令和7年度広島県リスキリング伴走コンサルティング事業:取組事例紹介(社会保険労務士法人たんぽぽ会)

効率化の先にある「真の提供価値」に気づく。リスキリングによって生まれたマインドシフト

たんぽぽ会_集合写真

企業プロフィール

企業名 社会保険労務士法人たんぽぽ会

 

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リスキリング推進宣言書
リスキリング推進宣言とは

住所 広島市安佐南区東原3-25-18
事業内容 ​手続きや給与計算などの人事労務サポート、コンサルティング
従業員数 16人
企業HP ​https://tanpopokai.com/

社会保険労務士法人たんぽぽ会は、社会保険や労働保険の手続き、給与計算といった業務をベースに、地域の中小企業の労働環境向上を支援しています。

顧客企業へ深く寄り添い、本質的な価値を提供するという強い信念を持つ同法人ですが、その歩みの裏には、日々の膨大な定型業務とリソース不足という大きな壁がありました。今回、広島県のリスキリング推進事業に参加し、組織全体でDXに挑んだ背景と、そこから生まれた変化について、代表社員の木山さん、副所長の正岡さん、執行役員・統括本部長の宮島さん、従業員の高野さん、今岡さんにお話を伺いました。

明確な目標はあったものの、手探り状態で進まなかったDX

たんぽぽ会は、地域密着型の社会保険労務士法人として、地域の多くの顧問先から、手続きや給与計算、就業規則の作成といった人事・労務を委託されているほか、人事・労務に関するコンサルティングも行っています。

「リスキリング伴走コンサルティング事業(以下、本事業)」の参加にあたって抱えていた当初の課題は、こうした業務のうち、定型業務の効率化を図ることでした。当時の課題感について、木山代表は次のように話します。「おかげさまで顧問先が増える中、手続きや給与計算といった日々の定型業務の量が膨大になっていて、残業時間の問題が生じていました。また、苦労をかけている従業員には、賃金の向上で応じたいものですが、それも中々難しい部分があります。ですから、なんとか社内で完結する形で生産効率を上げる必要がありました。従来のやり方は試し尽くしていましたので、事業や業務のあり方を根本から変える、DXの推進が不可欠でした」。

たんぽぽ会_木山所長

「今の業務を半分の時間で完結させる」という定量的な目標を設定し、そのためにDXを通じて手続きや給与計算の効率を高めていくという明確なイメージは持てていました。しかし、そこから先を進めるのが、DXの難しいところ。「何からどう変えるか」という課題解決の道筋が見えず、取り組みは停滞してしまいました。木山代表が「解決の道筋を見つけるための知恵が足りていなかったのかもしれません」と語るように、必要なスキルやノウハウが組織内に不足していたのです。

外部視点による課題整理と当事者意識を引き出す“巻き込み”

こうした課題を打破するため、本事業への参加を決めたたんぽぽ会。はじめに、本事業の事務局との対話を通じて「人材育成計画」の策定に取り組みました。策定の中心となったのは、木山代表、宮島統括本部長、正岡副所長の3名。事務局からのヒアリングを通じて、給与計算や手続きの効率化、そして既存のコンサル事業の高度化といった自社の課題を洗い出していきました。

宮島さんと正岡さんは「外部の方から客観的な視点で私たちの課題を指摘していただいたのは新鮮でした。指摘はどれも『やっぱりそうだったな』と納得できるものばかりでした」と話します。手探りで迷うばかりだった課題感が会話を通じて整理・言語化され、深い腹落ち感を得られました。これが組織全体の業務効率化を推進する最初の起点となりました。

たんぽぽ会_正岡副所長

課題の整理に続いて着手したのは、人材育成の方針策定と参加者の選定です。たんぽぽ会では、給与・手続き業務のプロセスの見直しを担う「効率化人材」と、コンサル業務の付加価値の向上を担う「高度化人材」という2つの社員像が設定されました。参加者の選定にあたっては、宮島統括本部長が個別面談を実施。人材育成計画を見せながら、「なぜあなたにこの事業に参加してほしいのか」の説明を丁寧に行いました。

効率化人材に選ばれた今岡さんは、「最初はとても驚きました」と率直な感想を口にします。「これまでは手続きの代行をはじめ、目の前の仕事をさばくことが自身の主な役割だと感じていました。ただ、説明を聞くうちに、経営層が策定するような会社の方針に関わり、仕事の方向性を自分たちで設定していくプロセスを体験できるのは、貴重な経験につながるだろうと思いました」と、経営層からの期待が自身のモチベーションを力強く引き出したと話します。

たんぽぽ会_今岡様

講義から実践をシームレスにつなぐ「チーム学習」の場作り

学習を進めるにあたり、たんぽぽ会はただ事業に参加するだけでなく、独自のユニークな手法も取り入れました。それは、オンライン集合研修の視聴や宿題を「チームで集まって行う」というものです。

受講者兼管理者として、他の参加者の学習支援に取り組んだ宮島統括本部長は、「オンライン集合研修の内容が業務改善の組み立てだったので、一人ひとりがバラバラに考えるよりも、たんぽぽ会としての課題をみんなで話しながら見つけて、どういうプロセスで改善していくかまとまって考えた方がいいなと思いました」と、その意図を語ります。オンライン集合研修も一緒に聞き、力を合わせて宿題に取り組む場を作ったことで、学びと実務が両輪で進んでいく流れができました。

たんぽぽ会_宮島副所長

チーム学習は、日々の業務に追われる中で学習時間を確保するうえでも効果的でした。今岡さんは「1人で学習していると『忙しいから今は無理かな』とその場の気分に流されたかもしれません。ただ、チームで学習していると、オンライン集合研修の宿題もありますので、進捗を遅らせられない。メリハリのあるスケジュール感で学習できました」と話し、チームの存在が学習の継続を支えたと明かしました。

また、高度化人材のチームリーダーを務めた高野さんは、「当社のコンサル業務はクライアントによって課題が異なるので、具体的な業務も、どうしても個人の引き出しに頼ったところがありました。また、コンサルのメンバーが全員集まる機会も中々ありません。それがチーム学習で、宿題に対して『どうしたらいいだろう』と意見を出し合いながらコミュニケーションが取れたのは、とても有意義でした」と話します。チームでの学習が、組織内で知見を共有し、新たな価値を生み出す場としても機能したようでした。

たんぽぽ会_高野様

リスキリングを通じて法人全体に広がる、根本的な意識改革

チーム学習を通じて、社内の対話の質には明確な変化が生まれました。今岡さんは、最初の話し合いは「業務上の小さな課題」から始まったと振り返ります。しかし、チームで対話を重ねるうちに、「お客様に感じてもらいたい本当の価値はこういうこと」「こういう業務こそ、本当の意味でお客様が助かる業務」と、業務に対しての意識が顧客への価値提供の追求へとシフトしていったそうです。この意識改革があったからこそ、以降の学習で法人の課題をより前向きに再定義でき、解決に向けて追求できました。

また、学習の具体的な成果も現れています。高度化人材チームの高野さんは、依頼が増え始めている研修事業に生成AIを活用し始めました。生成AIを使って研修資料の素案を素早く作り、そこに自らの知見を加えて微修正していくという、これまで社内では行っていなかった新しいアプローチで、アウトプットの時間を大きく短縮できるようになりました。

本来の目的であった、業務効率化についても明るい展望が開けています。木山代表は、オンライン集合研修を通して既存の業務フローを徹底的に整理したことで、効率化できそうなポイントが明確になり、組織全体に業務改善に向けた心構えを持てたと話します。「一度立ち止まって、今までの業務の流れをしっかり可視化する。そして整理し、組み立て直す。業務改善にあたっての最初の大きな一歩を踏み出せました」と力強く語ります。この「みんなに業務改善の心構えができた」というのも、チームで学習に臨んだたんぽぽ会ならではの成果です。

最後に、木山代表はリスキリングの成果と今後のたんぽぽ会の目指す姿について、次のように話されました。「例えば、お客様の就業規則の作成についても、単に作るだけでなく、何のためにその就業規則があるのかまで、踏み込んでお客様と話し、本質的で意味のあるものを作る。それが、お客様の成長や存続につながっていくと信じています。そういった顧客に寄り添い、高い価値のある事業を手がけていきたいのです。ただ、その寄り添いには、たくさんの時間が必要です。お客様の話をしっかり聞き、課題を整理し、お客様自身が行動に移せるようにしていく必要がある。だからこそ、自分たちの業務の生産性を高め、お客様と向き合う時間を作っていくことが欠かせません。本事業への参加を通じて、業務改善のヒントをたくさん得られました。そのヒントを得られたこと自体もそうですが、従来とは別の業務の進め方を模索するのが、正しいあり方だと確信できたこともまた、大きな成果です」。

たんぽぽ会_外観

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