法人名 | アンデルセングループ (株式会社アンデルセン・パン生活文化研究所、株式会社アンデルセン、株式会社タカキベーカリー、株式会社アンデルセンサービス含む国内外10社) |
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所在地 |
広島市中区鶴見町2-19 ルーテル平和大通りビル |
URL | https://www.andersen-group.jp/ |
業務内容 |
全国に小売り直営店「アンデルセン」を展開する「株式会社アンデルセン」、全国8工場でのパン製造と「タカキベーカリー」ブランド商品の卸売や「リトルマーメイド」などのフランチャイズベーカリーブランドを展開する「株式会社タカキベーカリー」を含む国内外10社からなるアンデルセングループ。創業からの「食卓に幸せを運ぶ」という思いで、ベーカリービジネスをトータルで展開しています。 |
従業員数 | 6402名(非正規含む) |
女性従業員比率 | 63.6% |
女性管理職比率 | 10.4% |
(2023年5月現在)
「女性の活躍推進先進事例ノウハウ導入ブック」事例掲載先進企業を再訪問!
アンデルセングループは、前回取材時(2014年3月)の課題として「女性従業員の就業継続」、「職域毎の性別役割分担意識」、「女性の積極的な採用とキャリアアップ」、「多様な働き方の追求」を挙げていた。これらの課題に対する現状について、2019年に再取材を行った。
(→前回取材記事)
アンデルセングループの女性活躍に関するデータを見ると、前回取材時に比べ、部長相当職は変動があるものの、他はいずれの数値も伸び、女性活躍が進んでいることが分かる。
図1 アンデルセングループにおける女性活躍に関するデータの推移
「みんなが自分らしいライフデザインを描き、イキイキと仕事をし、人生を楽しんでほしい。そんな思いから、2015年4月に専任の『次世代ワーク推進担当』を新設しました」と、株式会社アンデルセンサービス(以下、アンデルセンサービス)人事部部長木村雅晴氏は言う。同社は、グループ内の経理、人事、採用、教育、総務、システムなどの専門業務を担当する会社で、女性活躍を含む各種人事関連施策についても行っている。
次世代ワーク推進担当にて、育児や介護など、さまざまな制約がある人も働き続けることを会社として支援するために、社員へのヒアリングに始まり、制度の改定、仕組の新設、風土づくりを進めているという。アンデルセングループにおけるそれらの取組について話を聞いた。
「パンを製造販売する会社であるからでしょうか、新卒者については女性からの応募が多く、近年は採用者の約6割が女性です」(表1参照)と木村部長が話す通り、女性の採用が増えている。これが正社員に占める女性比率が2014年の25.8%から2019年に30.8%(図1参照)と、5ポイント増えた理由の一つだ。
年度 | 男性(人) | 女性(人) | 採用者に閉める女性の割合 |
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2017年 | 41 | 70 | 63.1% |
2018年 | 32 | 55 | 63.2% |
2019年 | 28 | 47 | 62.7% |
しかし、前回取材時において課題となっていたのは「女性従業員の就業継続」で、せっかく採用した女性社員が途中で退職してしまうといった問題があったようだ。この点については、近年結婚・出産を理由に退職する社員はほとんどいなくなったそうだ。
「上司による妊娠時・産休前・復職前の面談を義務化しました。制度に関する知識だけでなく、働き方のすり合わせをすることで、当事者と上司・職場の相互理解と両立できる環境づくりにつなげることが目的です。また、次世代ワーク推進担当が『パパママ応援 相談窓口』を設け、妊娠中や育児休業中、復職後の従業員からの相談を受け、安心していただけるようにしています。相談窓口では、上司の相談も多く、両方の視点を教えてもらいながら積んだノウハウをこれからの方にも役立てていきたい」と、同担当課長の岡元由季さんは言う。
岡元さんは、「アンデルセン」の店舗での販売、「リトルマーメイド」のフランチャイズ店をサポートする店舗マネジメントの仕事など、店舗現場での経験が長く、店舗運営や働き方に詳しい。このような経験や現場からのヒアリングなども合わせ、女性の就業継続についてもサポートしている。
例えば、妊娠中は制服でお腹が締め付けられて不安、という声からマタニティ用の制服を作ったり、法定より長めの妊娠初期からの産前休業も可能としている。また出産から最大3年の育児休業制度や、復職後は子供が小学校を卒業するまでの間、最大1日2時間の時短勤務が選べるなど、より働きやすいものに見直している。また、産育休中の正社員と復職した正社員を対象に、SNS上でグループを作成しており、社内の横のネットワークを作っている。アンデルセングループは、全国に事業所があるため、社内の身近なところにロールモデルが不在の職場も多く、このSNS上のグループが不安解消や先のキャリアを描くことにつながっている。
しかし、男女関係なく入社から3年までの間に離職するケースもあり、そこを超えると人材が定着する傾向にあるという。よって、若手にやりがいをもって働いてもらい、就業継続につなげることは今後も課題として対応していくそうだ。
女性正社員が増えつつある今、多様な職域や管理職などでのさらなる活躍への取組も進んでいる。アンデルセングループでは、女性正社員の15.9%が販売職、37.6%が製造職に配置されている。
「かつては製造部門に配属される女性正社員が少なかったのですが、近年は多くなりました。『パンづくりをしたいから入社したい』という声が多く、女性も無理なく働けるよう、例えば小麦粉の納品形態を2kgから10kgに変更するなど働く環境も整えていきました」と、木村部長。現場と働く側の意識の変化により、女性の職域が拡大しているようだ。
図2 アンデルセングループにおける女性正社員の配置状況(2019年11月時点)
また、係長クラスになる前の20代後半の正社員に対する若年層研修時に、キャリア育成などの社内制度について説明し、男女共にワークライフバランスの意識を高める研修をしている。「各自のマネープランも考えてもらい、仕事を続けた場合と、そうでないときの違いも実感してもらっています。就業継続とキャリアアップの動機付けとしてもらえれば」と、木村部長は話す。さらに、女性の店長職が少ないといった点については、まずは店長の働き方を改善する必要があると、アンデルセングループでは考えた。
そこで、ある店長の意見をきっかけに、2018年10月から「店長職のフレックス制度」を導入した。従来は店長の一日の勤務時間は固定(8時間)であったが、繁忙日や店舗スタッフの人数が足りない時間帯に出勤するなど、店舗の状況や業務から判断し、店長自身の裁量でいつ何時間働くか決められる制度だ。一カ月あたりの総労働時間は8時間×勤務日数で固定であるが、1日単位では短くも、長くも柔軟にできる。
「フレックス制度は本部にはありましたが、店舗にはありませんでした。これも、店舗からの声を聞くことで実現しました。何より効率的に働け、また残業時間の短縮にもつながり、9割の店長が活用しています。この成果から2019年9月からは製造チーフにも導入。店長同様に9割のチーフが活用中です。上司である店長やチーフが自分の時間を大切にすることが、他の従業員の時間も大切にすることにつながるはず」と、岡元さんは言う。
「会社が社員のことを考えること、また社員の声を吸い上げ、本社部門として施策を展開することの大切さを感じています。これからも、自分の時間、相手の時間を大切にする風土を作っていきたい。また、具体的な数値目標は掲げていませんが、女性管理職も少しずつ増えるようにしていく予定です」と、木村部長は話す。
デンマーク語の「ヒュッゲ(人と人とのふれあいから生まれる、温かな居心地の良い雰囲気)」という言葉を大事にしているアンデルセングループ。従業員自身にもヒュッゲな時間を多く持ち、人生を楽しみ、そして業務においても力を発揮してもらうために、これからも次世代ワークの推進に取り組んでいく。
アンデルセングループでは、2015年4月に専任の「次世代ワーク推進担当」1名を設置し、現在は人事部内で連携しながら、働き方や女性活躍を含む取組に対して、アクセルを踏んでいる。2014年取材時の課題「女性従業員の就業継続」、「職域毎の性別役割分担意識」、「女性の積極的な採用とキャリアアップ」、「多様な働き方の追求」それぞれに対応することにより、女性正社員数の増加、女性管理職数の増加につなげた。
「次世代ワーク推進担当」という体制を整備し、販売現場を長く経験した担当者が、社員の声を聴きながら、ひとつずつ丁寧に対応していくことで、男女ともに働きやすい職場へと進んでいるようだ。
●取材日 2019年11月
●取材ご対応者
株式会社アンデルセンサービス 人事部 部長 木村 雅晴氏
株式会社アンデルセンサービス 人事部 人事チーム 次世代ワーク推進担当課長 岡元 由季氏