身はこのレポートの作成には,今年度というかここ数年間はかかわっておりませんでしたけれども,このプロジェクトの重要性については,非常に良く理解しているつもりでございます。〔それ〕で,毎年NPTの運用検討会議あるいはその準備委員会に出席させてもらっているわけですけれども,こうした場で,このような,基本的にはNPTにおける各国の約束の履行についての評価を第三者の目を通じて客観的に出すということが,実はあまりこのレポートが出るまでなされてこなかったわけです。先ほど知事の方からもお話にあったNuclear Threat Initiative〔核脅威イニシアティブ〕という団体が核セキュリティの対応に関して毎年,ニュークリアセキュリティインデックスというのを出してはいるんですけれども,核軍縮・核不拡散に関して,このような包括的なレポートというのは世界的に見てもあまりなくて,そういう意味ではこの2013年から継続して,こうしてレポートを出しているというのは,ある意味ではあまり大きな政治的なアピールにはならないかもしれませんけれども,きわめて重要な平和へのあるいは核軍縮への貢献ではないかと考えております。今回のレポートに関しては,今,戸崎先生がご指摘されたサマライズしていただいたとおりでして,〔それ〕で核軍縮に関して点数を見てみても,核兵器国あるいは核保有国の取組という点ではかなり後退がみられるということ。それから非核兵器国の間では,ある意味では分裂がみられるというか,非核兵器国の中でも核軍縮に関して取組を向上させた,ポイントが上がった国もある一方で多くの国でポイントが下がっているというのもあり,これはおそらく一つは国際安全保障環境全体の悪化にともなって核兵器の役割が見直されてきたという残念な傾向があるのと,そうした傾向の中で,核を巡る分裂がより深刻化してきて,核軍縮にどのように取り組んでいくのかという方向性が見失われている状況にあるんではないかと見えるわけです。こうした分析というのは,実はこのようなレポートを毎年出してもらってそれをこう何というんですか,眺めながら趨勢の変化というものを見てみると意外とよくわかるもんなんだなと思っております。この評価ですけれども,先ほど知事の方からご指摘がありましたが,INFの問題であるとかNPR〔核態勢見直し〕あるいは北朝鮮といった,ある意味では非常にそのニュースバリューのある大きな変化をもたらしうるようなイベントが,どのようにこの中に評価されうるかというところが中々大きな挑戦ではないかと思われます。おそらく記者の方々,みなさん後でレポートを読んでいただくとわかるかと思うのですが,その辺り多少不満に感じるところがあるのではないかなと思います。私もこれは今,戸崎先生と知事ともいろいろと意見交換をさせていただいたのですが,どのように評価の指標を設定するのか,あるいはどのようにをその評価の,変化について評価を下すのかというところです,量的な変化と質的な変化,これをどのように反映させるのか非常に難しいなと感じた次第であります。ただ,その基本的にこのレポートは,そうした量的な変化あるいは質的な変化であっても何らかの形で数値化をして,より変化なりあるいは貢献度なりを見やすくするということで,何て言うんですか,核軍縮がどれくらい進んでいったか,あるいは各国の主張する核軍縮の在り方,あるいは我々がそうした核軍縮の進展をどう評価するかという目的に対して重要なこうベースラインというんですか,基盤を提供するものなのだろうなと思っています。さらに言うと,これは例えばステイトメントを出したから核軍縮が進んだのかどうかではなく,ステイトメントあるいはいろんな約束事があって,そこから結果として,どんな成果が,目に見える成果が導き出されたのかという非常にサウンドな評価を下すという意味で,もしかしたら我々の持っているイメージとこの数値というのは多少かい離があるのかもしれないですけれども,それにも関わらずやはりこの具体的な数値として目に見える結果を評価していくという意味では,完璧とは言えないかもしれないですけれども,非常に有意義なレポートなんではないかと見ております。あと,2020年に向けて2020年にNPTの運用検討会議が開催されて,今年は今月末からです。それに向けて最後の準備委員会が開催されるわけですけれども,この2020年というのは,まさにNPTが発効してから50年に当たる節目の年でもあり,各国ともどのようにこの会議を成功に導くかということ,いろいろ考えてはいると思うんですが,ご案内のとおり非常に苦しいというか厳しい状況に今あるということだと思います。振り返ってみると2010年に,当時のカバクチュランというフィリピンの大使が議長をやっておられたが,ある意味アクロバティックな形で64項目の行動計画というものをまとめあげました。本来運用検討会議,再検討会議の最終文書というのはレビューをする,レビューカンファレンスする。各条約の履行状況について検討した,いわゆるバックワード,これまでの振り返りの部分と将来の約束という2つのセクションからなっているわけですけれども,それまで振り返りの部分に関しては,その当時の議長は諦めて,コンセンサスを諦めて,今後すべきことという64項目に絞って合意を達成したわけです。〔それ〕で,このプロジェクトというのはこの合意の履行をしっかりと監視しようという広島県と研究者有志の間の問題意識からスタートしてきていて,2013年からその評価を始めているわけですけれども,そういう意味で言うと,この10年に我々は核軍縮の分野,核不拡散の分野,核セキュリティの分野でどんな進展を見たのか,あるいはどのような問題に直面しているのかを毎年見出してきているということで,非常に有用なものなんじゃないかなと思っています。〔それ〕で,この2020年ですけれども,先ほど申し上げましたとおり非常に厳しい状況にあって,コンセンサスのドキュメント,最終的な文書というのができるのかどうかという点に関して,多くの専門家の方々が悲観的な見通しを持っています。ある意味では少なくともそのNPTが完全に分裂してしまったと,あるいは完全に失敗に終わってしまったという状況にならないように何ができるのかというような議論も今なされているやに伺っています。このように核軍縮をめぐってある意味分裂する世界というのが今残念ながら生まれつつあるわけですけれども,これをどのように我々としてはその分裂を回避しつつ,少しでも前向きな結果が,この会議で出せるかということを議論をしていければと思っていて,そのためのある意味たたき台というか,何ができていて何ができていないのか,何が進んで,何が後退しているのか,このレポートの過去6年,7年の振り返りをしながら,まあ来年ぐらいとかにいろいろと議論ができればいいなと思っております。それからあとはこのプロジェクトが始まって以降にやはりさまざま大きな変化があったわけですけれども,こうしたその変化をどのように指標の中に取り込んでいくのかというところもおそらく今後大きな課題になっていくだろうなと思っております。あの核兵器禁止条約への取組もそうですし,それから先ほどでてきた,いろいろな米露の二国間あるいは多国間のコミットメントの変化というものが,どうこのトレンドの変化であったりとか各国の取組の評価に影響を与えるのかというところは今後改善の余地があるんだろうなと思います。あと,2020年に向けて,もう一つ我々としては,レポートとは別に懸念しないといけないのが,核兵器国の間での安全保障における核の役割というものが再評価される傾向の中で,米露に限らず,中国の核戦力の近代化であったりとか,今,南アジアにおいて,先日あの紛争というか,飛行機の爆撃,あのテロ,インドがパキスタンにパキスタン領内にあるテロの拠点を爆撃したと,それに対してパキスタンが主権の侵害だということで報復するといったような事態があって,それがかなり核の使用のリスクを高めた。それは単にその概念的に核の使用の可能性が高まったということに加えて,両者の間での戦略プランナーの間での誤解というか相手の意図を正確に理解していないという,偶発的なリスクというものも示したという意味で,核兵器の安全保障における意義づけ,役割というものが大きく変わるかもしれないし,あるいはもしかしたらそれをトリガーにしてリスクについての認識が高まるかもしれないということがあり,これが,どのように核軍縮の全体の趨勢の中で影響を及ぼしていくのだろうかという辺りが非常に懸念されるところであります。これの一方で核兵器の禁止条約のおそらく締約国は増え続けていくことになって,それが大きな声にもなっていく,この二つの対立するグループというものをNPTというものを通じてどのように対話の形に戻していくのかという辺り,今後,我々というか日本としては考えていく必要があるでしょうし,それから広島から訴えていくとすれば,そうした困難を乗り越えて核軍縮という方向性について国際社会のコンセンサスを再確認するといったようなことを言っていく必要があるのかなと思っております。最後,もう一つ核テロ対策,核セキュリティなんですけれども,一つ実は,ちょっと今,国際社会の中で注目をされている案件というのが,世界各地で〔行われる〕いろんな大規模な公共イベントです。オリンピックであるとかそれから大きな集会であるとかというものにおいて,核テロのリスクをどういうふうに回避するかという問題が,認識が高まっていて,日本も2020年にオリンピック・パラリンピックをホストするわけですけれども,こうしたところでどのように核テロ対策をしっかりして,より安全なイベントにしていくかという辺りも最近関心が高まっているということをご紹介させていただければと思います。

 (司会)
 これより質疑に移りたいと思います。ご質問の際は,社名とお名前を名乗られ,知事,秋山様,戸崎様,どなたへのご質問かおっしゃってからお願いします。それでは,挙手をお願いします。

 (中国新聞)
 中国新聞の教蓮と申します。戸崎様への質問になると思うのですが,今年のレポートの中での日本について,核軍縮のところでポイントを落として,後は現状維持だと思うのですが,この部分を詳しくご説明をいただければと思うのですが。

 (戸崎研究員)
 ありがとうございます。日本につきましては,ポイントは確かに一つ落としているというのはありますけれども,基本的には,FMCT兵器用核分裂性物質生産禁止条約というものの交渉を行おうと,今しているような状態で20年たっているわけですけども,昨年2017年にです。日本はこれについて,積極的な活動を行ったということで,一昨年について少し増えているのですけれども,少なくとも昨年については,そこまでの顕著な活動は見られなかったというところで,その部分,一昨年上がった分が元に戻ったといいますか,引き続き一生懸命やろうとしてはいますが,一昨年ほどではなかったというところで少し点数が減っているというところでございます。それ以外につきましては,大きく核軍縮から後退したというような活動は行われていないので,それ以外については,点数は減らしていない状況でございます。

 (中国新聞)
 それともう一つ,秋山先生になんですが,最初の戸崎様の御説明の中で北朝鮮のことがでてきてたのですけれども,2018年北朝鮮を巡る動きがかなりインパクトの大きいものがあったかと思うのですけれども,今回のレポートも踏まえて会談等の,その形としての会談のところと,実質的な成果というものの,このレポートへの反映をどのように評価されているのかというところを一つと,来年レポートをまたされると思うのですけれども,もう今年は始まっているわけで,今年注目される動きをですね,北朝鮮を中心にどういったところに注目されていかれるかという点を教えていただきたい。

 (秋山教授)
 ありがとうございます。北朝鮮,米朝の評価は非常に難しいかなという気がします。一つは,先程モメンタムの話を多少したかと思うのですけれども,今回の会談が去年の6月にあって,また最近もあって,プラスに評価するとするならば,このプロセス自体は,完全に死んだわけではないというか,北朝鮮自身が完全にあきらめたわけではないということは,北朝鮮から挑発的な行動をとらないであろうという見通しは,しばらくあるという意味で,信頼醸成に繋がるというポジティブな面があります。他方で,会談の客観的な評価をするならば,専門家としてのファインディングというのは他方で,北朝鮮は,当面は核戦力を維持するであろうという見通しというのが,ほぼコンセンサスとして,専門家の間では固まっていて,ということは核不拡散,核軍縮という観点から見れば,必ずしも目に見えた進展はないであろうと,ただし,北朝鮮が今の姿勢を維持して核実験もミサイルの実験もモラトリアムを継続していくということは,これは核軍縮や核不拡散の具体的な措置を今後取りうる信頼醸成に繋がっていく,つまり北朝鮮からするとアメリカとの間,あるいは南北との間での,政治的な信頼を確立することによって自分達の生存というものが担保されるという確信が得られれば,核に依存する割合というのは,低減していくわけなので,そうした素地が今のところ維持されているだろうと。ただし,今後どうなるかということで言うと,おそらくアメリカと北朝鮮の内政とも密接に関わってきているわけで,選挙が近くなった時に,アメリカは北朝鮮とより妥協的な姿勢を示すのか否か。あるいは北朝鮮からしても,アメリカの大統領選挙で次に誰がなるか分からない時に,現政権とディール〔取引〕を結ぶのかどうかという要素もあるので必ずしも軍縮不拡散という部分だけで切り取って評価することは難しいのかなという気はしています。

 (NHK)
 NHKの伊藤です。まず戸崎さんにお伺いしたいのですけれども,去年と比較して核軍縮の部分で,核兵器を持つ5カ国が,だいたいわずかにポイントを減らしている国が多いのかなと思うのですけれども,この部分は核兵器禁止条約への姿勢というところを重視された形でしょうか。

 (戸崎研究員)
 ありがとうございます。核兵器禁止条約への対応ということで言えば,2017年の,一つ前のひろしまレポートのところで,その部分については,既に評価をしていると。それに対する態度というのは,基本的には変わっていないと。少なくとも良い方にはもちろん変わっていないので,その部分で点数が減ったということでは必ずしもないということは,裏を返せばさらに状況は悪くなっているということで。例えば,核兵器の近代化に関するより積極的な行動を行っているとか,核兵器を削減していない状況が続いているとか,あるいはいろいろな国が,それからグループが核軍縮に関する国連総会での決議をだしていますけども,それへの態度が若干悪くなったとか,そういうところで,今回につきましては点数を減らしているというところでございます。

 (NHK)
 そういう中で,イギリスですかね。こちらについては,去年と変化がないと思うのですけれども,これはどういう点でこういう評価になっているのですか。

 (戸崎研究員)
 イギリスにつきましては,その前の年と行っている行動,活動,発言それから核戦力の近代化,核抑止への依存というものについて,顕著な変化というものが見られなかったというところで評価については昨年と同じということになっているのではないかなと思っております。

 (NHK)
 知事にお伺いしたいのですけども,今後,ひろしまレポートをどのように活用していきたいですとか,そういう部分をお聞かせいただけたらと思います。

 (湯崎知事)
 これまでの,レポートの発行の中で専門家の方を中心に,いろいろ評価をいただくお声は届いていまして,やはり非常に詳細な情報をまとめて掲載しているということで,ある意味,便利ということで。そういうこともあるとは思うのですけども,あるいは中満さんです。今度のNPTに向けても,またステイトメントを発表されておりましたけども,今回も推薦文をいただいたりして,全般的に評価をいただいているのかなと。そういうことでありますので,そういった専門家の皆さんであるとか,あるいは各国の政府の関係者の皆さんが,このひろしまレポートをご覧いただいて,さまざまな場面で自国の評価なり,あるいは他国との関係で評価を活用していただいて,それが翻ってひろしまレポート,それから広島に対する活動の評価です。広島の発言力というか,発信力というか,そういうものが高まっていくということを期待しているところです。したがって引き続き,多くの皆さんにこのレポートが届けられるようにしていきたいと思います。

 (朝日新聞)
 朝日新聞の原田です。戸崎先生にお伺いしたいのですけれども,2018年の動向で特に目立ったのがアメリカのINF全廃条約からの脱退宣言と北朝鮮の一連の動向だと思うのですけれども,時代はすごく流れているわけでして2018年時点ではこういうことがあった。しかし今年に入って2回目の米朝首脳会談では合意が得られなかった。そういう一連の流れがある中で2018年時点でのアメリカの動きもしくは北朝鮮の動きというのを点数という形でレポートに反映できているのか,それとも中々難しいところがあるのかお伺いさせていただきたいです。

 (戸崎研究員)
 ありがとうございます。このレポートの評価項目それから評価基準というものは,基礎になるものは2013年に策定したということで,そこから何回か改善改定含めて繰り返しているわけでございますけれども,元々の考えにあったのが,例えばきれいなことを言ったとしても,より具体的な行動に反映されなければそれは点数にならないというか,もう一つ客観的に点数をつけていくということになりますと,客観的に何かわかる行動なり何かがなければ中々それは難しいというところが出発点にあったということもございまして,基本的には具体的に何が起こったかということをまず評価しているということをご理解いただければと思います。もちろんそれでいいかどうかということはいろいろ議論があると思いますし,先ほど秋山先生がお話されましたように,より量的な部分だけでなくて質的な部分であったり,あるいは全体的な雰囲気動向というものを反映していくことがこれからの課題だとは思っております。ご質問にございましたINF,それから北〔朝鮮〕の問題につきましては,まずINFについては確かに脱退宣言をしたけれども,実際にその行動というのは今年だったということで,2018年についてはそういった脱退宣言をしたという行動について減らしたという点数を反映する部分が必ずしもなかったというところで,そこは中々反映しきれてないのかなと思います。今年これをつけるとすると,例えばINFクラスのミサイルを作る,開発するというか,そういうところで該当する項目について反映されていくのかもしれませんけれども,脱退についてどう評価するかというところについてはもう一回検討が必要かなと思っております。それから北〔朝鮮〕については,核実験のモラトリアムといいますか中止するというところで点数は反映しておりますけれども,実際に米朝会談を行ったというところだけではやはりその点数はつけられないだろうと,特に北〔朝鮮〕について言えばこれまでも何回も同じことを繰り返していたわけで,実際に非核化に繋がるような具体的な行動というものをしっかり見ていく必要があると思っていますし,そこの部分で,もしきちんとしたことを彼らが行えば,そこでしっかり評価していこうということを今回につきましては考えていたところでございます。

 (司会)
 予定の時刻となりましたので,次を最後の質問にさせていただければと思いますが,ございますでしょうか。

 (中国新聞)
 中国新聞ですけれども,秋山先生に伺いたいのですが,総論的な話になるかと思うのですが2020年のNPTに向けて非常に苦しい状況に世界はあると,レポートの中でも核軍縮は停滞もしくは悪化というような厳しい分析があったのですけれども,それを2020年に向けて2019年一年間で国際社会がどんな姿勢なり取組をやって少しでも前に進めるかという辺りをお願いします。

 (秋山教授)
 ありがとうございます。正直に言うと特効薬はないのではないかと思っていて,今いろんな場で,国際会議なりワークショップなりが開催されていて,そういう場でどういうふうに2020年,NPTが完全に失敗に終わるという状況を避けるかというある意味非常に後ろ向きなというか,危機管理的な議論というのがなされていると私は理解しております。それは目標としては非常に低いところを設定するというところで,大きな不満に繋がるところなのだろうなと思っているわけなのですけれども,ある意味では全く成果なしで終わるよりはいいだろうというのが,多分,今,専門家の間で共有されている認識なのだろうと思います。ただ,一方で我々が言い続けるというか言わなければいけないのは,あらかじめ低いレベルでの期待値を下げた上で成功というものを導き出すこと自体が一種の敗北で,はじめからそうしたものを追求すべきではないということなのだろうなと,つまり2010年に64項目の行動計画が策定されて,それを実際このレポートが示すように国際社会が必ずしも実施してこなかったというとろは,やはり問題は問題として認識して,いかにNPTを通じてこうした既に合意されているような行動を履行させていくかということについて,しっかりと少なくとも問題意識を共有させていくということをやっていかなければいけないでしょうし,さらに加えてできればそれに上乗せしたような形でコミットメントを引き出すという少なくとも努力をしていくべきだというふうには思っています。ただ,その努力が実際に実を結ぶか否かという見通しを分析しろといわれると,今かなり厳しい状況にあると,なので非常にきれいな答えにはなり難いご質問だったと思うのですけれども,現状の分析としては厳しいだろうし,やれるべきことをやっていくしかないということなんだろうなと思っています。少なくとも先程の繰り返しになりますけれども,国際社会の核軍縮を強力に推進していくグル―プと核兵器の役割を再度見直していくグループという分裂した状況というものを,いかにその間を結びつけて建設的な対話を取り戻すかというところが今,日本も含めて間に居る国々に求められているところなのだろうなと思っております。その意味で言うと,私が関わっているプロジェクトの宣伝になってしまいますけれども,外務省のやっている賢人会議の役割であるとか,あるいは賢人会議の提言を受けてこれから国際社会がどのように動くかという辺りも我々が試されているところかなと思っております。

 (司会)
 ただ今,ご説明をいたしました発表内容につきましては,ラジオ・テレビ・インターネットについては,本日の13時30分,新聞については,明日4月5日の朝刊をもって解禁となりますのでよろしくお願いいたします。以上をもちまして,知事会見を終了いたします。ありがとうございました。

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資料1 (核軍縮等に関する「ひろしまレポート2019年版」) (PDFファイル)(249KB)

資料2 (ひろしまレポート本文) (PDFファイル)(3.72MB)

資料3 (ひろしまレポート概要版) (PDFファイル)(815KB)

資料4 (小冊子) (PDFファイル)(389KB)

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