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2-2 試用期間経過後に採用を拒否できるか|労働相談Q&A

印刷用ページを表示する掲載日2018年7月31日

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2-2 試用期間経過後に採用を拒否できるか

質問

ある会社に採用となり,6か月間の試用期間が満了しましたが,採用は遠慮すると言われました。特に何の話もなかったので,当然,採用になると思っていたのですが,納得いきません。

回答

<ポイント!>

  1. 試用期間を経過し,本採用しないという意思表示もなかったのであれば,当然に本採用となります。
  2. 解雇については,労使関係における弱者である労働者に深刻な影響を与えることから,強い法的規制,実体的規制がかけられています。

試用期間とは

試用期間が何であるかはケースによって異なりますが,判例は,通常の試用期間については,「解約権留保付労働契約」であると考えています(三菱樹脂事件・最高裁判決昭和48年12月12日)。何やら難しげですが,最大のポイントは「労働契約」という用語にあり,試用期間は既に本契約であるというところにあります。具体的な職業能力に関しては白紙の学生・生徒を採用し,入社後のOJTを中心に長時間かけて必要な職業能力を養成していくという日本の雇用システムの下では,短い試用期間中に具体的な職業能力を評価し本採用にするかどうかを決めることは無理であって,試用期間を本採用後とはまったく別のテスト期間などと位置づけることはできないと考えるのです。

期間満了後の採用拒否

もっとも,大雑把な評価しかできないとはいえ,試用期間が採用した労働者の能力・適性などを評価するテスト期間であることは完全には否定できませんから,この間の解雇は通常の解雇より広範な範囲で自由が認められています。もちろん,まったく自由というのではなく,解雇に準じた規制が加えられています(三菱樹脂事件・最高裁判決昭和48年12月12日)。
しかし,試用期間が満了した場合には,本採用にしないという意思表示がなければ当然に本採用となるのが一般的です。したがって,御相談のケースでは,基本的には本採用と同じとなり,本採用の拒否は解雇ということになり,労働契約法では,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当であると認められない場合は,権利の濫用として無効となります。(第16条)

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試用期間の延長

試用期間の延長は,就業規則などでその事由・期間などが定められていない限り,認められません。試用期間中は,通常の場合に比べて解雇の自由が広く認められるなど,労働者の地位は不安定ですから,使用者が自由にこれを延長することは許されないものです。もっとも,試用期間終了時点で,適格性に欠け本来なら本採用拒否ができるところ,再度チャンスを与えるために試用期間を延長することは,労働者の利益になりますので,認めてよいと考えます(雅叙園観光事件・東京地判昭和60年11月20日参照)。

こんな対応を!

まず,解雇の理由を確認し,納得できない場合は,本採用とするよう,会社側に求めましょう。

更に詳しく

「人員整理のための解雇は,どこまで許されるか」の項の「解雇権濫用の法理」を参照してください。