リスキリング取組事例紹介(マツダ株式会社)

取組事例(マツダ)

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社員2万人の自律的な成長で100年に一度の業界変革を乗り越える

企業プロフィール

企業名 マツダ株式会社


この企業の
リスキリング推進宣言書
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リスキリング推進宣言書

リスキリング推進宣言とは

住所 安芸郡府中町新地3-1
事業内容 乗用車の製造、販売など
売上高 5兆189億円(2025年3月期)
従業員数 2万3433人(2024年3月時点、単体)
企業HP https://www.mazda.com/ja/

名実ともに県内経済をけん引し、2025年3月期には初の売上高5兆円超えを達成したマツダ(府中町)。自動車業界は電動化・自動化など、さまざまな技術革新が同時に進む「100年に一度の大変革期」の真っただ中にある。マツダは「人の力」こそが、変革を乗り越えるための最も重要な経営資源だと言い切り、国内だけで2万人以上を擁する従業員の能力向上を図っている。

人事本部・人材開発推進グループの奥屋太志マネージャーは、社員一人一人が主体的に学ぶ風土づくりが重要と話す。「当社が掲げる『2030経営方針』では、地球温暖化という社会的課題の解決に向けた電気自動車の導入計画や、安全・安心といったクルマづくりに関する内容だけでなく、『人とITの共創』というテーマも含まれています。マツダは業界の中ではスモールプレーヤー。今後、人材獲得はより厳しくなるでしょう。AIなどを活用した業務効率化と、個々の力の向上が企業価値を高める両輪となります。」

奥屋マネージャー

かつてのマツダは上意下達、つまり上層部の意向に沿って部下が動く風潮が残っていたという。しかし先に述べた業界の変革、そして社会全体の不確実性が高まる中で、新たな価値観やアイデアを生かすボトムアップの仕組みが必要となってきた。日々、車両の開発や生産、販売に向き合う現場の社員が若いうちから主体的に自身のキャリアを考え、能力アップを図ることが組織全体の成長につながる。それが、マツダのリスキリングに対する考え方だ。

eラーニングなど多様な学習環境

一人一人の自律を支援するための取組「Mazda Brand Academy」内の施策の一つとして、社員が30歳、40歳、50歳、55歳を迎えるタイミングで年代別の研修を行う。30歳には、20歳代で培った自身の強みを再認識し、その上で「これからマツダでどう生きるか」を考えてもらい、定年が現実的なものとなる55歳では退職後の生活にまで考えが及ぶこともある、と奥屋マネージャーは語る。「会社がキャリアを提示するのではなく、自分で『ありたい姿』をイメージしてもらうことが大事です。そうすることで、理想を実現するために必要なスキルが見えてきます。」

工場の様子

社員の「学びたい」という思いに応えるため、多様な方法をそろえる。時間や場所を選ばないeラーニングシステムでは車の技術に関する内容だけでなく、ビジネス、クリエーティブなど約3万3000のコンテンツを用意。「何を学べば良いか分からない、とならないよう、各社員の年次や階層に合わせたガイドラインを設定しています。」と、同グループの堤賢治主幹は話す。

堤主幹

AIやDXに関する、より専門的な学習プラットフォームも用意する。近年、自動車ではエンジンやブレーキといった基本性能に加え、運転支援、情報通信などあらゆる領域でソフトウエア開発の重要性が増しており、IT人材の育成は急務だ。同じ狙いで資格取得の支援にも力を入れ、2024年から合格者の受験費用は会社が負担する制度を導入。初年度はITパスポートで43人、AI資格のG検定で9人、データサイエンティストで6人が新たに合格し、さっそく成果が数字として見え始めた。このほかTOEICの受験や板金・鋳造などの国家資格取得も促している

広島を代表する企業として、地元の大学との関係性も深い。広島大学には定期的に人材を派遣して共同研究や知識習得の機会とするほか、経営学を学びたい、学んでほしいと考える社員を年に数人選抜し、県立広島大学の大学院経営管理研究科「HBMS」へ送っている

スキルはグループ全体へ還元

異動などに関する「社内公募制度」は従来、半年に一度だったが、各社員が身に付けたスキル・知識の還元や人材の流動性アップを狙い、2023年度下期から通年募集とした。その結果、応募数は従来比で約1.35倍、選考合格者数は1.8倍に。さらに奥屋マネージャーは、学びの成果は社内に限らず社外でも発揮してもらいたい、と語る。「自動車は1台につき何万点もの部品で構成します。さらに部品メーカーも一次、二次…と多層構造で、非常に裾野が広い業界。ほかにも流通、販売、整備などのステークホルダーが存在する中で、当社内だけに学びをとどめてはいけません。グループ全体の継続的な成長につなげていきたい。」

幅広い学びの場、そして企業としての高い志を持つマツダ。一方で課題はどこにあるのか、奥屋マネージャーに聞いた。「私たちとしては研究開発を行う技術系、マーケティングなどを担う事務系、工場で生産に携わる技能系、これら全ての従業員がリスキリングに取り組んでほしいと考えています。しかし実際には例えば、AIで何ができるか知らない、知っていても使ったことがない、という社員が少なくありません。既にお話ししたとおり、会社から言われて学ぶのではなく、自ら学びたいと皆が思うことこそが目指す姿です。そのための風土醸成が重要になってきます。」

談笑の様子

2024年から「BLUEPRINT」と呼ぶ組織風土改革活動がスタート。全従業員を対象とした研修を通じ「一人一人の自主性を尊重し、後押しする雰囲気」、「安心して、いきいきと働ける職場」などを目指している。「多くの社員が働いている当社では、多様性の尊重が大切。個々が持つ感情にしっかりフォーカスしようと考えています。」と、堤主幹は教えてくれた。

優れたクルマづくりのための「ひとづくり」

1920年1月の創業から105年余り。コルク作りから機械製造へと転じ、戦後のモータリゼーションの流れを受けて総合自動車メーカーへと発展してきた。長い歴史の中では世界で唯一のロータリーエンジン量産化をはじめ、スカイアクティブ技術や魂動デザインといった功績も残したが、一方で1945年の原爆投下、1970年代のオイルショックに端を発する経営危機なども経験。それらの苦難に打ち勝つために人の力と技術を磨き、「飽くなき挑戦」を続けてきたという自負が、今日のマツダを支えている。

マツダ株式会社が製造する車

奥屋マネージャーは「お客さまへ伝えたい価値観の一つとして、マツダ車は『ひと中心』の設計であると掲げています。その考え方は社員教育やリスキリングにおいても同じです。」と胸を張る。変革の先にどんな未来が待っていようとも、広島の地から優れたクルマを届けるための「ひとづくり」のアクセルを緩めることはない。

 

ココがリスキリングのポイント!

マツダ株式会社が実践しているリスキリングの取組を、県が示しているリスキリングの取組手順のどこに該当するか整理しました。自社の取組の参考にしてください。​​

STEP1 リスキリングの方針を決定する
● 人材戦略の策定・リスキリングの方針決定
● 推進体制の整備、推進人材の確保

マツダ(株)の具体的な取組

STEP2 リスキリングのための環境を整備する
● 知識・スキルを習得する時間の確保
● 費用負担
● 従業員のキャリア形成支援
● 従業員の主体的な学び直しの支援

マツダ(株)の具体的な取組

STEP3 知識・スキルの習得機会を提供する
● 社内・社外での研修の提供
● 社外での経験の提供

マツダ(株)の具体的な取組

STEP4 習得した知識・スキルを業務に活かせるよう、評価・処遇の見直しを行う
● 習得した知識・スキルの活用やリスキリングの促進につなげるための配置
● リスキリングを踏まえた人事評価制度上の評価・処遇
● 人事評価制度以外での評価処遇

マツダ(株)の具体的な取組

取組手順以外の重要ポイント
● リスキリングを推進する制度作り(ハード)
● 制度の効果的な運用(ソフト)
● リスキリングに取り組む企業文化の醸成(ハート)

マツダ(株)の具体的な取組

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