記者会見などにおける知事の発表や質疑応答を広報課でとりまとめ,掲載しています。
なお,〔 〕内は注釈を加えたものです。
動画はインターネットチャンネルのサイトでご覧になれます。(別ウィンドウで表示されます)
会見日:平成27年4月8日(水曜日)
(司会)
お待たせいたしました。定刻になりましたので,ただ今から知事会見を開催いたします。
本日の会見は発表項目は,二つを予定しております。核軍縮等に関する「ひろしまレポート2015年版」について,知事の米国訪問についてでございます。なお,本日の会見には,国際平和拠点ひろしま構想推進委員会副座長,前公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター所長,内閣府原子力委員会委員でいらっしゃいます阿部信泰様。及び公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター主任研究員でいらっしゃいます戸崎洋史様に同席をいただいております。これより,説明に移らせていただきますが,ご質問は,二つの項目の終了後に,まとめてお願いいたします。それでは,1項目,核軍縮等に関する「ひろしまレポート2015年版」について,ご説明いたします。
(知事)
それでは,まず私からご説明をさせていただきます。「ひろしまレポート」につきましては,先日既にお配りをしてあると思いますけれども,〔核軍縮等に関する「ひろしまレポート」〕「2015年版」ということでご説明をさせていただきます。今ご紹介がありましたように,阿部大使と,それから「ひろしまレポート」の執筆をご担当いただきました,〔日本〕国〔際〕問〔題〕研〔究所軍縮・不拡散促進センター主任研究員〕の戸崎洋史さんにご同席をいただいております。まず,事業の趣旨ですけれども,県では,「国際平和拠点ひろしま構想」の具体化に向けた取組の一つといたしまして,平成24年度そして平成25年度に続きまして,日本国際問題研究所,国問研に委託をして,「ひろしまレポート作成事業」を実施をしたところであります。本事業では,国際社会におけます核兵器廃絶のプロセスの進展に貢献するということを目的として,核軍縮,核不拡散,核セキュリティという三つの分野における各国の取組状況について,条約の署名・批准,核兵器の削減状況,また,広島の平和記念式典への参加等といった客観的な事実に基づいて,調査,分析,評価を行い,その結果を「ひろしまレポート」として取りまとめております。被爆70周年の節目となる今年ですが,このレポートを広島から国内外に発信をして,核軍縮に向けた各国の取組状況を示すことで,国際社会における核兵器廃絶のプロセスを着実に前に進めるための機運醸成を行うということを目指しております。この結果につきましては,後ほど,阿部大使と戸崎研究員からご説明をお願いをしたいと思っております。今年度〔版〕の主な特徴について,私からお話をさせていただきますと,まず,「調査対象」ですが,昨年の「ひろしまレポート」が,31か国を対象としたところでありましたが,今回の「ひろしまレポート」では,〔軍縮・不拡散イニシアティブ〕NPDIの参加国を中心として,5か国を追加して,36か国の評価を行っております。そして,「記述の充実」内容面でありますが,4月から5月にかけて,ご承知のように〔核兵器不拡散条約〕NPT運用検討会議が開催されますけれども,ここで各国の政府関係者,国際機関,国連機関,NGO関係者等に発信をしていくということを念頭においておりますので,昨年12月にウィーンで開催されました「核兵器の非人道的影響に関する国際会議」についても詳しく記述をするということで,できる限り,最新の動向を取り入れているところであります。また,2014年中の年表を主な核軍縮等の動向が一覧できるように,新規に含めております。こういったかたちで読者というか,受け手の皆さんにとって,よりわかりやすい内容に工夫をしているところでございます。それから,これをどう発信をしていくかということについてですが,後ほど訪米についてもご説明させていただく予定で,それにも関連しますけれども,「ひろしまレポート」の内容を大判のポスターにいたします。そしてNPT運用検討会議の機会に,国連本部内で展示をしたいと考えております。そして最後,「今後の展望」というところに掲げてありますように,昨年度版との比較において,2014年における取組状況によって,評点の増減が見られた調査対象国が確認ができたところでありますが,県としましても,今後,各国の取組を引き続き注視をして,「ひろしまレポート」が国際社会に広く受け入れられていくということで,核兵器廃絶に向けた世界的な機運がより一層高まるとともに,各国における核軍縮に向けた新たな取組につながるなど,国際社会における核廃絶のプロセスが着実に前に進むということを期待しておるところであります。先日も〔ロシアの〕プーチン大統領がウクライナで核兵器の使用に向けた準備を指示をしていたというようなことだとか,あるいは3月中旬に実施をした大規模演習の際に,核兵器の限定的な先制使用の可能性を想定していたというようなこと,こういったことが報道で流れておりますけれども,そういう意味で核兵器を巡る状況というのは,必ずしも良いものではないのかなと考えています。しかし,まさにこのような時だからこそ,広島から声を上げて,核兵器廃絶に向けた機運醸成を図るべきと強く確信をしているところであります。それでは,続いて,阿部大使と戸崎研究員から,お願いをしたいと思います。
(阿部大使)
阿部です。それでは,後ほど戸崎研究員の方から詳細の説明があると思います。私はまずここで,少し概括的なことを申し上げたいと思います。現在のこの状況,軍縮を巡る状況ですけれども,残念ながら,国際関係の対立が激化するという状況において,核兵器に関する執着心はむしろ強まりこそすれ,弱まる方向に向かってないという残念な状況にあるかと思います。一つはアメリカとロシアの間の関係が悪化しているということがありまして,これはウクライナの問題,クリミア半島の問題などを巡って,一つはウクライナの中でも実は自分たちのところにも核兵器があったんだけれども,冷戦が終わってウクライナが独立するときに,それを放棄したということについて,今となってみればあれはすべきではなかったんではないかという議論も出てきているという状況。あるいはロシアが最近,核戦力をいろんなかたちでチラつかせるという状況にあって,各国が核戦力というものは無視できないなということを改めて認識するという状況にあります。それから中東においては,パレスチナ問題,あるいはイスラム国家の攻撃というようなことで,緊張が高まっていると。それから日本の近くで言えば,中国が軍備を強化し,また近代化を進めている。また自己主張を強めているという状況において,こういった世界状況からして,流れはどうやら軍縮よりも軍備強化の方に動いているということで,残念な方向にあります。具体的に言っても,アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国という,NPT上の5つの核兵器国がいずれも核戦力の近代化というものを進めていると。中国については増強ということも見られているようであります。それからNPTの外にあるインド・パキスタンでは,実際は非常に熾烈な核戦力の強化の競争が進んでいるという状況にあります。それから前回のNPT再検討会議で決まったところの,中東において大量破壊兵器禁止地帯を作るという国際会議が,依然として予定された時期を大幅に過ぎてますけれども,開かれていないという状況で,これもまたマイナスの動きであると。唯一そこで最近出てきた動きは,イランの核問題に関する主要国との合意が大筋まとまったということで,一つの前進が見られたかと思います。それから日本の周辺ではもう一つ心配な動きは,北朝鮮がこれも密かに核戦力の構築を続けているという状況にあります。こういった厳しい状況にあるものですから,今月の末からニューヨークで開かれますNPTの再検討会議,こちらはなかなか厳しい状況になるかと思われます。先ほども申し上げた中東の国際会議が開かれていない。核軍縮が停滞していると。それから,イラン,北朝鮮に関する核拡散の懸念が依然として続いているという状況においては,この会議がなかなか厳しい状況になるかと思います。ここに一つ,これは〔手元資料を提示〕アメリカの研究機関が作ったグラフですけれども,アメリカとロシアの核戦力,核兵器がどのように減ってきたかと。この表はアメリカですけれども,表がありますけれども,左側からずっと減ってますけれども,近年のこの辺を見ますと,ずっと横ばいになっているということで,アメリカの核弾頭の削減についても,残念ながら最近はそんなに思うようには進んでいないというような状況が見られます。現実にはそのような減らすという約束が実施されてはおりますけれども,同時にアメリカ・ロシア・イギリス・フランスなども最近は核戦力をもう一回新しく近代化せねばいかんということで,爆撃機・弾道ミサイル・潜水艦といったものを新しく作り直すという動きが進んでいます。そのために,アメリカをはじめとして,かなりの国防費を核戦力の近代化に注入するということで,我々が希望していた核軍縮,核削減の方向とは逆の方向に物事が動いているという状況にあります。これについて,近年の議論は,やはりこれは核兵器禁止条約というようなものを作って,核兵器をなくすという方向に一足飛びに進まなければいかんのだという議論が出ております。これは去年のウィーンにおいて開かれた〔核兵器の非人道的影響に関する〕国際会議でもそのような議論があったようですけれども,そういった核兵器禁止条約に一足飛びに行くべきだという議論のある反面,核兵器を今持っている国の方では,いやいやそれは今現実的に無理なんで,段階的に進めるべきだという両方の議論でせめぎ合いが続いているという状況にありまして,これはおそらくこのNPTの再検討会議でも,そういう議論が展開されるのではないかと思われます。そういったことでなかなか厳しい状況にあるんですけれども,全くこの望みがないという状況ではございませんで,いくつか核軍縮に進む前向きの動きも見られます。一つは去年ウィーンで開かれた,核兵器使用の非人道的な影響に関する国際会議,これは最初のノルウェーでの会議,次のメキシコに続く3回目の会議だったわけですけれども,その会議が成功裏に終わり,それを踏まえて,これはオーストリアが持って打ち出したイニシアチブですけれども,国際的な制約を作ってこの非人道性の問題を議論を続け,動きを進めようじゃないかという動きのリーダーシップをとっております。もう一つは,太平洋の島国,マーシャル諸島という共和国がありますけれども,そこが今,国際司法裁判所に核軍縮が進んでいないではないかということで,核兵器を持っている国を条約違反,国際法違反ということで訴えております。この意味においても,核軍縮を法的側面から推し進める動きが進んでいるということがあります。それともう一つ前向きな動きとしましては,ここ広島を拠点としまして,「国際平和の拠点ひろしま構想」というものが進んでいるということで,知事の主導のもとでですね,いくつかの核軍縮を推進する努力が進んでおります。核軍縮・核廃絶とだけ言っててもなかなか進まないんで,それをいかに現実的に進めるかということで,そのための国際的な環境を醸成するということで,一つは「ひろしまラウンドテーブル」という会議を開いて,近隣諸国,アメリカなどの専門家を呼んで,どうやったら現実的に進められるのかという議論をしてもらっております。それからもう一つの努力は,この「ひろしまレポート」というものを作ることによりまして,各国の努力がどれほど進んでいるのかというのを詳しく調べて,あるいはあんまり進んでいない国もあるじゃないかということを指摘するということによって,各国にもう少し努力してもらおうということでこの報告が今年のものが出来上がりました。こういうものも一つの私は地道な努力の一環だと思います。実はですね,この意味においては,もう一つ他にも報告書がありまして,これはオーストラリア国立大学の核不拡散・軍縮研究所が最近出しました「核兵器その現状2015年」という報告書がございまして,これは皆さまご存じかギャレス・エバンスというオーストラリアの元外務大臣が中心となりまして作ってる報告書〔手元の本を提示〕でございます。図らずもですね,「ひろしまレポート」でも〔原爆〕ドームの写真が載っておりますけれども,こちらは絵で描いた広島〔原爆〕ドームが表紙になっております。エバンスさんもこの広島を訪れたときには大変な衝撃で,彼はそれ以来,核軍縮を目指さねばいかんということで活動を続けている方でございます。若干アプローチ,体裁が違いまして,一つはこちら〔オーストラリア〕の方は核軍縮,不拡散その他がどういうふうに進んでいるかっていうのがわかりやすいようにですね,交通信号みたいに,あまり進んでいないところは赤信号,かなり進歩,良いところは青・緑という信号にして,中間でまあまあ少し動きがあるなってところは黄色・オレンジ色というふうにしてページをパラパラとめくると色が出てきて,すぐわかると。これはそういう意味においては,ニューヨークの〔NPT運用検討〕会議に持って行って,次の議題はあれだなということで,それはどういう状況にあるかというとを見られるようになっております。ただこちら〔オーストラリア〕は世界全体を見渡して評価しておりまして,「ひろしまレポート」の方は,それをさらに国別に細かく見て,この国はわりとよくやっていると,この国はまだまだだっていうのがわかるようになっております。そういう意味においては,こちらの報告書を使えば,ある意味においては,各国に細かく「あなた〔の国は〕この問題どうしてますか?」と聞けることができるし,「じゃあ,あなた〔の国〕はもう少しここをやってもらう必要がありますね」ということを言えるということで,これは非常にそういう意味においても意味のある報告だと思います。実は,これを作成する段階においては,各国の専門家にもいろいろと相談して意見を聞いたりしておりますが,その方々からも,これは実によく事実関係を調べて,よく作ってあるという,お褒めの言葉をいただいております。そういう意味において,もう2度目,3度目になりますけれども,非常に高い評価の得られるものが出来上がりつつあると自画自賛いたしておるところでございます。最後に,今一つ出てきたところの望みは,イランとの原則的な合意ができたということで,イランと主要国の間でイランの核計画について,核兵器製造に向かわないということをきっちりとタガをはめることはできるということでですね,これが実現すれば,非常に核軍縮・〔核〕不拡散の面から言うと明るいニュースが出てきたのではないかと思います。ただ,これがなかなか難しいのは,最終的に細かいものを全部詰めて出来上がるのが6月の末と言われております。なので,これから3か月の間,非常にまた細部を巡ってですね,あるいは具体的な内容を巡って,アメリカ・その他の主要国〔英国・フランス・ロシア・ドイツ・中国〕とイランとの間でせめぎあいが続くと思いますので,そこでどのようにしてカチッとしたものが作れるかどうか,そこが一つの見極めを必要とするところかと思います。また,それが出来上がった段階で,アメリカ国内に,そもそもあるこういったイランと合意をすることについての懐疑派がいますので,そういった方々をどうやって説得できるかどうか,あるいはもっとかなり強硬な意見を持っているイスラエルっていうものを説得できるかどうか。あるいはイランの側でも国に帰って,国内の強硬派を説得できるかどうか,それによってこれがうまくいくかどうかというところが大きく関わってくるかと思います。やはり大きなところは仮にこれが上手くまとまったとして,イランが本当にそれを実施できるかどうか。それから逆にアメリカ・その他が制裁を解除してイランの希望に添えるかどうか,そこがこれからの見極めどころかと思います。というようなことが私の現在の状況の概観でございます。次は,戸崎さん。
(戸崎研究員)
日本国際問題研究所の戸崎でございます。まず,この「ひろしまレポート」を作成するという貴重な機会を賜りましたことにつきまして,湯崎知事,それから広島県の平和推進プロジェクトチームの皆さま方に厚くお礼申し上げたいと思います。この「ひろしまレポート」の概要,それから核をめぐる動向につきましては,湯崎知事,それから阿部大使より既にお話がありましたので,私の方からは,この報告書でまとめた内容,その主要な論点につきまして,特に核軍縮を中心として,手短にご説明申し上げたいと思います。お手元に1枚紙のハンドアウトがお配りいただいておるかと思いますが,その3ページ目でございます。こちらで核軍縮,それから核不拡散・核セキュリティについての昨年度の動向の主要なポイントというものを挙げてございます。まず核軍縮につきましては,繰り返しになりますけれども,核兵器の保有国について,特に核軍縮に関する大きな進展はなかったと,むしろ逆行するような動きというものが繰り返されていたというところを「ひろしまレポート」の中でも,若干強調して書いてございます。核兵器の数は確かに減っておると,前年よりも,推計ですけれども1000発弱の削減が見られましたけれども,これは基本的に米ロの削減によるところが大きいと。他方でこれも繰り返しになりますけれども,核兵器保有国の核戦力の近代化であったり,増強であったりという動きは続いていて,特に中国・ロシア・インド・パキスタンの動きというものが顕著になっておるというところでございます。そして地政学的な競争・対立の顕在化,それから安全保障環境の不安定化,といったものによって,阿部大使もお話されておられましたけれども核兵器の役割の高まりといったようなものも見受けられると。ロシアによる核兵器を使った演習,それからデモンストレーションとして爆撃機を飛ばしたりとかですね,アメリカもヨーロッパに戦略爆撃機を飛ばしてくるというようなことも行われたということがございます。核兵器の削減については,アメリカとロシアの新START〔戦略兵器削減条約〕。これは粛々と履行されているようでございますけれども,他方でポスト新STARTの核削減に関する議論は進んでいないと。当然ながら多国間の核軍縮というものも,まだほぼ議論にすらなっていないような状況というところでありますし,ロシアについて言えば,INF〔中距離核戦力全廃〕条約の違反疑惑というものが指摘されておると,さらにウクライナの問題に関しては核の威嚇を行ったのではないのかと,これは明確なブダペスト覚書の違反になりますけれども,そういったこともウクライナの方からは指摘されているというような状況でございます。CTBT〔包括的核実験禁止条約〕は発効していませんし,その中でもアメリカ・中国・インド・パキスタンという極めて重要な国々の態度というのは変わっていないというようなところでございます。そのような中でも進展を挙げるとすれば,昨年のNPTの準備委員会の中で核兵器国が初めてだと思いますけれども,核軍縮並びにそれに関連するような問題についての,まとまった報告というものをそれぞれが出してきたというところで,これは「ひろしまレポート」を作成するうえでも非常に貴重な資料になったのですけれども,そうした動きがあったと。これは透明性を向上させるという観点からも今後継続が求められるのだろうと思いますけれども,その5か国の透明性の程度にはやはり大きな差があって,もちろん完璧ではありませんですけれどもアメリカの透明性というものは非常に突出していたように思います。ついで,英仏が挙げられるかと思いますが,中国とロシアの報告書のその透明性のレベルというものは,かなり低いと言わざるをえないというような状況でございました。今後その透明性をより向上させていくということを求めていく必要があろうかと思います。それから,これも度々お話に挙がっておりましたけれども,非人道的結末の問題でございます。昨年は2回の国際会議が開かれまして参加国も増えてきていると。3回目については158の国が出てきた,その中にアメリカとイギリス,これが核兵器国として初めて参加したということは報道でも大きく取り上げられたかと思います。この動きは当然重要なのですけれども,その議論が進んでいく中で,この核軍縮にいかにアプローチをしていくかということを巡って議論が喚起され,その中で議論が収れんしていくというよりは,むしろ意見の相違というものが改めて明らかになってきておるというようなことも言えるかと思います。ただ,これは核軍縮を進めていく上では避けては通れない道だとは思いますので,より議論が深まっていくことを求めていきたいと思っております。核不拡散と核セキュリティにつきましては,北朝鮮のお話ですね。まったく進んでいないと,むしろ核抑止力の強化を主張している。イランについては,阿部大使もお話になられましたけれども,これは報告書には盛り込めておりませんけれども,つい先日,枠組みに関する合意というものができて進展はしておるというところ,それから中東の非大量破壊兵器地帯に関する国際会議は,2012年までに開催すべきということになっておったところが,まだ開催されていないと。アラブ諸国,特にエジプトがかなり強い不満を持っていると思われますので,これが次の運用検討会議にどのように影響していくかということは,注目していく必要があろうかと思います。それから,核セキュリティに関しましては,昨年はハーグで核セキュリティサミットが開催されまして,この参加国がその進捗状況,それから核テロ対策の今後の取組について,どのようなことをしていくべきかということを議論し,ペーパーにまとめております。主要国につきましては,核セキュリティ,核テロ対策のガイドラインをまとめました文書を国内実施体制の中に反映していくと,核テロ対策は国内でしっかり実施していくということが非常に重要なので,このプロセスは欠かせないのですけれども,それを着実に実施しておるというところがありますが,そうでない国もまだまだ少なくないというところがございますので,核セキュリティの強化の観点からは,そうしたところが重要になってくると思います。以上,簡単でございますけれども,「ひろしまレポート」の概要をご説明申し上げたところでございます。ありがとうございます。
(司会)
続きまして,「知事の米国訪問について」知事よりご説明いたします。
(知事)
それでは,米国訪問についてご説明をさせていただきます。これもお手元に資料配布されていると思いますが。まず,「趣旨」についてであります。このNPT運用検討会議,5年に1度開催されるわけですが,これを機に会議に参加をして,各国政府,あるいは国連機関,国際機関,NGO等に対して,「国際平和拠点ひろしま構想」や「ひろしまレポート」をはじめとします本県の活動を紹介をして参りたいと考えております。あわせて,世界の政治指導者の被爆地訪問が各国の行動規範となるように,働きかけていきたいと思っております。こうした内容を通じまして,本県の平和の取組を世界に発信をして,核軍縮の議論が「核兵器の非人道性」を十分に踏まえて行われるための環境づくりをしていきたいと考えております。内容についてですが,訪問期間は4月23日から5月1日,ニューヨークとワシントンを訪れます。訪問者は,私と職員が数名,そして,ご同席をいただいております阿部大使の合計で言いますと7名になります。また,一橋大学の秋山先生に,ワシントンでの会談にご同行いただく予定にしております,また県が主催するサイドイベントのモデレーターも務めていただくということとしております。「主な用務」というところでありますが,冒頭で申し上げましたように,今回の訪米では,NPT運用検討会議に参加をして,サイドイベントの開催や個別の面談を通じて,参加国の政府代表,国連機関,国際機関,NGOに対して,本県の平和の取組を紹介をして参ります。また,核軍縮の議論が核兵器の悲惨さを十分認識した上で行われるように,世界の政治指導者の被爆地訪問が各国の行動規範となるように働きかけて参りたいと思います。例えば,NPT運用検討会議の最終合意文書というのを作りますけれども,これは〔最終合意文書が〕出来るということを期待しておりますが,各国の政治指導者の被爆地訪問を義務付けて,その中で義務付けてもらうようなかたちで働きかけをしたいと思っています。サイドイベントについては,別紙にありますように,アンゲラ・ケイン国連軍縮問題担当上級代表やオーストリア外務省のアレクサンダー・クメント大使等にもご登壇いただいて,クメント大使は,非人道性に関する会議をリードしていかれた大使でありますが,ご登壇いただいて「核兵器の非人道性と法的枠組み」について意見交換を行うという予定にしております。また,国連本部にブースを設置をして,これも先ほど少し触れましたように「国際平和拠点ひろしま構想」や「ひろしまレポート」を紹介するパネルの展示,またレポートの配布を行いたいと考えております。そして「政府関係者等との意見交換」では,ワシントンで,アメリカの政府また連邦議会の関係者や外交問題評議会やマンスフィールド財団の関係者等との意見交換を行いたいと考えております。以上,全体総括しますと,このNPT運用検討会議への参加等を通じまして,本県の平和の取組を世界に発信をしていって,核軍縮の議論が核兵器の悲惨さを十分認識した上で行われる。もちろん方向としては,よりこの核軍縮,最終的には核兵器の廃絶につながっていくという,そういう環境づくりを行って参りたいと考えております。私からの発表は以上です。
(司会)
以上をもちまして,説明は終了いたしました。これより,質疑に移りたいと思います。ご質問の際は,社名とお名前,そして,知事,阿部大使,戸崎研究員どなたへのご質問かをおっしゃってからお願いをいたします。それでは,ご質問の方は挙手をお願いいたします。
(TSS)
TSS若木です。知事に伺いたいんですけれども,改めて阿部さんもおっしゃったように,どちらかというと軍備増強の去年1年間だったという報告書の内容になっているんですけれども,改めてこの1年間の結果についての受け止めと知事が一番懸念されている
この1年間で見られる課題っていう部分を教えていただければと思います。
(知事)
この中身にもありましたように,核兵器の数っていうそのものでいうと,多少は減っているという進展はあるんですけれども,やはりそれを取り巻く状況として,国際的な緊張の高まりと,それからそれに絡んだ核兵器に関する言及。プーチン大統領のような言及であるとか。あるいはそういう国際情勢全般をベースにしたこの軍縮の進展が,非常に停滞しているというところがやはり懸念というか,非常に残念なところであろうと思ってます。そういう中でさらに残念なのは,今のロシアのそういう言及のほか,近代化を進めているとか,あるいは,〔核〕使用に関する,今のロシアの動きとか中国の動きとかもそうですけれども,運搬手段についてのさらなる改善というか,そういったことも含めた動きが非常に残念であります。我々としては,そういう中でCTBTの早期発効であるとか,あるいはFMCT核分裂性物質の生産禁止条約,こういったものが進展していくということを期待したいと思いますし,核兵器の非人道的影響に関する国際会議。これも参加国が増えていたりとか,アメリカ,イギリスが参加をして,少しその問題から完全に逃げてしまうという姿勢を改善をしているというところがありますので,そういったところも今後の期待として,もっていきたいなと考えております。
(司会)
他にご質問ありませんか。
(朝日新聞)
朝日新聞の岡本と申します。お世話になります。ひろしまレポートの結果を見ていましてですね,専門家の方にとってすごく動きが良く分かるものだというのは,おっしゃるとおりだと思うんですけれども。片や7000発とか8000発とか,核兵器を持っている国と,一桁の国があって,7000とか8000が〔マイナス〕19点とか〔マイナス〕20点であってですね,一桁のところがマイナス7点というのは,ちょとかなり市民の方にとってみると分かりづらいところがあるんじゃないかという指摘もあるかと思うんですけれども,それを知事がどういうふうに思われるかということと,あと,今回厳しい点数になったようなところとかに対して,積極的に取組を働きかけるとか,「ひろしまレポート」の結果を踏まえた動きというものを予定されていらっしゃるかどうか,いずれも知事にお伺いできたらと思います。
(知事)
まず後者について言いますと。これはやはり広く各国とかあるいは専門家にまさに認識してもらうことによって,一つはピアプレッシャー〔仲間からの圧力〕なんだと思うんです。これをもって例えば,広島がどっか特定の国に「あんたこの成績悪いよ。」ということではなくて,皆がこういう認識で「いやお前のところ悪いよね。」ていう認識をされるということが,じわじわとボディブローのようなプレッシャーとして効いていくんではないかと思っておりますので,そういう意味で,まずいろんな国の大使であるとか,あるいは外務省であるとか,そういうところにもお送りをして,きちんと認識していただきたいなというところであります。そして,この今の,主にアメリカとロシアということだと思いますけれども,ただ持っている数だけっていうことに着目して言ってしまうと「それはアメリカとロシアの問題でしょ。」ということになってしまいますけれども,それでは逆に私は良くないことだと思うんです。実際の行動として,やはり,もう少し幅広いところで言えば,より核に関する緊張を低めていくためにどういう行動をとっているか。あるいは,全体のやはり核軍縮,最終的には核廃絶に向けて,どういう行動をとっているかっていう,現状からの変化というところに着目していかないと。単に永遠にアメリカとロシアだけが悪者だということろで済ましてしまうと,それだとほかの国の動きに繋がらないことになってきますから,やはり,この動きというかベクトルというか,そういうところはしっかりと見ていく必要があるんじゃないかなと思います。
(司会)
その他,ご質問はありますか。
(読売新聞)
読売新聞の内田と申します。昨年はこの発表の翌日,知事がアメリカのケネディ大使のところにお伺いして〔「ひろしまレポート」を〕お渡ししたというようなことがあったと思うんですけれども,今年はこの米国訪問以前にそういった動きをされるといったことはあるんでしょうか。
(知事)
昨年は,少し偶然ということもあってできたんですが,今年もそういう主要な方とお会いできる機会があれば,そういう機会にお渡しをしたいと思っています。
(司会)
その他どうでしょう。
(中国新聞)
中国新聞の松本です。すみません,戸崎さんにお伺いしたいんですけれども。今いろいろ皆さんのご意見というか,コメントではかなり厳しい状況ということなんですけれども,単純に点数を比較すると,前回よりも改善している部分が多いのかなと思うんですけれども,その点数,評点率ですかね,結構改善しているところが多いかなと思うんですが,どう評価したらいいのかなと思いましてですね,教えていただければと思います。
(戸崎研究員)
ありがとうございます。そうですね,評点を見ると増加している国もありますけれども,ただその増加というのは本当に,例えば1点であったり2点であったりというようなところでして,そういう意味で私は,核軍縮,特に核軍縮に焦点を当てて言えば,進んでいないのかなという印象を持っております。もちろん,その,例えば核兵器国であれば,昨年,中央アジアの非核兵器地帯条約の議定書に署名をしたとかですね,そういう若干の前向きな動きというのもありましたので,そういうところで評点が少し上がっているとか,あとは非人道的側面に関する各国の取組の中で,少し評点が上がっているというところはあると思われますけれども,ただ,相対的に見れば,その歩みというのは,まだまだ小さいと言いますか,評点の上でも,少し増えているかもしれないけれども,まだまだ足りないといったようなところが,むしろ我々が打ち出したかったところだと思います。
(司会)
それでは終了時間も迫って参りましたので,最後の質問としたいと思いますけれども,いかがでしょうか。
(TSS)
すみません,ちょっと調整中のところもあるのかと思うんですけれども,知事米国訪問されて,前回4年前は潘基文事務総長に会われたりしているんですけれども,現時点で,これ〔ひろしまレポート〕を渡したり,アピールする先で主要な方というか,あと外相であったり,どなたかこういう人にアピールをするという具体的な人が決まっている限りでいいので教えていただければと思います。
(知事)
現時点でお伝えできるというのが,ここにもありますように,アンゲラ・ケイン国連軍縮問題担当上級代表とは決まっております。今回は残念ながら,おそらく事務総長との面談っていうのはちょっと難しそうなんですけれども,ケイン,担当の最高責任者ですけれども,とはお会いできると。その他は現在まだ調整中だというところであります。個別にはですね。
(司会)それでは以上をもちまして知事会見を終了いたします。ありがとうございました。
資料1(核軍縮に関する『ひろしまレポート2015年版』) (PDFファイル)(211KB)
資料2(ひろしまレポート本文) (PDFファイル)(3.96MB)
資料3(概要版のデータ) (PDFファイル)(537KB)
資料4(知事の米国訪問について) (PDFファイル)(247KB)
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