法人名 | 株式会社アイ・エム・シーユナイテット? |
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所在地 | 広島市安佐北区安佐町飯室2541-1 |
URL | https://imcu.co.jp/ |
株式会社アイ・エム・シーユナイテッド(広島市安佐北区)
自動車開発用模型や検査治具、鋳物用模型などを受注生産するものづくり企業。1985年に木型の職人たちにより創業し、現在社員数は39名。その半数以上が20~30代の若手社員で構成されています。
取材に答えてくれたのは...
専務取締役 今津 好(いまづ よしみ)さん
子育ての大変さを実感した自身の経験から社長に男性育児休業の重要性を訴え、制度整備を直談判したキーパーソン。
10年ほど前から新卒採用を始め、社員の半数以上が20~30代の若手社員で構成されている「アイ・エム・シーユナイテッド」。専務取締役の今津さんは、これから結婚や出産など人生の節目に直面する社員のため、ワーク・ライフ・バランスに着目した改革が必要だと感じていました。「昔は母親一人で育児するのが普通でしたが、私も苦労しました。長く働き続けてもらえる会社にするために、男性の育児休業は必要だと思いました」と話します。
最初に育児休業の取得申し出があったのは2020年のこと。今津さん自らが窓口となり、社会保険労務士と相談しながら、直属の上司と一緒に取得を後押ししました。
そして、今津さんはまず、社長に自身の考えを伝えることからスタート。男性育児休業の導入は働き方改革や社員の定着に繋がること、社員が働きたいと思える企業になることが大切だと訴えました。その重要性を理解した社長は、2021年に月1回の全体朝礼の場で、男性も積極的に育児休業を取得するように促すメッセージを発信します。「仕事一筋では築けないさまざまな関わりを通して視野を広げ、仕事にも活かしてほしい」と呼びかけたのです。
現在は、男性から配偶者の妊娠報告を受けると同時に育児休業の意思を確認。その後、休業中の業務分担や引き継ぎ計画を立て、上司を交えた面談で就業規則や賃金、育児休業制度の説明を行い、スムーズに育児休業が取れる流れが構築されています。「受注生産が主体のため計画が立てにくい業種ですが、出産の2~3カ月前には大まかな予定を立てて共有しています。業務が混乱しないよう計画的に進めることで、本人も安心して休むことができます」と今津さん。
会社の勧めや事例ができたことで、以降は100%の育児休業取得率を維持しています。期間は本人の希望や状況に合わせて2週間から最も長い人で2カ月半。決まりはなく、一人ひとりに応じて臨機応変に対応しています。「復帰した時には、みんな顔がいきいきとしてモチベーションが上がっているんです」。復帰した社員は育児の様子や写真を載せたレポートを提出し、自身の経験を後輩や同僚と共有しています。これから育児休業を取得する人へのアドバイスや後押し役となり、活用しやすい制度として認知されるようになっていきました。
ここまでの道のりには課題もありました。まず、自分たちの時代にはありえなかった男性育児休業を管理職に理解してもらうこと。「なぜ必要なのか?」「どのような効果をもたらすのか?」など、制度推進のメリットを伝え、意識改革のための勉強会も実施しました。内容は、法律や時代の流れ、若い人の考え方など。今津さんは「管理職には親の介護をするようになる世代も多くいます。みんなが平等に休業しやすい仕組みを作っておくことで、自身がやむを得ず休業する時にも機能します。男性育休にとどまらず、これからの多様な働き方に対応するために必要だと訴えたことで、概ね理解を得ることができました」と話します。
取得しようとする男性社員の中には、自分が休むことで周りに迷惑をかけるかもしれないと考える人もいました。業務の引継ぎでは取得を希望する社員の仕事の棚卸を行い、どの仕事を誰に分担するのかをしっかりと決めることで、慌てずスムーズな引継ぎを行うことができます。収入面の不安に対しては、シミュレーション表を使って期間中の収入を可視化。一人ひとりの不安と丁寧に向き合い、その解決策を見出してきました。
育児休業は本人だけでなく、周囲にも大きな変化を与えました。育休を機に個人の仕事を見直したことが、業務の属人化を減らし、結果的に周りの社員の多能工化や知識・スキルの向上に繋がっています。今津さんは「これにより全体の生産性もアップしたと感じました。また、育児や介護の経験を仕事に活かすことで個人の視野が広がり、仕事に対する前向きな姿勢が周囲に良い影響をもたらしています」と言います。
男性の育児休業にとどまらず、今後は有給休暇の取得促進や時間外勤務の削減などにも着手し、働きやすい環境づくりに努めていくという「アイ・エム・シーユナイテッド」。「ここで働いてよかったと思える企業にしていきたいです。社員と家族の幸せを願っています」と今津さん。その思いが取組への原動力となっています。
製造部 田邉 凌平(たなべ りょうへい)さん
2022年3月に第1子で2週間の育児休業を取得しました。経験してみると家事と育児を両方するのは本当に大変。妻1人に任せるのではなく、2人で協力して取り組むことができてよかったです。また、家族を支え、触れ合う時間ができ、良い思い出にもなりました。もうすぐ第2子が誕生するので、2回目の育児休業も取得する予定です。
(取材日 2023年11月)