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5-2 管理職であるとの理由で時間外手当がもらえない|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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5-2 管理職であるとの理由で時間外手当がもらえない

質問

私は,今年春の異動で支店長代理の職につきました。それ以来,残業手当が支給されなくなったので,支店長に尋ねてみると,「支店長代理は管理職だから,残業手当は出ない。」と言われました。毎日,出退勤のときにはタイムカードを押しており,残業もかなりしているのですが,残業手当はもらえないのでしょうか。

回答

<ポイント!>

  1. 「管理監督の地位にある者」には,労働時間,休憩,休日に関する規定は適用されないため,時間外の割増賃金を支払わなくても問題はありません。
  2. 管理監督者であるかどうかは,職名にとらわれず,職務内容・責任と権限・勤務態様の実態・待遇に即して判断されます。

管理監督者には労働時間等の規定は適用されない

労働基準法第41条第2号では,「事業の種類にかかわらず監督若しくは管理の地位にある者」については,労働時間,休憩及び休日に関する規定は適用しないと定めています。これは,「労働時間,休憩,休日等に関する規制の枠を超えて活動することが要請されざるを得ない,重要な職務と責任を有し,現実の勤務態様も,労働時間等の規制になじまないような立場にある」者について,これらの規定の適用を除外しよう,その地位にふさわしい待遇を受けているのだから除外しても問題はないとの趣旨によるものです。もっとも,深夜業に対する割増賃金の規定(同法第37条)や年次有給休暇の規定(第39条)は,適用されます。

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「管理監督者」とは

誰が管理監督者に当たるかについては,行政解釈では「一般的には部長,工場長等労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にあるものの意であり,名称にとらわれず実態に即して判断すべき」とされています(昭和22年9月13日 基発第17号,昭和63年3月14日 基発第150号)。
したがって,職制上の役付者のすべてが,直ちに管理監督者として扱われるというものではありません。上に述べた適用除外の趣旨に沿って,職務内容,責任と権限,勤務態様の実態・待遇を考慮して判断すべきです。
この点,静岡銀行事件において,裁判所は,「管理監督者とは,経営方針の決定に参画し或いは労務管理上の指揮権限を有する等,その実態からみて経営者と一体的な立場にあり,出勤退勤について厳格な規制を受けず,自己の勤務時間について自由裁量権を有する者」と判示しています(静岡地判昭和53年3月28日)。
また,「定期給与である基本給,役付手当等において,その地位にふさわしい待遇がなされているか否か,ボーナス等の一時金の支給率,その算定基礎賃金等についても役付者以外の一般労働者に比し優遇措置が講じられているか否か等」も考慮されます(前記行政解釈)。
「管理監督者」でないと判断されると,残業・休日労働手当の支払いを求めることができますが,それでは,「管理職手当」が支給されていたときはどうなるのでしょうか。管理職手当の支給によって残業・休日労働手当の支払いに(全部または一部)代えることができるのでしょうか。管理職手当は,企業によってその性格が異なり一律に論じることはできませんが,本来的には管理職手当の職責に対するものと考えられます。地位の高さ・職責の重さに応じて額は高くなり,実際の勤務時間とは関係なく額も固定しているのが普通だからです。したがって,支給していた管理職手当に残業・休日労働手当が含まれているというためには,そのこと(額も含めて)を予め明らかにしておくなどしておく必要があります(その趣旨の裁判例に前掲静岡銀行事件・静岡地判,神代学園ミューズ音楽院事件・東京高判平成17年3月30日がある。これに対し,課長昇進後の職務内容・給料・勤務時間の扱いが昇進前とほとんど変わっていないことなどを理由に役職手当が時間外・休日・深夜労働手当に相当すると判断した裁判例に,サンド事件・大阪地判昭和58年7月12日がある)。

こんな対応を!

支店長代理といっても,経営方針の決定に参画しておらず,労務管理上の指揮権限も有していないなど,実態からみて経営者と一体的な立場にあるものと判断されない場合は,労働時間の規定が適用され,残業手当も当然に支払わなければなりません。
自分の勤務実態や職務と責任の度合いを考えて,疑問のある場合には会社側に問いただし,納得がいかない場合には,是正を求めましょう。

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更に詳しく

裁判例から

1 地方銀行の支店長代理が「管理監督者」に該当しないとされた例

<静岡銀行事件・静岡地判昭和53年3月28日>

  1. 本件支店長代理の勤務形態:
    「毎朝出勤すると出勤簿に押印し」,「正当な事由のない遅刻・早退については,人事考課に反映され,場合によっては懲戒処分の対象ともされる等,通常の就業時間に拘束されて出退勤の自由がなく,自らの労働時間を自分の意のままに行い得る状態など全く存しないこと」
  2. 本件支店長代理の職務内容・権限:
    「部下の人事及びその考課の仕事に関与しておらず」,「銀行の機密事項に関与した機会は一度もなく,担保管理業務の具体的な内容について上司の手足となって部下を指導・育成してきたに過ぎず,経営者と一体となって銀行経営を左右するような仕事には全く携わっていないこと」
  3. 結論:
    以上の事実からすると,本件支店長代理が労基法第41条第2号にいう「管理監督者」に当たらないことは明らかである。
2 病院の人事課長が「管理監督者」に該当するとされた例

<徳洲会事件・大阪地判昭和62年3月31日>

  1. 本件人事課長の勤務形態:
    「出退時刻についてタイムカードを刻印するように義務づけられていたけれども,これは給与計算上の便宜に過ぎず,出勤日における実際の労働時間は,本人の責任と判断により,その自由裁量によりこれを決定することができたこと」
  2. 本件人事課長の職務内容・権限:
    「看護婦募集業務の遂行に当たり,一般の看護婦については,自己の調査,判断によりその採否を決定し,採用を決定した看護婦については,自己の裁量と判断により,徳洲会が経営する各地の病院にその配置を決定する人事上の権限まで与えられ,婦長クラスの看護婦についても,その採否,配置等の人事上の最終的な決定は,理事長に委ねられていたものの,その決定手続に意見を具申する等深く関わってきたこと」
  3. 本件人事課長の処遇:
    「担当する職務の特殊性から,時間外労働の発生が見込まれたため,包括的な時間外手当として,実際の時間外労働の有無長短にかかわりなく,特別調整手当が支給されてきたこと」,ほかに管理職手当に当たる「責任手当」が支給されていること(両者を合わせると提訴時には基本給の約半分となっていた)
  4. 結論:
    以上の事実からすると,本件人事課長は労基法第41条第2号にいう「管理監督者」に当たる者とするのが相当である。
3 レストランの店長が管理監督者に該当しないとされた例

<マハラジャ事件・東京地判平成12年12月22日>

原告Xは,被告会社の経営するインド人店長として勤務していた者であるが,同店にはXのほか,日本人店長が配置され,数名から十数名のアルバイトを含む従業員が在籍していた。

判旨

  1. Xは出退勤の際には必ずタイムカードを打刻しており,出退勤管理を受けていたこと
  2. Xに対して役職手当等の管理職に対応した手当を月々支給した事実はないこと
  3. Xは本件店舗の営業時間である午前11時から午後10時まで拘束されており,仕事の内容も,店長としての管理業務にとどまらず,店員と同様の接客および掃除等の業務が大部分をしめていたこと
  4. Xには店員を採用する権限はなかったことの事実が認められる。

これらの事実に照らせば,Xは,労務管理について経営者と一体的な立場にあるような者ではなく,労基法41条2号の管理監督者に該当しない。

スタッフ職について

本社の企画,調査等の部門に配置されるスタッフ職については,企業内における処遇の程度によっては,労働基準法の規制の外においても,特に労働者の保護に欠けるおそれがないと考えられる場合があります。したがって,待遇上,管理職と同等以上に位置付けられ,経営上の重要事項に関する企画立案等の業務を担当する者については,管理監督者に当たるとされています(前記行政解釈)。