令和7年度広島県リスキリング伴走コンサルティング事業:取組事例紹介(株式会社サンエイ)

個人の学びを組織の力に変える。AI時代を見据えた組織改革

サンエイ_集合写真

企業プロフィール

企業名 株式会社サンエイ

 

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リスキリング推進宣言書
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リスキリング推進宣言書
リスキリング推進宣言とは

住所 福山市手城町2-1-19
事業内容 ICT・PC・ネットワークの整備や、セキュリティ&クラウドサービスの導入などの事業者支援
従業員数 18人
企業HP ​​https://sun-a.jp/

今年で創業80周年を迎える株式会社サンエイ。事務機器の販売から始まり、IT、テレワーク支援の先駆者として事業者支援を行ってきました。しかし、AIをはじめとした技術革新の波が押し寄せる中、同社は次なる大きな課題に直面していました。同社がどのようにしてリスキリングに取り組み、属人的だった学習環境を組織的な強みへと変革したのか、社長の武田さん、営業技術課リーダーの二本木さん、坂本さんにお話しを伺いました。

AIが事業構造を根本から見直す必要性をもたらした

株式会社サンエイの武田社長は、現在の事業環境に強い危機感を抱いていました。「当社は企業のネットワークセキュリティやクラウドサービス、その他OA機器の導入支援を手がける、事業者支援の会社です。コロナ禍以前からテレワークの導入支援をはじめ、総務省『テレワーク先駆者百選』に選出されるなど、最新の技術を使った事業者支援には自他ともに認める実績がありました。しかし、昨今の技術の移り変わりは激しく、当社でも追いつけない部分が生じていました」。

サンエイ_武田社長

特に課題だったのが、AI活用。すでにDXは、AI抜きでは語れない時代に入っており、事実、同社の主力事業であるDX支援においても、AIの活用が前提となりつつありました。

ここで直面したのが「AIをお客様にどう販売・提供するのか」という問いです。従来のITシステムは、特定の業務を効率化する完成されたパッケージとして、そのまま販売できました。しかし、AIは日々進化し続ける技術であり、誰もが簡単にアクセスできるもの。お客様にAIツールをただ提案するだけでは、お客様自身が直接AIを使うのと何ら変わりがなく、同社としての付加価値や優位性を発揮できません。

さらに、AIは必ずしも常に正しい「正解」を出すわけではありません。業務レベルで活用するには、AIによる誤情報を防ぐための知見や、適切な指示の設計など、安全・便利に活用するためのノウハウが必要です。社員がAIの使い方を学習し、精通しなければ、事業支援の企業としてのあり方が崩れていく。武田社長は強く危機感を抱いたと言います。

武田社長自身は、「勉強するのが苦手なら、当社は向いていません」と採用面接で伝えるほど、自己学習の重要性を認識していました。「実際、勉強は必須です。私たちの仕事はデジタルツールに精通し、お客様に付加価値を提供することにあるからです」。しかし、社員の学習が、個人のモチベーションに依存していたのも事実です。業務上必要だから自主的に学習する、という次元にとどまっていて、学びが組織全体に共有され、蓄積していく構造はできていませんでした。

外部からのゴール設定を刺激として利用し、学習習慣を組織に根付かせる

AIはこれからの事業の前提となる。そう捉えた同社は、学習環境の整備に向けて、リスキリング事業への参加を決意します。その最大のねらいは、県の「リスキリング伴走コンサルティング事業(以下、本事業)」という「外部からの刺激」を活用することにありました。

「学習時間の管理や学習のゴール設定といったご支援をいただくことも、自己学習の推進力になります。そしてそれ以上に、それだけ県の事業としてご支援いただくのだから、参加者はもちろん、私も含めた組織全体が学習に対して真摯に向かっていく必要があります。そして長期間にわたる本事業が終わった暁には、学習が一過性のものではなく、習慣として組織に根付くはず。この、よい意味でのプレッシャーに期待しました」と武田社長は振り返ります。

また、同社は単なる知識の習得ではなく、「自社内で実際に使い、何らかのシステムとして実装する」という実践まで進めることを学習のゴールに据えました。お客様に対してAI活用をリードしていくには、ただAIツールを販売するだけでは不十分です。そうではなく、AIの仕組みを理解し、実践に活かせる人材へと成長し、お客様に伴走支援することで、自社の優位性を高められると考えました。

サンエイ_AIステーション

中間管理職の育成と、学習の広がりを見据えた人材選定

事業の参加メンバーの選定や役割設計にも、武田社長は明確な意図を持っていました。

まず、管理者には営業技術課の二本木さんが指名されました。その理由を武田社長は次のように語ります。「当社はトップの号令に対して、横並びに従ういわゆる『文鎮型の組織』の傾向があったと思います。社員が自律して学習に向かっていくには、その意識も変える必要があります。そのためには、まず中間管理職がマネジメント力を身に付けていくことが重要です。そこで、中間管理職の中でもマネジメントを強化してもらいたい二本木を管理者に据え、事業をきっかけにマネジメント力を伸ばしてもらおうと考えました」。

学習の中心となる参加者の選定は、二本木さんと武田社長が連携して行いました。選定にあたって特に重視したのは、「オープンな人材」であるかどうか。「勉強しても、学習内容を自分だけで抱え込んでしまっては、広がりが生まれません。周りのメンバーのために学習内容を共有したり、実践したりできるオープンな人材を選びました」と二本木さんは話します。こうして選ばれたのが、坂本さんをはじめとする、これからの活躍を期待される若手社員たちでした。

サンエイ_二本木様

実際の学習にあたっては、毎週木曜日の17時から、参加者全員が集まって学習する時間が設けられました。ライブ講義で課される宿題は、二本木さんが進捗を管理しつつ、参加者が順番に取り組むことに。学習が滞らず、かつ参加者全員が実践に取り組むよう工夫して進められました。

“みんな”で学ぶ文化がもたらす組織の結束力

本事業の途中、同社では、業務の自動化に向けてAIプラットフォームである「Dify」の導入が決定されました。あわせて、事業中の学習内容も、Difyの活用を主眼に置いたものへと変更されました。

参加者たちは、特に手間のかかる業務だったマニュアル作成において、Difyを用いた自動化に挑戦しました。受講者である坂本さんは、「これまで体感で2〜3時間かかっていた作業が、30分程度に短縮できる見込みが立ちました」と話します。Difyで作成したアプリは、坂本さん以外の部署とも共有。日々のスケジュール調整など、複数の現場が困っている業務の効率化にも活用され始めています。二本木さんによれば、「スケジュール調整も、実現すれば週に約30分は業務時間を短縮できるはずです」と、AIの活用に対して自信を深めています。

サンエイ_坂本様

定量的な成果とは別に、自律した、組織的な学びの文化が醸成され始めたことも、サンエイの取り組みの大きな成果です。

坂本さんは、毎週のチーム学習を通じて、学習が「やらされ」から自分ごとへ変わっていったと話します。「当初は、『正直やらなきゃいけないから』と、義務感もありました。ただ、みんなで講座を見たり、宿題に向かったりしていく中で、次第に『このツールはどう活用できるかな』『自分の部署だったらこんなことに使えそうだな』と、学習したことを身の回りで実践してみたいと思う気持ちが高まっていきました」。また、管理者である二本木さんも、チーム学習は効果的だったとのこと。「あるときの学習で、生成AIをみんなでワイワイ面白がって触っていたのを覚えています。ただ興味を持つだけでなく、そこから業務にどう活かせるかを話し合っていたのも印象的でした。一人での学習に比べて、複数人だと学習の方向性に迷いづらく、納得感も得られる。そういった点に、チーム学習のよさがあると思います」。

元々、個人での学習は当たり前と考えていた武田社長もまた、事業を通じて意識が変わったそうです。「リスキリング事業は、チームでの学習や共通の目標といった、組織立てて学びを進めるための仕掛けがたくさん用意されていました。学習に参加した社員を見ていると以前に比べて結束力や一体感を持っているように感じます。自分が学んだことを自分の中にとどめるのではなく、組織の問題解決のために還元していく仕組みがあったからではないでしょうか」。

サンエイ_武田社長②

「もし、私が個々の社員に『AIを勉強してください』と言っても、やらされ感を受けたり、負担への不満がたまっていたりしたかもしれません。よく、リスキリングでスキルを伸ばした社員が会社を離れてしまうのではと危惧されますが、私はそう思いません。社員のスキルや事業の推進力が高まることはもちろんですが、組織の一体感を高める効果が期待されるからです。リスキリングにおいて特にチームでの学習は効果的だと思います」。AIへの強い危機感から始まった同社のリスキリングは、事業構造のあり方だけでなく、社員一人ひとりのあり方や働き方にまで、つながっているようです。

サンエイ_フロア全景

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