企業名 | 株式会社シンギ |
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住所 | 広島市中区吉島2-1-24 | |
事業内容 | 紙・プラスチック製食品容器の企画・製造・販売、食品関連機械、オリジナル冷凍食品の販売 | |
売上高 | 235億7700万円(2025年5月期) | |
従業員数 | 230人 | |
企業HP | https://www.shingi.co.jp/ |
1932年創業の食品向けパッケージ総合商社。目指す姿に「パッケージソリューションカンパニー」を掲げ、商品企画から販売までを一貫して手掛ける。省力化や生産性の向上を進めるほか、コロナ後は停滞する経済活動の中で新事業創出にも注力してきた。その推進力となったのが、15年ほど前から続くプロジェクトチーム(PT)活動だ。
もともとは若手を中心に社員間の横のつながりを強めるために始まったが、やがてPT活動が起点となって社員が主体的に学び、スキルを磨くリスキリングの実践につながった。こうした取組から生まれた新事業が新規顧客の増加をもたらし、2025年5月期売上高は過去最高の235 億円を計上。V字回復を果たした。田中友啓社長にPT活動をきっかけとしたリスキリングの成果と今後の展望を聞いた。
広島本社のほか、北海道から沖縄に至る全国に15拠点を展開する。各拠点の規模には差があり、どうしても営業活動や商品知識に関する情報量に偏りが生じるという課題があった。そこで15年ほど前、拠点や部門を越えた交流の促進に向けて、業務改善などプロジェクトごとにチームを編成し、部門横断のPT活動を開始した。社員の発案から、軟包材(ビニール製のパッケージ)の原材料に関する知見習得を目的にしたチームなども生まれた。クライアントの要望内容に合わせて、その分野に見識の広い社員が他拠点に出向き、新商品開発の成功事例を伝えるほか、商談に同行するといった柔軟な営業活動もスタート。横のつながりづくりに一役買っている。これらの取組が奏功し、社員は市場の動向やトレンドをしっかりと把握できているという。
駅弁やスポーツスタジアムなど、人が集まる場所での食品容器を多く扱ってきた同社に、2020年春からのコロナ禍は多大な影響を及ぼした。行動制限によって取引先の弁当メーカーなどの販売が大幅に落ち込む中、顧客の新たな販路開拓に寄与するため、高品質な冷凍を可能にする「プロトン凍結機」を販売する機械事業への参入を決めた。
事業の立ち上げに当たり、社員数人がメーカーに出向いたほか、取引先と工場を見学し、機械の仕組みなどを学んだ。その過程で「あのクライアントにも勧めてみたらどうか」といった気付きが生まれ、それを部署横断のPT活動を通じて社内に積極的に共有していった。
外部の専門知識を得るため、取引先企業やメーカーの協力を得てオンライン勉強会を企画し、その知識を社内に共有するための勉強会も開いた。田中社長は「オンライン化が急速に進み、メーカー主催の勉強会などに参加しやすくなったことは幸運でした。場所を問わず、100人以上の社員がつながって受講できるのですから。勉強会をたくさん企画し過ぎて、社員から『多過ぎます』と言われたほどです。」と笑う。
このほか、駅弁メーカー数社と連携して各地の名物駅弁をおにぎりで食べやすくした「駅弁おにぎり」を商品化。「時空食堂」と銘打ち、自社のECサイトで扱っている。これらの新規事業をきっかけに顧客層の拡大に貢献。「新しい仕事から刺激を受けている」と、社員のやりがい創出にもつながっている。
近年は管理職のマネジメントスキルの養成に注力している。3年前から社外の専門家を招き、組織づくりにおける権限移譲やチーム化などに関する研修を行っている。田中社長は「中小企業では上役自身もプレーヤーとして現場の仕事を抱える必要があります。その環境下で、業務を的確に管理しつつ、部下の指導や育成にも目を向けてもらいたいと考えています。まだ明確な結果は出ていませんが、一部の拠点長の仕事の進め方に変化が見られています。管理職のスキルアップを通じて、管理職と部下の双方の意欲向上につなげたいですね。」と話す。
また、現場への生成AIなどのITツール導入を進めている。各部門から参加者を募り、受発注業務の効率化に関する教育プログラムなども始めた。これらの学習は業務時間内で行えるよう部署内で業務を調整し行っている。
社員から昇格の要件について質問があったことをきっかけに、2024年から人事・評価制度の見直しを進めている。納得感のある制度を目指し、2023年に制定した「スキルマップ(等級制度)」に記載されたスキルを基準に評価を実施している。情報収集、謙虚さ、リーダーシップといった数値化しにくい部分も盛り込み、PT活動での取組や、会社全体のために頑張っている人が十分に評価される仕組みに改めた。今後は社内の意見を吸い上げながらブラッシュアップを進める方針だ。評価の属人化から脱して、行く行くは昇格制度との連動を目指すという。
田中社長は「新しく学んだこと、身につけたことを会社がきちんと評価することで、それを周囲に還元し、影響力を持つ人材になってもらいたいと考えています。学びを仕事に生かし、働きがいや自己認知の向上にもつなげてほしい。」と話す。
同社では、社員が主体的に学び成長できる環境づくりを重視してきた。毎週の朝礼では、企業理念や行動指針をまとめた冊子「シンギらしく」を読み合わせ、価値観を共有。経営層と社員が直接意見交換する「社長と語る会」も定期的に開き、経営方針や改革の方向性が現場に浸透している。さらに、健康診断(配偶者分を含む)の全額会社負担や脳ドックの実施、バースデー休暇制度など、働きやすさを高める制度も充実。こうした安心感と一体感が、社員の挑戦意欲を引き出し、リスキリングへの積極的な参加を後押しする土台となっている。
長く続くPT活動や新事業への挑戦、人事異動や評価制度の刷新などを通じて人材を育成し、順調に業績を拡大してきた。しかし田中社長は、さらなる高みを見据える。「売上高300億円を目指し、それを300人ではなく250人で達成したいと考えています。業務効率化で人を減らすのではなく、生まれた余力を顧客サービスの向上に生かす。それが顧客に支持され、新たな仕事につながる。この循環を実現するための仕組み化を、リスキリングを通して推し進めていきます。」と意気込む。
株式会社シンギが実践しているリスキリングの取組を、県が示しているリスキリングの取組手順のどこに該当するか整理しました。自社の取組の参考にしてください。
STEP1 リスキリングの方針を決定する |
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(株)シンギの具体的な取組 |
STEP2 リスキリングのための環境を整備する |
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(株)シンギの具体的な取組 |
STEP3 知識・スキルの習得機会を提供する |
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(株)シンギの具体的な取組 |
STEP4 習得した知識・スキルを業務に活かせるよう、評価・処遇の見直しを行う |
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(株)シンギの具体的な取組 |
取組手順以外の重要ポイント |
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(株)シンギの具体的な取組 |