リスキリング取組事例紹介(株式会社プローバホールディングス)

取組事例(プローバホールディングス)

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グループ外企業への「他社留学」でリスキリングを 異業種との合同研修で中堅社員のキャリア再構築も

企業プロフィール

企業名 株式会社プローバホールディングス


この企業の
リスキリング推進宣言書
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リスキリング推進宣言書

リスキリング推進宣言とは

住所 広島市安佐南区相田1-1-33
事業内容 アミューズメント、フィットネス、保険、農福連携、飲食など
売上高 365億2000万円(2024年8月期)
従業員数 1132人(2025年7月時点)
企業HP https://www.provanet.co.jp/​

アミューズメントを中心に、フィットネスジムや介護支援、農業など多角的な事業を手掛けるプローバグループは、社員のグループ外企業への「他社留学」に取り組んでいる。この制度は一定期間、他社に出向して業務に携わり、異なる業界や組織文化に触れることで、新たな視点やスキルを獲得する人材育成法だ。さらに、社内のキャリアコンサルタントが中心となり、異業種企業との合同研修によるベテラン層の新たなキャリア形成にも乗り出すなど、さまざまな先進的なリスキリングを実践している。

1963年設立の同社は、パチンコ事業を主力に成長してきたが、人口減少や若年層の遊技離れを背景に事業の多角化を加速。多様な人材の活躍を支えるため、健康経営や生活と仕事の両立を支援する環境を整え、社員が学びや挑戦に集中できる土台を築いてきた。

これらの取組について、経営戦略室の川崎健治執行役員、キャリア開発チームの祝崇一リーダー、健康経営チームの新谷浩二リーダーに聞いた。(役職はいずれも取材当時)

川崎執行役員、祝リーダー、新谷リーダー

異業種との越境学習で視野拡大とキャリア再構築

これまでに4人(2025年7月時点)が「他社留学」を経験している。取組のきっかけは、広島県の補助事業。企業間のレンタル移籍を手掛ける会社の支援を受け、冷凍機械メーカーのベンチャー企業に社員を出した。そこでノウハウを得た後は、取引のある企業や団体に協力を求め、半年~1年間の留学を実施している。ある営業部門の社員はデザイン会社でポスター制作などを経験し、帰任後にデザインチームのリーダーを務めるという具体的な成果も出ている。現在は来期(2026年度)に予定する福祉事業の拡大に向け、障害者施設に2人が出向している。他社留学する社員は公募による立候補のほか、本人から「将来、この分野で活躍したい」といった申し出に応じて実施するケースもある。

グループ従業員の接客の様子

異業種での学びの取組は他社留学だけでなく、合同研修にも広がっている。2025年6月には住宅・不動産業やIT分野などの4社合同で、40歳以上の中堅・ベテラン層を対象にしたキャリア形成支援のワークショップを初開催した。異なる業界で培われた知見や経験を共有し、専門分野にとどまらない幅広い視野を身につけ、将来のキャリアプランを具体的に描く機会として企画した。祝さんは「異分野の視点に触れること自体が刺激となり、新たな学びにつながる。それがリスキリングだと考えています。業務の範囲内だけでよいという考え方では、さらなる成長は難しい。その枠を一歩超えるだけで得られる気づきがあります。これからもさまざまな企業と連携したいですね。」と先を見据える。

一方で、異業種でのリスキリングを経て、社員が転職してしまう懸念はないのだろうか。執行役員の川崎さんは「逆に、エンゲージメント(やりがい、熱意)が高まる効果があると分かってきています。他社で越境学習することで、新たなスキルの獲得だけではなく、外部からの視点で自社の良さに気づくきっかけにもなっているようです。」と評価する。

ワークショップを開催する祝さん

資格取得や学びの環境づくりに注力

資格取得支援や学びの環境整備など、制度面でも後押ししている。会社が主導する研修は費用を全額負担するほか、提携機関のeラーニングや講習を修了した場合は受講費用の半額を補助している。さらに、研修機会を身近にするため、社内にリスキリングのためのeラーニングブースを設けた

社内に整備されたeラーニングブース

キャリア形成の手法も常に進化させている。これまで提携教育機関の通信教育講座を中心に支援の対象としていたが、近年は社員が動画学習サイトなどで、自らが的を絞って学ぶケースも増えてきていることから、支援については「資格取得が良いか、学べる場の提供が良いかなど社員ニーズの把握と効果を検証し、リスキリングやスキルアップの支援をリニューアルします。」と執行役員の川崎さん。来期(2026年度)から通信教育事業の株式会社キャリカレ(安佐南区八木)が提供する法人向けのサービスを導入する計画で、すでに、チーム作りやOJT(職場内訓練)の工夫、アイデア発想などに関するワークショップを実施し、社員の反応を参考にしながら展開していく。

社内外キャリアコンサルタントが手厚くサポート

さらに、こうして整えた学びの機会を一人ひとりのキャリア形成に結びつけるため、希望者には社内外のキャリアコンサルタントが伴走する制度も設けている。社内のコンサルタントは人事制度や異動の仕組みに詳しく、グループ内でのキャリア設計を具体的に描きやすい。一方、社外のコンサルタントは利害関係のない立場から幅広い業界情報や第三者の視点を提供し、選択肢を広げてくれる。

社内キャリアコンサルタントでもある祝さんは「相談者がどんなサポートを望むかによって、社外の人脈も含め、なるべく選択肢が多くなるように対応しています。」と話す。キャリアに関する悩みに耳を傾け、目指すキャリアプランの実現だけでなく、精神的な支えにもなることで、成長を後押しし、安心して働ける環境づくりにつなげている。

社内キャリアのコンサルティングを行う祝さん

そのほか、研修の受講履歴や取得した資格などを可視化するマネジメントシステム「タレントパレット」を活用し、上長や人事担当が確認できるようにしている。従業員の持つスキルを異動の参考にするため、年1回の自己申告と希望するスキルの習得につながるような部署を検討する仕組みを取っている。さらに、リスキリングに取り組んだ社員を社内報で紹介するなど、モチベーションを向上させている。

様々な取組を進めることで、新たな課題も生まれる。現時点では、リスキリングに取り組んだ社員の評価や処遇は各事業会社が担っており、グループ全体での制度が確立されていない。また、多彩な事業のそれぞれに必要なスキルの明確化といった懸案もあり、グループを挙げて解決に継続して取り組んでいく構えだ。

健康経営で学びへの意欲と効果を高める

厚生労働省の調査によると、働く人の3人に1人は病気を抱えているとされ、治療と仕事を両立できる体制づくりは急務だ。プローバホールディングスでは、病状を把握して就労環境を調整する「両立支援コーディネーター」の有資格者を配置。この資格取得を推奨するとともに、各事業会社における店舗などの管理者を「衛生推進者」に指名し、従業員の安全や健康に気を配り、安心して長く働いてもらえる環境づくりに力を入れている。そのほか、健康診断の100%受診や、二次検査が必要になった社員に受診を促して大病を防ぐほか、運営するフィットネスジムの社員割引制度などで健康増進も積極的にサポートしている。

健康経営チームの新谷さんは「こうした健康経営や両立支援は、社員が安心して働き続けられる基盤をつくり、その先の学びやスキル習得に挑戦する意欲を高めます。結果として、リスキリングの効果を最大限に引き出す土壌にもなっています。」と話す。

手厚いサポートの背景にあるのはトップの強い信念だ。川崎さんは「代表の平本は、共存共栄という四字熟語の『共』を『強』に置き換えて、『強存強栄』つまり、強く結びついて強く栄えていきましょう、というメッセージを常に発信しています。従業員の成長が会社の成長になり、会社が成長することによって従業員にもいろいろなチャンスが生まれる、という好循環をつくろうとしています。」と力を込める。

プローバという社名は、イタリア語で「挑戦」の意味だ。「地域社会・お客様・従業員の三つの満足を追求する」という企業理念の下、両立支援と健康経営で社内の土台を固め、リスキリングを通じた挑戦を続けている。

ココがリスキリングのポイント!

株式会社プローバホールディングスが実践しているリスキリングの取組を、県が示しているリスキリングの取組手順のどこに該当するか整理しました。自社の取組の参考にしてください。​​

STEP1 リスキリングの方針を決定する
● 人材戦略の策定・リスキリングの方針決定
● 推進体制の整備、推進人材の確保

(株)プローバホールディングスの具体的な取組

STEP2 リスキリングのための環境を整備する
● 知識・スキルを習得する時間の確保
● 費用負担
● 従業員のキャリア形成支援
● 従業員の主体的な学び直しの支援

(株)プローバホールディングスの具体的な取組

STEP3 知識・スキルの習得機会を提供する
● 社内・社外での研修の提供
● 社外での経験の提供

(株)プローバホールディングスの具体的な取組

STEP4 習得した知識・スキルを業務に活かせるよう、評価・処遇の見直しを行う
● 習得した知識・スキルの活用やリスキリングの促進につなげるための配置
● リスキリングを踏まえた人事評価制度上の評価・処遇
● 人事評価制度以外での評価処遇

(株)プローバホールディングスの具体的な取組

取組手順以外の重要ポイント
● リスキリングを推進する制度作り(ハード)
● 制度の効果的な運用(ソフト)
● リスキリングに取り組む企業文化の醸成(ハート)

(株)プローバホールディングスの具体的な取組

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