女性活躍事例アイコン女性活躍事例

「女性従業員が約9割と多い中、フラットな組織で柔軟に働ける環境を実現」

株式会社モーツアルト

  • 製造業
  • 廿日市市
  • 301人以上
方針・取組体制登用
1.モーツァルト_トップ写真.JPG

会社概要
社名 株式会社モーツアルト
所在地 廿日市市木材港北15-24
URL http://www.b-mozart.co.jp/
業務内容 菓子製造・販売を主に行う株式会社モーツアルトは、「自然を材に」という経営理念のもと、健康で幸せな生活を求める消費者のために、原料、素材の本質を重視し、安心して食べられる食品の提供を目指している。広島県、山口県、島根県を拠点に67の菓子販売店舗を展開する他、ホテル、タイ料理レストランも運営している。
従業員数 375名
女性従業員比率 86.1%
女性管理職比率 50.0%

(2018年10月現在)

改革の
point
  • 女性の応募が多く、幅広い分野で活躍中
  • フラットな組織で意見交換や成長を促す仕組みを大切に
  • 相談しやすい職場だからこそできる柔軟な体制づくり

1.女性の応募が多く、幅広い分野で活躍中

株式会社モーツアルト(以下、モーツアルト)は、広島県、山口県、島根県に67店舗の菓子店や喫茶店「バッケンモーツァルト」を展開しており、広島県民にとっては身近な存在といえるだろう。

モーツアルトの女性従業員比率は86.1%と、食料品製造業の全国平均である42.9%(※1)の約2倍である。また、女性管理職比率は50.0%と、同全国平均6.5%(※2)の約7.7倍であり女性の活躍が進んでいる企業と言える(図1)。

図1 モーツアルトと全国平均(食料品製造業)の比較

モーツァルトと全国平均の比較.jpg

※1 出典:厚生労働省(2017年6月)「賃金構造基本統計調査(食料品製造業の企業規模、100~999人)」
※2 出典:厚生労働省(2018年4月)女性の職業生活における活躍推進に関する法律に基づく認定制度に係る「産業ごとの管理職に占める女性労働者の割合の平均値」について(改訂)

近年の新卒採用においては、応募者の約9割が女性で、合同会社説明会のブースに女子学生が集まって賑わい、他社の採用担当者から羨ましがられるそうだ。そして、2018年4月入社の新卒従業員も13名のうち、11名が女性となった。

「おかげさまで創業から45年を迎え、広島の地においては名前が通っておりますし、業態もお菓子屋と学生にとってイメージしやすい、分かりやすいという面があり、興味を持ってもらっています。また女性従業員が活躍しやすい職場ということもあり、特に管理栄養士、栄養士の資格を持ち、品質管理関係の仕事を希望する学生に、毎年応募いただいています」と、原山和之統括本部長は話す。

現在の女性管理職は10名であり、品質管理、商品開発、広報関係、教育や採用、販売部門といった幅広い業務で活躍をしている。さらに、役員7名のうち2名が女性であり、特に西本公代専務がロールモデルとなり、会社全体の事業のけん引のみならず、女性従業員の活躍を後押ししているという。

「西本専務の存在は私にとっても大きなものですが、社員にとっても大きな目標なのでしょう。男性の上司より相談等がしやすい上、解決までのスピードが速いため、女性従業員は直接西本専務に話をすることが多いのではないでしょうか。男女関係なく評価をされる、また評価をするのが当たり前と常々考えているので、モチベーションも高まるのでは」と原山統括本部長は言う。

図2 モーツアルト組織図と女性管理職配置状況

もー組織図.jpg

 

2.フラットな組織で意見交換や成長を促す仕組みを大切に

モーツアルトは1974年に広島市中心部に開店した、ドイツ菓子を扱う喫茶店「バッケンモーツァルト」から始まり、300人以上の従業員を抱える企業へと成長した。事業を拡大するにあたり、管理職となる人材の育成は欠かせない。

従業員を育成する上でのモーツアルトの特徴は2つ、「トップとの密な直接的なコミュニケーションによる育成」と「役職にこだわらない配置・担当換え」だ。

1つ目の「トップとの密な直接的なコミュニケーション」については、社長をはじめとする役員が人材育成に多くの時間をかけている。営業会議・製造会議といった社内会議の後に、役員以外の出席者全員が必ずB5用紙半分の「感想文」をすぐに出し、役員はその全てに目を通す。社外との会議、研修などの参加後も同様だ。

「当社の従業員が終了直後に感想文を書きだすので、社外の方から驚かれることがあります。各従業員の意見や受け止め方が役員に伝わる、重要なコミュニケーションツールの1つです。役員はタイムリーに現場の意見を吸い上げ、アクションすることができます」と、原山統括本部長は胸を張る。

また、火曜日の夜は役員と従業員有志との食事会、金曜日は社長主催の幹部候補向け勉強会が3時間開催され、社長をはじめとする役員と話し、従業員を育てるための機会が設けられている。そこでは、業務のことだけでなく、個人の成長についてもよく話題になるという。

また、「役職にこだわらない配置・担当換え」では、各自が向いている業務を見つけ出すとともに、成長を促しているという。現在、開発企画室・品質管理室で活躍する寺本弥加さんも、過去色々な業務を経験している。

「社内では、課長、部長といったタイトルはありませんし、役員もさん付けで呼ばれています。人事上の区分はありますが、現場では管理職との境界線がいい意味であいまいでフラットなところがあります。例えば、販売部門で管理職的な役割をしていたものが、製造部門に異動してラインの一人として働くといったことがあります。会社の状況、個人の成長を鑑み、さまざまな仕事や立場を経験させ、幹部クラスを育てることを試みています。今の管理職以上の従業員は皆そのようにして育てられました」と原山部長は話す。

3.相談しやすい職場だからこそできる柔軟な体制づくり

菓子販売店舗、ホテル、飲食店は、営業時間が長かったり、土日祝日出勤であったりと、家庭との両立が難しい勤務時間帯が多くなるが、女性の就業継続についての施策を聞いた。

「実際に働いているメンバーのフォローに徹するため、こうしたいという希望を出しやすい環境づくりを心掛けている」と原山部長は言う。これに関しても、女性従業員から西本専務へ相談があり、直接対応することが多いという。

販売店舗では、子育て中のパート従業員が多数を占めるが、2、3人で回す小規模な店舗も多い。従業員の意見に添う形で、現在営業本部に6名の臨時対応要員を置き、学校行事や突然の休みなどに対応できるように、また必要に応じて本部の他部門の従業員も店舗の販売を行う体制とした。各従業員が色々な仕事を経験しているため、繁閑などの状況に応じて、柔軟に対応できるのだ。

その他、従業員との話し合いで、非正規から正規従業員、またその逆にしたり、勤務地を変えたりもする。現在、子会社の役員として活躍する女性は、子育て中にホテルに勤務していたが、子供が学校から直接ホテルに向かい、母親の仕事中に宿題などをして過ごしていたというアットホームな対応もあったそうだ。

このような対応を続けた結果、過去3年に妊娠した女性従業員4人とも、就業を続けており、「子供を産んでも仕事を続けることが当たり前」という風土になっているそうだ。

取材担当者からの一言

モーツアルトでは、女性役員が会社全体の事業と女性活躍をけん引していることが印象的であった。そして「男女差なく、適材適所」が実現され、随所で女性管理職が活躍している。

日本は欧米に比べ、女性取締役比率が低く、経営層レベルのダイバーシティが進んでいない(図3)。一方、取締役に女性が多いと、高いパフォーマンスを上げる傾向にあるとの結果も出ており、企業の成長性や収益性の向上のために、対応が必要と認識する企業もある。

図3 各国の女性取締役比率とROE(株主資本利益率)の関係

各国の女性取締役比率と.jpg

 

出所:経済産業省「ダイバーシティ2.0行動ガイドライン」概要
注記:Bloombergのデータより作成(データ取得日:平成29年3月)。ROEおよび女性取締役は対象銘柄の単純平均の値、異常値を避けるためにROEの上位2銘柄および下位2銘柄を除外。

多くの企業の取材を通して「トップの女性活躍についての理解とリーダーシップ」が重要と感じたが、モーツアルトのように、女性が経営層で活躍することが、「ダイバーシティ経営(※3)」を進める上で必要不可欠なのではないだろうか。モーツアルトが創業から45年の間に継続的に事業を拡大できた秘訣として、ダイバーシティ経営を意識せずとも実行してきたこと、また経営層が人材を育成することに注力してきたことがあるのではないかと感じた。

※3 多様な属性の違いを生かし、個々の人材の能力を最大限引き出すことにより、付加価値を生み出し続ける企業を目指して、全社的かつ継続的に進めていく経営上の取組。経済産業省「ダイバーシティ2.0 行動ガイドライン」参照

●取材日 2018年10月
●取材ご対応者
株式会社モーツアルト
統括本部長 原山 和之 氏