旧広島陸軍被服支廠は、大正3年(1914年)にしゅん工し、陸軍兵士の軍服・軍靴等の製造・貯蔵を担う施設でした。被爆直後は、被爆者の臨時救護所として使用され、多くの方が亡くなりました。戦後は学校の教室や運送会社の倉庫として活用されました。平成6年に広島市が被爆建物として登録しています。現在は、活用されないままとなっており、県では、利活用の検討や安全対策の実施設計などを行っています。
併せて、令和3年度より、重要文化財指定に向けた建築物の価値調査を実施し、令和5年3月に調査結果を取りまとめました。その結果を踏まえ、令和5年11月24日に国の文化審議会文化財分科会において、重要文化財に指定するよう答申が行われ、令和6年1月19日に、重要文化財に指定されました。
現存する4棟のうち3棟を県が、1棟を国(中国財務局所管)が所有しています。
被服支廠の紹介映像を(株)ニッショウプロ(本社:広島市西区三滝本町1-2-16,代表取締役 岩崎日照)に制作(撮影・編集その他含む)していただきました。
作品名は「瞬を刻む(しゅんをきざむ)」です。
第1~3号棟(県所有),91m×25m×15m
第4号棟(国所有),105m×25m×15m
第1~3号棟,5,578平方メートル×3棟=16,734平方メートル
第4号棟,4,985平方メートル
合計,21,719平方メートル
外壁の壁面は普通レンガのイギリス積を基本としている。一方で柱,梁,床スラブは鉄筋コンクリート製であり,内装は天井壁ともに全面セメントモルタル塗、床は全面アスファル トコンクリート塗となっており,鉄筋コンクリート造とレンガ造が複合する構造となっている。
屋根は切妻造桟⽡葺で,頭の小口に記された刻印から愛媛県の東予地方に位置する菊間町(現在の今治市菊間町)で製造された「菊間⽡」 であると考えられる。
旧広島陸軍被服支廠は,東京にあった陸軍の被服本廠の支廠(支部)です。その陸軍被服廠は,明治19年(1886)3 月に制定された被服廠条例(陸軍省達 16 号)に基づき設置され,陸軍所要の被服の調達・製造・補給等を担いました。明治36年(1903)9月には大阪に大阪支廠が設置されました。明治37年(1904)2月に日露戦争が勃発し,戦地から返ってくる還送被服品の洗濯修理のため広島市比治山に工場が建設されることとなり,やがてその場所に被服廠の広島派出所が設置されました。その後,明治41年(1908)3月の陸軍被服廠条例改正(勅令第23号)によって派出所から被服支廠(広島陸軍被服支廠)に昇格となりました。現存する4棟の倉庫は,明治43年(1910)に倉庫増築のための用地として,支廠に隣接する⺠有地の買収に取り掛かり,用地の買収が完了したころ, 明治44 年(1911)6月には本建築の基本設計に関する設計図書を本省経理局が作成しています。それを基に第五師団経理部が実施設計としてまとめ,同年12月には基礎工事に着工しました。本体工事が完成し,倉庫としての供用が開始されたのが大正3年(1914)4月以降になります。
被服支廠の当時の写真(絵はがき) 出典:広島県立文書館
※被服支廠の歴史の詳細は現在作成中です。
旧広島陸軍被服支廠は,現存する国内最大級の被爆建物かつれんが建築物です。
有識者からは,最古級の鉄筋コンクリート造建築物による連続して500mに及ぶ歴史的景観に重要文化財級の価値があると言われています。
構造は,鉄筋コンクリート造とレンガ造が複合する国内でも希少な建築物となっています。
爆風により変形した鉄扉など,被爆の痕跡が残っています。
500mにも及ぶ歴史的な景観
鉄筋コンクリート造の内部
爆風により変形した鉄扉
旧広島陸軍被服支廠の活用について,多様な活用方法を検討するため,県民の方々や有識者の方々との意見交換等を行い,実現可能性のあるアイデアを「活用の方向性」として,複数案取りまとめることを目的として設置されています。令和5年3月に活用の方向性が取りまとめられました。
旧広島陸軍被服支廠の活用について,令和4年度末までに,実現可能性のあるアイデアを「活用の方向性」として複数案取りまとめることとしています。その取りまとめに向けて,幅広い世代の方々が多様なアイデアを出し合い,意見交換を行うことを通じて活用のアイデアを取りまとめていくワークショップを実施していきます。取りまとめた活用のアイデアについては「旧広島陸軍被服支廠の活用の方向性に係る懇談会」に報告の上,懇談会における検討の参考とします。
旧広島陸軍被服支廠に関して,安全対策工事と,文化財指定に向けた建築物としての価値調査の進め方等について,有識者の方々に意見を頂き,取り組んでいくことを目的として設置しています。
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