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プロジェクトインタビュー(みんなでおせっかい!「こいのわ」プロジェクト)

印刷用ページを表示する掲載日2018年3月1日

こいのわ プロジェクトインタビュー

広島県では,「みんなでおせっかい!『こいのわ』プロジェクト」という,出会い・結婚支援事業を実施しています。

今回,このプロジェクトに携わっている健康福祉局 子育て・少子化対策課の2名に話を聞きました。

「みんなでおせっかい!『こいのわ』プロジェクト」について

―「みんなでおせっかい!『こいのわ』プロジェクト」とはどのような事業ですか?

01伊東:4年ほど前になりますが,「本気で少子化対策に取り組もう」という知事のひとことがきっかけでした。そこで未婚の男女に対するアンケート調査や様々なデータの分析を行ってみると,出生率と有配偶者率との強い相関関係が分かったため,結婚支援を事業化することになりました。

平成27年度から,県主催の婚活イベントの開催,地域のボランティア団体の活動支援,地元出身のタレントを起用するなどマスメディアと連携したインパクトのある広報,これらの3つを「こいのわプロジェクト」としてスタートしました。「おせっかい」をポジティブなキーワードにして取り組んでいます。

―新たな事業をするときには,いろんな分析をされるのでしょうか。

伊東:ひと昔前は,事業を創るとき,例えば「出生数が減っている。じゃあ補助金を出そう。」というふうに現状から事業に直結していたのですが,湯崎知事就任後,経営学の考え方が導入され始めて,現状分析や課題の深掘り,そこから仮説を立てて初めて事業を考えるというスタイルにシフトしてきたんです。最初,みんな戸惑っていましたが,今ではかなり定着してきています。

実際にいろんなデータ分析をすると,興味深い発見や謎が浮上してきました。例えば県内の海側にある市町と山側の市町では合計特殊出生率に大きな差が生じているとか,福山市が全国の中核市の中で合計特殊出生率が上位の理由はなんだろうとか。

また,アンケート調査をして驚いたこともあります。若い世代では,結婚の意志は8割以上あるのですが,そのうち約8割の方は異性と交際していない状況です。その理由の第1位は「出会いがない」こと。そして,行政に対して「出会いの場を作ってほしい」という希望が多かったですね。この調査結果には,バブル期に青春していた職員は特に衝撃を受けていましたね。そういえば私たちが若いころは,職場の上司や地域の方に「あなたにお似合いの方がいるわよ」とぐいぐいおせっかいされていました。(笑)

 

―プロジェクトの中で具体的にどういった取組を行っていますか?

西川:まずはいろんな地域で出会いの場を作ってきています。このプロジェクトのエンジンとなっている「ひろしま出会いサポートセンター」の会員も1万人を超えましたし,イベント総参加者数は1万3000人を超えています。国営備北丘陵公園やみろくの里などで,散策やゲームなども取り入れた「楽しい交流の場」としてイベントを開催することもあります。 

また,アンガールズの田中卓志さんを起用したCMやポスターを制作して広報プロモーションを展開することで,多くのマスメディアに取り上げていただきました。広島で活躍されている中島尚樹さんに970枚のパラパラ漫画を描いていただいたこともあります。

―様々な取組の中で,特に新しく取り組んでいるものは何ですか?

02伊東:100名を超えるビッグイベントのほかに,「こいのわカフェ」という地域のレストランやカフェで気軽に参加できる出会いの場をたくさん作っています。店舗が主体となってイベントを開催して,そこに「こいのわボランティア」というおせっかい役がサポートに入ります。将来的には自走するような仕組みを目指しています。今,ボランティアさんは103名登録いただいており,成立したカップルのフォローまでやっていただくので,県が研修をして育成しているところです。民間とのコラボという意味では,好事例ではないかなと思っています。

西川:また,既に交際している方の中でも交際が長期化していることが分かりましたので,今年度から,カップルを結婚まで後押しする取組を始めました。カープとのコラボで,「プロポーズ坊や」を活用したプロモーションを展開しています。カップルで参加いただく「愛が深まるイベント」の開催や,アプリを活用したクーポンなども配信しています。 

今年度一番の目玉は,「こいのわウエディング」という挙式のプレゼントです。始めたときは1組限定の企画でしたが,メディアに取り上げられるようになってから,趣旨に賛同された他の式場の方から協力のお申し出がありまして,合計3組のカップルに挙式をプレゼントすることができました。このように様々な企業や団体の方と連携させていただいています。

―企業と県とが連携していくことで,お互いにより良い効果が得られるということもありますか。

伊東:多くの企業や店舗の方は,自社のPRだけでなく,地域貢献という思いも持っておられますし,やはり大きな目的として,「結婚する方が増えたらいいね」「希望が叶うといいね」という共通点があることで,より効果的に取り組めると思います。

西川:連携ということでは,全国で結婚支援活動をされている方が一堂に会する「全国結婚支援セミナーinひろしま」を昨秋開催できたことも,結婚支援のネットワークづくりや機運醸成に繋がった取組の一つです。同時開催イベントを様々企画したこともあり,事前の調整も当日の運営も大変でしたけれど,県外からたくさんの方にお越しいただき,また,県内の市町担当の方やボランティアさんからは,「先進的な取組を知ることができ,たくさんの方と交流を深める機会になりました。」と喜んでいただけたので,達成感を感じられる瞬間でした。  

 

―市町とはどういった形で連携をされていますか?

伊東:県内23市町それぞれ違う課題を抱えておられます。特に人口減少が進んでいる地域は深刻で,「ひろしま出会いサポートセンター」の登録会員数も,県北エリアは男性が圧倒的に多いです。一つの市町の単位だけで取り組んでいたら,なかなかマッチングしません。ですから,県が広域的にサポートすることで,人の流れをつくることができます。例えば庄原市でイベントをする際は,バスを出すなど広島市内からでも女性が参加しやすくなるような提案をすることもあります。イベントでは,市町の方が地域の魅力をPRしながらおもてなしするというシーンもありました。これは,以前,首都圏の女性を広島に招待する出会いイベントで,実際に女性が千葉県から江田島市に移住されたことがヒントになっています。

また,ある程度ノウハウも蓄積できてきましたので,新たに取り組む市町の方に助言やコラボレーションの提案をさせていただいています。全県的に大きなウェーブを作っていくことで,間接的にですが,市町をサポートすることになるのではないかと思っています。 

―「こいのわ」という言葉もよく聞きますし、どんどん広まっていっている感じがしますよね。 

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西川:伊東さんは,その名付け親なんですよ。

伊東:実はそうです。でも既に笑い話ですよ。最初の事業名は,分析を担当してくれていたスタッフが数字を入れたかったそうで,「10万人の出会い応援プロジェクト」としていたのですが,予算協議の場で,「良い事業だけど,ネーミングは何とかならないかな」という展開になって。それで,私が,当時進められていた「しまのわ」という事業にあやかりたいと思って,「恋」と,カープの「鯉」と,こちらに来てねっていう思いを込めて,「みんなでおせっかい!『こいのわ』プロジェクト」と名付けました。

若い世代には,「就活」「婚活」「妊活」ってずっとがんばって活動しないといけないんじゃなくって,まずは気軽に「こいのわ(=出会いの場)」に出かけてもらえるといいなと思っています。 

西川:「こいのわ」がきっかけで,結婚しましたとか,頑張ってプロポーズしましたという声を聞くと,この事業をやって良かったなと思います。イベントでは公開プロポーズも企画したんですが,緊張しながら指輪をプレゼントされ,それを嬉しそうに受け取られた時の女性の笑顔が本当に素敵で,おせっかいできて良かったなと思いました。

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―この仕事の醍醐味は何ですか?

西川:参加者が集まらず厳しい状況もありましたが,その都度企画を修正したり,違うアプローチの仕方を検討してきました。結婚支援事業は全国的にも新しい取組ですので,試行錯誤の連続で,失敗して転ぶこともありますが,常に前に進むことを意識しています。広島県全体でみたらほんの数組の結婚でも,背中を押すお手伝いができたことにやりがいを感じますし,ここからどんどん広げていきたいと思います。

伊東:「こいのわ」の成婚第1号のカップルは,出会いから3か月で結婚されて,現在お子さんが2人おられます。「「こいのわ」がなければ生涯出会うはずがなかった。」と言われていて,赤ちゃんを抱っこさせていただいたとき,命の重さと事業の大切さを実感しました。

そして,「こいのわ」を応援してくださる仲間,企業や店舗,市町の方やボランティアがどんどん増えていくこともやりがいがあるなと感じます。そういう繋がりの中から,このプロジェクトがモデルとなった映画「こいのわ婚活クルージング」が誕生したわけです。 

―県の事業が映画化されるなんて驚きですね?

伊東:瀬戸内海をテーマに婚活の映画を制作されるということで,映画会社から県に協力依頼のお話をいただいたときは本当に驚きました。映画はオール広島ロケで,県庁内の会議室でのロケもありましたね。町田啓太さん演じる広島県庁結婚支援担当職員役も登場していますし,藤田朋子さん演じるおせっかいボランティア役のモデルは私だそうです。まさか自分達が映画の登場人物のモデルになって,しかも「リアルこいのわスタッフ」としてエキストラ出演するとは思ってもみませんでした。

そして,平成29年度の映画公開に合わせて「「こいのわ」を知ってもらう!」「おせっかいの機運を高める!」ために様々なイベントや広報をしましたので,公開前に比べて「こいのわプロジェクト」の認知度が38%から56%までアップしたんですよ。

―所属のチームワークや,雰囲気はいかがですか?

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伊東:こいのわは,まさに「レールを敷きながら走っている」イメージですので,いつも「ポジティブ・チャレンジ」なんです。アンケート調査でニーズを把握して,スタッフで話し合って方法を決めていきます。参加者目線で考えていくということで,西川さん達若手のスタッフに「こんなのだったらどう思う?」って意見を聞くことも多くあります。  

西川:伊東さんはいろいろなアイディアがポップコーンみたいに出てきます(笑)。「こいのわプロジェクト」スタート当初からたくさんのイベントを実施されているので,こういう風に運営したらいいとか,スキルがたまっていらっしゃるので,それを教えていただいています。参加者の方にとってどのようなイベントが良いのか,常に参加者目線で考えられています。そして,イベント終了後には,うまくいかなかった点を見直し,毎回次に向けて改善し,より良い実施方法をスタッフみんなで検証しています。 

伊東:高速PDCAよね。成功も失敗もあるけど,やらなくて終わるよりは,いろんなことをやってみるのが「こいのわ」のポリシーです。普段から参加者やボランティアさん、民間の婚活やブライダル業界の方など,できるだけ多くの方とお話をすると,いろんな知識を教えていただけるし,課題や事業のヒントを見つけられることもあります。  

―県の仕事には,管理系のかっちりした仕事や「こいのわ」のように事業を行う仕事,どちらもありますが,「こいのわ」の仕事を通して,何か考え方にも好影響がありましたか?

伊東:県庁には様々な仕事があって,好きなこと,やりたいことが必ずできるわけではありません。でも,どこに配属されても県民のみなさんの目線に立って仕事をすることが大切だと思います。私たちも,いずれ他の部署に変わると思いますけど,物事を前向きに捉える感性と,人のつながりを大切にしたいという思いは,持ち続けたいと思います。  

 

―「こいのわプロジェクト」が今後どういった展開に繋がってほしいと考えていますか?

西川:「こいのわ」に気軽に参加して,結婚に向けて一歩進むことができたという方が増えていけばいいなと思います。また,昨秋「全国結婚支援セミナーinひろしま」を開催したことで,多くの支援者の方とのネットワークができています。もっと「おせっかいの輪」が広がっていけばいいなと思います。0002

伊東:若い世代が早期に自分のライフ・デザインを考えられるようなサポートも必要だと思っています。気付いたら結婚や子供を生むタイミングを逃していたということがないように,男女ともに,結婚,妊娠,出産,子育て,そして,仕事との両立やキャリア形成を具体的にイメージしながら,ライフ・イベントをプラスに考え,自分の人生を選択していってもらえたらいいなと考えます。

私には3人子供がいるので,その子たちにもそういう未来があるといいなと,そういう広島県づくりを担えたらいいなと思いますね。ちょっと壮大だったかな(笑)。

 

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