記者会見などにおける知事の発表や質疑応答を広報課でとりまとめ、掲載しています。
なお、〔 〕内は注釈を加えたものです。
動画はインターネットチャンネルのサイトでご覧になれます。
会見日:令和7年2月5日(水曜日)
(1)被爆・終戦80年における平和の取組について
(2)HOPeについて
(3)事業内容のボリュームについて
(4)「パグウォッシュ会議」について
(5)「国際平和拠点ひろしま」ウェブサイト再開の見通しについて
(6)「ひろしま国際平和&ビジネスフォーラム」について
(7)「ウッドロー・ウィルソンセンター・ブートキャンプ」の誘致について
(8)「若者達が集い、未来に平和をつなぐプロジェクト」について
(司会)
ただいまから、被爆・終戦80年における平和の取組についての発表を行います。それでは湯崎知事、よろしくお願いします。
本日は、被爆・終戦80年における平和の取組についてご説明をさせていただきたいと思います。1945年8月から間もなく80年を迎えるところでありますけれども、原爆投下によりまして、1945年末までに、広島で約14万人、長崎で約7万人の尊い命が失われまして、8年たって今でも放射線により、多くの人が苦しめ続けられているというところであります。被爆から80年たった今、核兵器が地球に1万2000発、存在しております。また、核兵器が平和の維持に不可欠であるという論者が存在をしているということで、ロシアによるウクライナの侵攻、あるいは中国の核兵器開発の進展、北朝鮮のミサイル発射、またこの核兵器の開発など、「核のタブー」が打ち破られようとする危機的な状況にあります。こうした中、人生をかけて、核兵器廃絶を訴え続ける被爆者の方々が高齢化して、次世代への伝承というのも課題になっているところであります。この他、「核軍縮は安全保障上の問題」と受けとめられる傾向がありますので、経済界など他の分野では、機運が必ずしも高まっていないといった状況にございます。こういった状況だからこそ、被爆80年の今、私たちは1日でも一刻でも早く核兵器廃絶を実現しなければならないと考えています。一方、核兵器廃絶に向けた追い風として、一昨年5月にG7広島サミットが開催され、昨年10月には日本被団協がノーベル平和賞を受賞されました。こういった状況の中で私たちは、被爆・終戦80年を核兵器廃絶に向けた取組を加速する転換点にしなければならないと考えています。県といたしましては、今年がその転換点となり、国際平和拠点ひろしま構想、また、その推進計画の方向性に基づきまして、世界の影響力のあるリーダーを巻き込んで、被爆地からメッセージを発信し、うねりを作っていくということ、また未来の平和を担う人材の育成を、被爆・終戦80年を契機に加速・強化するということ、また様々な関係者と協働して、核兵器廃絶を進める独立した組織を被爆地・広島につくるということに取り組んでいきたいと考えております。今年が核兵器廃絶に向けた転換点となるための取り組みといたしましてまずは、上半期に切れ目なく、集中的に取り組みを実施することとしまして、主に4月から6月にかけては、「世界のリーダーが集い、未来と平和を語るプロジェクト」、主に7月から9月には、「若者達が集い、未来に平和をつなぐプロジェクト」と銘打ちまして、広島からインパクトのある平和メッセージを発信して参りたいと考えております。この他、通年で核兵器廃絶に向けた、各国政府関係者への働きかけや、トッププロモーションを実施するとともに、研究成果発表会、核抑止に頼らない安全保障のあり方に関する研究や、へいわ創造機構ひろしま(HOPe)の法人化などを行いたいと考えております。これらの事業の多くは、寄付金を活用しながら取り組んで参りたいと思っております。事業の柱となるプロジェクトについてですけれども、現状において核兵器廃絶や平和の問題は、特定の国における安全保障上の問題として認識される傾向にあります。そのような状況の中、国や分野を超えて、核兵器のない平和な世界の実現を推進するためには、各国・各分野で影響力を持つリーダーによる発信が必要です。そのため「世界のリーダーが集い、未来と平和を語るプロジェクト」を主に4月から6月に実施し、世界のリーダーとともに広島から未来に向けて力強く発信して参ります。具体的には「2025ひろしま国際平和&ビジネスフォーラム」の開催や、「パグウォッシュ会議世界大会」などの国際会議の開催支援などを行って参ります。「2025ひろしま国際平和&ビジネスフォーラム」は、5月29日から31日までの期間で、グランドプリンスホテル広島で開催いたします。ビジネスが国際平和のために果たせる役割を議論して、広島から世界へ発信していくことが目的ですが、これまで平成25年から8回、「世界〔平和〕経済人会議」という名前で実施して参りました。被爆80年の今回は、より一層、経済界が具体的に平和への貢献を加速していけるよう、規模を拡大し力強くメッセージを発信して参ります。本フォーラムでは初めてExecutive Committeeを組成して、経済同友会代表理事の新浪さんを議長にしに、世界的に影響力のある有識者などから企画へのアドバイスをいただくとともに、フォーラムにもおご登壇いただく予定としております。また、ネットワークを広げていくためマッキンゼー・アンド・カンパニーや、アメリカの有力なMBAスクールであります、ノースウエスタン大学ケロッグ経営大学院、スイスの有力ビジネススクールでありますIMDなどと連携してセッションを実施する予定としております。また、今回は初めて日本経済新聞社との共催で実施する予定となっております。さらに経済界を中心としたマルチステークホルダーの具体的な行動を促す「ひろしま宣言」をフォーラムの中で発出する予定としています。次に、パグウォッシュ会議世界大会への支援ですけども、ご承知の通り、パグウォッシュ会議は、核兵器廃絶をはじめとする科学と社会の諸問題に取り組んできた、世界の科学者が集う組織でありまして、1995年にはノーベル平和賞を受賞されています。世界大会では、世界のオピニオンリーダーや研究者が集まって、1955年のラッセル・アインシュタイン宣言の理念を踏まえて、核兵器と戦争の廃絶について真剣に議論し、発信されると伺っております。広島大会は今年の11月に被爆80年―核なき世界と、戦争の廃絶を目指してというテーマで開催される予定となっておりまして、オール広島県の平和推進の取り組みにも資することから、広島市と連携して支援して参ります。被爆者の高齢化が進む中で次世代への継承というのは喫緊の課題ですけれども、夏休みなど若者が参加しやすい時期を含む、主に7月から9月にかけまして、「若者達が集い、未来に平和をつなぐプロジェクト」として、未来へ、平和への想いをつなげていくための人材育成を強化して参ります。具体的には、こちらに掲げているような取組ですけども、ユース対話イベントであるとか、広島大学と連携をした被爆80年人材育成事業、あるいは核分野の若手研究者による対面の集中合宿といったようなことでございます。県では平和に貢献できる人材育成として裾野を拡大するための取組、そして専門性を高める取組の両面から推進して参ります。具体的には、裾野拡大の取組としまして、国際平和のためのユース対話イベントと、被爆・終戦80年おりづるキャンペーンの拡充の他、キャリア形成の入口として、国内高校生が対象の「グローバル未来塾inひろしま」、国内と海外の高校生が対象の「ひろしまジュニア国際フォーラム」を実施します。また、これらのプログラムの修了者、これまで何年にもわたって行っておりますので修了者はたくさんいるのですが、その修了者を初めとするユースが、さらに専門性をレベルアップしていく取組として、国内ユース向けの「広島大学と連携した被爆80年人材育成事業」や、海外ユース向けの「核兵器と安全保障を学ぶ広島ICANアカデミー」を実施して、専門キャリアの形成を後押しいたします。さらには博士課程レベルを対象とする「核分野の若手研究者による対面の集中合宿」を開催いたします。このうちいくつかご紹介したいと思うのですが、国際平和のためのユース対話イベントでは、国連機関と連携しまして、8月6日の広島の原爆の日に国連幹部等をお招きして、核兵器のない平和な世界の実現に向けた若者との対話イベントを開催いたします。この取組ではこれまで本県が実施してきました、平和人材育成事業の卒業生に広く協力を呼びかけまして、企画の段階から参画していただくということを検討しております。それによって修了生のさらなる活躍と、成長の場に繋がるということが期待されまして、修了生と、これまで平和関連のイベントに参加したことがなかった若者を結びつけるということにもなろうかと思います。それによって、世代や地域を越えた平和構築のためのネットワークが拡大するものと期待しております。また、当日の様子は大阪・関西万博、この機会に広島県ブースを出しておりますので、その広島県ブースにおいてライブ配信をしようと考えております。8月6日に万博の広島県ブースを訪れていただいた方が、核兵器の問題や平和について考えを深める機会を提供する予定にしております。次に、核分野の若手研究者による対面の集中合宿です。核分野の若手研究者を対象にして、核の歴史や研究方法などを学ぶために、米国のウィルソンセンターが実施する、これは研究機関ですけども、「対面での集中合宿」を広島で開催いたします。ウィルソンセンター、これは実績ある国際的な研究機関ですけども、こちらが提供する質の高い人材育成プログラムを広島に誘致をいたしまして、将来、各国の政策策定に直接影響を与えるアカデミア界の卵である博士課程の学生に、被爆の実相を広島で実際に知っていただく、感じていただく、そして核兵器の非人道性について理解を深めてもらうことができると考えておりまして、それをベースに今後の安全保障であるとか、平和の問題、経費の問題について考えていただく礎にしていきたいと思います。また、国内の研究機関などから講師も招待をすることで、研究者の間のネットワークを促進する機会となることも期待しておりますし、プラグラムにHOPeの研究事業に関するセッションも設け、多様な視点を持った参加者から意見をいただくことで、研究の視点を多角的に広げていけることができると考えております。もう1つ、被爆・終戦80年おりづるキャンペーンがございます。令和3(2021)年度から実施しています。「#未来へのおりづるキャンペーン」を、被爆・終戦80年を迎える今年の夏も引き続き実施いたします。昨年は、アーティストのオノ・ヨーコさん、あるいはモデル・俳優のパリス・ジャクソン氏をはじめとして、県内のスポーツチームの皆様や、世界各国の皆様、国連機関、駐日大使館など、多くの方にご参加をいただきました。このキャンペーンは、今年の夏は引き続き、賛同者の拡大に向けまして、影響力の大きい著名人への働きかけを行うとともに、さらに多くの皆様にご参加いただくために、大阪・関西万博での、先ほど〔お伝えした〕広島県ブースです、こちらの場所を利用して、皆さんにも投稿していただくということをやりたいと思っております。こういう形でキャンペーンにご参加の皆さんとともに、平和への思いを発信して、広めていきたいと考えております。最後に、へいわ創造機構ひろしまHOPeの一般社団法人化であります。これまでHOPeは任意団体として活動して参りましたけれども、これを一般社団法人化したいと考えております。業務開始の見込みは、令和7年12月1日と考えています。法人化の目的ですが、核兵器を取り巻く安全保障環境が厳しさを増す中で、今後も先頭に立って、平和に関する取組を拡大していく必要があると考えておりまして、そのために、資金を国内外から幅広く獲得する仕組みを確立して、様々なステークホルダーとともに主体的に活動していくための基盤づくり、この第一歩とするために、法人化をしたいと考えています。また、将来的には国連経済社会理事会のNGOとして認定を受けまして、国連において活動していくことも視野に入れております。何を言っているのかというと、国連経済社会理事会に参加するためには政府かNGOしか駄目なのです。地方政府は政府なので、日本は日本政府がありますから、我々にはその参加資格〔が〕与えられないということになっております。NGOと認定されるためには、政府組織からの出資などの関与があっては駄目だとなっております。やり取りをしたのですが、やはり駄目だと言われてまして、基本的な財源が賛同者からの寄付などによって賄われていることが必要であるということから、県が出資しない法人を設立をしようと考えております。以上が広島県が実施します被爆・終戦80年の平和の取組となります。被爆・終戦80年を核兵器廃絶に向けた転換点とするために、被爆地・広島から、核兵器廃絶への力強いメッセージを世界に発信して参ります。私からは以上です。ありがとうございました。
(司会)
では、これより質疑に移ります。終了時刻を概ね11時30分予定しておりますので、ご協力をお願いいたします。質問のある方は挙手をして、社名と名前を名乗られてからお願いします。なお、手話通訳の方が通訳しやすいように質問ははっきりとおっしゃっていただきますようお願いいたします。それでは、挙手をお願いいたします。
(読売新聞)
読売新聞の岡本と申します。HOPeの件についてお伺いしたいのですが、こういった資金活動基盤を強化していって具体的に今後どういった活動していくのか何か明確なイメージがあれば、教えてください。よろしくお願いします。
(答)
活動としては、これまで我々は主に3つの取組、1つは非人道性のアプローチです。いろいろな方々をご招待をする、広島に来てもらうということです。それから、安全保障アプローチということで、これは核兵器のない、核兵器に依存しない安全保障のあり方を考えるという、これは学術的な研究になってきますけども、それもまた政策的な提案にするということになります。そして持続可能性アプローチということで、核兵器を持続可能な開発、ないしは地球自体の持続可能性に対する脅威と捉えて、様々な同様な課題とともにスクラムを組んで、この国際世論を高めていく、核兵器廃絶に対する国際世論に対する働きかけをしていくということですけども、これらそれぞれの取組は今後さらに進化していくことになろうと思っていますし、それに付随する人材育成も、HOPeで取り組んでいきたいと考えています。先ほど申し上げたようにECOSOC〔経済社会理事会〕に参加をするというのも、法人化したHOPeで参画することによって、より直接的に、今のこれは主に持続可能性アプローチの方に関わってきますけども、様々な主体と、特にNGOと連携しながらこのアジェンダを進めていきたいと考えています。
(読売新聞)
ありがとうございます。
(山陽新聞)
山陽新聞社の臼杵です。よろしくお願いいたします。私から1点お尋ねをしたいと思います。今、知事からお話がありました、事業内容は非常に盛りだくさんのような印象を受けております。一方で被爆・終戦、節目としては、過去にも75年であったり、70年であったり、大体5年刻みで節目とされるものがあると思いますけれども、その過去と比較しまして、この〔被爆・終戦〕80年事業は、質的あるいは量的に、同じものなのかあるいは非常にボリュームのあるものになっているのかの変化についてお聞かせいただけたらと思います。
(答)
実は、75年がコロナの真っ最中だったので、このときは活動が十分できませんでした。70年と比べましても、今回の〔ひろしま国際平和&〕ビジネスフォーラムや、様々な国際会議を誘致をして、この場でリーダーに集まって議論していただくというのは、より強化されたと思います。
(山陽新聞)
続けて、もう1つ、パグウォッシュ会議の開催です。今年11月1日から5日間、開かれますが、この会議自体への世界大会への広島開催は20年ぶりということでありますので、この会議に寄せる知事の思い、あるいは期待感をあわせてお聞かせいただけたらと思います。お願いいたします。
(答)
このパグウォッシュ会議も本当は4月から6月の間にやりたかったのですが、調整がつかず、世界のリーダーが集まる会議としては飛び地的になってしまったのですが、我々としては、やはりここでやる意義としては、被爆地の市民の皆さん、あるいは被爆者の皆さんとコミュニケーションややり取りを図っていくことに意義があると思います。実際に、いろいろなパネル討論や基調講演は、一般公開される予定になっているので、我々としてはできるだけ多くの市民の皆さん、県民の皆さんが参画できるように協力をしていきたいと思いますし、我々、県としても、核兵器に依存しない新たな安全保障のあり方についての意見交換や、あるいは核兵器とその持続可能性の関係についての意見交換など、このような取組を各国政府に対して働きかけをしていかなければいけないため、それについてのご助言をいただくとかや、県の施策上の推進もできればと思っています。
(司会)
その他、よろしいでしょうか。
(中国新聞)
中国新聞の河野と申します。私からは、ウェブサイトの「国際平和拠点ひろしま」の不正アクセスの影響についてお聞きしたいと思います。この被爆〔・終戦〕80年〔における平和の取組に関する〕事業の情報発信としてこのウェブサイトの不正アクセスが今どのように影響を受けそうなのかという現状と、再開の見通しをお聞きできればと思います。
(答)
情報発信という観点から、これまで使っていたサイトが使えなくなっているということは、非常に大きな影響があると思っています。復旧の目途はまだしっかりと立っていないですが、やはりこのウェブサイトが担う役割は大きいと思うので、復旧するにあたっては、再発防止に必要なセキュリティ対策をしっかりしていかなければいけませんから、しっかりと整理をしたいと思います。このサイトが復旧するまでの間に我々としては、取組を進めながら、また県のホームページでいろいろなことを展開しながら進めることができればと思っています。
(中国新聞)
ありがとうございます。念のため確認ですが、4月から始めるにあたって、県のセキュリティのあるホームページで活用しながら、情報発信していくということですか。
(答)
丸々、県のウェブサイトに取り込むことは難しいと思っていますが、一部の情報発信などについては、このサイトがないから全く発信しないではなくて、県からのお知らせとか、そういう形で進めていきたいと思います。
(中国新聞)
あと1つだけ〔お願いします〕。被爆80年にあたって、特設サイトのようなものを計画準備されていたと思いますが、その点はどのようにしようとお考えでしょうか。
(答)
特設サイトは、今年度中に県の公式ホームページの中で開設できるように取り組もうと思っています。
(共同通信)
共同通信社の曽我部と申します。ひろしま国際平和ビジネスフォーラムですが、拡充なので、これまでも経済人の会議というのは開かれていたのだと思うのですが、ビジネスが国際平和のために果たせる役割というのは、これまでの実績から言うとどういったことがここで話されて、どういった成果が上がっているのでしょうか。
(答)
過去の中でですか。
(共同通信)
そうです。
(答)
例えば、フィリップ・コトラー先生がご参加をいただいた会もありましたが、平和とマーケティングというような関係、平和をマーケティングしていかなければいけないというような認識〔の醸成〕ですね、あるいは、ベンチャー〔企業〕も参加をいただいたような会もありました。新しいテクノロジーを使うことによって、例えば、医療サービスの向上であるとか、例えばアフリカ、あるいは所得の向上だとか、あるいは識字率の向上だとか、そういうことに繋がっていく、それはビジネスがサービスとして提供することによって、それが改善されていく、それは社会の安定を増していくということなので、その紛争の元というのを、ある意味で言うと、元から解決をしていくと、そういうこともたくさんビジネスの役割としてあるのではないかとか、あるいはもっと直接的に、例えばデュアルテクノロジーみたいなものがあるわけです。軍用にも使えるし、あるいは民生用にも使えるのがデュアルテクノロジーでやるというものですけども、こういったものの開発とか、使用についてどのように考えるかとか、そういうものをやはりしっかりと深く考える必要があると〔考えます〕。そのようなことを様々な議論を通じて、ビジネスとして果たせる役割や、あるいは考えるべきことについて議論がこれまでされてきて、宣言も何回か出して、行動に結びつけるような努力をしてきたというところがあります。
(共同通信)
ちょっと意地悪な質問ですが、おそらく企業さんというのは、例えば自衛隊の協力企業であるとかが中にはあるわけで、なかなか平和というと、広島として取り組んでおられること〔と認識していると思います〕。今おっしゃった民需と軍事の境界線は言ってみれば、例えば軍事転用可能な技術があった場合に、それをどこで線を引くのかとかそういったことだろうと思います。そういう議論はあり得るのかなと思いますが、経済界の反応としてはいかがでしょうか。
(答)
だからこそ、このような会議をやるわけですけども、会議に参加された皆さんは、必ずと言っていいほど、これは非常に重要だという認識を持って帰られます。それが重要だというのはどういうことかというとまさに、平和とビジネスは関係あるのか、と思いがちです。でも、よくよく考えていくと、ないしは、こういう議論をすると、さっき申し上げたような、平和というのはそもそも何かを考えたときに、単に戦争がないというだけではなくて、貧困や、あるいは適切な医療が受けられないとか、あるいはエネルギーの問題について紛争が起きるとか、そういう様々な原因や要素があるわけです。そういったことを変えていくことによって、紛争の原因をなくしていく、とか、常にそういう形でのビジネスの役割はあると〔いうことです〕。今申し上げた、例えば今のAIでもそうですけど、AIの使い方や、これは兵器に応用するのかしないのかとか、そういういろんな問題で論点もたくさんあります。半導体についてもそうです。いろいろな論点があって、そういうことは全く考えないでとにかくやっていればいいということではなくて、やはり考えなければいけない重要なテーマであるということに皆さん気が付いていくということがあります。ただ、それがそのビジネス界の非常に共通した認識になっているかというと、それはまだまだなので、こういった会議を持続的に行うことによって、理解を拡大していくということが重要なことだと思います。すごくわかりやすい例でいうと、例えば環境も、昔はあまりビジネスが顧みてなかったわけです。すごく極端な例だと、公害が昔あったわけですけども、それは当たり前の話だったのが、それはやはり問題だということで、公害に対する対策をとる、ないしは自然環境を配慮するだけでなく改善するような取り組みをビジネスとして行うとか、それがさらに最近では、特にCO2の排出ということについては問題だとそもそも思っていなかったのが問題だと思うようになり、それが今度は内部化すると同時にそれをビジネス化することによって、例えばいろいろな技術があります、CO2分離の技術だとか、あるいはCO2を活用する技術だとか、そういうことによって、経済成長に結びつけていくとか、そのように、今やCO2のことを考えるというのが、企業の、ビジネス外のやらなければいけないことということではなくて、ビジネスの中に取り込んだようなものになってきてるわけですけども、平和というのも同じようなことで、まだまだそこまでの認識はないからこそ、環境のような、あるいはCO2排出のような、このような取組を進めていく必要があると思っています。
(共同通信)
もう1ついいですか。ウッドロー・ウィルソンセンター・ブートキャンプの広島に誘致というのは、これも相当野心的な試みという感じがするのですけれども、実際今のプログラムの中では、おそらく、核抑止とか、いわゆる核を持つことの、保有することの疑義みたいなことは当然教育されてるんだろうと当然思うのですけれども、広島に来ることによって、広島に何らか新しいプログラムを入れることによって、彼らにもいろいろ認識を変えて欲しいとか、新たな認識を持って欲しいとかそういう狙いがあるということなのでしょうか。
(答)
広島でやる意義というのは、例えば広島ICANアカデミーでもそうですけども、核兵器の問題を考えるときに、核兵器使用の実態とか実相とか、実際にどのようになるのかということを物理的に理解をする、ないしは感情的に理解をするということが非常に重要なことだと思います。それが土台とならなければ、頭の中で考えるだけの話になってしまうわけです。核兵器抑止論派にしても、あるいは廃絶派にしても、この現実を土台にすることが非常に重要だと思います。リアリティーを持って考えるということです。なおかつ、今回のこのウィルソンセンターの研究というのは、これは主に、やはり核兵器の歴史であるとか、あるいは抑止理論に関する歴史や考え方を学びながら、核兵器あるいは核軍縮をどう進めるかということに焦点を当てて、このコンセッションを進めていくということになっていますので、広島の方向性と合っていますし、我々としても、先ほどから申し上げているような、核兵器に依存しない安全保障のあり方を考える、そういうことを我々も提示をする機会もいただけることになっていますので、議論をしながら進化をしていけると思っています。
(共同通信)
ありがとうございました。
(司会)
その他、よろしいでしょうか。すみません。これが最後の質問でお願いします。
(日経新聞)
日経新聞の大久保と申します。「若者達が集い、未来に平和をつなぐプロジェクト」について、1点お伺いしたいです。平和の人材の育成というのは、今後何年までに何人ぐらいの、人をどのプログラムで育成していきたいのか、今後育成された人材がどういうことをして欲しいというようなものがあれば、教えていただけますでしょうか。
(答)
我々リソースがあれば何万人でも何十万人でもやりたいというところですが、これはリソースとの関係で制約があります。例えば〔広島〕ICANアカデミーであると、これまでの累積として150~160人ぐらいの人、年間大体15人~20人ぐらいの人が来てもらっていますが、財政規模からしてこれぐらいが限界というところで、これを継続してやっていきたい〔と考えています〕。何年までということはなく、ずっと続けていく必要があるようなことだと思います。あるいは、〔ひろしま〕ジュニア国際フォーラムという海外の高校生と日本の高校生が毎年40人ぐらい〔ずつ〕集まってもらうのですが、これも各国から来るので我々も支援して来てもらっているので、毎年40人ぐらい来てもらうのですが、ここまでで終わりでいいということではなく、ずっと今後担っていく、実際に平和に関する研究だとかあるいはそのプラクティスです。行政に入ったりとか、政府に入ったりとかする人もいますけども、そういうとこに直接的に関わらなくても社会の中で、その問題意識を持って、仕事をしたり生活をしてもらうことも重要なので、これも基本的には継続したいと思っています。大体年間いくつかのプログラムで70~80人くらいの人数を継続してやっていきたいと思っています。
(司会)
お時間になりましたので、以上をもちまして終了いたします。ありがとうございました。
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