令和7年度広島県リスキリング伴走コンサルティング事業:取組事例紹介(ラボテック株式会社)

事業の多様化と属人化の壁を越える。制度と連動した「自律型リスキリング」へ

ラボテック_集合写真

企業プロフィール

企業名 ラボテック株式会社

 

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リスキリング推進宣言書
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リスキリング推進宣言書
リスキリング推進宣言とは

住所 広島市佐伯区三宅1丁目3-26
事業内容 ​大気土壌をはじめとした環境分析、自動分析装置の製造など
従業員数 87名(2026年2月時点)
企業HP https://www.labotec.co.jp/

ラボテック株式会社は、大気・水質・土壌など、環境に関する分析・計測や、環境分析センターや化学工場などで使用される環境分析装置の開発・製造を手がける環境ソリューション企業です。近年はこれらの2つの事業に加えて、環境分析や汚染物質の洗浄に使用される製品の輸入販売や、害獣を超音波で追い払う装置の開発など、多岐にわたる新事業にも挑戦しています。

これまでも社員向けにリスキリングを推進してきた同社は、今期も継続して人材育成の取り組みを進めることを決意。その成功の裏にあった、自社の課題に真摯に向き合った制度づくりや人の巻き込みの工夫について、代表取締役の吉川さん、総務部の森岡さん、小林さん、山廣さん、計測部の片山さんにお話を伺いました。

画一的な研修では越えられない、業務のブラックボックス化という壁

ラボテックがリスキリング・DXにおける主な目標としたのは、業務プロセスの見える化です。

同社でヒト・モノ・カネの経営資源を管理する総務部の森岡さんは、業務プロセスの不透明さについて、次のように話します。「日々の業務において、誰が・どの仕事に・どの程度時間を割いているのかがわからない状況が長年続いていました。この工数がわからないと、業務効率の改善は難しい」。何をどう改善すべきか、指針になる情報がわからないことが、大きな課題でした。

ラボテック_森岡様

吉川社長も、別の視点から業務プロセスの不透明さに課題感を抱いていました。「私が代表に就任したのは2025年。入社も2022年で、それまでは別の業界に関わっていました。ただ、だからこそ業務の見える化不足は一層課題に感じられました。当社の事業部門は大きく分けて、分析部門と製造部門に分かれています。それらの2つの部署で、互いに誰が何をやっているのかわからない。当然、部門間の連携は取れませんでした。

近年当社は既存の分析・製造事業の枠組みを超えて融合する新事業の展開にも力を入れていますが、より力強く新事業を推進していくには、両者の連携が不可欠です。また、業務がブラックボックス化して、ノウハウが個人にしか蓄積されないのも問題でした」

ラボテック_吉川社長

経営資源の効率的な管理、部門間の連携、ノウハウの全社的な蓄積。これらの課題を解決するためには、ITツールを活用して業務を可視化し、一元管理することが必要でした。

しかし、いざリスキリングを進めるにあたって、大きく2つの壁が立ちはだかりました。一つは、事業部門に加えて、職種や働き方も非常に多様であり、一律の研修では個々人の学習ニーズを満たしにくい点でした。例えば、総務部の社員は本社に常駐する一方で、計測部の社員はお客様の工場現場に出向いて騒音や振動の測定を行うといったように、働く環境は職種によって大きく異なります。そのため、特定の日時に対面研修を実施しようとしても、スケジュールの調整が難しく、社員に学ぶ意欲があっても機会を設けられない悩みがありました。

さらに、研修が「やらされ」になりやすい点も課題でした。過去に研修を実施した際は、総務が教育プランを立てて実施しても、「忙しいからできない」と勝手に学習を止めてしまうこともありました。上から研修を投げ、後は社員の自主性に任せるやり方では、「やる社員」と「やらない社員」にムラが生じ、全体として前に進めなかったのです。

学習と評価を連動させ、学習のモチベーションを向上

これらの課題を乗り越えるために、同社はリスキリングを評価で担保する強力な仕組みを整えました。その基盤となったのが、同社が3年前から運用している「サポートタイム」という制度です。

サポートタイムは社員が自己研鑽や研修受講、他部署の業務理解などを行うための時間を会社として公式にバックアップするための制度です。「リスキリング伴走コンサルティング事業(以下、本事業)」での学習についても、この制度を適用し、業務時間内に学習することを全面的に認めました。

また、今期より「サポートタイム」を「ポイント制度」として、本事業の学習時間と連動。この制度は業務改善の目標を立てて自己研鑽すると「ポイント」が付与され、昇給や昇進などの人事評価に反映される仕組みです。受講者である総務部の小林さんは、「これまでであればなかなか得られなかった学習時間を取得することができ、大きなポイントが付与される月もありました。学習が直接的に評価に反映されるので、受講の大きなモチベーションになりました」と話しました。また、現場で働く片山さんも、「社外に出ていると、なかなかポイントを得る機会がないのですが、この事業での学習は時間を確保してもらえましたし、ポイントにも直結するということで、目標を立てて学習に臨みやすかったです」と、制度の恩恵を話してくれました。

ラボテック_壁面

また、制度だけ作り、学習を個々人に丸投げしないためのルールも設けました。本事業の参加者に対し、月に一度、学んだ内容の記録を直属の上司に提出することを義務づけました。上司は提出された学習記録に対し、コメントを書いてフィードバック。この取り組みにより、学習の進捗を可視化しつつ、学習者が孤立せずに意欲的に学習に向かっていくサイクルを回し続けられました。小林さんも上司とのやり取りの中で、「(学習した)あのツールを使えば、こんなことができるね」と、実務での具体的な活用方法を議論できたと話しました。

ラボテック_小林様

「やらされ感」を払拭し、称賛し合う組織文化の醸成

学習の形骸化を防ぐため、同社は「現場の巻き込み」と「成果の発表」にもこだわりました。

現場の巻き込みは、本事業に参加する人材選定の段階から各部署の部長や本部長が関与。吉川社長が方針を決めつつ、これらの管理職の意見も聞き、今後部署を横断しての活躍が期待できる中堅世代の社員を対象者として選びました。また、人材選定に関わった本部長らも、管理者として事業に参画。学習者に課せられた宿題を見るなど、人材の選定だけでなく学習にまで管理職が深く関わることで、管理職が社員教育を「自分ごと」として捉え、部署単位で学習を進めていく土台をつくりました。

また、同社は社内で学習内容や実践内容を発表する場を積極的に設けています。業務改善委員会にはオフィスの整頓案から大規模なシステム改修まで、様々な改善案が社員から年間100以上寄せられます。

改善案のうち、優秀なアイデアには社長賞が贈られます。そして、今年度の社長賞は本事業の参加者の一人が獲得。リスキリングで学んだ内容を生かし、これまで手作業で行っていた分析結果の入力作業にVBAを導入して半自動化するシステムをつくり、吉川代表に「ぜひ実装したいです」と直談判までしました。アイデアはもちろん、こうした行動力を含めて、同社にはボトムアップで業務改善を進める文化や体制が根付きつつあります。

「小さく試す」マインドの芽生えと、見える化の確かな進展

制度の整備を軸に進められた同社のリスキリングは、着実な成果を生み出しています。

まず、大きな目標であった「業務プロセスの見える化」について、その重要性が現場レベルに浸透し、一部は具体的な形にまで落とし込まれつつあります。例えば、小林さんはリスキリングで学んだ知識を生かし、会社紹介資料のブラッシュアップに取り組み始めました。それだけでなく、社内申請様式を整え、誰もがそのルールに沿って申請しやすい資料をつくれる仕組みづくりまで進めているとのこと。吉川社長がねらったとおり、個人のスキルを組織全体のノウハウへと還元する動きが起きています。特に社内申請様式の整備は、業務の属人化の解消につながっています。これも、リスキリングを通じて可視化することや伝わる形にすること、社内の共通言語をつくることに小林さんが前向きになった結果です。

また、学びを継続できる新しい学習スタイルも生まれました。片山さんは現場での業務が多く、当初は学習時間の確保に苦労していましたが、ラーニングパートナーから「移動中は音声を聞くだけでもよい」というアドバイスを受け、実践。以降は無理なく学びを継続できたそうです。管理者の山廣さんも「スキマ時間を活用できるのは、eラーニングならではのメリットです。これまでは現場が受けられるように研修のスケジュールを組むのが大変でしたが、この学習スタイルなら個々の業務内容や働き方に応じて学習を進めることができます」と話しました。自分のペースで学べるeラーニングは、対面での研修に比べて学習時間や学びの質に差が生まれにくいことから、全社的にeラーニングの仕組みを整えていくことも検討しているそうです。

ラボテック_山廣様

なお、片山さんは本事業で業務効率化に関する講座を中心に学び、ITやAIに関する意識が変わったそうです。「当初は業務にAIを使う意識すらありませんでしたが、受講を通じてデジタルツールを使う楽しさと便利さを実感し、最近はごく身近なところでも活用するようになりました」。特に今まで手作業だったタスクの簡略化やマニュアルの作成などに、積極的にデジタルツールを活用しているそうです。こうしたデジタルツールの捉え方の変化も、これから同社がDXを進めていくうえでの強力なエンジンになるでしょう。

ラボテック_片山様

吉川社長は、「誰かが努力しているのを知れば『自分も』と刺激を受けます。努力を認め、称賛し、ときにはよい意味で悔しさを感じられる場をつくることが、組織全体の活性化につながるはずです」と今後の展望を語りました。

「やらないと怒る」のではなく「やった人を称える」環境を整え、社員の自律的な成長をうながす同社。業務の一元管理という大目標の実現に向けて、個人のスキルアップと喜びを組織の力に還元する取り組みを、さらに進めていきます。

ラボテック_キャラクター

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