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知事記者会見(核軍縮等に関する「ひろしまレポート2021年版」:令和3年4月14日)

印刷用ページを表示する掲載日2021年4月14日

 記者会見などにおける知事の発表や質疑応答をブランド・コミュニケーション戦略チームでとりまとめ,掲載しています。
 なお,〔 〕内は注釈を加えたものです。
 動画はインターネットチャンネルのサイトでご覧になれます。

会見日:令和3年4月14日(水曜日)

発表項目

〔動画:発表項目〕

  • 核軍縮等に関する「ひろしまレポート2021年版」について

質問項目

〔動画:質問項目〕

  • 核軍縮等に関する「ひろしまレポート2021年版」について

会見録

 (司会)
 それでは,ただ今から知事会見を開催いたします。本日の発表項目は,核軍縮等に関する「ひろしまレポート2021年版」についてでございます。なお,本日の会見には,国際平和拠点ひろしま構想推進委員会副座長,元公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・不拡散促進センター所長,元内閣府原子力委員会委員の阿部信泰様,そして公益財団法人日本国際問題研究所軍縮・科学技術センター主任研究員の戸崎洋史様にリモートにてご参加いただいております。終了時間は14時15分を予定しております。ご質問は,知事,阿部様,戸崎様の説明終了後にお受けさせていただきます。それでは,湯崎知事,説明をよろしくお願いいたします。

核軍縮等に関する「ひろしまレポート2021年版」について

 (知事)
 それでは,「2021年版ひろしまレポート」を発表いたします。本日は,国際平和拠点ひろしま構想推進委員会の副座長であり,ひろしまレポート研究委員会の外部評価委員をお務めいただいております阿部信泰様及び「ひろしまレポート」ご担当の,日本国際問題研究所軍縮・科学技術センター主任研究員の戸崎洋史様にリモートにてご参加いただいております。それでは,内容のご説明を申し上げます。今回の2021年版で9回目となります「ひろしまレポート」は,「国際平和拠点ひろしま構想」を具体化する取組の一つといたしまして,各国の核軍縮に向けた取組状況を,国内外に発信することで,国際社会における核兵器廃絶のプロセスを着実に進めるための機運醸成を図ることを目指しており,取りまとめは,日本国際問題研究所に委託して行っております。評価対象国は36か国で,評価項目は65項目,いずれも昨年と同様でございます。まず,昨年の主な傾向についてでありますが,全体では,新型コロナウイルスの世界的な感染拡大によりまして,2020年に開催が予定されていましたNPT運用検討会議が延期され,国連総会など多くの会議がオンラインなどの限定的な方法となるなど,核問題にもさまざまな影響がございました。核軍縮分野につきまして,状況は複雑化しております。2021年2月が期限でありました米露間の新戦略兵器削減条約,いわゆる新STARTは2020年中には合意に至りませんでした。核兵器禁止条約の署名・批准国は着実に増加しまして,2021年1月に発効することになりましたが,核保有国及び同盟国は条約に署名しない方針で,条約を推進する非核兵器国との亀裂は深まっているようなところであります。次に核不拡散分野につきましては,イランの核合意,JCPOA〔包括的共同作業計画〕を巡りまして,イランは義務の一時履行停止を段階的に拡大するとともに,合意の規定を大きく超えて濃縮ウランの貯蔵量を増加させているなど,核不拡散の懸念を助長する動きが強まっております。続きまして,核セキュリティ分野については,核テロ脅威への警戒感を持つ国や原子力発電の導入に熱心な国などを中心に,核セキュリティの水準向上,支援強化が進みました。サイバー攻撃や内部脅威に対する措置を行った国が点数を上げておりますが,多くの国においてさらなる取組の余地を残しているような状況です。続きまして,発信力向上のための取組として,配布する対象者・ターゲットに応じた制作物とするように見直しを行っております。本編は専門家向けといたしまして,別冊で作成していた概要版の内容を取り込んで,本編のみで概要から詳細まで把握できるように見直しを行っております。そして一般の方々を対象に作成した小冊子につきましても,核を巡る世界の状況について,一元的に把握できる世界地図や,「ひろしまレポート」の評点率を表示した天気図を掲載するなど,理解促進のための内容を充実させております。 また,今年1月に核兵器禁止条約が発効いたしましたが,その中心的な役割を担いましたICANのベアトリス・フィン事務局長をはじめ,コロナ禍と核軍縮,核を巡る米中対立など,核を巡る最近の情勢について取り上げた国内外の軍縮専門家・有識者によるコラムを掲載いたしました。この「ひろしまレポート」を,3月に発表した「ひろしまイニシアティブ骨子」とあわせて,各国国連代表部等へ送付する予定でございます。また,新型コロナウイルス感染症の影響によりまして,まだ参加できる状況かどうか未定ではございますが,状況が許せば,8月に予定されておりますNPT運用検討会議に参加いたしまして,各国の政策担当者などへの配布や,評価結果などをまとめたバナー展示を考えております。「ひろしまレポート」を,核兵器廃絶に向けた機運の醸成を図る一助となるよう,広く発信してまいりたいと考えております。本県では,引き続き,このような取組を通じまして,核兵器のない平和な世界の実現が着実に進められるよう取り組んでまいります。それでは,2020年の核軍縮・核不拡散・核セキュリティを巡る動向につきまして,まず阿部大使,続いて,戸崎様にご説明いただきたいと思います。それでは,阿部大使,よろしくお願いいたします。

 (阿部大使)
 おはようございます。こちら東京からリモートで参加することで,誠に申し訳ございません。この2020年版の「ひろしまレポート」が刊行されることになりまして,このための調査・研究,それから記述に当たりました日本国際問題研究所の軍縮・科学技術センターの戸崎主任研究員,その他の方々のご尽力に心から感謝を申し上げたいと思います。このレポートを9年間,発行をサポートしてまいりました広島県に対しても厚く御礼申し上げたいと思います。このように継続的な報告というのは世界にもそんなに例がございませんで,また,この報告書は特に,広島〔や〕,それら日本の視点も取り入れて作っているということで,ユニークな報告として高く評価されていると思います。〔それ〕で,この英訳を同時に作りまして提供することによって,世界各国,特に核兵器を持っている〔国や〕,それから,ひそかに核兵器を持とうと考えている国に対して,核軍縮を推進し,拡散を止めるという意味で効果があることを期待しています。最近の核軍縮を巡る状況を見ていますと,核軍縮が停滞し,核拡散の懸念も続き,核セキュリティに関しては何となくゆるみが出てきているのではないかという懸念もありまして,安心する材料よりは圧倒的に不安な材料が多いという状況にあります。特に,昨今の問題としては,中国で発生しました新型コロナウイルスが世界的に感染拡大しまして,昨年2020年は,ほとんどこれで世界の人々の関心が奪われてしまいました。その間に,最初に情報の提供が遅れたのではないかという中国に対する批判,あるいは,それに対するWHO,世界保健機関の対応,そういったところに批判がありました。それから進んでさらには国連の組織全体に対する信頼度の低下という調査の結果も出ています。同時に今度はその対策としてワクチン開発をどうするのか,そのための国際協力,それからワクチンを自分のところでは生産できないところに対して,ワクチンをどうやって世界的に提供するか,という問題〔があります〕。あるいは,さらにはこの感染を抑えるためには,当面どうしても強制的な措置をとらなければならない,ロックダウン〔といった措置をとらなければならない〕,という状況において,これは,専制主義的な国,独裁的な国の方がやりやすい,というような声もありまして,そういう意味で民主主義の国においてどうやってこれを実行するか,という非常に難しい問題がありました。こういったいろんな問題について対応に追われている中で,世界の人々の関心はどうしてもそちらに向かいまして,どちらかと言うと,この核問題の関心は舞台の後方に押しやられる,という状況にあります。しかしながら,その間にも,アメリカとロシアの軍備管理の問題が難しい状況にありますし,核兵器を持っている国はみんな近代化主義ということになっています。さらには,この核兵器がいったん使われれば大変なことになるということは,状況は変わっていません。特に,今,世界に14,000発と言われる核兵器が存在する状況で,いったん核兵器が使われれば,広島・長崎とは比べものにならない悲惨な状況が世界に起きるわけで,そこにおいては,現在言われているコロナ禍による医療危機,これとはまた比べものにならないような世界の医療危機が生じるわけで,そういうことにおいても,核兵器は絶対に使ってはならないという状況があります。そういう状況にありますけれども,二つほど,明るい材料が出てまいりました。一つは,核兵器禁止条約がこの1月に発効したということがございます。もう一つは,アメリカで,核軍縮その他に熱心なバイデン大統領の政権が誕生したということがあります。〔それ〕で,この〔核兵器〕禁止条約ですけれども,これは,そもそも核兵器が使われれば,広島・長崎に比べものにならない大変な状況になるということの認識から交渉がスタートしまして,この1月に発効しましたが,残念ながら,今,核兵器を持っている9か国はいずれも参加する意向がありませんし,また,核兵器を持っているアメリカに守られている同盟国もそれに入らないということで,今すぐに核兵器がなくなるという見通しはありませんけれども,この批准がどんどん進んで,世界の圧倒的多数の国がこの条約に批准したという状況が生まれれば,世界的な,合議的な規範というものができあがって,核兵器というのは持ってはならない,使ってはならない兵器だという批判が強まりますので,そこが期待されるところであります。それから,同盟国はこの条約に入らないという意見が強いですけれども,それにもかかわらずNATO〔北大西洋条約機構〕に入っているベルギー,オランダ,スペイン,カナダ,あるいはアメリカと同盟しているオーストラリア,そういった国でも同盟は維持しながらもこの条約に入れるのではないかという希望が持てるわけです。という状況において,日本というのは,世界で唯一,戦争で被爆した国であります。そして核軍縮を推進してきたわけですけれども,その日本としても,この条約について,賛成派と反対派の橋渡しをすると政府は言っていますので,〔橋渡しをする〕ということで,何とかこの条約について日本が前向きな姿勢を示せないのか,あるいは,この〔核兵器禁止条約締約国〕会議には少なくともオブザーバー〔参加〕をすべきではないか,という意見が出ていますので,この辺は,政府にぜひとも前向きに検討〔を〕お願いしたいと思います。アメリカでバイデン政権ができた結果,アメリカとロシアの新STARTの延長が決まりましたし,これから,トランプ大統領が勝手に決めたイランとの核合意〔からの離脱〕にも復帰するという意図を表明していますので,いろんな問題が前向きに動くことが期待されますけれども,なかなか各々の問題,いろんな複雑な問題を抱えていますので,そう簡単には進まないかもしれません。そこは,関係国が粘り強く交渉して,しかもいろいろ新しい考えを出してもらって,前に進めていただきたいと思います。軍備管理につきましては,アメリカとロシアだけでなく,今度は中国も加えるべきという意見が出ておりますし,中国は非常に強く抵抗しています。さらに,核兵器そのものではないけれども,核兵器使用に非常に大きな影響を及ぼすと考えられるサイバー攻撃とか,AI,人工知能です。それから極超音速兵器が登場してまして,そういったものを考えるべきではないかという意見も出ていまして,これからの軍備管理は,米英の二つだけではなく多数の国が参加して,しかもいろんな要素を取り上げるという非常に複雑なところになりますので,ここも,まさに粘り強く,しかもいろんな新しい考えを出して,工夫して進める必要がある。そういう意味では,広島で開催されます「ひろしまラウンドテーブル」,そこに各国の専門家を集めて,いろいろな知恵を出して議論してもらう,そこからいろんなアイデアが出てくると期待しています。イランの核合意については,アメリカとイランが両方ともこれを復活させたいという意欲を示しておりますけれども,なかなか今どういう順番でやるのかということでせめぎあいが続いています。これも,お互い意欲がありながら結果的に失敗するということが心配ですので,何とかこれを成功させてもらいたいところです。北朝鮮につきましても,トランプ大統領の劇場型の対応から,バイデン大統領の実務型,そして同盟国と相談しながらという方向になりましたので,一つ安心できるわけですが,ここで一つ私が心配しなければいけないのが,今,アメリカ国内で北朝鮮対策〔を〕どうするかということでいろいろ検討していますけど,中には,北朝鮮〔が〕これだけ核兵器を持ってしまって,しかも,当分,すぐ放棄しそうにはないということで,いったんは北朝鮮の核保有を認めた上で,何とかそれをあまり増やさない,それを危険な状態に置かないようにすることを考えた方が良いのではないかという意見もいろいろ出ております。ここは,日本としても非常に注意しなければならないと思います。と申しますのは,もう北朝鮮はしょうがないと認めてしまいますと,片や韓国の国内では,それをじゃあ韓国も持つべきだ,という議論が一部出ていますけれども,これが強まるおそれがあります。しかも,下手をすると,これが日本にも伝わってくるということで,非常に注意すべき点だと思っています。最後に,残念ながら,〔核兵器〕禁止条約〔が〕できても,アメリカ〔や〕その他〔の国では〕なかなか核兵器は捨てそうにありませんので,当面は,どうやって,その核兵器を万が一にも使われることがないように,いろんな軍備管理,核不拡散,それから核兵器の管理,あるいはどういうふうにそれを使うのかということについて,例えば核兵器の外交政策における比重を下げる,役割を下げるといったことを,いろいろ後押ししていく必要があると思います。そういう意味では,日本政府もできることがいろいろありますので,そういうことを積極的にやることを期待したいと思います。以上でございます。

 (司会)
 それでは,戸崎様,よろしくお願いいたします。

 (戸崎研究員)
 ありがとうございます。ご紹介いただきました,日本国際問題研究所軍縮・科学技術センターの戸崎と申します。まず,今回で9回目ということになりましたけれども,昨年度もこの非常に重要な事業を,日本国際問題研究所にお任せいただきましたことにつきまして,湯崎知事,それから平和推進プロジェクト・チームの皆さまに深くお礼申し上げたいと思います。それから阿部大使には,まさに第1号〔のひろしまレポート〕が出たときには,軍縮センターの所長として,また,その後は外部評価委員として,9年間にわたりまして,このプロジェクトを支えていただいている,ご指導いただいているということにつきましても,あらためてお礼申し上げたいと思います。〔それ〕で,私の報告は,まず,画面を共有させていただきたいと思いますけれども,2020年の核軍縮,不拡散を巡る動向というものがどのような動きだったか,ということを簡単にご説明させていただくこととなっております。〔それ〕で,湯崎知事,それから阿部大使のお話と若干重なる点もあろうかと思いますけれども,やはり昨年は新型コロナの影響が非常に大きくて,さまざまな重要な会議が延期になったりオンラインになったりすると〔いう状況がありました〕。このプロジェクトは公開情報あるいは新聞の記事等々をベースにしてまとめているものですけれども,その会議で出てくる情報というのが,やはり例年と比べますと非常に少なかったと〔いう状況でした〕。会議のプレゼンが非常に短かったり,会議の時間そのものが短いなどということで,そういう意味での埋め方の難しさというのはございましたけれども,知事からもお話〔が〕ございましたけれども,さまざまな軍縮,不拡散,核セキュリティを巡る課題・問題というものが,昨年は出てきたと思います。そういったことをまとめてみたというところでございます。〔それ〕で,核兵器の保有数は,このスライドにもありますように,減少はしてきていると〔いう状況ですが〕,他方で,専門家の中では,核兵器の数ではなく質の方が非常に問題だと〔いうことや〕,質の面での軍拡競争が起こっているというような評価のされ方もなされています。とりわけ,ロシア,中国,北朝鮮については,核戦力の近代化・強化というものを非常に積極的に進めておりまして,さまざまなタイプの新しいミサイル,極超音速のものなど,さまざまなものが出てきているということ〔があります〕。〔それ〕で,他の核兵器を保有している国々も,程度の差はありますけれども,近代化を進めていると〔いう状況です〕。この面での軍縮を巡る状況というのは,難しい課題が引き続き続いているというところなのだと思います。それから,昨今の大国間競争,地政学的競争とも言われますような,国際安全保障,地域安全保障を巡る非常に厳しい状況の中で,核保有国,それから同盟国もそうだと思いますけれども,〔そういった国が〕核兵器の役割をあらためて注視しているということが言われています。2020年には,ロシア,それからフランスが核政策に関する文書〔の作成や〕スピーチというものを行いました。表面上の宣言政策というところでは大きな変化というものは見せてはおりませんけれども,その行間に核兵器を重視しているということを,非常に強くにじませているような文章であったりスピーチであったというふうに思います。それから核軍縮について,これも繰り返しになりますけれども,新STARTの延長問題ということで,最終的には2021年の1月に合意がなされましたけれども,その間,アメリカとロシア,それから中国との間で非常に厳しい議論というものが行われた〔ことは〕,大国間競争の一幕と言えるようなものだったと思いますし,ポスト新START問題,米露だけでこれまで行われてきた核兵器の削減というもの,それを,阿部大使がお話されたように,今後どうしていくのか,マルチな枠組みでなければならない〔ということや〕,それから他の兵器,戦略国だけではなくてその他の核兵器,あるいは宇宙サイバー攻撃,通常兵器の分野もあわせて考えなければならないというようなものを,議論の中で見せていたのではないかと思います。アメリカは,1年間の延長,全ての核兵器を対象にすべき,それからそれに検証を行うべき,さらに中国も協議に参加すべきということを,初め〔は〕条件として挙げていました。ロシアも,元々は5年間の無条件延長ということを言っていましたけれども,1年間の延長については合意すると〔いうことになりました〕。他方で,検証は受け入れないというようなこともあって,2020年には〔アメリカとロシアは〕合意できなかった。それから中国については,まずは米露が大幅に核兵器を削減すべきだろう〔と言っており〕,中国が核兵器を何発持っているかはわかりませんけれども,アメリカとロシアが6,000発近く持っているのに対して,中国は300発程度ではないかと見積もられている中で,まずはこのアメリカとロシアが〔核兵器の削減を〕やるべきだということを言っているということで,中国は〔協議に〕参加しなかったというところでございます。それから,核実験に関するCTBT〔包括的核実験禁止条約〕については,昨年も発効しなかったと〔いう状況です〕。その中でアメリカが臨界実験を行った。アメリカは年2回〔実験を〕実施するという方針を打ち出していましたけれども,昨年については1回〔の実施でした〕。同時にアメリカは,中国とロシアについて,CTBTでは,爆発的威力と言いますか,それが出るような実験はしてはならないということを言われていますけれども,〔中国とロシアが〕それではない実験を行ったのではないかというような疑念を提起したと〔いうことがありました〕。中国・ロシアは否定していますけれども,アメリカはそのように,なお疑惑があるということを言っています。それから,これも繰り返しになりますけれども,核兵器禁止条約については,10月24日に50番目の批准国が出たということで,今年の1月22日に発効しました。〔それ〕で,これは今年の3月時点でございますけれども,署名が86〔か国〕,批准が54か国ということで,この中には核保有国・同盟国は入っていないということ〔です〕。それから,西側の国,同盟国ではありませんけど,西側の国の中では,スウェーデン,それから今年に入ってからスイスもだったと思いますけれども,条約への署名は行わないけれどもオブザーバー国になるという意向を表明しています。まさにこの核兵器禁止条約〔に関して〕,その前からでありますけれども,核軍縮を巡る議論の大きな隔たりと言いますか,亀裂というものがここ数年言われておりますけれども,ちょっと見にくい表ですけれども,核軍縮に関する国連総会決議の投票行動です。こちら報告書の方にもありますので,またそちら〔を〕見ていただければと思いますが,賛成・反対・棄権というものを見ていきますと,そうした亀裂というものが色濃く出ているのかなと思います。続きまして,核不拡散ですけれども,大きく北朝鮮とイラン問題ということで,北〔朝鮮〕については,昨年の初めですか。それまでトランプ〔大統領と〕金正恩〔総書記〕の会見,首脳会談等々で割と良い雰囲気だったのが,そこで合意した,核それから長距離ミサイル実験を行わないというふうに北〔朝鮮〕は言っていましたけれども,それに拘束されないということを昨年の初めに言います。ただ,実験は行われませんでしたが,10月の軍事パレードでは,火星16,それから北極星4という新しいミサイルを出してきた。これはまだ実験がなされていませんけれども,特にこの火星16については,世界最大の移動式のICBM〔大陸間弾道ミサイル〕だと言われていますし,SLBM〔潜水艦発射弾道ミサイル〕についても,これを北〔朝鮮〕が持つということになると,まさに核の力がより強くなってしまうということで警戒されているというところであります。それから,イランの核問題につきましては,これも何度も言及があったと思いますので簡潔に申し上げますが,JCPOAの一部履行停止ということ,それから,11月のイランの国内法の中で,イランが受けている追加議定書の暫定適用というものを終了するということで,これも今年の2月21日に終了することになってしまったということ,それからイランが過去に核兵器開発を行っていたのではないかと,過去の未申告活動が,IAEA〔国際原子力機関〕に申告してない活動があるのではないかという疑惑が持たれていますけれども,依然としてその問題が解決していないということです。引き続きこの問題も,現在は一部履行停止の部分で非常に厳しい状況になってきていますけれども,今日はいろいろとニュースが出てきていますけれども,そうした状況が2020年も続いていた,ということでございます。最後に核セキュリティにつきましては,IAEAの核セキュリティ国際会議というものが〔あり〕,これはオバマ政権の時に行われていた核セキュリティサミットとはもちろん異なるものではありますけれども,それ以来の大きな国際会議ということで注目されました。それが開催されたということ〔があります〕。〔それ〕で,核セキュリティに関するさまざまな条約,そちらについては新規の加入あるいは批准の数というのは減少傾向にはありますけれども,それまでにさまざまな重要な国が入ってきているというところで,その具現化,世界的にどうやってこれを進めていくのかという課題はありますけれども,着実にそれは実現に近づきつつあるのかなというふうに思います。それから核セキュリティにつきまして,テロ対策に関するガイドラインを定めた「INFCIRC/225/Rev.5」というものがございますけれども,内部脅威者の問題,サイバーの問題,妨害破壊対策など,そういった対策への重要性というものの認識は高まっている〔状況で〕,とりわけ先進国の中では対策は進展していますけれども,途上国を中心に多くの国でまだまだ課題は残っているというところで,核セキュリティはどこか一つの穴があるとそれが実際にテロ行為に繋がってしまうというものでございますので,原子力施設を持っている国,あるいは先進国だけではなくて,世界中の国々が〔核セキュリティの取組を〕行わなければならないという難しさと重要性というものがあると,その意味ではさまざまな取組がされなければならないという現実を示しているのだと思いますし,それから核セキュリティ文化,これは,原子力を扱うのであれば,しっかりとした考えのもとで行わなければならないというのが根幹にありますけれども,引き続きこういう文化というものを各国の原子力施設を運転する方々も含めて,しっかりとしたものを作っていかなければならないということを,あらためて今回の2020年の調査では示しているというところであります。少々簡潔になってしまったかと思いますけれど,私からの報告は以上でございます。

 (司会)
 ありがとうございました。それでは,これより質疑に移りたいと思います。ご質問の際は,社名とお名前をおっしゃっていただき,知事,阿部様,戸崎様,どなたへのご質問かおっしゃっていただいてからお願いいたします。また,記者の皆さま,すみませんが,ご質問の際は,前列右側,マイクの前でご質問していただくようにお願いいたします。それでは,挙手をお願いいたします。

 (NHK)
 NHKの五十嵐と申します。まず,今回,湯崎知事にお伺いしたいのですけれども,今年の「ひろしまレポート」で,核保有国であるアメリカ〔が〕,前年と比べて少し上がったのですが14パーセント,中国が6.4パーセント,ロシア〔が〕2.7パーセントと,核保有国が依然として,前回に引き続き低い,軒並み低い評価となっていることへの受け止め,それから日本政府が核〔兵器〕禁〔止〕条約に署名していないということで昨年と比べて1ポイント低い51.2パーセント〔となっていますが〕,こういったことへの受け止めをお伺いできますでしょうか。

 (答)
 やはりまず,核軍縮,不拡散,特に核軍縮について,核保有国の責任が非常に大きいというところで,このまま持ち続ける核保有国に対してはもちろん厳しい評価になると,そういったことに〔対して〕,何と言いますか,一つのはっきりと評価するということがねらいなので,しっかりと受け止めてもらいたいと思っているところです。〔それ〕で,日本の評価については,若干,ほとんど評価は変わっていないと思いますけれども,まずやはり核の傘へ引き続き依存しているというところから,これでマイナスというところになっていることは,非常に残念であると思っております。日本は,順位的にはちょっと上がっているのですけれども,これはむしろ日本の評点が上がったというよりは,他国の評価が下がったということの相対的な結果なので,引き続き,唯一の被爆国としてさらに努力していただきまして,核兵器のない平和な国際社会の実現に向けて,これまで以上に世界におけるリーダーシップを発揮していただきたいと思っています。

 (NHK)
 すみません。今回の「ひろしまレポート」は,先ほどもおっしゃっていましたけれども,こういった新型コロナウイルスがまん延する中で,なかなか国際会議も開かれない中,あらためてこの「ひろしまレポート」をどういうふうに発信していきたいかという機運をお伺いできますか。

 (答)
 発信の面で言いますと,「ひろしまイニシアティブ」というのを3月に骨子を発表しておりますので,これとあわせて,まずは各国の国連代表に送付していきたいと思っています。その上で8月にNPT運用検討会議,これに参加することが叶えば,そこでもアピールしていきたいと思いますし,その会議の場でも,各国の合意形勢を後押しするような,そういうためのツールとして各国に活用してもらいたいと思っています。なお,運用検討会議に参加できれば,もちろんそこで各国の政策担当者に配布するのですけれども,評点率をまとめたような,この大きなバナー展示を,毎年やらせてもらっていますけれども,それもやりたいですし,あとは,いろんな方々にご活用いただいているということも,いろいろ調査してわかったところもありますので,一つは,国会図書館とか,あるいは県の図書館などに配布して,一般の皆さんにも広く活用していただきたいと思いますし,今回,先ほどもちょっと申し上げましたけれども,この小冊子です,一般向けの〔小冊子について〕,いろんな工夫をしてまた変えておりますので,県内の高校とか大学とか,そういった教育機関にも送って理解していただきたい。あるいは平和関連のイベントなどを通じて配布して,できるだけ多くの皆さんの目にも,一般の方も触れるようにしていきたいと思っております。

 (NHK)
 最後に少し「ひろしまレポート」から離れて,核兵器禁止条約の動きについてお伺いしたいのですけれども,核兵器禁止条約を締約した国の条約の今後の運用について話し合う会議,これが来年の1月にオーストリアのウィーンで開かれる見通しになりましたけれども,その受け止めと,そのオブザーバー参加等の考え方について最後お伺いできたら〔と思います〕。

 (答)
 まず,これも繰り返し述べていることですけれども,日本政府には,〔核兵器〕禁止条約に署名ができないとしても,核兵器国,それから非核兵器国の橋渡し役になるということを果たすためにも,オブザーバー参加して,主張すべきことは主張して,そして,議論を前に進める推進力になっていただきたいと思います。もちろん我々としては,署名・批准についてお願いするということは,締約国会議の前にも外務省に対してはまた行っていきたいと思っています。それが叶わなくても,そういったものはお願いしたいと思います。我々自身も可能であれば参加して,その国際社会との影響を深めていくということは進めたいと思っています。

 (NHK)
 ありがとうございました。

 (司会)
 その他〔の質問は〕いかがでしょうか。それでは中国新聞さん。

 (中国新聞)
 中国新聞の小林と申します。戸崎さんにお尋ねしたいのですけれども,よろしいでしょうか。この度,核保有国の中で,9か国の中で,数値が上がっているのが,評点率が上がっているのが,米国とインドなのですけれども,その中でもそれぞれ米国についてなのですが,こちらの本に書いてはいるのですけれども,上がった理由についてあらためて要件をお尋ねできますでしょうか。

 (戸崎研究員)
 アメリカにつきましては,特に昨年は,日本の〔提出した国連総会〕決議に対して,その前の年は,棄権ですか,反対ですか,すみません,うろ覚えですけれども,それが共同提案国となって賛成したというところで増えていると〔いうことです〕。それから,〔核兵器の〕削減も進んでいるというところで,若干の〔評価が上がる〕ものがあったというところだと思います。よろしいでしょうか。

 (中国新聞)
 あの,核兵器が,〔核兵器の〕削減が進んでいるということが一番の大きな理由ですか。

 (戸崎研究員)
 一番大きな理由は,日本の〔提出した国連総会〕決議に対する行動,投票行動の変化というところが大きかったのだろうと思います。実際の,その他,新STARTに対する対応であったり等々については,全く大きな変化というのはなかった,大きな変化というのは良い変化はなかったということになりますけれども,ただその〔中でも〕点数が上がったというのは,〔投票行動の変化があったという〕そういうところに〔よるものであろうということで,こういう結果に〕なっております。

 (中国新聞)
 ありがとうございます。インドについては,いかがでしょうか。ごめんなさい。インドではなくて,パキスタンですね。〔パキスタンではなく〕インドですね。インドについては〔いかがでしょうか〕。

 (戸崎研究員)
 今,インド〔の評価〕が上がった理由というところの資料がございませんので,後ほど,こちらの方で調べてご連絡するということでよろしいでしょうか。

 (中国新聞)
 はい,わかりました。ありがとうございます。ごめんなさい,加えてなのですけれども,半数以上が,核軍縮についてなのですが,半数以上が評点率を下げているのですけれども,そちらについては,あらためて受け止めをもう1回お尋ねできるでしょうか。

 (戸崎研究員)
 私ですか。

 (中国新聞)
 はい。

 (戸崎研究員)
 さまざまな理由が,点数が下がったということにはあると思いますけれども,一つ,大きな理由と言いますか,例えば核軍縮に関する国連総会決議について,その投票行動がしっかり,それまで棄権だったものが反対になるとか,賛成していたものが棄権になるといったような形で,より立場を明確にせざるを得ない状況と言いますか,それはどちらも,賛成側もそうだし,反対側もそうかもしれませんけれども,そうしたようなところが出てきている。それは核軍縮を巡る議論の亀裂というところに繋がってきますけれども,さらにその安全保障環境が悪化していく中で,それぞれのポジションというものを,より明確にしてきているというところが一つ大きな要因だったのかなと感じております。

 (司会)
 その他〔の〕ご質問〔は〕いかがでしょうか。よろしいでしょうか。それでは,以上をもちまして,知事会見を終了いたします。ただ今,ご説明いたしました発表内容につきましては,ラジオ・テレビ・インターネットについては,本日の13時30分,新聞については,明日4月15日の朝刊をもって解禁となりますので,よろしくお願いいたします。それでは,ありがとうございました。

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資料1(核軍縮等に関する「ひろしまレポート2021年版」) (PDFファイル)(249KB)

資料2(ひろしまレポート本編) (PDFファイル)(7.15MB)

資料3(ひろしまレポート概要版) (PDFファイル)(4.5MB)

資料4(小冊子) (PDFファイル)(5.65MB)

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