法人名 | 株式会社ププレひまわり |
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所在地 | 福山市西新涯町2-10-11 |
URL | https://pupule-r.jp/ |
業務内容 | 「スーパードラッグひまわり」を広島、岡山、兵庫、愛媛、香川、島根、鳥取に120店舗、「ププレエステサロン」を16店舗、「ひまわり薬局」を広島、岡山、愛媛に10店舗展開している。その地域に合わせて、店舗ごとの個性を持ち、業務スーパー、調剤薬局、エステサロンなどを併設し、地域のお客様に一番支持されるお店を目指している。 |
従業員数 | 2,422名 |
女性従業員比率 | 84.8% |
女性管理職比率 | 9.1% |
(2019年11月現在)
「女性の活躍推進先進事例ノウハウ導入ブック」事例掲載先進企業を再訪問!
株式会社ププレひまわりは、2014年取材当時の課題として「若い人が早めに退職していく、結婚を機に退職する女性が目立つ(就業継続)」、「女性がこの会社で自分のやりがいを見つけてやっていこうという気持ちの醸成(キャリアアップ)」を挙げていた。これらの課題に対する現状について、2019年に再取材を行った。(→前回取材記事)
株式会社ププレひまわり(以下、ププレひまわり)の全社員に対する女性従業員比率は84.7%であるが、その多くがパート、アルバイトといった非正規社員である。正社員のみで比べても、男性正社員が10.2%、女性正社員が15.0%となり、女性の方が多くなっている。
図1 ププレひまわりの人員構成(男女別、パート・正社員別)
「ドラックストアは、健康、美容がキーワードなこともあり、女性の応募者が多い状況です」と人事総務部採用・教育課課長の田頭佳代氏が話すように、近年は新卒における女性の採用比率が8割を超える年もある。
図2 ププレひまわりの過去5年間の新卒女性採用比率
「女性社員が多数を占める当社においては、ワークライフバランスを実現するとともに、ライフステージによって、働き方を選んでいただけるような環境を整備することが重要です。当社では入社して3年目から店長になる場合が多いですが、ライフステージの変化が起こる前、若手の時からチャレンジし、業務経験を積んでもらいたい。また、家庭や仕事の両立が大変な時期もあると思いますが、目の前のことだけで判断するのではなく、長期的な視点で生活を考える、キャリアビジョンを持ってもらえるような取組も必要だと思っています」と、代表取締役社長の梶原聡一氏は女性活躍推進の重要性について語る。
ププレひまわりの正社員においては、20代の女性が最も多く、全体の41.3%を占める。この20代の女性正社員が就業継続し、同社での活躍を促すことが、重要な課題となる。
同社では、2007年4月から「SMAP(Smile Mama Active Project)」と名付けたプロジェクトにより、女性社員からの声を集め、働きやすい環境を整える活動に取り組み、この活動成果として、時短勤務制度、勤務地限定制度などが整備された。そして、2014年の取材当時は、「80回近く行われたSMAP活動をどのようにバージョンアップするか、活動をどうアピールするか」について課題を抱えていた。
「現在、SAMP活動は実施していません。その理由として、産休育休の取得が社内で定着し、さらに時短勤務や勤務地限定制度の利用者も増え、浸透してきたことが挙げられます。また、出産予定者に対して、人事担当者が必ず電話や面談をするなどしています。そのような環境下で、働き方に関する要望があれば、人事に直接声が上がってくるようになったため、新たな施策の展開が行えるようになりました」と、田頭課長は言う。
近年は育児休業からの復職率はほぼ100%であり、育児短時間労働制度(子供の小学校入学前まで)を利用しながら働く正社員のロールモデルが増えた。また、3年使える育児時短制度が終了後は、勤務時間を固定できる準社員制度の利用者も多いが、これも適宜利用しやすいようにバージョンアップしているという。
・勤務時間帯や月間勤務時間を固定できる制度 |
このような取組の成果もあり、同社の正社員の平均勤続年数は、5年間で男性正社員は1年4カ月、女性正社員は4カ月伸びた。「入社3年以内の退職者への課題は未だにあります。働きやすい環境をさらに整え、男女共に長く勤めていただけるような組織になるよう、これからも取組を進めていく」と、田頭課長は言う。
若手に就業継続を促す上でも、キャリアビジョンやライフプランをしっかりと考えてもらうことは重要だ。
まずは新入社員研修においてマインドセットするために、キャリアとともに、マネープランを考える機会を設けているそうだ。将来のライフイベントごとにかかるお金をイメージし、キャリアアップすることとお金の関係を理解することで、働くことのひとつの動機付けとしてもらうことが目的だ。「現実問題として、生きていくためにはお金がかかります。昇進したほうが充実した生活が送れる、若いうちに頑張ってキャリアを積んだ方が良い、といったイメージを持ってもらえれば」と田頭課長は話す。
「M字カーブと言われるように、30代の出産・育児期に日本の女性の労働力率が落ち込みます。当社では、30代の就業継続率は高くなってきましたが、20代で店長、30代で出産し、時短や準社員制度を使って継続している方が多いのが現状です。今後のキャリアという意味では、40代で再び店長や管理職などで活躍してほしいと思います。キャリアのM字カーブと言ってもよいかもしれません」。
同社において、70%を占める女性パート社員(図1参照)から、正社員、店長となるケースもある。木之庄店の店長である藤井佳奈さんも、そんなひとりである。
「日中の時間帯にパート社員として勤務していましたが、子供が成長するにつれ、勤務時間を延ばしていきました。以前は一般食品関連部門を主に担当していましたが、登録販売者の資格取得後は、医薬品や健康食品の部門も担当するなど、徐々に経験を積みました。そしてパート社員として入社して10年くらいたった頃、もっと店舗全体に関わる仕事がしたいと考えるようになりました」。そこで、正社員登用制度にチャレンジし、2017年に正社員となり、2018年には早くも店長を任される。
「店長をやってみたいという気持ちはありましたが、最初は不安もありました。しかし、パートでの15年間の経験が生かせることが多く、思ったほど大変ではありませんでした。社内に知り合いも多いですし、ブロック長や他店の店長、店舗スタッフに助けてもらいながら、務めることができています」。
店長になってからは、パート社員の頃よりも視野が大きく広がり、自身の成長を感じているという。特に、店舗スタッフが一丸となって売上目標を達成したときは、仲間と喜びを分かち合うことができる、最もやりがいを感じる瞬間だそう。また、家族も店長となった藤井さんを応援してくれるそうだ。
「息子が、バイト先での悩みを相談してくれたり、『自分もお母さんに負けないように頑張りたい』といってくれたりすると、店長になって良かったと感じています。貴重な経験をさせていただいていることに感謝です。若手やパート社員の方も、もっと店長を目指してくれるようになるとうれしいです」と藤井さんは話す。そして、子育てが終わりに近づいた今、これからは自分の人生をもっと楽しみたいと目を輝かせていた。
ププレひまわりで2014年取材当時抱えていた「若い人が早めに退職していく、結婚を機に退職する女性が目立つ(就業継続)」といったライフイベントによる退職は、制度の整備と利用の浸透によりほぼ解決しているようだ。しかし、若手の離職防止とキャリアアップ意識の醸成については継続課題であった。
また、同社における前回取材時(2014年)と現在(2019年)の各役職の人員構成を比べると、管理職である課長・次長の女性は1名と増えていないが、管理職の手前の職位である店長相当職の女性正社員は1.9倍、副店長相当職では3.5倍に増えた。子育てが一段落した正社員や経験豊富なパート社員に、キャリアアップを促す仕組みを取り入れるといった対応が、女性管理職を増やすカギなのではと感じた。
●取材日 2019年11月
●取材ご対応者
代表取締役社長 梶原 聡一氏
人事総務部 採用・教育課 課長 田頭 佳代氏
木之庄店 店長 藤井 佳奈氏