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知事記者会見(核軍縮等に関する「ひろしまレポート2022年版」:令和4年4月14日)

印刷用ページを表示する掲載日2022年4月14日

 記者会見などにおける知事の発表や質疑応答をブランド・コミュニケーション戦略チームでとりまとめ,掲載しています。
 なお,〔 〕内は注釈を加えたものです。
 動画はインターネットチャンネルのサイトでご覧になれます。

会見日:令和4年4月14日(木曜日)

発表項目

〔動画〕

  • 核軍縮等に関する「ひろしまレポート2022年版」について

質問項目

  • 核軍縮等に関する「ひろしまレポート2022年版」について

会見録

 (司会)
 それでは,定刻となりましたので,ただ今から知事会見を開催いたします。本日の発表項目は,核軍縮等に関する「ひろしまレポート2022年版」についてでございます。なお,本日の会見には,国際平和拠点ひろしま構想推進委員会 副座長,元国連軍縮担当事務次長,前内閣府原子力委員会委員の阿部信泰様,そして,公益財団法人日本国際問題研究所 軍縮・科学技術センター所長の戸崎洋史様にご同席いただいております。終了時間は14時15分を予定しております。これより,説明に移らせていただきます。ご質問は,知事,阿部様,戸崎様の説明が終了した後に,まとめてお願いいたします。それでは,まずは湯崎知事から説明をお願いいたします。

核軍縮等に関する「ひろしまレポート2022年版」について

 (知事)
 それでは「ひろしまレポート2022年版」を発表いたします。本日は,国際平和拠点ひろしま構想推進委員会の副座長でありまして,ひろしまレポート研究委員会の外部評価委員をお務めいただいております,阿部信泰様,それから,「ひろしまレポート」ご担当の,日本国際問題研究所 軍縮・科学技術センター所長の戸崎洋史様に同席いただいております。先ほどご紹介申し上げたとおりでございます。それでは内容のご説明ですけれども,今回の2022年版で10回目となります「ひろしまレポート」は,「国際平和拠点ひろしま構想」を具体化する取組の一つとして,各国の核軍縮などに向けた取組状況を国内外に発信することで,国際社会における核兵器廃絶のプロセスを着実に進めるための機運醸成を図ることを目指しており,取りまとめは日本国際問題研究所に委託して行っております。なお,2022年版より,昨年4月に発足した「へいわ創造機構ひろしま」,いわゆる「HOPe」の発行に変更しております。評価対象国は36か国でありまして,評価項目は65項目〔で〕,いずれも昨年と同様であります。まず,評価の対象となります,昨年,2021年の主な傾向についてでありますが,全体では,引き続き,新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によって,2020年に開催が予定されていました核兵器不拡散条約,NPTの運用検討会議が4回にわたって延期されたほか,多くの会議がオンラインあるいは対面とのハイブリッドなどの限定的な方法となるなど,核問題をめぐる議論の場にもさまざまな影響がありました。核軍縮分野について,2021年1月に核兵器禁止条約が発効して,2月には米露の新戦略兵器削減条約,新STARTの5年間延長が合意されました。一方で,核保有国は核戦力の近代化を継続するなど,さらなる合意や実施に向けた具体的な取組は見られず,核兵器禁止条約を推進する非核兵器国と,反対する核保有国及びその同盟国の間の,核軍縮をめぐる意見の相違がより顕著になっております。次に,核不拡散分野については,イランによる包括的共同行動計画,JCPOAと呼ばれますが,これに定められた義務の一時履行停止の拡大であるとか,北朝鮮による核,ミサイル開発の進展などが引き続き懸念されております。続きまして,核セキュリティ分野につきましては,ドローンを用いた妨害破壊行為やサイバー攻撃などの脅威が高まる一方で,核セキュリティの国際的な強化のための取組が進んでいるとは言えず,調査対象国の中にも,強化に対するコミットメントのない国が見受けられました。続いて,発信力向上のための取組ですけれども,まず,岸田文雄内閣総理大臣から,核兵器のない世界の実現に向けた強い決意を示した特別寄稿をいただき,掲載しております。また,核をめぐる米中関係,TPNWの,核兵器禁止条約の発効,SDGsと核問題,オーストラリアの原子力潜水艦取得問題など,最近の情勢を反映したトピックにつきまして,第一線で活躍する専門家,有識者及び若者の視点からのコラムを掲載しております。さらに,2022年2月に勃発したロシアによるウクライナへの軍事侵攻につきまして,「ひろしまレポート2022年版」の対象期間外でありますので評価には反映していないのですけれども,注目が高い話題でありますので,別冊のコラムを作成して,ウェブサイトに公開しております。この「ひろしまレポート」〔を〕各国の国連代表部や大使館に送付いたしまして,核兵器廃絶に向けた機運の醸成の一助となるよう,広く発信してまいりたいと考えております。また,新型コロナウイルス感染症の影響によりまして,まだ参加できる状況かどうかは未定なところがありますけれども,状況が許せば,8月に予定されておりますNPT運用検討会議に参加して,各国の政策担当者などへの配付や,評点結果などをまとめたバナー展示をしたいと考えています。本県では,引き続き,こういった取組を通じまして,核兵器のない平和な世界の実現が着実に進められるよう取り組んでまいりたいと考えております。それでは,2021年の核軍縮,核不拡散,核セキュリティをめぐる動向につきまして,まず阿部大使,続いて戸崎所長にご説明いただくこととしたいと思います。それでは阿部大使よろしくお願いします。

 (阿部大使)
 阿部でございます。私からは主要点について,ざっと私の感想めいたものを申し上げたいと思います。一つは,〔「ひろしまレポート」は〕こんな分厚いもので,ご覧いただくと,ものすごい細かくいろんなことを調べて書いてあります。そんなことは必要なのかという声もあるかもしれませんが,やはりこれは,広島からいろいろ〔と〕核問題について提言を出し,意見を出していますけれども,それはこれだけの細かく,ちゃんとよく勉強したものを基礎にして申し上げているのです,といういうことで,非常に大事なことです。世界でも,アメリカとかイギリス,スウェーデン,オーストラリアとか,いくつか似たような研究がありますけれども,私は客観的に見ても,これはどれにも引けを取らない,立派なものになってい〔ると思い〕ます。そういったものを作ることで,社会的にも権威あるものとするということが大事だと思います。同時に,知事もおっしゃられましたけど,これをまた一般の方には,とてもこんな細かいものは難しい言葉がいっぱいあって読めないので,やはりわかりやすいように,こういう〔小冊子のような〕資料を作るということで,これも非常に,広島県がよくやっていただいてると思います。〔それ〕で,現在の状況を核軍縮,〔核〕不拡散,〔核〕セキュリティ,いずれを見ても,事態は停滞するか,あるいは逆に悪化しているという状態にあって,去年から今年にかけての状態というのは極めて暗い状況にあると思います。加えて,この間に,コロナ禍ということがあって,世間のやはり最大の関心はそちらに移ってしまっていて,当面のコロナ対策をどうするのかということに行って,依然として〔核問題に関する〕協議は続いているのですけれども,核問題についての関心の方が後ろに追いやられたという状態が続いているということも,我々の核問題に関する努力を難しくしております。同時に〔核〕不拡散〔条約〕,NPTの再検討会議が何度か延期される,あるいは核兵器禁止条約の〔締約国〕会議も延期されるということで,そういったところで,集まって議論する機会も延び延びになっているということも,非常に残念な状況にあります。〔それ〕で,核軍縮については,確かにアメリカとロシアが,新START条約というのを,ギリギリのところで5年間延長することになりました。これは良かったのですけれども,〔それ〕ではこの5年間の間に,これに続く新しい条約を作って,さらにアメリカとロシアの核兵器をどんどん減らしてもらうということをやらなければいけないのですけれども,残念ながらその動きは非常に停滞していて,ほとんど動きがないという状況にあります。むしろ逆に,各国は核兵器戦力の近代化というものを精力的に進めていると〔いう状況で〕,あるいは,核兵器をより使いやすいようにしようと,小型化しようと,運びやすいものにしようという努力を進めていて,そういう意味では,逆行する動きがいろいろ見られると〔いう状況です〕。〔それ〕で,アメリカにバイデン大統領が登場して,核兵器の役割を低減しようということを掲げて登場しました。〔それ〕で,これは大変,私も期待したのですけれども,バイデン大統領が掲げた核兵器の先制不使用,あるいは核兵器を使う目的は唯一,相手の核兵器に対してだけ使うという政策を採用しようとして登場したのですけれども,残念ながら今〔のアメリカの状況を〕見ますと,そこには行かないようでございます。ロシアとの関係が悪化,あるいは中国が非常に急速に核戦力を近代化しているという状況もありますけれども,残念ながら私から見ると,力不足か何か〔で〕,保守派,現実主義派に押し戻されているという状況で,残念な状況にあります。それから,唯一,明るいニュースは,核兵器禁止条約,TPNWが発効したということでございまして,これは核兵器を持っている国,あるいは日本などの〔核の〕傘の下にある国は入っていませんけれども,しかしこれが,これから,どんどん批准する国が増えて,100〔か国〕を超えて,世界の圧倒的多数はこの条約を批准して加入しているという状況になれば,これは事実上,世界的に,核兵器は持ってはいけない,使ってはいけないという禁止の,批判ができるのです。これは非常に大きなことなので,私はこれをまず目指して,各国に頑張ってもらいたいと思います。その意味においては,日本政府は,〔核兵器〕禁止条約に賛成の国と,そうではない国の橋渡しをするということを,長く掲げてやっておられますけど,私が見るところ残念ながらそれほど積極的に動いていないです。だから,もうちょっと日本政府には積極的に動いて,例えば,〔核兵器禁止条約〕締約国会議が最初に開かれる時には,少なくともオブザーバーを送って議論に参加するというくらいのことを,私はぜひともし〔ていただき〕たいと思うのですけれども,聞くところによると,残念ながら日本政府は今,そこまで行かないようでございますけれども,ただし,会議にオブサーバー参加すらしなくても,まだできることはあるのです。この条約の中に,核兵器の使用,あるいは実験によって悪影響を受けた人々,それによって影響を受けた環境を改善するための努力を各国は協力してやると書いてあるのです。これについては,私は,日本はいろんな経験もありますし,専門家もいるので,協力できるので,今は本当にそういう面だけでも,皆さんと協力しましょう,ということをやったら良いと思うので,また私がいくつか提言を出して,政府に働きかけていますけれども,実現するかどうかわかりません。〔それ〕で,それから,核兵器の問題では,これは今年の動きなので,まだあれ〔「ひろしまレポート2022年版」の評価には反映していない〕ですけれども,核兵器を持っている国が「核兵器を使うぞ」と言って脅しをしているという状況が,今ウクライナをめぐって起きているわけです。これは非常に,核軍縮の面から言うとマイナスであって,そういったことをやるのであれば,やはり我々が核兵器を持たなければいけないということになってしまうわけで,そういうふうなことで,非常に核軍縮にマイナスの動きなのですけど,実はこの「〔ひろしま〕レポート」では,採点表で採点していますけれども,今までそんなことをする国はあまりなかったのですから,採点表の項目には,そういう,脅しというものは,あまり入っていないのです。ですから,これはもし来年版をまた来年作るとすれば,そこには少し,そういう要素も勘案して,点数表でマイナスにするということをやって,そうすればおそらくロシアの点数とか下がると思います。そういうことも我々は考える必要があると思います。それから〔核〕不拡散の面では,北朝鮮は逆に動いていますし,それからイランの核合意復活というのもなかなか思うようにいかないということもありますが,一番ここで,〔核〕不拡散の面で問題なのは,今のウクライナ情勢で,そもそも1994年に,ウクライナの核兵器を全部ロシアに渡す時に,ブダペスト覚書というのを作って,ウクライナの領土,主権は尊重しますと,内政には干渉しませんというようなことを約束して,ウクライナに核兵器を手放させたのです。それが今や,まさに全て起きているのです。領土は侵犯されて,主権は侵害されて,しかも,ゼレンスキー大統領を外そうという内政干渉までやろうとしているということで,まさにその真逆のことをやっているという状況が,これ〔を〕世界中が見ていて,やはり核兵器は手放さなかった方がよかったのではないか,あるいは〔核兵器を〕持っていないけれども,これは絶対持たないと,我々もやられると〔思う可能性があると〕いうことで,非常に今の状況は,核不拡散にマイナスの状況にあるということがございます。最後に,去年起きた事件で一つ注目しなければいけないのは,オーストラリアとイギリス,アメリカが安全保障面で協力しようということでAUKUS〔オーカス〕というグループを作って,その一つの目玉として,オーストラリアが原子力潜水艦を検討するのを助けようと,こういうこともやりましたが,実はそのためには,原子力を使わなければならない。このために,技術はイギリスとアメリカが持っているのでその技術提供はするわけですけれども,NPTの条約とIAEAの規則からすると,核爆弾は作ってはいけないのですけれども,軍事的に核物質を使うのは良いのです。しかもこれ〔は〕軍事面なので触ってはいけないので,その部分についてはIAEAの保障措置,いわゆる査察検証が適用されないのです。これは事実上,合法的な抜け穴になっているのです。それをオーストラリアがやろうということで非常に大きな影響があるわけです。〔それ〕で,オーストラリアは核爆弾をそれから作ろうとはしないかもしれませんけれども,イランなどはしきりと「濃縮〔を〕やめろ」と言うと,「いやいや,うちは原子力潜水艦を作ったんだ」と言い始めます。ですから,まさにそれは抜け道になるとみんなわかっているので,それが,オーストラリアがやるというのは非常に影響が大きい。私はこれは何とか,影響を最小限にとどめるように努力しなければいけないと思います。以上は,簡単な私のいろんな雑感でございます。

 (知事)
 それでは,戸崎さん,お願いします。

 (戸崎所長)
 日本国際問題研究所の戸崎でございます。この「ひろしまレポート」の作成を,日本国際問題研究所として委託されまして10年になりますので,10回目の「ひろしまレポート」ということになりましたけれども,この間,湯崎知事,それから全面的に支援をいただいておりました,平和推進プロジェクト・チームの皆さまに,まずは深くお礼を申し上げたいと思います。2021年の動向につきましては,今,知事,それから阿部大使から,すでに重要なポイントをかなりお話しいただいたかと思いますけれども,私の方からは若干繰り返しも出てくるかと思いますけれども,それを補填するような,補足するような形で,動向について簡単にご説明申し上げたいと思います。まず,核軍縮ですけれども,核兵器のトータルの数自体は,少しずつ減ってはきている。他方で,全ての核保有国,北朝鮮も含めて,〔全ての核保有国〕が核戦力の近代化を行って,具体的には運搬手段のスタイルですとか,技術とかそういうところですけれども,特にロシア,中国,北朝鮮の動向が活発だということですし,中国については,新しいサイロ,300基ぐらいのミサイルが入るかもしれないと言われているものが,去年,衛星写真で見つかりまして,核戦力の大幅な,特に戦略核戦力の大幅な増強というものを目指しているのではないか,〔それ〕で,中国は核兵器の先行不使用,それから低い警戒態勢というものを宣言政策として出していますけれども,これにも変化が出てくるのではないのかというふうに言われています。中国はいずれについても否定はしていますけれども,そうした見方というのがなされているということであります。〔それ〕で,2021年,軍縮コミュニティが結構びっくりしたのが,イギリスの政策変更でありました。核兵器保有数の上限を260発にまで引き上げるということ。現行の体制,戦略原〔子力〕潜〔水艦〕を4隻持つという体制は変わりませんけれども,保有数をそうやって引き上げるということ,それから透明性についても,核兵器国の中ではかなり高い方だったのですけれども,核保有数に関する意図的な曖昧さといったようなものを,さらに拡張して透明性に一定の制約をかけるんだということを打ち出しました。ということで,今年のイギリスの成績というのはかなり落ちているのではないかと思います。〔それ〕で,新STARTが5年間延長されたというのは,一つ,昨年の年の初めの良いニュースではあったわけですけれども,その後,ポスト新STARTです。さらなる核の削減に関する米露の交渉については,対話という形でなされ始めてはいましたけれども,全く進んでいない,それまでのアメリカとロシアの主張が繰り返されるような状況というところです。当然,中国も,アメリカとロシアが先にやらなければ自分たちは核を削減しないのだという主張は変わっていないので,そういう意味で 2021年,新START〔の延長〕はありましたけれども,さらなる軍備管理,軍縮というところ,削減については,全く進まなかったというところであったかと思います。核兵器禁止条約は,繰り返しになりますけれども,昨年1月に発効しました。〔それ〕で,締約国数も増えてきていますし,今年の6月に,延期されていましたけれども,締約国会議も開かれるということになりました。他方,核保有国〔や〕日本も含めた同盟国は,引き続き,反対と言いますか,署名はしないという方針,それを繰り返しています。その中で,ドイツ,ノルウェー,スウェーデン,スイスが締約国会議にオブザーバー参加をするという意向も示しているということで,こうした国々が今後どれだけ出てくるのかというのは注目なのかなというふうに思います。〔それ〕で,NPTの運用検討会議も延期になりまして,今年の8月まで延期ということになっていますけれども,核リスク,核兵器を使用しない,核兵器の使用可能性を低減するというところです。核兵器国は戦略的リスク削減というふうに言っていますけれども,それの関心が出てきたと〔いうことです〕。〔それ〕で,これは二つあって,戦略的競争が非常に激化している,地政学的競争が激化している,核兵器が使われる可能性というのが高まっている。だからこそ使われないようにしよう,使う可能性を減らそうというのが一つと,核軍縮をめぐる非常に厳しい状況が続いている中で,なかなかすぐに何かが進展するというものは見えないという中で,少しでも核軍縮を前に進めていこうとすると,この分野がまずは取っ掛かりとして手をつけるべきではないかというような二つのベクトルが働いたということで,戦略的リスク低減というものへの関心が高まっていくということであります。〔それ〕で,日本も参加しているストックホルム・イニシアティブなどは,この問題について非常にしっかりとした提案を出していますし,去年の末と今年の初めのNPT運用検討会議に出す予定というか,出す〔ために〕核兵器国は作業文書を作ったりしていて,自分たちもこれに取り組もうというような姿勢を示していたという中で,ロシアがまさにその核兵器の使用のリスク低減とは全く逆の行為を2月に行ったということで,核軍縮,軍備管理,それから核リスク低減に関する入口のところで,またかなりつまずいてしまった。もう一度これを再活性化するためには,かなりの努力が必要だというふうな状況になっていると思います。核不拡散につきましては,北朝鮮は引き続き積極的に核ミサイル開発を継続していると〔いう状況で〕,長距離〔ミサイルの発射〕については2021年はやりませんでしたけれども,〔20〕22年〔版の「ひろしまレポート」の〕評価の対象ではありませんけれども,〔2022年〕1月に何発も〔発射を〕やり,さらに長距離のICBMも,1回の失敗もありましたけれども〔ICBMの発射も〕行ったということで,核実験の懸念もなされているところでありますし,〔国連〕安〔全〕保〔障〕理〔事会〕決議でいろいろと輸出入の制限も課されていますけれども,違法取引,不法な調達,そういったものを継続しているというところが,報告書などでも書かれています。それからイランです。イラン核合意の一部履行停止をどんどん拡大しているという状況で,ウランの濃縮量,濃縮等遠心分離機の数,性能などいずれも高まってきていますし,60パーセントの濃縮ウラン,核に使うには90パーセント〔の濃縮ウランが必要と言われており〕,60〔パーセント〕でも使えないことはないのですけれども,90〔パーセントが必要〕と言われていますけれども,それに近いものであったり,それから核弾頭に組み込むためには金属ウランというものにしないといけないわけですけれども,それを少量作ったというようなことも行っているということで,非常に懸念が高まっているというところです。この再建合意に関する間接協議というのはずっと行われていますけれども,まだまだ,成立〔には〕,もう少しで〔成立〕しそうだと言いながら,なかなかしないという状況が続いています。それから,先ほど大使のお話にもありましたけれども,AUKUS〔オーカス〕です。原〔子力〕潜〔水艦〕の燃料にどのような保障措置をかけるのかという議論,これは通報と言うのですか,18か月ぐらいでIAEAと,それからこのAUKUS〔オーカス〕と〔で〕まとめるというところが目標になっていたかと思いますけれども,今年,来年にかけて,真剣にやるのであれば,その議論というのを進めなければならないというところです。それから核セキュリティについては,核テロへの脅威感というのが,何となくこう薄れつつあるというのはありますけれども,他方で,原子力施設へのサイバー攻撃,ドローン攻撃,そういったものの一層の高まりはありましたし,2021年の動向ではありませんけれども,ロシアがウクライナの原子力関連施設に攻撃を行ったということもありましたので,そうした施設への攻撃の可能性というのを,より真剣に取り組まなければならないことなのだろうと思います。それから核セキュリティについて,やっている国は一生懸命やろうとしているというのはあるのですけれども,なかなかちょっとそれが表に出てこない。核セキュリティ〔は〕当然,秘密の情報とかもあるので,各国が出したがらないというところがあり,なかなかそれを追いかけていくのは難しいのですけれども,その中からでも一生懸命頑張ろうとしている国は頑張っているというところも見て取れたのかなというふうに思います。他方,レジメでは最後ですけれども,東〔京〕電〔力〕の柏崎刈羽原発で核流出が起きて,今,〔こ〕の問題というのが発覚したと〔いうことです〕。〔それ〕で,これ〔は〕国の行動ではないので,評点から落としているわけではない〔もので,また〕,これが発覚した段階で,日本政府はすぐに対処したというのがありましたので,評価からは,低下していると言うか,減点したわけではありませんけれども,実際に核テロというのはこういったところを狙ってくるのだというところで,こうした綻びが核テロを招くというところで,この報告書では今回,若干強調した書きぶりにしたというところであります。核セキュリティの水準をしっかり高いところに保つ取組というのを引き続きやらないといけないというところです。最後に,ロシアの動向について,繰り返しになりますけれども,2022年に起こった事象ということで,2021年の動向を表した今回の「ひろしまレポート」では,この問題は含まれていませんけれども,この事象の大きさというところを鑑みまして,コラムを作成させていただいたというところであります。基本的には,このコラムは,これまで起こった事態をまとめたものでありますけれども,ロシアの侵略がその核の恫喝の裏でなされたということ,それから原子力施設への攻撃というのは,当然許されざる行動だと思いますし,またこうしたことが〔核〕不拡散体制,これに対する重大な挑戦というものを,ロシアはもう繰り返し繰り返し突き付けているということ,それから米露間の核軍備管理が進展する可能性というのも,当然,米露の関係は悪くなっているわけですから,当面は望めないという意味で軍備管理にも悪い影響があるということ,さらに言えば,核兵器のない世界〔に向けて〕,この事態が起こった後,より「抑止を重視すべきだ」という議論と,「いやいや,核があるからこういうことが起こるのだ,だから廃絶すべきだ」という議論,その亀裂というのは今までもあったわけですけれども,それを何と言うか一層拡大させているような感じがします。これをどういうふうに収れんさせながら,軍備管理を進めていく,軍備管理,軍縮を進めていくのか。それから先ほど申し上げましたけれども,核リスクの低減です。この重要性というのがあらためて浮き彫りになった事態ではないかなというふうに思いますし,もう1回これをリバイスしていくというのは難しいかもしれませんけれども,1回取り組む必要があるだろうというふうに思います。〔それ〕で,〔核兵器禁止条約〕締約国会議,それから〔NPT〕運用検討会議がありますけれども,その際,核軍縮,〔核〕不拡散の再活性化に向けて,どのようなことを,具体的な取組を打ち出していくかというところ,それは日本だけではありませんけれども,日本として何をしていくべきかということをあらためて考えなければならないという,非常に重大な事態だったのだろうと思います。私からは以上でございます。ありがとうございました。

 (司会)
 それでは,これより質疑に移りたいと思います。ご質問の際は,社名とお名前を名乗られて,知事,阿部様,戸崎様,どなたへのご質問かをおっしゃってからお願いいたします。それでは,質問がある社は挙手をお願いいたします。

 (中国新聞)
 中国新聞の宮野と言います。まず湯崎知事にお願いします。今回の「〔ひろしま〕レポート」〔は〕,核軍縮については総じて厳しいというような指摘が出ているレポートなのですが,これを受けて,まず核兵器を持っている保有国に対しては何を望むか,どうしてほしいと望むかということをお伺いできますでしょうか。

 (知事)
 核兵器保有国に対しては,望むことというか,求めることはもう一貫していて,それはとにかく,核兵器廃絶ということです。それがもう,今,別途,ポスト SDGsのお話なども進めていますけれども,人類の存続の持続可能性の観点から,非常にもうこれは避けられないものだという認識を持ってもらって,〔それ〕で,核兵器廃絶をしていくということに踏み出していくということは,何よりも望むことです。そこまでに至るまでに,もちろん軍縮の取組だとか,あるいは核兵器の役割の削減だとか,いろんな取り得ることがあるわけですけれども,究極的には,〔核兵器〕廃絶というのを求めていきたいと思っています。

 (中国新聞)
 次に,日本の評価についてお伺いします。日本は評点に変化がないという結果になっています。「核兵器のない世界」を唱えつつ,具体的な行動が伴っていないというような評価になったということだと思いますが,知事としてどう見ていますでしょうか。

 (知事)
 評点自体は,日本の評点は変わっているわけではなくて,あまり動きがないということですが,逆に言うと,これ〔は〕あまり,何か取組が進んでいるわけでもないということなのだと思うのです。そういう意味では,やはり唯一の被爆国,戦争被爆国として,さらに核兵器の削減と,究極には〔核兵器〕廃絶に向けて,努力していただきたいと思いますし,そのための,国際社会の〔中で〕,引っ張っていくリーダーシップを発揮していただきたいと思っています。

 (中国新聞)
 今回,レポートが最初の発行から10年を迎えたという点についてお伺いします。これまでの10年間の歩みがありましたが,成果,どのようなふうに〔成果が〕出ているか,どう評価して,どのような成果があると考えていますでしょうか。

 (知事)
 これまで,核軍縮だとか,あるいは安全保障の専門家の皆さんに〔「ひろしまレポート」を〕配付して,肯定的なご意見をいろいろいただいているところでありまして,専門家の方々には,「ひろしまレポート」がしっかりと,先ほど阿部大使からもありましたけれども,客観的な資料として,しっかりと受け止めていただいて,有用なものとして活用いただいていると評価しています。例えばですけれども,レポートは,これも先ほど阿部大使からあったように,詳細かつ多くの情報が包括的に記載されているということで,非常に有益だとか,あるいは各国のNPTに関する履行状況を監視する上で役立っているとか,広島がこういったレポートを作成すること自体〔に〕大きな意味があるといったような評価をいただいています。〔それ〕で,去年の12月に,小冊子についてアンケートを実施したのですが,回答を見ますと「ひろしまレポート」小冊子について,62件〔の〕回答があったのですが,「やや満足」というのが36件,「非常に満足」というのが17件と回答いただいてまして,約9割の回答者から肯定的な評価をいただいています。特に,昨年度,世界地図〔を〕追加しているのですが,この満足度が「非常に満足」と「やや満足」〔を〕あわせて,「非常に満足」は39件で,「やや満足」が19件となっていまして,非常に高い評価をいただいていまして,全体についても「コンパクトにまとまってわかりやすい」とか,「人に説明するために使いたい」といったような,そういった声をいただいているところです。

 (中国新聞)
 レポートの目的というのは,知事〔が〕冒頭に発言された〔ことですが〕,核軍縮に向けたプロセスを進めるための機運の醸成ということをおっしゃられていて,今回の結果,過去10年間を見て,それぞれの国の評点をまとめたページもありましたけれども,遅々として確立は進んでいないと感じるところでもありました。機運の醸成という意味で,役割は果たしているとお考えでしょうか。

 (知事)
 非常に何と言いますか,核兵器の問題を考えていく上で,そのベースになるようなものだと思うのです。こういった客観的なものがないと,その議論のベースが,そもそも難しくなるというところがあるので,そういう意味で,何か,何とか運動みたいな,そういうのとはちょっと性質が違うのですけれども,違った形で機運醸成にも貢献しているのではないかと思います。

 (中国新聞)
 最後に,知事の冒頭の発言で,8月のNPT〔運用検討会議〕に参加したいというようなことがありましたが,これは広島県として〔参加したい〕という意味ですか,それとも湯崎知事として〔参加したい〕ということでしょうか。

 (知事)
 それは,私個人が行くかどうかということですか。

 (中国新聞)
 はい。そういう趣旨で発言されたのか,県として参加してやっていきますと〔いうことなのか,いかがでしょうか〕。

 (知事)
 県として,当然参加してやっていくのですけれども,私ももちろん,状況が許せば行くという,そういうことです。

 (中国新聞)
 ありがとうございます。次は専門家の方にお願いします。まず阿部さんにお願いします。冒頭にレポートの評価も発言されていたかと思うのですが,10年間続いたレポートという観点から,専門家の視点から,この「ひろしまレポート」の評価,意義などお伺いできますでしょうか。

 (阿部大使)
 実は,〔最初の発行から〕10年が近づいてきた頃,ちょっと試しに10年間,その頃はまだ8年ぐらいだったか,〔そ〕の間に評点がどういうふうに動いたか〔と〕いうのを,ちょっと表を作ってみたのです。戸崎さんと一緒にやったのですが。そうしたら,全然,変化がないことがわかった。これ〔は〕あまりこの表を作っても意味ないというのでやめたのですけれども,この10年間というのは,残念ながら,核軍縮,〔核〕不拡散があんまり動きのなかった10年間だったのです。そういう意味で言ったら,良い方向に進展があまりなかったと,唯一あるのは,去年,核兵器禁止条約ができたという一つの大きな〔動きが〕ありましたけれども,他の分野では,なかなかあまり「これは」という目立った進展がなかった10年間だったというのが,残念なことで,これはレポートが10年間ダメなのではなくて,現実がダメだったということです。

 (中国新聞)
 今年の核軍縮をめぐる動きという点で,ロシアによるウクライナ侵攻が厳しい状況という中ではありますが,核兵器禁止条約の締約国会議であったり,NPT再検討会議が開かれる予定です。それぞれの会議で,成果としてどのようなことを勝ち取るというのが期待できるようなものでしょうか。

 (阿部大使)
 NPT〔運用検討会議〕の方は,毎回なかなか難しいのですけれども,全会一致の原則があって,みんなで合意しないと,なかなか最終文書で合意文書がまとまらないということで,前回はできなかったので,今回,何とかこれをうまくまとめると,そのためには早い話が,ごねる国が出ないことが大事なのです。その意味においては,イランの核合意がうまく,そこまでに復活ということがアメリカとイランの間でまとまれば,かなり良い方向に行く〔と思います〕。それから北朝鮮が悪さをしないということです。でも北朝鮮は自分はNPT〔を〕脱退したと言っていますので,悪さをしても,皆で「けしからん」と言うだけで,合意文書がどうのこうのということにはならないのですけど。〔核兵器〕禁止条約の方は,私はもう少し,実は,3日間だけやっていますが,もう少し延長をかけて,じっくりいろいろ議論してもらいたいと思ったのですけれども,3日間の議論しかないのです。これは第1回目で非常に大事な会議なのです。いろんな検証規定をどうするのか,それから実際に,例えば核兵器を持ってはいけない,あるいは持とうとする国を奨励したり,助けてはいけないという条文が第一条なのです。ここは非常に日本にとって大事なところなのですけれども,例えば将来,日本が〔核兵器禁止条約に〕入ろうという時に,日本は核兵器を持っていません。ただし,これ〔は〕オーストラリアにそういう議論があるのですけれども,アメリカの核戦略を助けるためのレーダー基地とか通信基地を置いているではないかと,それも助けることに入るんだと言われると,条約に入れなくなってしまうのです。そういうことの細かい解釈,運用について,もう少し議論して,やってくれれば私は良いと思います。3日間ではなかなか難しいと思うのです。できるだけ,〔議論が〕進むことは期待しますけれども,ということ〔です〕。それからもう一つ,この二つの会議で,おそらくまた舞台裏では,「あなたは早く〔核兵器〕禁止条約〔に〕入って,批准してくれ」という運動と,「やめなさい,やめなさい」という運動がおそらく火花を散らすと思うのですけれども,そこにおいても,まさに日本の橋渡しの役割はそこで果たし得るわけで,日本の外交が,そこで出かけて行って,「いやいや,そう言わず,お互い,そういう引っ張り合いではなくて,何が協力できるのかということを話し合おうではないですか」と,いろいろできることはある〔ので〕,ぜひともこれをやってほしいと思います。

 (HTV)
 すみません。広島テレビの門脇です。湯崎知事にお伺いします。あらためてなのですけど,今回の「ひろしまレポート」の,核兵器禁止条約が発効されたという評価する部分もあると思いますし,一方で,核保有国とそれに反対する国との亀裂が深まったというような,逆にマイナスの面もあると思いますが,あらためてこのレポートに対する評価をどのように,今回〔の〕レポートについて〔評価を〕下しているかという点と,来年のレポートを,どういうふうに変化すれば良いなという思いがあれば,お話をお願いします。

 (知事)
 すみません。それは,レポートの評価というのは,レポートが示している核兵器をめぐる現状についての評価ということですか。

 (HTV)
 そうです。今回のレポートを見てという〔評価をお願いします〕。

 (知事)
 そういう意味では,やはり一つは,この9年間,10年間ということでもあるのですけど,あまり大きな変化はなかったけれども,特に,良い変化というのはほとんどないということです。現実には,いろいろ〔な〕,イランの問題にしても,北朝鮮の問題にしても,悪化しているということが多いですし,あるいはロシア〔や〕アメリカの,アメリカの臨界前核実験とか〔もありましたが〕,あるいはその兵器に対する投資であるとか,これもロシアも含めて,そういうところが進んでいるということは,この評価,レポート〔に〕出ている〔評価〕以上に,ひょっとすると悪い状況なのかもしれないと思います。来年は,今度はウクライナの問題も含めて,レポートの中に反映されていくという現実があり,そういう意味で,非常にまた楽観的に考えることが難しい。ひょっとすると今年,この「ウクライナ紛争」,ないしは「ウクライナ戦争」の文脈の中で,核兵器が使われるというようなことがあるかもしれませんから,そうなると本当に最悪の状況です。ただ,期待としては,今回のような危機を,ある意味逆バネにして,やはり核兵器〔は〕非常に危険であると,人類の存続の上でも非常に危険であるということ〔の〕再認識がなされて,あらためて,まずは核軍縮のステップをさらに進めなければいけないという,そういう機運が生まれてくるということは,何と言いますか,希望的な観測ではないのですけれども,〔希望〕としては持っていたいと思います。

 (HTV)
 ありがとうございます。あと1問,お願いします。今回の評価には入っていないということですが,ウクライナの,今お話もありましたけど,コラムで,別紙で今回〔ロシアのウクライナ侵攻に関するコラムを〕出しましたけど,今のそのウクライナ情勢をめぐる現状,まだ侵攻が続いていますけど,核兵器が使用される懸念もある中で,どのようにお考えか,あらためてお願いします。

 (知事)
 それは私〔への質問〕ですか。

 (HTV)
 はい。湯崎知事にお願いします。

 (知事)
 やはり,今現実に起きているのは,核兵器の使用をちらつかせながら,完全に,ある主権国を蹂躙しているということです。それで,今後,より客観的に明らかになると思いますけれども,一般住民を含めて,非常に凄惨な,殺戮のようなことが行われていると,これはこの背後に核兵器の存在というのがあるということを考えると,到底,やはりこの行為自体〔が〕許し難いですし,やはり核兵器による脅しとか,あるいはその保有ということが,許し難いことだと,そういうものを如実に表している戦争だと思います。

 (HTV)
 ありがとうございます。

 (共同通信)
 共同通信の佐々木と申します。すみません。専門家の方にお伺いしたいのですけれども,最近,アメリカのバイデン大統領が臨界前核実験を行っていたということが明るみになったのですけれども,その実験自体は,ロシアのウクライナに対する侵攻を含め,世界の核の動きにどういう影響を与えるとお考えになっているか教えてください。〔阿部さんと戸崎さんの〕どちらの方でも大丈夫なのですが,もしお考えがあればお願いします。

 (戸崎所長)
 アメリカのこの臨界〔前核〕実験は,シリーズもので行われているということで,直接的にそれがロシアとかの動向に関わっているものではないということと,それから実際にどういう目的で行われているのかというのが,必ずしも明確ではない,アメリカからは公表はされていませんけれども,新型の核弾頭を新たに作るとか,そういうことではなくて,既存のものを,安全性を確認する,信頼性を確認するというようなことで,もしかすると新型の〔核弾頭を作る〕というのがあるかもしれませんけれども,また他の,こういう言い方はちょっとあれ〔良くない〕かもしれませんけれども,ロシア,中国,北朝鮮などと比べると,まだその近代化の程度というのは高くはない。アメリカは〔高くはないです〕とは言えるのかなというふうに思います。ただ,こうした実験を行っているということは,アメリカが,今後かなりにわたって,核抑止というものを維持したいということの強い決意の表れだと思いますし,そういう意味では,抑止,核廃絶という観点からは,こういったような実験というものを,ぜひ,CTBT上は禁止されていないのですけれども,こういったような実験を続けていくということ,そのことが,果たして核の問題にどのような影響を与えるのかということは,引き続き考えないといけないだろうというふうに思います。

 (NHK)
 NHKの亀山と申します。湯崎知事にお伺いしたいのですけれども,今回の「ひろしまレポート」では,先日明らかとなったアメリカの臨界前核実験の話は反映されていないと思います。昨年から比べると,核軍縮の面ではアメリカは0.8ポイントほどプラスになっていて,これを踏まえて,アメリカの臨界前核実験を踏まえて,今,アメリカをどのように評価されているか,受け止めを教えてください。

 (知事)
 評価自体は,まさに専門家の皆さんに行っていただいているものではあるのですけれども,いずれにしてもアメリカが,大きな流れとしては,今のバイデン政権が,核兵器の削減,それから究極には〔核兵器〕廃絶ということを目指したいという大きな大義を掲げながら,さまざまな形で,核兵器の使用というか,あるいは近代化だとか,そういったことを前提に,政権運営していると,ないしは安全保障の戦略を組み立てているということでありますので,やはり何と言いますか,その根本を変更していくというのは,簡単なことではないと思います。つまり,何かトップが意義,大義を掲げても,それによって国全体の戦略が大きく変更できるわけではないということを如実に表しているのだと思うのです。そういう意味で,軍関係の皆さんだとか,あるいは安全保障を考えているような皆さんが,大統領とかだけでなく,そういった皆さんも,やはりしっかりと核兵器使用の現実だとか,どういったことになるのか,今例えばウクライナでブチャにおける悲劇だとか,惨劇だとか,あるいはマリウポリの町が大きく破壊された様相などを見て,多くの方がショックを受けていると思うのです。核兵器の場合には,それ以上の破壊と,それから命の喪失というのが一瞬で起きるのだということを,あらためて認識していただいて,まさにこれを廃絶していくということが,そういった悲劇を避ける上では必ず必要なものだという認識を深めて,その上で,国全体として,トップから実務を担う人まで,全体が取り組んでいかければいけないことなのだろうなと感じているところです。

 (NHK)
 ありがとうございます。戸崎さんにお伺いします。臨界前核実験についてなのですけれども,これは具体的にはどういった実験になるのかということを教えていただけますでしょうか。

 (戸崎所長)
 プルトニウムを使うものが主だと思いますけれども,それに圧力をかけていって,そのプルトニウムが臨界に至らない段階での実験なので,爆発はしないですけれども,そういう高い圧力をかけていく,核爆弾の場合も一緒で,プルトニウムに非常に強い圧をかけて,それを爆発させるわけですけれども,その一歩手前のところで,プルトニウムがどういう挙動を示すかということを見ることによって,核弾頭に使われているそのプルトニウムが本当にきちんと安全なのか,あるいは逆に,予定している爆発威力をちゃんと持つものなのか,などといったようなことを,安全性,信頼性の実験ということですので,核爆発は起こさない,ということになります。

 (NHK)
 ありがとうございます。それを受けてなのですけれども,今回,アメリカが核実験を行っていたということと,ロシアのウクライナへの侵攻をあわせて,世界情勢を今どのように捉えていらっしゃいますか。

 (戸崎所長)
 ここ数年,2010年代の後半,とりわけ〔2010年代の後半〕以降は,戦略的な競争,大国間の競争であったり,それから地域,この地域など特に,ヨーロッパ中東などの安全保障環境というのは非常に悪くなっていって,そうすると,さらにその核抑止力,あるいは核兵器に対する関心が高まったり,抑止力が重要だという議論が高まったりというのが続いていると思うのです。ですので,この「ひろしまレポート」の中で,いろいろと核兵器国の動向を調べていても,なかなか良くならない,核軍縮が進まない,むしろ逆行しているし。だからこそ,核兵器禁止条約ができたというような背景もあったかと思いますけれども,そういった安全保障環境という意味ではそういうことですし,それが核の問題にも連動していると,そういった中で,日本も含めてですけれども,非核兵器国が,一生懸命,いろいろと,いろんなアイデアを出して,いろいろなイニシアティブを作りながら,これを前に進めようとしていると,それがなかなか実現しない,したとしてもわずか,というような中で,〔それ〕でもそれをやらないということが,諦めてしまってやらないということでは,核軍縮は進みませんし,それができるのは日本も含めた非核兵器国で〔あり〕,状況が,どういう状況になれば〔良いのか〕というふうに言われているかもしれませんけれども,そういったことをしていく中で,そのチャンスが来たときに,核兵器国を引っ張り出してこれるような形でという意味で,なかなか徒労感の多い作業なのかもしれないですけれども,非核兵器国,それからNGO,我々のような研究者,そういったような人たちが,引き続きこういう軍備管理,軍縮,〔核〕不拡散の問題,〔核〕セキュリティの問題というものに取り組んでいかないといけないのだろうなというふうに思っています。

 (司会)
 予定の時間になっておりますので,次を最後の質問とさせていただければと思います。いかがでしょうか。

 (中国新聞)
 戸崎さんにお願いします。今の質問とも重なる部分ではあるのですが,ウクライナについて,別冊の論考を出されていて,冒頭の発言でも亀裂の拡大というような表現もありました。そういった中,やはり核兵器の廃絶を願っている被爆者であったり,広島県民,そして県もそういった取組をしていますが,そういった亀裂拡大するような中でも〔核兵器廃絶を〕前進させるために,こういった市民社会の人たちは何ができるのかという部分について発言をお願いします。

 (戸崎所長)
 ありがとうございます。とても難しいご質問だと思いますし,私もそうですけれども,「何かやりましょう」と言っても,なかなか進むような状況ではない中で,だからこそ,言うことを続けるということが,私は大事なのだろうというふうに思っています。核の問題も,抑止力というのは,どうしても,核であるかどうかということは別にして,何らかの抑止が必要だというのは,今回のウクライナへのロシアの侵略というのが表してしまったのだと思うのです。ただ同時に,力だけではなくて,ルールであったり,それが軍縮,〔核〕不拡散も含めてですけれども,国際的な規範であったり,人道も含めてですけれども,そういったようなものの重要性も明らかにしたのだと思うのです。なので,非常に難しい状況だし,難しい時期だと思いますし,なかなかそれが,自分たちの主張が反映されないというのはあると思うのですけれども,それを言い続ける,主張する,それが大事だということ,こういうことを諦めずにやっていくしかないのかなというふうに,自分自身も思っているところです。無力感しか感じないような〔こと〕かもしれないのですけれども。

 (中国新聞)
 ありがとうございます。

 (司会)
 それでは,以上をもちまして知事会見を終了させていただきます。ただ今,ご説明いたしました発表内容につきましては,ラジオ・テレビ・インターネットについては,本日の13時30分,新聞については,明日の4月15日の朝刊をもって解禁となります。よろしくお願いします。それでは,ありがとうございました。

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資料1(核軍縮等に関する「ひろしまレポート2022年版」) (PDFファイル)(302KB)

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資料4(小冊子_核兵器のない世界へ向けて) (PDFファイル)(5.81MB)

資料5(別冊コラム_ロシアのウクライナ侵略と核問題の動向) (PDFファイル)(501KB)

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