いわゆる「化学物質過敏症」(環境省は本態性多種化学物質過敏状態と称しています。)とは、「ごく微量の化学物質ばく露により、自律神経系の不定愁訴や精神神経症状とする多彩な症状を訴える」病態とされ、この概念は1987 年に米国のMark Cullenによって提唱されました。「化学物質過敏症は、多種類の臓器系に対して再発性の症状をきたす後天性疾患であり、その症状は、一般住民で有害な影響が生じる濃度よりもはるかに低い濃度において、多くの科学的に無関係な物質へのばく露によって生じる。また、一般に広く知られている生理作用は症状に関連して見られない」としています。
なお、ドイツ連邦保健省やドイツ環境省などと共同で国際化学物質安全性計画(International Programme on Chemical Safety: IPCS/UNEP-ILO-WHO)が組織したワークショップの報告書では、化学物質過敏症は化学物質ばく露と症状との間に因果関係を示す根拠がないことから「本態性環境不耐症(Idiopathic Environmental Intolerance: IEI)」と呼んでいます。
例えば、頭痛、筋肉痛(筋肉の不快感)、倦怠感、疲労感、関節痛、咽頭痛、微熱、下痢、腹痛、便秘、羞明・一過性暗点、鬱状態、不眠、皮膚炎(かゆみ)、感覚異常、月経過多、などの症状があげられています。
症状の原因は、環境中の特定の化学物質とは断定できず、因果関係は証明されていません。
発症の仕組みや治療法は確立されていません。
現在のところ、いわゆる「化学物質過敏症」の疾病概念自体が未確定であり、客観的な臨床検査法や診断基準も確立されていないところです。
国内でも次のとおり調査研究が進められており、今後の研究の進展が期待されます。
いわゆる「化学物質過敏症」は、原因や発生機序が明らかとなっておらず、症状が多様で個人差があるため、周りから理解が得られずに苦しんでいる方がいることに留意が必要です。
地域や職場、学校などで個々に応じた対応が必要になる場合もあります。
誰もが安心して暮らせる社会をつくるため、いわゆる「化学物質過敏症」への御理解をお願いします。
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